部屋のドアがノックされた。
　中にいた男は「はい」とノックに答えた。すると外から低い男性の声が帰ってきた。
「龍瞳殿、国王陛下がお呼びです」

「分かりました。今行きます」
　龍瞳がドアを開けると、黒髪をオールバックにした男が立っていた。彼は火ノ国の将軍だ。
　そしてここは火ノ国の城の四階の一室だ。ここにいるのは龍瞳だけではない。幟狼、乎弥、そして魅月尾もこの城の一室に身を置かされていた。なぜなら、この度の『国王暗殺未遂事件』に巻き込まれ、その中心にいるのが彼らだからだ。

　国王、そして将軍も龍瞳達には実質のところ感謝していた。しかし、国を治める者として、不問で住ませるわけには行かなかったのだ。そのため、軍部、元老院、貴族院、司法院を含めた国の中枢で議会を開き諸々の処分とこれからの対策を決めるまでの間、彼らは監視下に置かれていた。

　そして今日、龍瞳達にその処分が伝えられるのだ。
「では、玉座へ。そこでお伝えします」

「はい」
　龍瞳と将軍は最上階の玉座へ行くのだが、階段は登らず昇降機を利用する。この昇降機はある特定の者だけが利用できる。
　策科も利用することが出来たが、あの時は城の構造を龍瞳に目で見させるために階段で上ったらしい。
　昇降機はゆっくりと登っていき、最上階の玉座の間の前に着いた。

　玉座の間には、幟狼と乎弥、魅月尾の他に四人の男が玉座の脇の椅子に座り、中央の椅子には天染尊(アマソメノミコト)が座っていた。
「お待ちしていました。龍瞳さん」
　国王がそう言った間に将軍は椅子に座った。

「…では、皆さんへの処分をお伝えします。司法院長」

「はい、陛下。
　議会による検討の結果、まず皆さん、特に魅月尾殿には国の問題に巻き込んでしまったことをお詫びします。
　そして魅月尾殿は当然処分の対象外となります。貴女が受けた責め苦は我々の管理が成っていなかった結果と思い、誠にお詫び申し上げる」
　その一言で六人全員が頭を下げた。

「いえ、私は平気ですから…」

「そう言って頂けるとありがたい。
　それでは、ここからが残りの三人への処分になります。まず、幟狼殿と乎弥殿は城に忍び込んだと言うことですが、目的が感謝すべきものだったため、刑罰はこちらが例外的に決定しました。それは後にお伝えしますが、投獄等ではありません。
　龍瞳殿は脅されていたとはいえ、国王を暗殺しようとしました。ですが、幟狼殿と乎弥殿へ連絡し、策科を欺き事件の解決へと導きました。それらの罪に対する刑罰も同じくこちらで決定しました。
　ですが、策科を斬り捨てたことは見逃すわけにはいきません」

　幟狼達は目を伏せた。たとえどれだけの悪党であろうとも、殺人は殺人。罰せられるのが理だ。
「しかし、昨日の議会で考えを改める必要があることが分かりました」

「一体どういう事だ？」
　幟狼は訊ねた。
「分かりました、説明しましょう」
　国王が答える。
「さて、説明の前に、龍瞳さん。いつから気付いておられましたか？」

「あの洞窟に入る直前に」
　幟狼達には訳が分からなかった。何に気付いていたというのか…
「あの…話が見えないんですが…？」

「乎弥さん、すみません。少し不思議に思ったものですから。
　実は、龍瞳さんは『しょうがなく』ああするしかなかったのです」
「一体どういう事です？」

「実は昨日、驚くべき報告が入りました。
　あの時策科は体中に爆発陣を仕込んでいたのです」
「爆発陣！？」

「そうです、龍瞳さんは決して望んで人を殺すような方ではない。私はそう思っています。その心情は分かりませんが…」
　幟狼達は心底驚いた。

「回収した策科の遺体を調べた結果、斬り裂かれた箇所の内部にはそれと同じ数の魔法陣があり、それが生命力を媒体にして爆発を引き起こすものだったことが分かったのです。
　もし策科が少しでも息があったなら、あの場にいた者全てが道連れになっていたでしょう…」

