読切小説
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ひものゆうれい
「ただいまー幽梨、生きてる? ……って、元から死んでたか」
「あ゛ぁぁぁぁぁづぅぅぅいぃぃぃぃぃぃー! 玲ー早くクーラーつけてー26度で」
 同居人にしてゴーストの幽梨(読みは生前と同じらしい)が手と見えない足をじたばたさせ、畳の上を転がりながら訴えた。
「暑いからいれるけど、28度な。てか、クーラーいれるなとは言わないが、少しは俺を楽させてあげようという気持ちはないのか? ……誰かさんのせいで先月の家計簿が軽くグロ画像になってたんだがな」
 そういってその誰かさんに目を向けた。だがその誰かさんは馬耳東風といわんばかりにエアコンのリモコンに手を伸ばした。
 神様はなんのためらいもなくその手を通り抜けさせ、心を握りつぶした。
「…………神様なんていないんだね」
「おいコラ、なにさりげなくリモコンに手伸ばしてんだ」
「うぎぎ……精を……精をくれなきゃ逆レしちゃうぞー」
 こいつの頭の中は1950年位でとまっているのだろうか? それとも、年がら年中ハロウィンなのか。
「ぅぅぅ……あ、そうだ。ねえ玲、買い物行くならUジャンとコロニキ買ってきて。一冊ずつ」
「近くの本屋に売ってねえんだよ、特にコロコロアニキ……」
「じゃあちょっと買ってきてほしいカードがあるんだけどさーステンレス製のカオソル。勿論バニラモンスのねー(百万超え)」
「昨日幽鬼うさぎ買ったばっかだろ。てか、サラッとカードゲーム至上屈指の超高額カードを要求すんな」
 幽鬼うさぎ一枚三千円弱を三枚、更にその他諸々のノーマルカード多数。しめて一万円也。
「じゃあ、MtGのパワー9、アルファ版美品で」
「パジェロ買ってお釣りが来るレベルの値段のカードセットを要求するのやめい!」
 ちなみに、某テレビ番組でパワー9を所望した結果、パジェロ以上に高額だったために9枚すべてというのは却下されたということがあったらしい。
 ましてや、俺は実家からの仕送りで一生懸命頑張っている高校生だ。パジェロ以上の価値のカードをポンッと買えるハズがあるまい。
「それじゃあさーアイス買ってきてーアイスー」
「……はぁ、ガリガリ君な」
「ハーゲンダッツは?」
「駄目だ」
「じゃあ、ガリガリ君とポテチとコーラ買ってきてー」
「はいは……って、ハーゲンダッツと大差無いよな、そこまで付けたら」
「いいじゃん細かいことはさ。二人で分けるんだから、私の分は半分だよ。」
「……そうか、それなら……って、値段はかわらないんじゃねえか」
「チェッ、バレちゃった」
 舌を出してテヘペロと言って可愛さアピールをしても、日頃の行いでのだらしなさが少し緩和されただけで萌えられない。
 最近どころかいつもだらしねえからな、こいつ。
「…………返事を分かった上で言うが……働け」
「私にあった仕事とかがない以上、仕方が」
「もしみつけたら、ニートやめるんだよな?」
「んーどうしよっかなー……やっぱりやーめたっと」
「よし、すぐに呼びましょ陰陽師っと……」
 そう呟き、無言で番号をプッシュし、電話をかけようとすると、目の前に幽梨が立ちふさがり、5人に分身するんじゃないかといういきおいで妨害してきた。
「話せばわかるから! まずは話し合おうよ! ……わ、分かったから! もしそうなったらニートやめるよ!」
「……分かった。ところで幽梨……ちょっと良い高校があるんだが……」
「あー……罠だったのかー」
「魔物娘歓迎、教室には冷暖房完備、空き教室多数……ってこれは関係ないか。自由な校風、就職時には推薦有り」
「…………カードゲーム同好会は?」
「流石にねえだろ」
 公式的には存在しないことになっている。しかし……きっと存在する、カードゲーム同好会も……?
「でも……もしかしたらあるかもな」
「無かったら作るーふたりでー」
 俺の高校だっていう事がやっぱりバレてたか……俺はどっちでもいいけど。
「だろうな。それじゃ、記名とかは後で俺がやっとくから……近くのスーパーに行ってくるから、留守番頼んだぞ」
「分かったわー私に期待してるのねーそうなの」
 聞く必要はないなと思って、ドアを閉めた。

 そして一時間後、うっかりエアコンをかけ忘れたせいで拗ねていた幽梨に、Uジャンとガリガリ君とコロコロアニキと全力土下座でゆるしてもらった。
15/07/17 14:50更新 / ウマノホネ

■作者メッセージ
その心は、どちらもれいのひもの子でしょう。

カードゲームネタが多くなったのはドンサウザンドの責任だ。だから私は謝らない。

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