連載小説
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前編 直視できない現実という名の真実
【世の中には、物事を完璧にこなせる超人みたいな存在が確かにいる】

学生時代、世の中の人間はみんな平等だと思っていた俺…
だが、世の中は決してそんなことはないと…俺はこの会社にきて強く痛感した

おっとっ…いきなりこんな話をされても困るよなぁ…
悪い悪い、俺の名前は世中 明(よなか あきら)っていうんだ
よくある平凡な人生を送ってきた…といえば、聞こえはいいんだが…
世の中、平凡な出来事以外の出来事が一回は起こったりするものなんだ

俺の経験した平凡じゃない出来事…それは、首相が代わって…世の中に魔物娘が現れたことだ!
そう…新しい首相がいきなり…魔物娘という子たちを新しく国民として迎え入れるって言ったんだよ!!
女性の首相が初めてだったからって話題がTVを支配するんだろうなって思っていたのに…世の中のマスコミはその話題に食いついたんだよ

いや、気持ちはわかるよ?
そりゃあいきなり、魔物娘なんて聞き覚えのない人たちを国民として迎え入れるって言われても、正直困るだろう?
当時は、彼女たちのあの人間とは明らかに違う見た目…
その見た目から、ほかの人間は彼女たちと距離をとって過ごしていたんだよ

人間という生き物は、昔から今まで…自分と違う存在ってものを非常に警戒する生き物なんだ!!
だから、世の中がそんな態度をとったとしても、別に変なことじゃなかった

もちろん…俺だって距離を置いていたんだ…が

俺は時代の流れというものと、人間の適応力に正直驚くことになったんだ!
いや…まぁ、俺も自然となれていった見たいな感じなんだけど…

彼女たちは普通にそんな距離を置かれても、なんとも思わず…
さらには俺たちと仲良くしようと一生懸命に頑張ったんだよ
世間も、それを認め…今現在、魔物娘が社会にいるのは当たり前のようになっているんだ

今では、魔物娘と人間のハーフ?的な人がいたって、まったく不思議じゃない
……強いてあげるなら、生まれてくる子供が圧倒的に女の子が増えた…
そのため、若干最近男の子の出生率がどうのこうのってTVでよく見るんだ

っと、今の世の中の説明はこれくらいにして…
どうして俺が、上で言ったようなセリフを言ったのか…
それをみんなに聞いてほしいんだ

いま俺は、マモネットと呼ばれる会社に勤務しているんだ
昔はインターネット関連の会社だったんだが…
どこをどう転んだのか、今現在、魔物用の婚活サービスを提供する会社になっているんだ

このサービスを始めるようになってから早くも2年…
あと少しで3年がたとうとしているってところなのに…
俺はいまだに、今やっているこの仕事に慣れずにいたんだ


どうして…どうしてインターネットの仕事をしているはずの俺が…
こんな大量の書類を持って、婚活の手伝いをしなければいけないんだよ!
なぁ…?なんでだ?どうしてだ!?

明「………どうして俺が、こんな仕事をやらなきゃいけないんだ…話が違うぞ」
?「明さん、余計なことをつぶやく暇があるなら…」
明「へっ…?あっ、いや…なんでもありません…すみません」

俺にいきなり話しかけてきた女性…
それはこの会社で一番功績をあげている形部狸の見切(みきり)さんだ
……正直、彼女がこの会社の中で、社長の次に偉いといっても過言ではない
役職上、課長あたりのほうが彼女より上…
俺だってこの会社にはもう5年勤めているから、入って1年の彼女にどうこう言われる筋合いは本当はないんだ

しかし…彼女は形部狸…彼女の種族には商才があるっていう話は本当だった
彼女はこの会社に入社して1年で俺の30倍の売り上げを記録…
今では会社の総資産の6割は彼女が稼ぐといっても過言ではない
だから、仕事の種類が代わって2年間で成功した依頼は1件…
正直…ひどすぎる結果だ

俺が残っていられるのは、おそらく…
この会社が方針を変える前、結構貢献していたからだと思うんだ…
あのころは、俺はこの仕事が天職だって思っていたんだけど…
本当に、世の中ってのはわからないものだよなぁ…

……とにかく、この会社の中では俺はなかなかに地位が低いのはわかるけどね
彼女のようなエリートに指示されたら、断ることなんてできないんだもんなぁ

明「えっと、今日のお客さんは……アントアラクネの女性か…」

一人、そう呟きながら数十ページにもわたる書類に目を通す俺…
こんな書類、いくらあったって正直、無駄だってのに…
だってさ?書類に書いている情報なんて…何の役にも立たないんだもんよ!!