「その爆発陣は心臓などに直接刻印されていて、止めるにはどちらにせよ策科を殺す以外に方法がなかったことも分かっています」
　将軍は頷きながら言った。

「じゃあ…」

「はい、では処分を申し上げます。龍瞳殿の策科殺害は状況的に不可抗力だったために、極刑は取り下げ、これから言う処分に徹底していただくことをその代わりとします。
　三人に下す処分ですが、大規模な武装集団が傘塔峡谷(サントウきょうこく)で襲撃体勢を整えているらしいのです。三人には彼らを強襲し、体勢を崩していただきます。その後は指定地へ２週間の幽閉させていただくことを処分の全てとします」

「異論はありますか？」
　国王は優しく訊ねた。
「これで文句なんて言ったら罰が当たるさ。なぁ、龍瞳？」

「ああ、謹んでお受け致します」

「そうですか…皆さん、有り難う御座いました。では改めて自己紹介を。
　私は第十代火ノ国国王、天染尊…ですがこれは王としての名。本当の名前は天宗院　子暁(テンシュウイン　シギョウ)。子暁と呼んでいただいて構いません。いえ、是非そう呼んでください」

「え、でも…」
　もちろん四人は戸惑ったが、そんな四人を見て将軍は言った。

「いいのです。私が言うことではないですが、陛下のことは我々は幼少より知っております。なので今でも子暁様と呼び、お慕いさせていただいているのですよ」

「そうです、私の良き友に、なっては頂けませんか？」
　子暁は玉座から立ち上がり、四人に近寄ってそう言った。

「いいのかい？龍瞳や魅月尾はともかく、俺と乎弥は義賊だぜ？調べはついてんだろ？」
　幟狼は薄ら笑いを浮かべて皮肉っぽく言った。

「ええ。ですが、お二人は決して悪いお方ではない。民衆からの支持は篤いでしょう？」

「ええ、子暁様。僕が保証しますよ」

「龍瞳さんがそう言うのですから間違いないですね」
　子暁はにっこりと笑った。

「じゃあ、これから一つよろしく頼みます」
「はい。
　では、彼らの紹介も。右から元老院長の萬金(バンキン)殿」
　長い白髪の穏やかな顔の老人だ。
「元老院長の萬金と申します。皆さんよろしく」

「それから貴族院長の華観浦(カミウラ)殿」
　逆立った長めの髪型で、右の前髪が一筋垂れている。とても若く見える男だった。
「初めまして。皆さん、是非今度我が屋敷にいらしてください。歓迎しますよ」

「京楽(キョウラク)大臣、私の補佐をしていただいています」
　白髪も混じり、灰色く見える頭髪。眼鏡をかけていて、輪郭は丸い。
「龍瞳殿はお目に掛かるのは２度目ですな。この度は有り難うございました」

「芦隆(アシタカ)将軍。彼の名は近隣諸国にも轟くほどの腕前です。私が幼少の身より、父の代わりによく面倒を見てくれていました」

「まだ名乗っていなかったのはおかしな事ですが、芦隆です。よろしく」

「そして芦隆将軍の補佐であり、彼の妻でもある長渡(ナガト)さん」
　髪をポニーテールにした彼女は、見た目はスレンダーでそうとう若い。が実質のところ今年で三十路を迎える。なお、年齢、体重は特に気にしない模様。
「奥さんなんですか！？」
　乎弥はビックリして言った。
「ええ、そうよ。今回は本当に有り難う」

「では、早速任に着いていただきますが、その前にいろいろお伝えする事もありますので」
　芦隆将軍と長渡中将が席を立った。
「はい」
　龍瞳達は二人と共に玉座を後にした。


　傘塔峡谷は、城のある街『大尋京(たいじんきょう)』の北東約５０キロにある岩石地帯だ。
　大きな岩山の間にある峡谷で、茶褐色の固い地面が辺り一帯に広がっていて絶壁になっている場所が多い。龍瞳達はその峡谷の絶壁の上にいた。
　下には多くの人間が屯している。
「おい、見ろよ」
　幟狼は何かを指さした。
「あれは？」

「５０ミリ口径砲…ありゃあ、仕入れたな。もし使われれば厄介だ。着弾時に爆発を起こして、破片をばら撒く」

「あれは本来対人用ではなく、防壁の破壊などに用いられるものです…ですがボスの言う通り、命中させなくても傷を負わせることが出来るので、多人数に用いられることも多いです」

「じゃあ、まずはアレを潰さないといけないのか…」

「ですが、そこに辿り着くよりも先にアレを使用されるのは確実でしょう」
　確かに乎弥の言う通りだ。今三人が飛び出たとして、崖から飛び降り、着地してから次の動作に移り、それまでの妨害をはね除け、目標を叩く。どう見ても十秒は少なくても掛かるだろう。使用されないのは相手がとんでもなく馬鹿でない限りあり得ない。

