読切小説
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やさしい先輩
「では、今日はお終い。日直、号令を」
教師に促され日直が号令をかける。
起立、礼。
みんなそろって頭を下げ放課後。

扉を開けて廊下へ出ると、他の教室からもパラパラと生徒が出てくる。
そのうちかなりの人数が玄関へ。彼らはそのまま帰るのだろう。
別に自由時間も訓練しろなどと声高に言うつもりは無いが、彼らは自分の将来をきちんと考えているのだろうか。
この学校を卒業したら教団の兵として、死ぬか定年になるまで魔物どもと命がけの戦いをしなければならないのに。

そんなことを考えていたら、先輩の女生徒がやってきた。
「やっほー、モゲタくん。自主訓練するの? 少しぐらい遊んだっていいと思うんだけどねえ」
この先輩は生徒会の副会長を務めている人だ。気さくな人で……何やらやたらと自分に構ってくる。
生徒会室に連れ込まれて仕事を手伝わされたり、雑談の相手をさせられたり。

訓練時間が削られて迷惑…とも言えない。
何だかんだで先輩に面倒を見てもらったりもするし。



昔のこと。
だいたい、10年ちょっとぐらい前。
私は気まぐれで人間の子供を助けてやった。

事故か何かだろう。私が見た光景は崩れた崖と半分土砂に埋まった男性。
そしてお父さんお父さんと縋りつく男の子。
……残念だけど男の子の父親はもう死んでいる。首があんなに曲がっているし。
それが分かっているのかいないのか、ただ呼び続ける男の子。

ここが親魔物国家ならすぐにでも魔物が来て助けてるんだろうけど、ここは反魔物国家。
もうすぐ夜になるし、そうなれば野獣が来てペロリと平らげてしまうだろう。

……街に届けてやるぐらいのことはするか。
変に怖がらせても面倒なので、人間に変装して男の子の前に現れる。
もう暗くなるわ。私が送ってあげるから街まで行きましょう。
「やだー! お父さんといっしょじゃなきゃいやー!」
まあしょうがないか。こんな小さい子が親と離れて見ず知らずの他人に付いていくなど。

うーん、どうしようか。
あなたのお父さんはもう死にましたとはっきり言うべきだろうか?
あれ? そういえばこの子の母親は?

ねえ、君のお母さんはどうしたの?
「……おはかのなかって、お父さんがいってた」
なるほど。もうすでにお亡くなりだったのか。
こんな小さいのに両親を亡くしただなんて可哀想に……。

同情からか私はその子を抱きしめる。泣き続けたせいかこの子の体は熱い。
「おかあさん……」
こんな風に女性に抱きしめられたことなんてないんだろうな。
そっと頭を撫でてやる。

そんなことをしているうちにすっかり辺りは暗くなった。
一晩中付いているわけにもいかないし、どこかへこの子を連れていかないと。
そう思っていたら崖の上から松明を掲げた人々が現れた。
「うわ、ひどいな。おーい! 無事かー! そこの子! 他の人は――モゲタ? お前モゲタか!?」
モゲタ。それがこの子の名前なのか。知り合いらしい一人の男性が繰り返し呼ぶ。
「モゲタ! いったい何が―――え。もしかして…その、埋まってるのは……」
彼も土砂からのぞく死体に気付いたらしい。
「な、なんだよ!? モゲヌ! どうしておまえがこんなことに!」
男性は縄も着けず、飛び降りるように崖を降りてくる。

男性は死体と友人だったのだろうか? 肩を落として涙をこぼした。
そしてやっとモゲタを抱いていた私に気付いたらしい。
「……ああ、どうもすみませんでした。モゲタを見ていてもらって」
大したことはしていない。あなたはこの子とどういう関係なのか。
「モゲタはわたしの甥です。久しぶりに弟のモゲヌが家へ来ると手紙があっ、て……」
よほど仲の良い兄弟だったのか、他の者も降りてきたのに隠しもせずに泣く。
顔見知りが現れたことで気が抜けたのか、私の胸で泣いていたモゲタは寝ていた。



父が亡くなり、自分は伯父に引き取られた。
独身で子のいなかった伯父は、自分の子供のように育ててくれた。
ある程度大きくなり将来の進路をどうするかという話になったとき、自分は兵士の養成学校へ行きたいと言った。
伯父は実戦経験もある教団の兵士でその危険さを知っていたから、当然反対した。