……っと、ぼやいていても仕方ないよなぁ…
仕事仕事っと…

そういいながら、お客さんが待っている部屋に入る俺…
俺の目の前にいる女性は…なんていうか…
今どきのギャル…?って感じの下半身が蜘蛛のような女性だった
ちなみに、彼女の種族とジャイアントアントはものすごく酷似しているらしい…
えっ?それは常識だろうって?
……ご、ごめん

と、とにかくだ!!
俺は彼女が求める相手を聞き、それを見つけるのが仕事なんだ…
やってやる…やってやるぞ!!

明「こんにちは、えっと…佐田原 由宇(さだはら ゆう)さんですね?」
由宇「ん〜?あぁ、あんたが紹介してくれるわけー?大丈夫なのー?」
明「えっと、大丈夫とは…?どういう意味です?」
由宇「だって、あんた見るからに恋愛経験なさそうじゃん?なよなよしてるし」


な、なよなよしてるって…失礼だよな…
そりゃあ、俺は少なくともかっこいいとかたよれるとか…
そんな感じの見た目じゃないし、性格もそれとは真逆というのは認めようじゃないか
だけど、それを出会いがしらに言うか?普通言わないと思うよ俺は…

明「と、とにかくですね、あなたの理想の相手の条件を教えてください!」
由宇「えっとねー…イケメンで、チョー収入よくてー…あたしが家事なんか一切しなくても、怒らずに代わりに全部やってくれる人かなぁー…でもでも、夜は頼もしく3Rは余裕って感じで?OK?」
明「……えっと、か、家事をする気はないんですか?」
由宇「ないわね…一切、微塵も」
明「……高収入ってのは、別に今の世の中なら、二人で働けばそれなりに…」
由宇「あたしー…働くつもりないんだよねぇー…」

……なんだ?この典型的なダメ人間…ならぬダメ魔物娘は!?
そんな条件でOKするやつなんて…いるわけないだろ!!
婚活活動をしようとするならば、せめて家事ぐらいは自分でできないとダメだろ!
よしっ…ここははっきりと言ってあげないとな…

明「あのぉっ…そんな無茶な条件…相手がいるはず…」
由宇「えっ?何々?文句あるわけ?うわぁー…信じられなーい…」
明「えっと、そういうわけではないんですけれど…自分で少しは動かないと…」
由宇「ここ…どんな条件だろうと、探してくれるんじゃないの?探さないって…それ、広告で嘘ついてるじゃない!!ちょっとあんた…このあたしをなめてるわけ?」
明「そ、そういうわけでは…」
由宇「ちょっと…責任者呼びなさいよ!!イライラしてきた…文句いってやる!」

なっ!?そ、そんなぁっ!?
どうしてこんなことになったんだ!?おれ、何もひどいことなんて言ってないのにどうして!?
俺はただ、正論を言っただけなのに…
どうしてこんなことになっているんだ!?

だが、俺の困惑も裏腹に、目の前のアントアラクネのギャルはイライラを蓄積していって、今にも爆発しそうになっている…

と、その時だった…

ガチャッ……

見切「お客様、お待たせいたしました…条件に見合う男性はこのファイルに記載されておりますので、ご覧ください、本当に迷惑をおかけしてしまったようで…申し訳ありません」
由宇「……別に、探してくれていたならいいわよ…でも、このなよなよ男…しっかりと躾けたほうがいいわよ?調子に乗ってるみたいだから」
見切「わかりました、よーくこちらのほうで注意しておきますので…」


正直、見切さんが入ってきて俺が一番初めに感じた感情は安心感だった…
情けないことにだ、俺は彼女が入ってきたのを見たとたんにもう大丈夫だって思ったんだよ
思えば、今では毎日彼女にフォローしてもらっている気がする…
本当に、情けない話だよ…俺…