「ですから…」
　乎弥は何かを取り出した。
「これを使います」

「閃光弾か…、確かに打って付けだな」

「乎弥は援護してくれ、俺と龍瞳であいつを潰してから全員でとっかかる。あとは手筈通り将軍達が処理してくれるだろう」

「はい」

「行くぞっ！」

　龍瞳と幟狼は崖の影から飛び出し、絶壁を巧みに滑り降りだした。
「敵だーっ！」

「５０ミリ口径砲で撃ち殺せっ！」
　口径砲の近くにいた二人が素早く近付き、一人が弾を込め、一人が構えた。全員の目が二人に向いた瞬間、潜んでいた乎弥が閃光弾を投げた。
「ぐあっ！」

「ぎゃぁっ！」
　けたたましい音と光が発せられ、背を向けていた二人は耳さえ塞げば何と言うことはなかった。
　しかし、予期していなかった敵は視覚と聴覚を一時的に封じられた。
「止まるなよ龍瞳っ！」

「わかってるっ！」
　二人は敵を弾き飛ばしながら走り抜けた。そしてもう少しで到達すると言うところだった。
「っ！避けろ―！」
　龍瞳の一言で幟狼も飛び退いた。右側から砲弾が飛んできて地面に着くと同時に爆発した。
「…もう一つあったのか…」

「どこの誰だか知らねぇが…動くなよ。動いた瞬間木っ端微塵だぜ」

「どうする…？」

「無駄撃ちさせられれば…」
　幟狼が策を考えていると、乎弥が行動を起こした。

「こっちよっ！」
　その瞬間、右から打ってきた奴に向かってクナイを投げた。クナイは当たらなかったが、口径砲を乎弥に向かって発射した。
　しかし、着弾するよりも爆破範囲外に乎弥が動く方が早かった。そして、隙の出来た前方の口径砲を持った男と、右側の男に向かって龍瞳と幟狼がそれぞれ接近した。
　幟狼は前方の男の持った口径砲を片手で押し上げ、男の顔を殴り後ろの男ごと殴り飛ばした。
　龍瞳は素早い居合いで口径砲の砲身を断つと、男を左手で張り飛ばして絶壁にぶつけ気絶させた。
　乎弥はクナイを構えて集団に飛び込み、わざと劣性を装うと退いた振りをして敵を固め、そして隠し持っていた玉を敵に向かって投げ破裂させた。中身は痺れ薬で、乎弥は防毒面を着けて毒煙の中から脱出した。

　龍瞳と幟狼もあっと言う間に敵を圧倒し、敵の体勢は確実に崩れた。そして次の瞬間、続々と芦隆率いる兵団が雪崩れ込み敵を捕らえたのである。

「三人とも、ご苦労様でした。流石に早いですね」

「ええ、まぁ」

「あとは我々が処理します。三人は長渡の案内で幽閉地へ向かってください。まぁ幽閉と言っても陛下の所持している別宅ですから、不自由は特にないでしょう」

「別宅ですか…」

「あ、そうだ。こいつら、ちょいと気になるものを持ってたぜ。
　５０ミリ口径砲、たぶん他の国から仕入れたんだ。それもジパングじゃねぇ」

「…そうですか、分かりました。こちらもいろいろ調べますので、何かあればある程度はご報告します。では」
　芦隆はそう言って武装集団の捕縛に向かった。入れ違いに長渡がやってきた。
「こちらに馬車が用意してあります。お乗りください」
　三人は馬車に乗った。そして馬車は走り出し幽閉地へ赴くのだった―


　馬車に揺られること数時間、ようやく幽閉地へ到着した。そして三人は呆気にとられた。
　何せ、家の周りは湖で、その中の孤島に大きな邸宅が建っていたのだ。長い一本の石橋で岸と繋がっていて、周りはそれはそれは美しい緑だった。
「驚いていらっしゃいますね。陛下は幽閉とは言いましたが、実際はここでゆっくり話したかったのだと思います」

「え？」
　龍瞳は驚きと疑問の声を漏らした。
「陛下は、龍瞳様が気に入られたのですよ。
　…実は陛下には一人の兄君がおられました。私も存じています。名前は子光(シコウ)様と申しまして、子光様は子暁様を大変可愛がっておられました。気品があり、また逞しくお強くあられました。しかし子光様は１８と若くして病の為にお亡くなりになられたので、子暁様が王位を継承することとなりました」

