油の臭いが漂う狭苦しい空間で、俺はディーゼルエンジンの音に耳を傾けていた。エンジンや電気系統だけは新しい物なので、けたたましい音を立てながら快調に作動している。かつてこの操縦席に座っていたのはどんな人だったのか、今となっては知る術もない。できることならすぐにでも二本の操縦レバーを握って走り出したいが、今日はあくまでもエンジンの試運転。走行は明日だ。

　左に目をやり、覗き窓の装甲ハッチを開けた。カチッという金属音がして、僅かな視界だが風景が見える。工業科の同級生たちと先生が試運転を見守っていた。人間もいれば魔物もいるが、皆着ているのは油の着いた作業着だ。
　この高校に入って機械工学を学んで、俺の子供染みた夢を手助けしてくれる仲間も見つけることができた。せっかく人魔共学の学校なのに恋愛の一つもしていなかったが、これはこれで充実した高校生活だったと思う。だが。

「……あなただけが、いない」

　後ろを振り向けば、一人分の空間がぽっかりと空いている。その後ろは壁を隔ててエンジンルームだ。この空間にいるはずだった人……俺の「隊長」はもういない。
　車内の何もない場所が、俺自身の心を表しているかのようだった。












………








……







…










「じゃあな新平、お前も早く帰れよ」
「おう、お疲れ様」
「あたしにも操縦させろよ新平！　約束だぞ！」
「分かってるって」

　試運転が終わったとき、もうすっかり日は落ちていた。このプロジェクトの主導者である俺を残し、仲間達は帰って行く。工業科というと男が多そうなイメージだが、ドワーフやサイクロプスのような魔物もそれなりにいる。意外なところではスキュラも工業の道へ進むことが多い。八本の脚で一度に沢山の工具を扱えるからだ。とにかくそういうわけなので、俺のように機械のことばかり考えている男は少ない。現に今、みんな男女で手を繋いで車庫から去っていく。

　俺は改めて「宝物」を眺めた。薄いとはいえ装甲を持ち、キャタピラで走り、小型ながらも砲塔を積んでいる。軽自動車サイズの車体は無骨で、肝心の主砲もたかが三十七ミリ。お世辞にもスタイリッシュとはいえないが、それでも歳月を経て現代に蘇ったこいつを見ると、たまらない興奮がわき起こる。
　九七式軽装甲車『テケ』。豆戦車やタンケッテなどと呼ばれる、二人乗りの小型戦車だ。

「浦和くん、いよいよ明日ね」

　まだ車庫に残っていた矢巻さんが、静かな声で言った。手についた油をウエス（布切れ）で拭き取りながら、感慨深げにテケ車を眺めている。

「ああ。長かったよ、本当に。矢巻さんにはいろいろ助けてもらったなぁ」
「ううん。役に立てて嬉しいわよ」

　手を振りながら笑う彼女は、人魔共学のこの学校では珍しい人間の女だ。珍しいと言ってもあくまで比率の話で、こういうタイプの女子はそれなりにいる。魔物化が嫌な訳ではなく、ただ成り行きで人間として生まれ、成り行きで人間として生きているタイプだ。
　そんな矢巻さんの特徴は何かと言えば、地味なのが特徴ということになるだろう。顔は可愛い部類に入るが華やかな感じは一切なく、気がつけばそこにいるような人だ。だがこのテケ車のレストア（修復）に関しては俺の次くらいに熱意を持っていたように思える。

「高校生の私たちが戦時中の乗り物を直しちゃうなんて、凄いことよね」
「本当だよな。小学校時代からの目標が達成できた」

　俺が工業科に入ったのは当然、小学生の頃見つけたテケ車を直すためだ。夢が叶うのはもっと先だと思っていたのに、ある日先生に打ち明けたことがきっかけで、いつの間にかクラスメイトたちと一緒にレストアに取りかかっていた。

　道のりは長かった。まずエンジンを修理するのはほぼ不可能だったため、新しいエンジン探しから始まった。電気系統も新品のものに変えた。
　そして主砲だ。撃てるかどうか怪しい骨董品とはいえ、動かせるようにするのに本物の大砲を積んでおくわけにはいかなかった。今テケ車に搭載されているのは矢巻さんが作ったダミー砲身なのだ。木を削って作ったものだがなかなかの出来で、よほど近くで見ない限り偽物とは気づかないだろう。