「ダメだっ! お前が死んだり生涯の傷を負ったりしたら、俺はあの世でモゲヌになんて言えばいいんだ!」
怒鳴られたのは初めてだった。しかしそれでも自分は諦めず説得した。
……もしかすると恩返しのつもりだったのかもしれない。
伯父はもうすぐ定年。後は任された、安心しろと言いたかっただけなのかも。



兵士の養成学校?
私は二人の言い争いをこっそり聞いていた。

どうしてかというと……まあ、たまたまだ。別に私はショタっ気はなかったけど何かの縁。
あの可哀想な子がどうなったかなーと、気になってちょくちょく様子を見にきたりしていた。
人間が育っていくのを見るのは中々面白い。…そろそろ知り合いの良い子に合わせてあげようかな。

私は同じ街にある兵士養成学校へ向かう。
小学や中学にまぎれるのは難しいけど、兵学校へ行くとなれば私も学生として近くで見ることができる。

ちょっと失礼、あなたが校長さん? 私は遠くから来た転校生でございます。
魔法で誤魔化すなんて簡単な事。これで私はモゲタの先輩だ。
おっと、入学試験で彼を落とさないようにも言っておかないと。



春になった。
筆記はともかく実技が心配だった入学試験をなんとか合格。
これで自分も一年生。兵士のタマゴだ。

周りは知らない顔だらけ。まあ、当然だが。
……友人とかちゃんと作れるだろうか。
そんなことを考えていたら。

「君新入生? 合格おめでとー!」
先輩らしき女生徒が後ろから突然声をかけてきた。
振り向いてどうも、ありがとうございますと返事を返そうとして、固まった。

「ん? どうかしたの?」
風に流れる黒い髪。ずいぶん綺麗な先輩だ。
なんでこんな女性が兵学校にいるんだろう?

「ちょっとー。なにか言ってくれないかな」
あ、すみませんでした。この学校の先輩ですよね?
「そうよ。さらに言うと生徒会の副会長でもあるわ」
そんな役職に選ばれるということはずいぶん人望があるんだな。
この外見じゃ仕方ないかもしれないけど。


一週間も経てば新入気分も終わり、本格的に授業が始まる。
内容は普通の一般教養、魔物と戦うための実技、そして神学。
自分は熱心な信者ではないけど、授業で具体的な魔物の被害を教えられ、奴らに怒りを感じた。
伯父はこんな奴らから必死で人々を守っていたのか。
後を継ごうとする者として汚らわしい魔物への敵愾心が生まれた。

ある日、昼食も終わり腹を休めていたころ。
「ねえきみーっ! ちょっとこれ運ぶの手伝ってくれなーい!」
分厚い紙の書類を抱えた先輩。
まあ、後輩として手伝うべきだろう。

荷物を半分預かり生徒会室まで運ぶ。
「いやー、助かったわ。ホントありがと。えーと…名前は」
先輩に名を伝える。出会ったのは初日だが名乗ったのは初めてか。
「ありとがねモゲタくん。あ、そうだ。放課後空いてる?」
放課後はいつも自主訓練なので、空けようと思えばいくらでも空けられる。
「この書類仕事手伝ってもらいたいんだ」
なぜ自分が? 書記や生徒会長がやるべきじゃないのか?
「二人とも幽霊なのよー。だから実質生徒会は私一人で切り盛りしてるの」
生徒会長が幽霊とか、なんなんだこの生徒会。
「ね、お願いっ! お茶ぐらい入れてあげるからさ!」
手を合わせて頼まれた。……断れないなこれは。



いやー、楽しい。学生生活って思ってた以上だわ。
もちろん生徒会長が幽霊なんてことは無いし、私一人で切り盛りもしていない。
モゲタと話すのに邪魔なので出ていってもらったのだ。
今頃は家に持ち帰った仕事をやっているかな。
さーて、先輩としてどんな話を振ってあげようか。




「――なるほど、ご両親が早世して大変だったんだねえ。
 よし、先輩が胸を貸してあげるから泣きなさいっ!」
二人で雑談しながら仕事をしているうちに自分の身の上話になっていた。
そしてそれを聞いた先輩は、どういうわけかいきなり自分の頭を抱きかかえた。

柔らかっ! デカっ! ってか何!? なんで抱きつくの!?
先輩の行動は理解不能。――ああっ、お茶がこぼれるっ!