そして、お客さんは満足する相手を見つけ帰っていき…
俺はオフィスで見切さんに説教をされているわけだな…

見切「明さん…私、前にあなたに教えなかったですか?探しもしていないのに、話を断ってはいけないと…まったく…魔物とはいえ、相手は女性なのですよ?もうちょっとデリカシーというものを…」
明「はぁ…おっしゃるとおりです…」
見切「そもそもですね…明さんは私よりも先輩なんですから…先輩の威厳というものを見せてくれてもいいんじゃないですか?」
明「はい…その通りです…」
見切「大体!!なんですかその態度は!本当にすまないと思っているんですか!?まったく…」
明「はい、その通りです…」
見切「実は、はいその通りですって言ってこの場を逃れようとしていませんか?」
明「はい、その通りで……はっ!?い、いいえっ…そのようなことは…」


……しまった、昔からの悪い癖が…
俺、怒られたら…はい、その通りですって言って怒られるのが終わるまで頭を下げる癖があるんだよ
このおかげで、成功したこともあれば…
今回のような出来事を招いたこともあるんだよなぁ
みんなは、なんも考えなしにYESとだけ答えてはいけないぜ?


見切「……ふぅっ、もういいです…明日は私の手を煩わせないようにお願いしますよ?」
明「は、はぁ…努力します」


俺は見切さんにそういって頭を下げると、自分のデスクに逃げるように避難したんだ
気が付けば、もう退社時間も迫っている
一日が短く…しかし重く感じるよなぁ…

なんて、俺はそう思いながら自分のカバンを持ち、タイムカードを押すとマイホームに帰ることにしたんだ…
……家に帰っても、俺を温かく迎え入れてくれる人もいない…
そう思うと、悲しい気持ちになってくるね



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私は、明さんがタイムカードを押すのを横目でちらりと確認すると明さんのデスクにそっと忍び寄った
周りは誰も、私の行動など気にもかけず、黙々と仕事をしている
この会社に入ってからもうすぐ2年…私は、いまだに自分の気持ちを明さんに伝えられずにいた

私の名前は見切 未来(みきり みらい)見ての通り、形部狸だ
この会社に入社する前…私はとある喫茶店でコーヒーをお客さんに運ぶ仕事をやっていた
明さんは覚えていないかもしれないが…数年前はよく、パソコンを持って店に足を運んでいてくれていたんだ

あの時の私は、今とは違い…髪の毛はぼさっとしていて、メガネをつけており、眼の下には睡眠不足からできるくまができていた
当時は、『あのウエイトレスはなんか怖いね…』とよく言われていたほどだ
しかし…そんな私だけを指名してくれたお客さんが明さん…彼だったんだ

彼は本当にいい人だった…
私が彼に淡い恋心を抱くのに、さほど時間はかからなかったよ
だけど…彼は2年前にぱったりとお店に来なくなったんだ

当時は、どうしてか本当に悩んだよ
何か失礼なことをしたのか、いろいろなことを考え…
彼に好かれようといろいろな努力をした
眼の下のくまも睡眠をしっかりとることで解消したし、めがねだってコンタクトにしたんだ
髪の毛だって気を使って…前より数倍きれいになった…
それで、彼のいる会社に入ったのに…彼は私のことを覚えていなかった

その時は、憎しみにもよく似た感情を感じたなぁ…
でも、私はその時…あることに気が付いた
彼が私を覚えていないなら…これから覚えてもらえばいい…
そう…私の心の中に真っ黒な靄のようなものがたちこめたんだ
私が明さんを…伴侶にする…
明さんは私のものだ…そう…そうなんだ…


見切「ふふっ…明さんの使ったスプーン…コレクションが増える…」

私は、それをハンカチでそっと包むとカバンの奥にしまい、いつもの日課を行うために会社を後にした
向かうは彼の住んでいるアパートの大家さんの部屋…今では私のマイホーム…
私たち形部狸の話術を巧みに使えば…巨額の大金をつかませ大家を追い出すのは簡単なことだった
このアパートの最上階…スイートルームには私と明さんの愛の巣を作り上げている…仕込みは完璧なはず…
あとは、彼の誕生日に彼を破産させればいい…そうすれば…

見切「ふっ…ふふふふふっ…待っててね…愛しのダーリン…」

私はそう呟きながら、明さんの部屋に仕込んでいる監視カメラのモニターのスクリーンをすべてONにした
明さんの部屋には、寝室からシャワールームまで…すべての個所にわからないように監視カメラを仕掛けている
これで…私は彼の行動をすべて把握できる…ふふっ…

会社では冷たく当たってしまうけど…それは仕方ないことなんだよ?
だって、そうしないと会社に居づらくなってしまうから…
明さんと会えなくなってしまうでしょ?