　他にも駆動系だのキャタピラだの塗装だの、数えきれない苦労をしたが、みんなでワイワイガヤガヤやっているうちに乗り越えた。

「本当に矢巻さんや……みんなのお陰だよ」

　テケ車の装甲板に、そっと手を触れる。冷たい鋼の感触だ。
　これを見つけてから十年。俺はもう「隊長」と同じ高校三年生だ。彼女は大人に見えたが、実際高校生になってみるとまだまだ自分が子供のような気がしてくる。つまり「隊長」は子供のうちに生涯を終えてしまったことになるのだろうか。どの道長くない命だったのかもしれないが、病気だということに俺が気づいて救急車でも呼んでいれば、と思うこともある。

　あの人がどういう病気だったのか、何故病院から逃げ出してあんな死に方を選んだのか、俺は知らない。ただ大人たちの噂話で、両親は褒められた人間ではないこと、温かい家庭ではなかったことを何となく聞いただけだ。
　それ以上のことはむしろ知りたくなかった。


――シンペイくんに会えてよかった。私は幸せ者だね――


　そう言ってくれた彼女だけが。俺を抱きしめてくれた彼女だけが。
　俺が出会った「隊長」だけが本当のあの人なのだと信じたかった。

　この鉄臭くて泥臭い小型戦車を動かせば、彼女の心は俺と一緒にいてくれる。そんな気がする。
　全ては明日。俺も今日はもう帰ろう。


「……浦和くんってさ」

　車庫の戸締まりにかかろうとしたとき、矢巻さんはぽつりと口を開いた。

「私の下の名前、知ってたっけ？」
「ユキさん、だろ」

　フックをシャッターに引っかけ、引き下ろす。ガラガラとやかましい音を立てながら一番下まで閉め、しっかりロックした。

「そう、幸福の『幸』でユキ」

　喋りながら、矢巻さんも隣のシャッターを閉めた。そのまま俺の方を見ずに、言葉を続ける。

「サチさんと同じ名前なのよ、私」
「え……？」

　一瞬、俺の思考が停止した。我に返った瞬間、心臓が大きく脈打つ。工具類を棚に片付ける矢巻さんの動きを、ただひたすら目で追っていた。

「今、サチさんのことを考えていたんでしょ」
「……なんで、それを……？」

　やっとのことで口に出せた台詞。このテケ車は十年前に俺が見つけたことは皆知っているが、サチさんのことは誰にも話していない。矢巻さんが知っているはずもない。
　すると矢巻さんはようやくこちらを振り向き、トコトコと歩み寄ってきた。微笑を浮かべ、俺の目を見ながら。

「シンペイくん」

　そう呼ばれた瞬間、脳内にサチさんの声がフラッシュバックする。矢巻さんユキが俺を名前で呼ぶのは初めてだ。しかし呼び方が不自然なほど似ていたのだ。記憶の中のサチさんに。
　可愛らしくも地味な顔に、矢巻さんは妖しげな笑みを浮かべていた。どこかで見たような笑みだが、これはサチさんのものではない。

「シンペイくんはサチさんのために、テケ車をレストアしたのよね。でも……」

　ずいっと近寄り、矢巻さんは至近距離から俺を見つめてきた。互いの体の油臭さが分かる距離。ここで彼女の笑顔が何なのか分かった。これは人間のする表情ではない。発情し始めた魔物の笑みだ。

「サチさんもレストアして欲しいんだって。シンペイくんに、ね」

　ふいに、こつんと音がした。矢巻さんの額が俺の額と触れ合ったのだ。

「……っ！」

　温かい感触の直後、俺の体は硬直した。脳内にあまりにも鮮明な映像が浮かび上がってきたのだ。儚げな白い肌。くりくりとした無邪気な光りを宿す瞳。可愛くて不思議な印象を生み出している、黒くて長い巻き毛。形の良い鎖骨のラインに、胸のふっくらとした二つの盛り上がり。
　あの日と同じサチさんが俺の頭を占領した。ただし、裸の姿で。

「シンペイくんとサチさんが抱き合って、キスして……」

　俺とサチさんが裸で抱き合う……
　サチさんの柔らかい体に触れながら、そっと唇を重ね合わせる。舌を絡めて、互いの口の中を味わう……
　俺がサチさんの胸を揉んで、サチさんはくすぐったそうに身をよじる……