「そうだったんですか…でも僕を気に入るのとどういう関係が？」

「似ておられるのです、子光様に。ですから、龍瞳様に子光様の面影を感じていらっしゃるのですよ…」
　龍瞳はその話を聞いて少し胸が苦しくなった。
（僕は、そんな彼に刃を向けたのか）
　そう思うととても申し訳なさが増した。
　話をしている間に馬車は石橋を渡り終え、邸宅の玄関の前に止まった。

「中で魅月尾殿がお待ちです」
　馬車を降りて長渡が言った。
「魅月尾が？」

「はい。出来れば龍瞳殿の傍に居りたいとご所望でしたので」

「ほー、ラブラブだなぁ？」
　幟狼が肘鉄砲を龍瞳に当てた。
「茶化すなよ」
　龍瞳はそう言って扉を開けた。中には到着を今か今かと待ちわびていた魅月尾がいて、彼女はいつもの様な着物ではなく膝丈の緑の着物を着て、その下に黒いショートレギンスを履いていた。髪もツインテールにしていて、いつもとは雰囲気が違った。
「龍瞳様、待ち侘びていました」
　魅月尾は駆け寄って龍瞳の手を握った。龍瞳は内心、いつもと違う魅月尾に改めて胸をときめかせていた。今の魅月尾はカワイイという言葉がピッタリだ。
「ごめん、ありがとう」

「いえ…」

「部屋へご案内します」
　長渡はそう言って四人をそれぞれの部屋に案内した。邸宅は中庭がある四角い形で、いくつも部屋があった。
　龍瞳の部屋は北西の角部屋で、その右側が魅月尾の部屋だった。龍瞳の部屋から左に一つ部屋を空けて幟狼の部屋、乎弥の部屋があった。
「邸宅では自由に歩き回ってくださっても構いませんし、庭に出ていただいても構いませんが、この孤島の外には出ないでください。出られました場合、違反となりますので」

「わかっています」

「では、これで」
　長渡は邸宅を後にした。

　その夜。
　夕食は湖で取れた新鮮な魚を食し、龍瞳達はそれぞれ自分の時間を過ごしていた。
　龍瞳は後ろで束ねていた髪を解き、ベッドに座って刀の手入れをしていた。周りはとても静かだった。時たま風に靡く葉の擦れる音や、湖の波の音が聞こえてくる程度で、まるでそこだけが空間から切り取られたかの様だ。

　コンコンッ―

　誰かがドアをノックした。
「龍瞳様、今…よろしいですか？」

「魅月尾か…どうした？」
　魅月尾はドアを開けて中に入ってくると、ドアを閉めて龍瞳の隣に座った。龍瞳は大雅丸を鞘に納めると、貴太夫と一緒に壁に立て掛けた。
「で、どうしたんだ？魅月ぉ―！？」
　龍瞳は魅月尾にベッドの上に押し倒され、魅月尾は彼の腹の上に跨って座った。
「龍瞳様…私たちは…もう一週間も…」

「『交わってない』そう言いたいのか？」
　魅月尾はコクンと頷いた。そして四つん這いになって龍瞳の頭の両側に手を着き、顔を真上からのぞき込んだ。ツインテールにされた長い髪がカーテンのように垂れて、龍瞳の視界に入る景色を閉ざした。

「ねぇ…いいでしょ？」

「我慢は？」

「無理」

「そっか。まぁ…」

「くぁんっ―」
　龍瞳は脛を魅月尾の秘所に擦りつけた。その瞬間に彼女はビクンッと腰を引いた。
「僕も実際ヤりたくなっちゃったし…それにちょっと湿ってるよ…？」
　ショートレギンスを通り抜けて、愛液が染み出していた。
「だって…」

「堪らないんだよね？」

「…うん」
　龍瞳は魅月尾の細い帯を解いてシュルリ…と取り去ると、着物がはだけて果実の様に豊満な胸が垂れ下がる。
　そしてその胸を片方は鷲掴みにして、もう片方はピンと勃っている先端を口に含んだ。
「あっ、あぁんっ…はぁ…んんっ…ひゃあぁは…くあぁん…」
　舌先でその突起を転がし、吸い上げ、優しく噛む。その度に魅月尾は甘い声を漏らし、吐息が龍瞳の額付近に掛かった。そして魅月尾の腰がビクッ、ビクッと動き、龍瞳の足を魅月尾の足が挟み込んで締め付ける。
「あんっ…あぁぁっ…あぁぁんッ…ダ、メェ…ダメェ…」