あっ…ダーリンったら、もうお風呂?ふふっ…
うーん…今日はいつもよりも1時間早いんだ…おかずにはちょっと早いけど…
でも、仕方ない…これはいつもしている私の日課…誰にも邪魔できない時間

見切「はぁっ…はぁっ…想像しただけで、よだれが止まらないわ…いろいろな意味で…ね」


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明「ふぅっ…このお風呂に一人でのんびりとしているこの時間…最高だよなぁ」

俺はそう呟きながら、ゆったりと湯船につかり仕事のことを頭から追い出そうと必死になっていたんだ
だが、いくらお湯で体が癒されても、会社の仕事に対することが消えてくれない…

いやいやっ!!ダメだダメだ!!
家にいるときくらいは、前向きになって自分のやりたいことをして寝る!
そう決めていたじゃないか!!

そうだ、家の中でなら…誰の視線も気にすることなく好きなことができる!
ゲームだって…本を読んだって…
極端に言えば、オナニーしたって構わない!
誰にも見られていないんだから!!


明「って、なに変なことを考えているんだ俺は…もう出よう…」

俺は一人、そういうとさっと体をもう一度流し風呂を出たんだ
風呂から出ると、いつもと同じようにゲーム…そしてテレビを見る…
毎日毎日、飽きずにこのサイクルが繰り返されているね

そういえば、友達がゲームをくれたんだったな…
あれ、未開封だったし…やってみるか

そう思い、友達のくれたゲームの包み紙を破く…っと、なんだ?これ…
【人外戦記ラスガイア】
人外戦記ラスガイア?聞いたことねぇな…どんなゲームだ?
そう思い、後ろをチェックしゲームのジャンルを確認…

【ジャンル:魔物娘育成最凶シミュレーションRPG】

………さっぱり想像できねぇなぁ…

俺はそう思いながら後ろのスクリーンショットを眼で追ってみる…
えっと…?LV9999は当たり前、転生システム搭載…ほぉ?
登場キャラはすべて人外!!安心のクオリティ!…まぁ、一部の人には受けるか
計400体に及ぶ彼女たちの中から…君の嫁を見つけ出せ!

……えっと、これは恋愛シミュレーションゲームなのか?
いやしかし…それだとLV9999で転生可能の意味が…うーむ…

明「まぁ、しばらく考えていても仕方がない…ちょっとやってみるか…」


・・・・・・・・・・・数時間後


あえて言わせてもらうとするならば、いいゲームだった
しかし、このゲームは一つ…購入者に嘘をついているな…
このゲームは全年齢対象ゲームのはずだ…それなのに!
結構きわどいCGが多かったぞ……

ん?お前はいい大人になってもまだCGでドキドキしてるのかって?
わかってないなぁ…
年齢なんて飾りですよ、偉い人にはそれがわからんのです
大人でも、CGでムラムラしたりするさ
それを否定する人がいるならば、俺はその人に対して言わせてもらいたいね…
その考え方はカスであると!!

……うん、そうだよ?いま俺は…ものすごくムラムラしている
数日ぶりに…自分のたぎったソウルを癒してやる必要があるかも…
…おかず、あったかなぁ…確か…ドラマCDがあったな…

明「あったあった…【エリート彼女の裏の顔 狂気の彼女に襲われて】…」

このシリーズ、結構すきだったり…って、言ってもわからないだろうな…
すごいんだぞこれ…主人公の身近にいる女性が主人公をストーカーして、徐々に甘い罠にはめていくって話なんだけど…
この主人公に共感がもてるんだよねぇ…

まぁ、この主人公はさすがに運がなさすぎだろって思うけどね
だって、作中の女性に部屋中監視カメラを仕掛けられて気が付かないんだぜ?
ほんと…馬鹿だよなあ…そう思わないか?
俺だったら絶対に気が付くね!