「ほら、シンペイくんとエッチなことをしたいのよ。サチさんは」
「だ、駄目だ、こんなの……！」

　死んだ人でこんな妄想をしては駄目だ。そう思いながらも、頭の中に映し出されるヴィジョンは消えない。サチさんの裸体に囚われる俺を見て、矢巻さんはくすっと笑った。

「駄目じゃないわよ。サチさんがしたいって言ってるもん」

　矢巻さんの言葉を肯定するかのように、妄想の中のサチさんが俺に笑いかける。思い出の中と同じ、柔らかな笑顔で。
　股間に血が集まるのを感じた。全身が熱くなる。まるで脳内で映画が上映されているかのような、鮮明な光景に目眩がし始めた。このままサチさんのことを考えていたい。

　すると矢巻さんは近くにあったパイプ椅子をテケ車の前に置き、埃を払った。俺の手を引き、座るよう促す。

「ほら」

　されるがままに着席される俺。だがそのまま妄想にばかりふけることは許されなかった。
　矢巻さんが作業着のズボンを脱ぎ始めたのだ。

「う……!?」

　俺は目を見張った。油で汚れたカーキ色の作業着がするりと脱げ、柔らかそうなふとももが露わになる。靴も一緒に脱いでしまい、飾り気のない白のショーツと黒い靴下以外、下半身を隠す物がなくなった。

「や、矢巻さん、何を……!?」
「うぅ〜、男子にココ見せるとか初めてよ……恥ずかしくて死にそう……♥」

　顔を真っ赤にしながらも、口元には相変わらず捕食者の笑みを浮かべたまま。ゆっくりとショーツをずり降ろし、見せつけるようにしてソコを露わにする。茂みに覆われた女性器から、透明な液体がねっとりと糸を引いた。
　矢巻さんの指がその割れ目をゆっくりとなぞり、滴る愛液を見せつけてくる。割れ目を押開くとピンク色の内側が露わになり、豆粒のような突起も見えた。くちゅくちゅと卑猥な水音が鳴る。

「ん……どう？　魔物の子たちと違って毛が生えてるし、気持ち悪いかな……？」
「そ、そんなことはないと思うけど」

　思考が混乱し、分けの分からないうちに思わずフォローを入れてしまう。普段機械油ばかりに慣れ親しんでいる俺に、女の出す天然の潤滑油は刺激が強すぎた。しかも矢巻さんのような真面目な、魔物ですらない女の子が、俺の目の前でストリップを始めるなんて。上半身の無骨な作業着が、下半身の柔らかそうな肌を引き立てている。
　俺が凝視しているのを見て満足げな笑みを浮かべ、彼女は俺の下半身へ手を伸ばしてきた。

「シンペイくんのアレも見せて。サチさんも見たがってるわよ」

　ガチャガチャと音を立て、ベルトが外され、チャックが開けられ……

「や、やめ……！」

　制止の声も空しく、俺のモノは露出させられた。パンツの押さえつけから解放され、勢い良く飛び出してきたそれに、今度は矢巻さんが目を見開いた。

「うわっ……こんなに……♥」

　熱っぽい瞳でペニスを見つめられる。脳内のサチさんも矢巻さんと同じ表情をしている。それはすでに極限まで怒張していた。なにせ頭の中では憧れていた女性の全裸、目の前ではよく知っている女子の半裸が見せつけられているのだ。羞恥心がなければ今すぐ自分で抜いてしまいたいほど、性欲が高ぶっている。
　俺の股間に顔をぐっと近づけ、舌なめずりする矢巻さん。もはや人間の女とは思えない。

「矢巻さん、一体どうしたんだよ……!?」
「まだ分からないの？　そういえばシンペイくん、魔物学の成績悪かったわね」

　クスッと笑い、矢巻さんは前髪をめくり上げて額を見せた。

「もう一回、おでこくっつけましょ」

　そう言われた瞬間、何をされるのか分かった。だが抵抗する間もなく、矢巻さんは椅子に座る俺に覆い被さるようにして、額を接触させてきた。生温かい感触の直後、再び映像が流れ込んでくる……

　制服姿のサチさん。浴衣姿のサチさん。水着姿のサチさん。下着姿のサチさん。俺に頬ずりするサチさん。料理を作ってくれるサチさん。俺と添い寝するサチさん。俺と一緒に風呂に入っているサチさん。俺の体を洗ってくれているサチさん。俺に洗われるサチさん。タオル姿のサチさん。俺とキスをするサチさん。俺の股間に触るサチさん。口でしゃぶっているサチさん。俺の顔にアソコを押し付けてくるサチさん。お尻を向けてくるサチさん。裸で脚を大きくサチさん。サチさん。サチさん。サチさん。サチさん。サチさん……