最近の放課後は毎日のように生徒会室に顔を出している。
もう先輩との雑談が日課になってしまった。……自主訓練は専ら夜やっている。

いつものように仕事が終わりだべっているとき。
「ねえ、モゲタくん。君は将来どうするつもり?」
先輩が唐突な質問をしてきた。どうすると言われても兵士になって戦うに決まっているだろう。

「いや、仕事じゃなくて結婚とかさ。君は一生を戦いに捧げるつもり?」
流石にそんな気はない。
しかし自分が死ぬ可能性や忙しさを考えたら、結婚するというのは難しい。
「でも子供は可愛いと思うよー。それに年とったら親から結婚しろってせっつかれるんじゃないかな」
親……ね。伯父は独身だったから理解を示してくれると思いたい。
……逆に早く結婚して子供を見せろとか言われる可能性もあるが。
「君が女の子と結婚したいっていうなら、知り合いの子を紹介してあげるけど?」
先輩の知り合い。どんな人だろうか。気にはなるが、今は結婚する気はない。
だいたい見合い結婚は好きじゃない。やはり長く付き合って気の知れた相手とするべきだ。

「気の知れた相手ができる見込みは?」
訊かないでください。自分に女っ気はありません。自分と付き合いのある女性は先輩ぐらいです。
「え? それって私と結婚したいってこと?」
違います。……まあ伯父が脅すようになったら、先輩に子供産んでくれと土下座するかもしれませんが。
……ん? 先輩どうしたんですか。
「うわ、こんなストレートに言われるなんて……。モゲタなら……いやでも、良く考えないと…」
なんか先輩は頭を抱え込んでブツブツ呟いている。
ごめんなさい、変なこと口走ってすみませんでした。だから戻ってきてください。


最近先輩が妙に開放的になった。夏服を着たこととは関係ない。
自分の前で胸元を広げて風を入れたり、妙にペタペタしてきたり。
悪い気分ではないが気恥しい。

もう熱いので人が居る時は生徒会室の扉は開けっぱなしだ。
いつものように入り口から入る。
あれ? いない?
「つーかまーえたっ!」
うわっ! 後ろからいきなり先輩に抱きつかれた。
いったい何の真似ですか先輩。
「うふふ、可愛い後輩君にちょっとサービス」
サービスはいいから離してください。
「つれないなあ。君だって女の子にこうされて悪い気分はしないんじゃない?」
否定はしない。でも汗臭いし……。
「臭くなんかないよ。モゲタくんの匂い、好きだもの」
そう言って汗ばんだ首筋をぺろりと舐める先輩。
ぞくっという感覚に身が震えた。気持ちいい…。
いやそうじゃなくて、汚いですよ先輩。それに胸が背中に当たって……。
「当ててんのよ」
何…だと…?

どうしたのだろうか先輩は。そう思いつつも具体的な行動が起こせない。
先輩に抱きつかれたまま固まっている自分。

そこに。

「あ、副会長さん。予算の書類持ってきましたよ」
見ず知らずの男子生徒が来てくれた。
先輩は腕を解いて、生徒から書類を受け取る。
…内心ほっとする。今の展開は色々とヤバかった。

自分の調子もおかしい。体調が悪いと言って今日は帰ろう。



チッと心の中で舌打ちをする。せっかくモゲタに張り付けたのに邪魔をして。
まあいいや、これからもチャンスはある。

最近の私はどこかおかしい。モゲタが可愛くて可愛くてしょうがないのだ。
もしかして魔物の本能が選んじゃったのかな?
そう思うけどスライムのように本能のまま流されるつもりはない。
それにまだ本当の姿を見せてないし。

まずは人間に変装したまま、仲良くなり落とすのだ。
そして私なしではいられなくなったところで、正体を告白。
モゲタは悩むかもしれないけど、私さえいれば良いと思い受け入れるだろう。

そんな感じでモゲルを落とすための案を考えていた時。
姉から連絡が入った。はい、もしもし久しぶり。どうしたの姉さん。

え!? ちょっ、止めて! この国は私が落とすから!
邪魔しないで! 私の計画がー!

私の姉…何人もいるが、その中でも過激派の姉が手伝ってやろうと言い余計な事をしてくれた。
なんでもダークマターを一体送ったそうだ。
近づく魔力の気配。ああ、まったくなんてことを。



丁度玄関から出ようとした時。
突然ゾクッとした感覚を得た。今のは魔力の感覚だろうか?
しかし魔法に疎い自分でも感じとるぐらいの力というと一体……。
そう思っていたら幾人かの女生徒が突然魔物になり出した。

なんだ? どういうことだ!?
校庭にいる女性たちは角や翼が生えはじめ、嫌がる男子生徒を無理矢理押し倒す。
それ以外の女性も苦しそうに地に伏せている。魔物たちが侵攻してきたというのか?