明「さてと…ティッシュ…ティッシュっと…」


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見切「はぁっ…はぁっ…もぅ、こんなに…はふぅっ…」

私は今、こきざみに体を痙攣させながら甘い快感に身を任せていた
でも…今日は思いもよらないイベントが発生したのだ
そう、明さんが……何を聞いているのかはわからないけど…
目隠しにイヤホンという状態で布団の上に仰向けに寝て自慰を始めたのだ

見切「えっ!?そ、そんな…やった…初めて見れた…ど、どうしよう…」

体がほてってしまって仕方がない…
これは…このまま第2ラウンドを行うしかない…よね?
そうだ、それ以外の選択肢が私にあるはずがない
私はそう答えを出すと、さっきまでの行為ですっかりねとねとの秘部をまた刺激し始めた

見切「ひゃっ…ひゃばい…これ…しゅごく気持ちいぃ…ふぁあんっ…」

あまりの快感の波の押し寄せに、思わず何度も意識が飛びそうになる…
まさか…これほど気持ちがいいものだとは思わなかった
見て自分で慰めているだけで、これほどの快感だ
それこそ、好きな人と性行為に及んだら…あまりの幸せにトロトロにとろけてしまえるかもしれないな

そして、私が何度も絶頂を繰り返していると、明さんがついに自分の熱いモノをティッシュの中に吐き出してピクピクし始めた
明さんも、絶頂に達したみたい…今晩は本当に充実した日だった
そして…明日は明さんが私のものになる日…
早く…早く明さんのあっついのを私の体で感じたい

絶対にほかの誰にも渡すものか…渡すものか!!
もしも…もしも明さんが他の人に盗られるなんてことになるぐらいなら…
うふっ…うふふふっ…

見切「明さん…お休み…ふふっ…」


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次の日の朝…俺は昨日の晩に久しぶりにオナニーしたことにより、体力の疲れを肩と首に感じてはいたが、いつもよりはすっきりと眼を覚ますことができた
なんだろうか?今日はいいことが…ある気がするな…

なんて、根拠のないことを考えつつ、朝食の準備を始める俺…
朝食といっても、焼いたパンにジャムを塗ってコーヒーを入れただけの質素なものではあるのだが…
それでも、食べるのと食べないのとでは大きな違いだ

仕事の役には立っていなくとも、せめて生活習慣はしっかりとしておきたいからな
……食事の栄養バランスとかの片寄は見逃してくれ


パンを焼いて、こたつの中に半身入れてテレビを見る俺…
そこでは、前日にあった出来事が小さい話題となって放送されていた
いつもと変わらない朝の光景がそこにあったわけだな

明「もぐっ……今日、朝から大ぶりの雨か…いやだなぁ…」

雨…それは、純粋にいろんな人が嫌うであろう天気の一つだ
中には、雨が最高に好きって人もいるかもしれないが…
少なくとも俺は寒い時期に雨に打たれて喜べる…そんな男じゃない

そこで、俺は雨の日は会社の前までバスで移動することにしていた
……下手すりゃあ、行きと帰り…両方で280円の出費だが…
それでも、雨に濡れて風邪をひいて熱を出すよりは数倍ましだ


時計「7時になりました、ピッ…ピッ…ピッ…ピー!」
明「もう7時か…そろそろ仕事に行くかな…」


そして、いつも乗っているバスにのる…
なんだろうか?いつもに比べると、乗っている人が少ないような…
っていうか、俺だけじゃないか
これは…まさかの貸切ってやつなのか!?

なんて、少しだけ浮かれた時だった…

ドンッ…ガシャァンッ!

明「あいたっ…っと、すみません…大丈夫ですか…?」
お客「あわ、あわわ…た、大変ですぅっ!ツボが…ツボが割れちゃったですぅ」

ツボ…?ツボって…まさか、下にあるバラバラの残骸のことか?
いやいや…いきなり向こうから当たってきたんだから、俺は悪くないよな?