「何がダメなんだ？」

「ダメなの…もう…もぉイっちゃう…あっ、あぁあぁぁっ―――っはぁ…はぁ…はぁ…」

「胸だけでイクなんて、相当だったんだな」

「…言わないでよ…イジワル」

「それに…下の涎が垂れてきてるよ」

「…やだぁ…」
　龍瞳は体を動かして魅月尾の秘所の下に顔を持ってきた。そしてレギンスの上からその愛液を吸った。
「やぁあぁっ、あぁっ、あっ、やぁぁぁ…」
　口を離すと、レギンスに手を掛け半ば乱暴に脱がせて魅月尾の秘所を露わにした。
「なんだ、下着は履いてないんだな？」

「だ、だってずっと着物しか着てないから…下着なんて…一枚くらいしか持ってないの…」

「そう言えばそうだったな。まぁ僕としては脱がす手間が無くて助かるけどね…」
　そう言うと龍瞳は再び秘所に口を付けて、舌を這わせた。
「ぁあぁぁんっ―！」
　舌が動くたびに魅月尾の体も動いて、反射的に腰を口から離そうとするが、龍瞳がギッチリと掴まえているために離れることなど出来ない。いつの間にか変化も解けて三本の尾がピンと張っていた。
「あぁっ…んぁっ、やぁっ、やぁぁっ、あっ、あんっ…」
　秘所を舌で舐め回したあと、龍瞳は少しだけ場所を移した。そして、そこにあった小さな突起を舌で弾く。
「あぁんっ―！あっ、あぁっ、ぁぁんっ！」
　魅月尾の体が一層激しく震える。
「あっ、あぅっ、あぁ、イッ…ちゃ、うぅ…あっ、あっ…」
　魅月尾が達しようとしたとき、龍瞳は愛撫をやめた。
「はぁ…はぁ…龍瞳様？はぁうっ―！」
　そしてまた龍瞳はそこに口を付けて愛撫し始める。だが必ず魅月尾がイキそうになると口を離して、魅月尾を焦らした。

「はっ…はっ…龍瞳様っ、もぅ…ダメぇ、我慢できなぃ…」
　魅月尾は数回それを繰り返されて、泣きそうになっていた。上半身はほぼ完全にベッドに身を預け、半開きの口からはだらしなく涎が垂れていた。
「じゃあ、僕もそろそろ…」
　龍瞳は魅月尾を仰向けにさせると、ズボンと下着を脱いで反り勃つ男根を露わにさせた。そして、もう愛液でヌルヌルの秘所に先端をあてがうと、最初はゆっくりと入れ進め、半分入った所で一気に突っ込んだ。
「あっ…あぁっ……あぁあぁぁ―――っ！」
　魅月尾の体が大きく震えて体が仰け反った。秘壷も収縮を繰り返し龍瞳の男根を締め付けた。
「はぁ…はぁ…はぁ…」

「入れただけでイっちゃった？」

「…だっ…て…あんなに…焦らすから…」

「ゴメンゴメン、許してよ。何せ、これからイヤでも何回かイっちゃうんだからさ」
　そう言うと龍瞳は腰を動かし始めた。ベッドが軋み、肌と肌がぶつかってパンッパンッと音が鳴った。
「あっ！…やっ、やぁっ！ああぁっ、あぁん、あぁぁんっ！ま…た、イクぅ〜っ、あああぁぁぁっ―――」


龍瞳、３回。魅月尾、１２回。あれからほぼノンストップで交わり続けた間に二人が絶頂に達した回数である。

「ヤリ過ぎた…若干腰が痛い…」
　ベッドに寝そべったまま、龍瞳が言った。
「…私、足…というか全身に力が入りません…」
　隣に寄り添っていた魅月尾も呟いた。二人の顔は赤く紅潮し、体には汗が光っていた。

　暫くして、二人は互いを抱き寄せて薄手のシーツにくるまれて夢へ落ちていった。
　他の部屋ではすでに幟狼と乎弥も眠りに就いていた。

　この日から、束の間の休息が始まった。四人はここで色々な来客に会うが、それを彼らはまだ知らない。

■作者メッセージ
いろいろあって更新が長引きました。
体に何かを仕込むというのは前々から頭にあったのですが、どこでどう使うか決めかねていました。ですが、丁度良いのでここで使用しました。

ご都合主義感満天ですが、楽しんで頂けたらうれしいです。