これでも自分は兵士のタマゴだ。魔物を倒し仲間を守らなければ。
……そう思ったが足が動かない。
初めて目にした魔物を前に切りかかるなどとても……そうだ、剣を持ってない!
まず武器を手にしなければ。そう考え校舎の中へ入る。

……冷静な自分が言う。
武器がないから戦えない? 良かったじゃないか、逃げる口実ができて。

武器庫へ向かう……前に鍵を持ってこないと!
職員室へ向かう。
廊下を走る傍らそこかしこの教室から、男の悲鳴と魔物の嬌声が聞こえてくる。

職員室の前。この扉の中からも声が聞こえる。
どうする、入ったら自分も……!

そのときピンと閃いた。

そうだ! 先輩!
たしか先輩は魔法をつかえたはずだ。彼女なら武器が無くても…!

……冷静な自分が言う。
魔法が使えるから先輩に手伝ってもらう?
バカをいえ。先輩に代わりに戦ってもらおうってんだろ?

階段を駆け上り生徒会室の開いた扉から中へ飛び込む。
先輩! 魔物たちが!

窓から外を見下ろしていた先輩が振り向く。
「来たんだね、モゲタくん……」
ほっ。良かった、先輩は無事だ。
「ごめん、モゲタくん。私は止められなかった」
止められなかった? この状況のことか?
そんなの先輩の責任じゃないだろ!
「こうなったらしょうがない。君に見せようと思う」
見せる? 何かはわからないけどそんなの後で!
「これは現実だから、ちゃんと受け止めてね。夢だと思って逃避しないで。お願い」
……先輩は自分に何を見せるというのか。
今の状況と何か関係があるのか?

窓際に立っている先輩。黒い髪が夕日にきらめいている。
そして先輩の髪がだんだん赤っぽく……。

違う。赤いのは夕日の色に染まっているからだ。良く見ればその色は白。
本当に赤くなったのは瞳。耳がずいぶん尖って―――。

ばさり、と羽ばたく音が聞こえた。窓からの光が翼に遮られる。
制服も消えて、身につけているのは魔物が着ているような露出度の高い服。
教科書で見たことがあるその姿はサキュバス。

……嘘、だろ。
「これは現実。ごめんね、君に隠していて」
サキュバスが申し訳なさそうに目を伏せる。
……嘘だ。おい! 先輩をどこへやった!
「私がその先輩よ。見ていたでしょ」
黙れ。先輩は人間だ。お前のような魔物じゃない!
「モゲタくん……」
我慢できない。こいつを締めあげて先輩の居場所を吐かせてやる。

……冷静な自分が言う。
おいヤメロ馬鹿。さっさと逃げろ。丸腰のお前に何ができる。
先輩は諦めろ。自分の命とどっちが大事だ。

丸腰でも腕はある。グッと拳を握る。狭い室内を一気に接近しその顔を――殴るっ!
「ぐっ…!」
完全に無防備だったサキュバスは、あっさりと床に投げ出される。
正直胸が熱くなった。汚らわしい魔物を自分の手で床にはいつくばらせたことに。
倒れたサキュバスにさらに近づく。
さあ、答えろ。先輩はどこだ。言わないならもっと殴るぞ。

サキュバスは殴られた頬を手で押さえ身を起こした。
そして赤い瞳で自分を睨む。

「私を…殴ったわね………!」

その瞬間高揚感はすべて吹き飛んだ。
怖い。なんでこんな奴に挑もうとしたんだ自分は。

まだ座ったままのサキュバスから逃げ出す。
先輩のことなどもう頭の中に無い。早くこの部屋から出ないと……!

振り向いたら閉まった扉が目に入る。
え? なんで!? 来た時は開いてたのに! 
くそっ! 時間をロス―――開かない!?
鍵などかかっていないはずの扉。しかし開こうとしてもびくともしない。
どうしたんだよ! 開いてくれ! 全力で力を込める。
しかしガチャガチャと扉の揺れる音しかしない。

焦る自分に背後から魔物の声がかかる。
「女を殴るなんて男の風上にも置けないわね」
トンと自分の肩に触れる。その瞬間ヒザが落ちた。
なんだ!? 体が熱い? そして……力が入らないっ!