お客「ちょっと!!あなたがそんなところにいるから…ツボが割れちゃったじゃないですか!責任取りやがれですぅっ!」
明「そ、そんなぁっ!!それは言いがかりですよっ!」
お客「ふぅん…そんなことを言いやがるですか…」
明「な、なんですか?そんなジトーっとした眼でみても、知りませんから!」

まてまて…待ってくれ…
どうしてこんなことになってしまっているんだ?
なんだろう?ものすごくいやーな予感が…

俺がそう思っていると、ほかのお客さんがバスに乗ってきて、次々に俺とこのツボを持っていたお客のほうを見ている…
なんだろうか?ものすごく険悪な雰囲気を感じるんだが…?

お客「ぐすっ…みなさぁーんっ!!この人、最低ですぅーーっ!自分から当たってきて私のツボをこわしておきながら、私のせいに…ぐすっ…」
明「なっ!?お、おい…なんで嘘を…」
お客「それに…あげく…腕が折れたから病院代を払え、無理なら体でもいいんだぜって…鬼畜ですぅーー!!」
明「そ、そんなこと言ってな…」


お客「おい、聞いたか…あいつ…」
お客「最低ね…社会のごみってやつかしら」
お客「許せん若者じゃ…あんな小さな娘を泣かせて…」
お客「自分が壊したんだから…反省の気持ちも込めて弁償するのが常識なのにねぇ…やだわ、常識のない人って…」


ざわっ…ざわっ…


……はめられた…完璧なまでに…
こんな状況では、俺が明らかに悪者じゃないか!!
このままだと…俺は警察のお世話に…
と、とりあえず…ツボの値段だけでも聞いておこうか…
払えそうな値段ならいいんだけど…


明「そ、そのぉっ…いくらですか?そのツボ…」
お客「……(ニタリ)50億ですぅ」
明「ご、ごじ…うえぇっ!?ちょ、ちょ、ちょ…おま…うぇ…へ?」

ま、待て…待ってくれ!!桁が…桁が違いすぎる!
そんなの到底弁償できる金額じゃない!

明「そ、そんなの無理です!!人間の一生かけて手に入れられる金額を普通にオーバーしている!!払えるわけが…」
お客「……ふっふっふ、払えるですよ?世の中には色々な方法があるのです」
明「えっ…?そ、それは…いったい?」
お客「闇のバイト…痛いのから気持ちいいのまで…どうです?」
明「だ、誰がやるか!!壊したのは謝るよ!だから、許してくれよ!」


だが…世の中はそんなに甘いものではなかった…
俺がツボを持っていた小悪魔から解放されたのは、大切なものを失った後だった…
家に帰ると、必要最低限の生活用品以外、すべてのものが…なくなっているのか…はぁ…
い、いや…まだ、借金は消えたし、命があるだけ…
そ、それに…働いていれば給料だって…ま、まだ大丈夫だ!

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お客?「お待たせですぅ…がっつり崩しておいたですぅ」

そういいながら、ものすごい黒い笑みを浮かべているのは私の知り合いの形部狸…
彼女に一芝居打ってもらって、明さんを追い詰める余裕段階の一段階
生活の余裕を奪い取った…あとは二段階…これさえ崩せば…
ふっ…ふっふっふ…

見切「さてと…次の段階に入らないと…ね」

私はそう呟くと、彼女と別れ…会社のほうに向かったのだった

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明「おはようございま…」
課長「あぁ…明君…ちょっと…いいかね?」
明「へ…?」

出勤して早々、課長に呼ばれたんだが…いったいなんなんだ?
そもそも…この会社に来てもう5年近くだけど…呼び出しをくらったことなんてこれが初めてだ…
なんだ?なんなんだ?このいやな予感は…?

課長「さっそくですまないんだが…そこの椅子に腰かけてほしい」
明「は…はい…」
課長「紅茶でもどうだね?」
明「あっ…け、結構です」


なんだ?さっきから、俺の首筋をいやな汗が流れ落ちていく…
初めての状況に動揺しているだけ…だったらいいのだけど…

課長「話をぼかすのも君に悪いので、はっきりと言おう…明君…」
明「は、はい…」
課長「君はクビだ」
明「……へ?か、課長…今、なんと…?」
課長「クビだといったんだ」
明「いや…そ、そんな…」


ちょ、ちょっと待ってくれ…
クビ?クビだって…?
だ、ダメだ…あまりの話の展開に俺が付いていけない
いったい、どうして!?