「うぅぅ……!?」

　脳内で繰り広げられる、サチさんの痴態。矢巻さんが甲高い声で笑っている。

「あはははっ、これで分かったでしょ。私の中にいるの！　サチさんが！」

　ほとんど無意識のうちに、俺は両手をペニスに添えていた。強制的に妄想させられる淫らな光景にのめり込み、無我夢中でそこをしごきたてる。まるでサチさんが本当に生きているかのように、目の前にいるかのように、妄想に身を委ねていた。
　だが矢巻さんに腕を掴まれ、強制的に自慰を止められる。

「もうっ、女の子の前でオナニーなんて……。出すならココに、ね♥」

　矢巻さんが俺に覆い被さるようにして抱きついてきた。作業着の油臭さが鼻を付く。丁度彼女の性器の下に、俺のそれがある……対面座位の体勢だ。

「私の処女あげるから、気持ちよくイっちゃいなさい」

　処女。そう言われた瞬間、思考が少しだけ現実に引き戻された。

　処女をあげる？
　俺に？
　矢巻さんが俺とセックス？

「や、矢巻さん……！」
「もうっ。ユキって呼んで、ユキって！　ユキよ、私は！」

　最後の理性で発した言葉が遮られ、ペニスの先端が柔らかい入り口に触れた。その瞬間、思考がまた性欲一色で染まっていく。

「んっ……ん……は、はぁぅ……♥」
「は、入ってる……！」

　熱い息を顔にかけながら、矢巻さんはゆっくりと腰を沈めていく。割れ目の内側は潤滑油でぬめり、とても温かく、柔らかい。魔物と付き合っている友達が言うような「中が蠢いてナニが揉まれる」「絡み付いて抜けなくなる」などの現象はなかった。機械を弄ってばかりで女のことなんて対して知らない俺には、人間の女性器も十分すぎる凶器だった。
　それに加えて頭の中では今、サチさんの口の中で射精して……

「あ、あぁぁ、うぅっ！」

　ペニスが薄い物を突き破る感触を覚えた瞬間、俺は射精していた。あっという間だ。サチさんの口内と、ユキさんの膣内、異なる穴へ同時に。

「ひゃぁぁ♥　あ、熱いよぉ♥　シンペイくんの熱いのがっ♥　私の中にもっ、サチさんにもぉ……♥」
「サチさん……ユキさん……サチさん……ユキさん……！」

　ドクドクと激しい脈打ちで、ユキさんの中へ精液を吐き出していく。互いに油の臭いが染み付いた体を抱き寄せ、快楽に打ち震えていた。白濁でべとべとになったサチさんの顔を、脳内で思い浮かべながら。
　現実と妄想。二重の快楽はあっという間に俺を絶頂へと追い込み、強烈な気持ちよさに目がチカチカし始める。だがそれでも、眼前のユキさんと脳内にいるサチさん、二人の姿だけははっきりと見えた。

「シンペイくん……好き……♥」

　ユキさんの唇が、俺の頬に触れた。ついばむようなキスの直後、膣内からぬるりとペニスが抜かれる。ユキさんの表情は淫らに蕩けきっており、赤らんだ頬を伝っていく汗さえ卑猥に見えた。

「ずっと好きだった……テケ車のレストアが始まった頃から……夢中になって直そうとするシンペイくんが好きだった」

　よろめくように俺の膝から降り、床に這いつくばるユキさん。彼女のふとももには溢れ出た俺の精液の他に、一筋の赤い液体が流れている。だが痛がっている様子はなく、あくまでも快感に喘いでいた。

「言い出せなかった……でも、サチさんと会って、二人でシンペイくんとシようって約束したの。そうすればみんな幸せになれるから、って」

　妖艶に囁きながら、四つん這いになって俺にお尻を突き出してくる。処女を失ったばかりの割れ目を指で広げ、内側を見せつけてくる。形のいいお尻も、お尻の穴も見えた。脳内ではサチさんも同じ格好をしている。
　思考が鈍った頭でも、ユキさんの言葉の意味はなんとか理解できた。一緒に戦車を直している間、ずっと俺のことを思ってくれていたのだろうか。機械バカの俺を、昔の夢を未だに見続けている俺を。
　現実と妄想が重なっていく。ユキさんとサチさんの姿が重なった。