サキュバスは足で自分を仰向けに転がした。そして服の上から勃起した股間を見ている。
魔物はうなずくと服を消し去って裸になった。

……認めたくないが美しい。クラスの女とは格が違う。
魔物なんて不快なだけなのに目を離せない。なんで立つんだよ。こいつは人間じゃない。
汚らわしい魔物なんだぞ!
「たっぷり後悔しなさい。あなたはこれから、汚らわしい魔物とまぐわうんだから」



私は姉妹の中でも穏健な方だと思う。
しかし一度スイッチが入ってしまうと気がすむまで止められない。

傷も痛みも無いが顔を殴られたという屈辱に、
目の前の男をボロボロに凌辱してやらねば気がすまなくなった。

ベルトを解いて下着ごとズボンを脱がす。
あーら、この匂い童貞ね。
「ど……っ!」
モゲタの顔が赤くなった。なにいっちょ前に恥ずかしがってるのよ。

ちんぽを掴んで私の穴を近づける。
さあ、これからあなたのちんぽは汚らわしい魔物のまんこに入るわよ。
どう、許して欲しい?
「ゆ……ゆるし、て…」
バーカ。―――許すわけないでしょっ!

モゲタのちんぽを根元まで一気に飲みこむ。
あはっ! 童貞のくせに中々いいちんぽじゃない! 
どう!? 魔物に犯されている気分はっ!

「ぐぅっ……やめ……っ」
なにそれ? 殴って見栄を切っといて止めてください? 甘いのよっ!
膣肉に意識を向け、緩急をつけて締めつける。
童貞ならとっくに射精しているだろう。
しかしそんなことは許さない。

「あ…あ。なん、だよ……これ…っ!」
懲罰用の魔法で射精寸前で精液が止まるようにした。
いまのモゲタは出したくても出せない苦しみを味わっているだろう。
「せん、ぱい…たすけ…て」
女に助けを求めて情けないと思わないのかこの男は。

どうしたのかしらモゲタくん。私に何か用かしら。
「黙れ…っ! キサマは先輩じゃないっ! どこへやったっ…!」
へえ、先輩が絡むと少しは根性出すのね。でも現実を見ることに向けた方がいいわよ。
目の前で変装を解いた姿を見たでしょう?
「あれは嘘だっ…! お前が先輩に化けて何かしようとしたんだろう!」
だから私が先輩だって……いえ、そうね。私は先輩じゃないわ。
――だって先輩はあなたの幻想! 頭の中にしか居ないんだからっ! あはははっ!
何処にも居ない先輩をただ求める無様な姿。それを笑い飛ばしてやる。


「ぐっ…がが…っ…!」
嬲るように腰を動かしていたらモゲタの様子が変わってきた。
ねえ、あなたいったい何度射精しようとしたのかしら?
「しる、かっ…!」
ふーん、私の見立てだともう七回はイったんじゃないかしらね。
分かる? あなたもう七回も魔物の汚らわしいまんこに種を出そうとしたのよ?
ねえ、教団兵士のタマゴさん。
こんなサキュバス相手にそんなに出そうとしちゃってどんな気持ち? ねえどんな気持ち?

「う、ぅ……っ」
モゲタはついに涙をこぼした。その羞恥心をさらに煽ってやる。
うわ、なっさけない! 大の男が何もできずに犯されて泣くなんて!
もう小学校まで戻ったら? そして友達に言ってごらんなさいよ。
ボクは魔物にイジメられたんだーってさ!

モゲタの顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃだ。鏡を浮かべてそれを見せてやる。
あ、目を閉じた。しょうがないわね、私が開けてあげるわよ。
指でモゲタの両まぶたを開く。そして今の姿を見せつける。

「あ、あっ、あぁぁぁぁ!」
なに? 叫んで自分を誤魔化そうっての? そんなの許可しないわよ。
ちゃんと見なさいよ、魔物に犯されてる惨めな自分の姿をさっ!

喚くモゲタの姿を見て私も少しは鬱憤が晴れてきた。もうそろそろ私もイって終わりにするか。
さあモゲタ、あなたの射精を止めてる魔法を解除してあげるわ。
七回分の射精の快感が一気に襲ってくるから覚悟しなさい。
もちろん外になんか出させてあげないわ。私のまんこに出すのよ。
わかる? ……あなたは魔物を孕ませるのよっ!

「え……え……?」
よく理解していない顔のモゲタ。しかし止めてやる気は無い。
じゃ、解除。
―――うわ、すごい勢いっ! これ子宮口突き抜けて奥までかかってるっ!?

ねえ、気持ちいい!? 精液を魔物の子宮に注ぎ込むの気持ち良いかしらっ!
こんなに出しちゃったら絶対妊娠するわねっ! あなたはパパになるのよ! 魔物のねっ!
産まれたら伯父さんに見せてあげなさいよ! これが自分の子供ですってさぁ!

