連載小説
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―魔法よ! 奇跡を起こして!

宗教国家として名高いレスカティエには、実に多くの学び舎が存在する。
その中でも、国の自慢である魔法学院では、毎年多くの見習い術師が生まれている。
魔物と比べ、身体的能力に劣る人間が、宿敵に対抗できる数少ない手段。
それが魔法である。平和な世を築くために、その力を会得せんとする者は少なくない。

しかし、魔法を扱うには、生まれつきの才が求められる。
誰しもが、術式を学び、呪文を詠唱をすることで、その力が扱えるわけではない。
体内に流れる豊富な魔力と、それを扱うだけの技量が、術師には必要となるのだ。

そういった理由もあり、魔術師となれる才覚を持った人間は貴重な存在だった。
レスカティエに限らず、多くの国々は、彼らを優遇し、戦の切り札として用いていた。
その中でも、特に有望な者は、勇者の仲間として魔王討伐を命じられることもあった。

だが、権力者達の魔法に対する評価は、少々夢見がちでもあった。
大岩を粉々に吹き飛ばす魔術が扱える者。それは彼らにとって、もはや英雄だ。
が、魔物達にとって、魔法の知識がある者ならば、その程度の魔術は小手先のもの。
優れた魔物の魔術師ならば、大岩どころか、山すら吹き飛ばすこともできるだろう。

ならば何故、人間は魔術師をこれほどまでに過大評価するのか。
答えは簡単。魔物達が、そんな物騒な魔術を使うことを良しとしないからだ。
そのため、彼女達の真の力を知らない人間は、魔術師達の魔術に酔い痴れる。
これならば勝てる。これ以上の魔術を、魔物達は知らない。そう錯覚する。
夢を追い、彼らはその末に溺死する。本当の力の差も分からぬままに。

井の中の蛙達。とはいえ、その志に濁りはない。
彼らの努力は本物であり、平和を求める想いは心からのものである。
そんなひたむきな人間達を、神は祝福し、僅かに奇跡の力を与え、後押しするのだ。

とある見習い術師の女性は語る。
自分が魔術師を目指したのは、幼馴染みがきっかけであると。
彼は幼い頃、野犬に襲われた私を、身を挺して守ってくれた。
私も彼のように、誰かを守れる存在になりたい。しかし、生憎自分は腕力がない。
だが、その代わり、魔術師としての才能があった。だから、それを極めようと思った。
彼のように、誰かを助けられる存在となるために。それが、今の私の夢です…と。

術師達は、今日も学び舎に通い、分厚い本を読む。
眠くなる講義を受け、難解な詠唱を繰り返し、少しずつ才能を開花させていく。
いつかその力が、魔物を打ち倒し、世界に平穏を齎すものと信じて…。

―私が、皆を助けます!
15/11/10 20:41更新 / コジコジ
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