「もう一回シて……私にもサチさんにも、もっとちょうだい……♥」

　ユキさんが言い終わらないうちに、俺は椅子から立ち上がった。ユキさんとサチさん、『二人』の可愛いお尻を押さえ、開かれた割れ目にペニスをあてがう。ぬめった粘膜が温かい。

「あっ……♥」
「……行くよ」

　腰を進めて挿入していくと、ソコはきゅうっと甘く締め付けてきた。

「あぅんっ♥」

　奥まで突入れて。

「ふぁあん♥」

　抜いて。

「あぅぅぅ♥」

　また突く。

「あぁっ、はぁっ♥　イイ……わたし、私、さっきまで処女だったのにぃ……こんなに感じてるぅ……♥」
「うぅっ……ユキさんの中、温かい……サチさんの中、柔らかい……！」

　四つん這いになっている女性を、二人同時に犯している。方や苦楽を共にしてきた学友。方や少年時代に出会い、死に別れたお姉さん。二人の膣内にペニスを突入れ、犯している。
　ぬめり、締め付け、絡み付いてくる温かい女性器。手に感じるぷにっとしたお尻の感触。このままずっと腰を動かしていたいくらいの気持ちよさだ。先ほどのセックスとは違い、ユキさんの膣内はゆっくりと蠢いているように思えた。まるで別の生き物のように。

「シンペイくん、もっとぉ♥　もっと、もっと……♥」

　淫らに喘ぐユキさんの表情はもはや人間ではない。発情した魔物そのもので、今挿入している体も魔物のそれだった。
　ユキさんもサチさんも四つん這いのまま、体を前後に揺り動かす。膣の摩擦が速度を上げ、快感が増した。揺れ動くお尻に腰がぶつかり、パンパンと音が鳴る。

「気持ちイイ……気持ちイイ……気持ちイイ……♥」

　よだれと嬌声を垂れ流しながら、二人は俺を顧みる。ユキさんの短めの髪と、サチさんの長い巻き髪がゆらゆらと揺れていた。丸いお尻もくねくねと揺れていて情欲を誘う。
　変なスイッチが入り、俺はそのお尻の谷間に指を滑り込ませた。

「ひゃぁっ!?　そ、そこはぁ……♥」

　すぼまったお尻の穴を指先でくすぐってあげると、二人は可愛らしく体を震わせた。

「やぁ……私、ヘンタイさんになっちゃうよぉ♥」

　お尻のくねりがさらに激しくなり、膣内に抱かれた肉棒もその動きに刺激される。たまらず数回激しく腰を動かすと、とうとう俺の股間に熱いものがこみ上げて来た。もう一回出しているというのに、勢いが衰える気がしない。

「で、出るよ、二人とも……！」
「来ちゃうの？　出して、いいよ、出して、イって、私の中で……♥」

　強く締め付けられた瞬間、とうとう精液を迸らせてしまった。狭い膣内に、再びドクドクと注ぎ込んで行く。

「あ、ああ、あぁ♥　き、きてるぅ♥　すごぉい、妊娠しちゃうぅぅ♥」
「うぅっ、く、あ、サチさんっ……ユキさんっ……！」

　温かい穴の、一番奥の所へ。射精の快感に膝が笑うが、脈打ちが収まるまで踏みとどまった。重なり合って一つになったユキさんとサチさんに、ありったけの精液を吸い取られる。二人の大事なところを汚した背徳感がこみ上げてきた。
　快感に硬直していたユキさんの体から、ふっと力が抜けた。車庫の冷たい床にぺたんと崩れ落ち、股間から俺のペニスが抜ける。僅かに開かれた割れ目から、男女の液が混じり合ったいやらしい汁が垂れていた。

「ゆ、ユキさんっ！」

　そのまま動かない彼女を助け起こそうとした瞬間、目の前に白いもやが湧き出た。煙のような、霧のようなそれは空中の一カ所に集まり、どんどん濃度を増していく。それがユキさんの体から出ていることに気づいたとき、集まったそれは形を作り始めていた。

「ああ……！」

　俺という奴はつくづく馬鹿だ。人魔共学の高校では魔物学は必修授業。赤点こそとったことはないが、もっと真面目に授業を聴いておくべきだった。そうしていればもっと早く気づけただろう。
　彼女がここにいたことに。

「ん……」

　胎児のように体を丸めた彼女は、白い指で自分の頬をぺたぺたと触った。体の感触を確かめるように。やがて瞼がゆっくりと開き、昔とは違う赤い瞳で俺を見つめ……

　サチさんはあのときと変わらない微笑を浮かべた。