モゲタはもうビクンビクンと震えるだけで言葉さえ発しない。


ふう………。
モゲタに仕返しをして私の腹も収まった。
まったく、私に手を上げたりするから、こんなことになるのよ。
ただ―――。

「せんぱい…どこ? せんぱぁい……」
虚ろな目で先輩先輩と繰り返すモゲタ。

壊れちゃった……のかな? どうしよう。



「はいはい、先輩はここにいますよ」
先輩の声が聞こえた。なんだ、目の前にいたのか。
「こわーい夢を見たんだねモゲタくん。よしよし、先輩が慰めてあげよう」
先輩が抱きしめて頭に手を載せる。あれ? なんか柔らかくてあたたかい…。
良く見たら先輩は裸だった。え? なんで先輩が裸に!?
「あん、暴れないで。ね、裸の私は嫌なの?」
別に嫌ではない。でも恋人同士でもない男女が裸で抱き合うなんて…。
「じゃあ恋人になればいいのね。モゲタくん、私は君が好きです。はい、お返事は?」
ずいぶん軽い口調の告白だ。それに対する自分の返答は……。
自分の気持ちは……好き、なんだろうな。
「んふ、嬉しい。じゃあ私たちは今から恋人同士ね。んー」
先輩にチュッとキスをされた。なんだろう、それだけで力がわいてきた。

「恋人としてのお願い、いいかな」
先輩のお願い。なんだろう?
「私のことは名前で呼んで。先輩じゃなくってさ」
う……そう言われても自分はずっと先輩を先輩と呼んできた。
今すぐ変えるというのも……。
「ぶー。しょうがない、それは後々でいいや。じゃあもう一つのお願い」
まだあったのか。今度はなに?
「セックスしよ。恋人同士なんだから良いよね?」
え、でも学校だし。だいたい人が――。
「この部屋には誰も居ないよ。そして来客もほとんどない。
 エッチぃことしてもバレないわよ」
……そうか。じゃあいいのかな。
「うん、そうそう。じゃあ君も服を脱いで」
改めて自分の体を見直したら下半身だけ露出していた。
うわ、なんて姿で告白したんだ自分は。
「……ところで私の姿どう思う?」
どこか不安そうに先輩が訊く。どう、と言われても…あれ?
髪が白い? 目も赤いし…何かついてる。でも顔も声も間違いなく先輩だ
……うん、綺麗だと思いますよ先輩。なんか前より綺麗になった気がします。
「そう言ってくれるの? うれしいっ!」
言うなりまた抱きついてくる先輩。うわ、生で胸が当たってますよ!

自分の制服を床に敷き、その上に先輩が横たわる。ああ、美しい。
正直自分が手を出すのがためらわれる。
「いいんだよ、私が君としたいんだから。ね、来て…」
緊張する。果たして童貞の自分で先輩を満足させられるのだろうか?
「童貞…ね。私は気にしないよ。だから早く……」
失礼しますと、声をかけて先輩にのしかかる。
そして穴へ狙いを定めて、入れる。
「あっ! モゲタくんのちんぽっ…入ってるよっ…!」
先輩の中。それは当然今までした自慰なんかよりずっと良かった。
変な感じだが、ただ挿入するだけで、自慰による射精以上の快感というか、そんな感じ。
この中で射精したら自分はどうなってしまうのだろう?

「ねえ、動いてくれないの…?」
そうだ、動かないと先輩は気持ち良くならない。
奥まで進んで……何かにぶつかった。
「そこは子宮口だよ…。入れようと思えば入るけど、どうする?」
……入りたい。もっと深くまで。先輩と一つになりたい。
「いいわよ、いらっしゃい……」
モノの先で何かが蠢く。あ、開いた。
「んっ、入ってくる……」
先輩は足で自分の腰にしがみ付いてきた。
ちょっと動き辛いんじゃ…。
「大丈夫よ。動いてみて」
お言葉通り腰を少し引く。うぅっ、ちんぽが先輩の中とすれてっ…!
「そんな腰を引かなくていいよ。子宮の中でシゴいていいから」
本当に大丈夫なのだろうか。自分と先輩両方の意味で。

