連載小説
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ファイナルミッション!レスカティエから脱出せよ!
劇中ドラマ

「ウィルマリナ様!!報告です!!」

「どうしましたか?ベルモット」

「クロフェルル様より通達です!このレスカティエに侵入者あり!我ら氷華騎士団が出陣しこの侵入者を捕らえよ!
とのことです!」

「ふふっ♥️遂に私たちの出番ですか…………………
氷華騎士団!!全員集合!!侵入者を捕らえます!」

「キャハーーーッ♥️」

「まってましたぁ♥️」

「キタキターーーッ♥️」










「………………ふぅ…………」

暗く人気のない寂しげな路地を歩きながら、ハジメは大きな大きなため息をついた。

3rdミッション時にイレイヴと別れた後、ハジメはレスカティエの貧困街へと戻ってひとりでハンターたちから逃げ回っていた。


「残り時間はあと16分、そして残りの逃走者の数はあた4人か…………………」

配付されたスマートフォンを見て、冷たい石堤の壁に項垂れた。
そしてまるでゲロを吐き出すかように、ハジメは言葉を吐き出した。


「くっ……………俺は………………俺は……………………
俺は……………このまま逃げ切れるのか?……………」

額を手の甲で拭きながら、ハジメはボソりと言った。
そして再びぎこちない手つきでスマートフォンをいじりながら、ゲームの残り時間を確認した。

3rdミッションも終わり、気がつけばゲーム開始から1時間と45分が過ぎていた。
残り時間はあと16分となっていた。


(ゲームの残りの時間もあと16分か………………もう少し、もう少しでゲームが終わるんだ……………
あぁ、頼む………………もうこのまま何事もなく穏便に終わってくれ……………)

ぼんやりとそんな事を考えた。


(…………………このまま何事もなく穏便に終わる、のか?)
ゾクッ!

ハジメの疲弊した頭のなかにひとつの予感が、いやひとつの悪寒が過った。


(今までの展開から考えたら、なんだか少しあっけなさ過ぎる様な気がするな……………
いや、このゲームの間俺たちを弄び続けたあの禍々しいチビのことだ…………………ゲームの最後にもなにか仕掛けてくるかもしれない。
最後の最後、ここまで残ったゲーム参加者を絶望へと陥れるような地獄のミッションが……………)

魔物世界へと堕落したレスカティエの黒く煌めく空をぼんやりと眺めながら、ハジメはそんな事を考えた。

そしてハジメのその予想は数秒後、見事に的中した。

悪い方向に振りきれて、最悪を通りすぎた至上最悪の物となって実現した。






ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!

「ミッションメール!!やっぱ来やがった!」




・ファイナルミッション!
魔界騎士たち乱入!レスカティエから脱出せよ!

今からゲーム終了までの約15分間の間、レスカティエ東門を解放する。(このゲームが始まった場所だ。)
ゲーム終了の時間までにこの東門からレスカティエの外へ無事脱出することが出来たならば、おめでとう。
ゲームクリアだ。

ただし、同時に逃走エリアに魔界国家レスカティエが誇る最強の魔界乙女騎士たちを解放する。
彼女たちはハンターではないため君たちを直接襲うことは無い。しかし様々な方法で君たちの行く手をはばんでゆくぞ。

さぁここまで残った勇敢なる逃走者諸君よ!彼女たちの妨害を見事にくぐり抜けて、レスカティエから脱出して見せるのだ!


上記の文と共に下の写真が貼り付けられて送られてきた。






「な、なんだこのミッションはっ!」

ミッションメールを見たハジメは、近くにハンターがいるかもしれないという事も忘れて大きな声を上げた。
いや、正確にはミッションメールではなく、ミッションメールについてきた写真に驚愕していたのだ。


(この写真に写ってるのは!………………間違いない!
ウィルマリナだ!
たぐいまれなる勇者の才能を見出だされ、弱冠17歳の少女にして大国レスカティエの象徴とまで謳われた、史上最強の勇者、ウィルマリナじゃないか!
さらに、その隣にいるのはウィルマリナ近衛の騎士として彼女と共に数々の戦果を上げてきた剣士ベルモット!見た目は少し変わったが、こっちのふたりはレスカティエ3銃士のアラメリアとオリヴィエじゃないか!
その他にもいるのは大国レスカティエにその名の轟いていた氷華騎士団の乙女騎士たちじゃないか!)

ハジメが心の中で絶叫した。


(レスカティエの誇った勇者たち!レスカティエの陥落時に全員が死亡したと言われていたレスカティエ教国の乙女騎士たち!
それが全員魔物娘になっていたなんて!!
…………………いや、そう言えば!
お助けキャラのポーラさん!彼女もレスカティエ3銃士のひとり、ポーラじゃないか!俺としたことが!失念していた!
くっ!最悪だ!最後の最後にこんなミッションを持ってくるなんて!このミッションは至上最悪だ!
くっ!こ、こんなのクリア出来るのか!?)

驚愕の感情が徐々に絶望へと上塗りされていった。


「……………………くそっ!!やってやる!!ここまで来たらやれるところまでやってやる!……………維持でも逃げ切ってやる!!
負けて……………負けてたまるかぁぁぁ!!」

大声でそう自分に言い聞かせると、疲弊した身体と絶望していた心にムチを打って、ハジメは貧困街からレスカティエ東門へと走り出した。












ミッションメール発令から僅か1分後
レスカティエ南部にて


「がぁぁぁぁ!!き、切られたぁ!いつの間に!?」


「ふふふっ!
私の剣は冷たく凍てつく氷華の剣、どうかしら?寒いでしょう?冷たいでしょう?心が苦しいでしょう?
癒せるのは女の温もり、私たち魔物娘が与える魔性の温もりだけなんですよ♥️
さぁ、堕ちてしまいましょう♥️
私たち魔物娘と一緒にね♥️」
19/06/21 10:11更新 / J2
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■作者メッセージ
いよいよ物語は最終局面へ!

果たしてハジメは無事ゲームをクリアすることが出来るのか!?

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