明「ど、どうしてですか!?理由を!!理由をお願いします!」
課長「…君の最近の会社への貢献度は常に最低だ…それはわかっているね?」
明「そ…それは…はい、わかっています」
課長「今までは、君の腕を見込んで見逃していたところもあったが…そろそろ、わが社も苦しいんだよ」
明「えっ…それは…」
課長「君には厳しいことを言うかもしれんが…仕事ができない者を会社に置いておくよりは、新しい人材を入れたほうがいいんだ」


課長の言いたいことはわかる…
俺だって子供じゃないんだ、そんな会社として当たり前のことは理解できているつもりだ…
だけど…それでも素直にはい、わかりましたって言えるほど、俺の心は素直じゃない!
大体、仕事を失ったとして俺は次の職…どうすればいいんだよ!

明「それはわかっています…でも、だからって相談もなく…」
課長「それは悪かったと思う…しかし、わかってくれ…退職金には色を付けておくから」
明「そんな問題じゃないんです!大体俺は…」
課長「もう、この話は終わりだ…机の荷物、まとめておいてくれ」


課長はそういうと、俺を部屋に残して去って行った…
いきなりそんな……どうしてこんな…

結局、俺は気持ちの整理もできないまま…会社をクビになったのだった…
俺が得たものは、中に20万入った封筒が一つ…
うぅ…心が…折れそうだ…

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課長「見切君…わしは、心が痛いよ」
見切「そうですね…ですが、仕方がありませんよ、これが現実、現実ですから」
課長「明…すまんなぁ…」

私は、窓の外をじっと眺めている課長の後ろ姿を見ながら、計画がうまくいったことを喜んでいた
これも私の計画通り…あはっ…
これで職の余裕も崩した…あと一つ…
あと一つで、私は明さんを手に入れることができる…
といっても、あと一つはすでに手を打っているのだけど…ね

問題は…退職金をどうやって浪費させるか…これだけか…
まぁいいです、時間はあるんだから…じっくりと考えましょう

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はぁ…この心の沈み…どうにかならないだろうか?
そういくら願っても、どうにもならないことは薄々感じつつ、俺は家具も何もかもなくなった家に向かって歩いていた

明「はぁ…もう、何もかもどうでもよくなってきた…」

そういいながら、歩いていると…
目の前にパチンコの店の看板が見えてきたんだ

パチンコ…パチンコかぁ…そういえば今まで、やったことなかったなぁ…
その時、俺の心の中で悪魔がささやいたんだ

悪魔「おい…パチンコってのは勝ったらものすごいお金が増えるって聞いたぜ、これから先のことを考えたら、お金はふやさねぇと…」
明「そ、そうかなぁ…?」
天使「待ちなさい…それよりも、あなたは生きるために賢くお金を使い、今を耐えることをするべきです」
悪魔「馬鹿かてめぇは!こいつはその今を耐える自信がなくて、悩んでるんだろうが!だったら…夢を追うべきだろ!」
明「そうか…そうだよな…うん」


結論…俺、夢をつかみに行ってくる…
そして、夢をつかめたら新しい職を探しに行くんだ!!
見てろ…見てろよ!!


……5時間後

………みんな、俺…気が付いたんだ…
夢は追うから夢なんだ…
そして、それはかなわないからこそ、夢だということに…
結果は惨敗…俺は今…100円も残ってない状況に立たされている
どうして…どうして俺はあそこで…

あたりはすっかり暗くなり、俺は心まで暗くしながら夜道を歩いていたんだ
家に帰っても、俺の安息の場所はない…
どうして…どうして俺は誕生日にこんな仕打ちを受けなければいけないんだ
そうだよ!!今日は俺の誕生日だろ!?いいことあったっていいじゃないかよ!

そうぼやきつつ、ついに自分の住んでいるアパートまでたどり着いた俺…
自分の部屋を開けると、そこには段ボールとラジカセと布団がぽつんと置いてあったんだ
……なんだよ、これ…某森の中で新生活ゲームか何かかよ…?

明「……あぁ…飯、どうしよう…実家、帰ろうかな…」

そうだよ…半ば強引に実家を飛び出して上京してきたけど…
俺には家族がいたんだったな…
なんだ、俺にも心の支え…あったじゃないか!!