先輩の子宮の中で短く腰を動かす。
「んぁっ! 良いよっ! モゲタくんのちんぽっ! もっとしてっ…!」
先輩がもっともっととねだってくる。しかし自分の方もかなりキツイ。
先輩の大事なところに侵入しているという興奮もあり、限界が近い。
中で出してしまったら……。
「モゲタくん、中に出しちゃっていいからね」
え? でも、子供ができたら……。
「そんなの気にしなくていいよ。君に一番気持ち良くなって欲しいしっ…!」
先輩はそれでいいんですか?
「構わないよっ…! 先輩として可愛い後輩の頼みぐらい聞いてあげないとねっ!」
頼み? 何か頼んだか?
「以前私に土下座して子供産んでもらうって言ったでしょ?
 だから君の子供産んであげるよっ! それとも君は他の女に産ませたいの?」
そんなわけはない。子供を作るとしたらその相手は先輩がいい。
「ならオッケー! 子宮の中に直接だしてね!」
もういいや。自分は先輩が好き。だったらその子供も愛せるだろう。
「あ、だっ、出す!? 出してっ! 君の精液私の奥にちょうだいっ!」
先輩が腰を絡めた足をぎゅっと締めた瞬間射精した。

――目の前が白くなった。
「あはっ! あんなに出したのにすごいねっ! 子宮に残ってた精液と混ざってるよ!」
先輩が何か言っているようだが、聞き取れない。
「オシオキと今のどっちでデキるかなっ!?  あ、でも両方で双子っていうのもいいかも!」
体を支えられない。先輩を下敷きにして倒れ込む。
「おっと。モゲタくーん、意識あるー? うーん、最初からこれはきつかったかな。
 まあいいや。だんだん慣らしていこっと! ふふっ……」
繋がったまま先輩に抱きしめられる。
気絶する前に思ったのは、なんか懐かしいな……ということだった」



この国が魔界と化した日からしばらく経った。
親魔物国家と化したこの国は、新しい指導者として魔王の娘を求めて来たが私は難色を示した。
……いずれ落とすつもりだったけど、あんな暴発的にされたんじゃ心の準備がねぇ。
いろいろ揉めたあげく指導者は別の魔物になって、私は相談役という形になった。

まあ相談役といっても今のところ特に問題無く回っているので、モゲタと自由に過ごしている。


今のモゲタは私が魔物だということをちゃんと理解した上で愛してくれている。
凌辱したときは壊れたかと思ったが、一時的な物だったらしく気絶した後目が覚めたら元に戻っていた。
……目が覚めた時は大変だったけど、結局私に溺れさせて事なきを得た。

モゲタと私の寝室。今日もベッドの上で私たちはまぐわう。
腹の膨れた私を背面座位で犯すモゲタ。
どうも腹の中にいるのは双子らしく、今の私の腹は臨月ということを差し引いても異様に膨れているのだ。
他の体位だと腹が邪魔になるので最近のセックスはいつもこの形。

「先輩、どうですかっ……!」
彼の腰の動きに合わせて私の胸が揺れる。その胸からは母乳が零れシーツを濡らす。
私の体はもう完璧に母親だ。

…しかし先輩と呼ぶのはいいかげんやめて欲しい。教団の兵士養成学校はとっくに無くなったんだから。
「いやでも、先輩は先輩で……」
うーむ、これはまだ彼を後輩扱いしてしまう私も悪いのかな?
まあいいや、今はまぐわいを楽しもう。

モゲタが腰を突く。私の子宮は簡単に彼のちんぽを受け入れ胎児と対面させる。
すると彼のちんぽをしゃぶろうとするのか子供二人が腹の中で動く。
胎児の手足で子宮の中がかき回される快感に、私の膣は彼のちんぽをより強く締めつける。
親子4人の見事なサイクルだ。

「先輩、飲ませてっ……!」
モゲタが私の胸を握りしめる。私の乳首から勢いよく白い液体が飛ぶ。
そして手のひらに微かに残った母乳を彼が舐め取る。
ベッドにほとんど落ちて無駄になってるけど、私は気にしない。

「そろそろ限界です、先輩っ……!」
あ、イクのね。じゃあお願いモゲタくん。先輩の赤ちゃん二人に君の精液をたっぷり飲ませてあげてね。

――あっ! 来てるっ! 君の精液が赤ちゃんにかかってるよっ!
彼の精液が私の羊水と混じり合い胎児の肌にベトッと張り付く。
ふふ、綺麗なお肌になりそうね。私の赤ちゃん。

「せん、ぱい……」
モゲタは虚脱状態で私にしがみ付いてる。まるで大きい赤ん坊だ。
でも随分たくましくなったわね。以前なら一度射精しただけで気絶していたのに。
彼と繋がったまま、私も余韻に浸る。

…あら?

「……ん、どうしたんですか?」
えと、どうも破水したみたい。
モゲタと繋がっている場所から、色の違う液体が零れている。

「え!? ちょっと待ってください!」
出産は止められないわよ。ちょっと離れてて。
モゲタにちんぽを抜かせて、仰向けに寝る。
……腹が邪魔で彼の姿が見えないのが残念。

じゃあモゲタくん、約束通り先輩が君の子供を産んであげよう!
ちゃーんと見ててね。
その言葉が引き金になったのか私の子宮口が広がり始めた。


あっ、おぁっ! こっ、これすごいっ! 
母様は出産はとても気持ち良いと言っていたが、私の想像以上だった。
男性器とは比べ物にならない大きさの胎児が、ズルズルと膣を進んでいく。
はち切れそうに広がった膣と胎児の肌が擦れ合い、私の生殖器を刺激する。
母は何度もこれを味わったというのか。

も、モゲタくぅんっ! 気持ち良いよぉっ! 私どうにかなっちゃいそぅっ!
「え、えと、先輩っ! 手を握りましょうかっ!?」
別に苦しいわけではないのだが、不安になって頼んでしまう。
快楽の渦の中でも彼の温かい手はしっかり感じとれた。

ひっ…ひっ…ひぃっ!
胎児は私の中を進み、ついに頭を出したようだ。入口が広がった感覚がある。
目には見えないがもうすぐだ。もうすぐ私は女としての本懐を果たせる。

あ…あっ、出るっ! 産まれちゃうっ!
ずるっという感触とともに、股の間を何かが滑り落ちた。
私はビクンと体を震えさせる。

はぁ…はぁ…やっと出た……。
ホッとする私。

が。

あぁっ…! また…!
そうだ。私の中にはもう一人いたのだ。
今は広がっているせいか、一人目と比べると快楽は弱く耐えられそうだ。
モゲタくん、もう大丈夫だよ。だから今度は下、産むところを見て!

再び胎児が産道を進む感覚。今度は私も落ち着いて産める。
ああ、いま赤ちゃんが私の中を出ようとしているんだな。
嬉しいけどちょっと寂しいな。
……まんこが緩くならないかちょっと心配だ。
色々な思いが頭の中を巡る。
あ、そろそろ出るかな。

ん……っ! モゲタくんちゃんと見てるっ…!?
「は、はい。見ています……」
モゲタが見ている。私が子供を産むところを。そのことに幸福感を感じる。
も、もうすぐ…! もうすぐ全部出るよっ! 
まんこから君の子供出しちゃうのっ! 私が君の子供産むところ見てぇぇっっ!

子宮に残っていた羊水が全て出たのか、
二人目が産まれたときは液体がシーツに落ちる音が大きかった。

ん…と、まだ……。
腹がへこんでモゲタの姿が見えるようになった。
そして私の股間からは肉の管が出ている。

……モゲタくん、引っ張ってくれないこれ。全力で。
「え、でも乱暴な……」
赤ちゃんは外に出たからちょっとぐらい乱暴でもいいの。だからして。
彼はためらいながらも頷くと管を握って一気に引く。
するとベリッという音がして私の穴から肉の袋が出た。
ふう、これで腹の中身は全部出たかな。

モゲタくん、赤ちゃん抱かせてよ。
「あ、はい…」
彼が抱き上げていた二人のうち一人を渡してくれた。
腕に感じる重み、肌に触れる温かさ。母親になった実感がわいてくる。

もう一人を抱いている彼も、父親の実感を感じているのかな?




自分の子供が産まれて、先輩が授乳するようになった。
父として自分もその姿を見ていると胸に温かさがこみ上げる。

……ただそれが終わると、別のものがこみ上げてくるのだが。

ゆりかごに寝かせた二人の子供の横。自分は露出した先輩の胸をしゃぶっている。
口の中にあふれる先輩の母乳。とても甘く感じる。いつまでも吸っていたい。

「今更だけど、君ってマザコンだったのねー」
うっ。自分でも薄々気付いているけど面と向かって言われるのはキツイ。
「そんなに一生懸命吸っちゃって、三人目の赤ちゃんが出来たみたいだよ」
赤ん坊扱いで顔が赤くなった。しかし先輩はやれやれといった感じで微笑む。
「まあ君はお母さんに甘えた事なんてほとんど無いものね。
 代わりって言っちゃなんだけど、先輩に甘えちゃいなさーい! うふふっ…」
先輩が頭を抱きしめた。自分の顔が胸に埋もれる。先輩の体温といい香り。


―――ああ、今の自分は幸せだ。
11/11/12 07:55更新 / 古い目覚まし

■作者メッセージ
母性的な人を書こうとしたらただ甘やかすだけの人になってしまいました。




ここまで読んでくださってありがとうございました。

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