俺はそう思うと、気持ちを前向きな考えにするために実家に電話することにしたんだ
久しぶりに家族の声を聴きたい…
もう、どれだけの期間聞いていないんだろう…

俺はそう思うと、さっそく実家に電話することにしたんだ
まだ、ケータイの充電は残っているし…少しくらいなら大丈夫だろう?

プルルルル…プルルルル…

母「はい、世中ですが…」
明「母さん?俺だよ、明だよ」
母「……明かい?…まったく、今忙しいんだから電話してくるんじゃないよ!」
明「えっ…その、忙しいって…」
母「父さんが久しぶりに夜の相手をしてくれるっていうんだ!あんたの相手をしている暇はないんだよ!!わかったね?」
明「そんなぁっ!!せ、せめて少しぐらいは息子の話を…」
母「興味ないね…私は今、おあずけをくらってイライラしてんだ…もうしばらく、電話かけてくるんじゃないよ!!あんたも早く、嫁さんを見つけるんだね!じゃっ!」
明「ちょっ!!」

ツーッ…ツーッ…

き、切りやがった…
そんな…唯一の家族が久しぶりに連絡したってのに…
あんまりだ…これはあんまりだぁ!!

明「う…うぅぅっ…うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

俺はあまりの精神的ダメージに、叫ばずにはいられなかった
そう…叫んでなかったら、俺は…俺は…
俺はそこまで考えると、考えるのをやめて布団にもぐりこんだんだ
これ以上考えたら…心が壊れるよ…俺は

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これは…うれしい誤算だ
私は、明さんの部屋を監視しているモニターを確認しながら、口元をゆるませていた
明さんの実家に、大量の精力剤を送るとともに、ご家族の人に口裏を合わせるように頼んでおいてよかったと思う
もしかしたら、実際行為に及んでいるかも…ふふっ

さて…それじゃあ、最後の仕上げに行きましょうか…

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コンコン…コンコン…

うっ…うっ…誰だろうか?今日は正直、誰とも会いたくない気持ちなんだけど…

見切「すみません、明さん…います?」

あの声は…見切さんか…?
ど、どうしてこんな時間に…?何か会社に忘れ物でもしたんだろうか?

そう思い、あわてて扉を開ける俺…っと、そこで俺の時は一瞬…しかし確実にとまったんだ
そこには、なぜか薄着にジャンパーという姿の、見切さんが立っていたんだよ
そ、それに…その…下着…つけてないみたいで…

それを見た瞬間、確かに俺の時は止まったね

見切「あ、あの…私、このアパートに引っ越ししてきて…お風呂上がりだし、下の部屋の明さんに挨拶をと思って…」
明「えっ…そ、それはいいけど……え…?」

上の階…?それってスイートルームのことか!?
くぅっ…か、金持ちってことかよ!!
なんでこのタイミングで…!?
ち、畜生…本当は心で笑っているんだろ!!
なんて、そんな考えが頭に次々と浮かんできた
とにかく…早々におかえりいただく必要があるな…
俺はそう思うと、彼女と交渉をすることにしたのだった…

14/04/07 21:24更新 / デメトリオン mk-D
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■作者メッセージ
どうも!!

今回は、この作品を見てくださり、ありがとうございます!
今回初めて僕の作品を見たという人も、前から作風が好きだったという人も長い話を見ていただき、ありがとうございました

どうでしたか?ものすごくほのぼのとした、見ていて心が和むような…
そんな作品になるように頑張ったのですが…
まさにタグ通り…でしょう?
(注 作者は軽くMです)

さて、ここで見てくれた皆様に質問を…
次の話なのですが、そのあと主人公に何があったのか…
その過程を入れるのと、はぶくの…どちらが皆様はよろしいですか?

要は、明と見切はにゃんにゃんするわけですが、にゃんにゃんシーンを入れてほしいのかどうか…これを感想欄で聞いてみたり…
その意見に応じて、次のストーリーはどうするかを決めようと思います
なお…意見がない場合は、にゃんにゃんシーンは作者の心で保存しておきますので、ご了承ください

なお、このタグを追加、もしくは変更するべきだって意見がある場合もお願いいたしますね

長くなりましたが、のんびりと作品を楽しんでいただけると幸いです
ありがとうございました!!

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