読切小説
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ネコと夜と少女
またあの猫だ……

昼過ぎの公園で、ベンチに座りながら私はふと見つけた猫を見てそう呟いた。
一週間ほど前だろうか、自宅のマンションから出る際に少し離れたところで私を見ながら座っている猫を見つけたのは。
最初はただの野良猫だと思った。別に家の近くで野良猫を見かけるなんで珍しいことでもなんでもないからだ。実際何度も猫なんて見かけたことがある。
しかし、この猫は違った。家から出るときには必ず視界に入る場所で座っているし、帰るときにも家の近くにいる。
近くに住み着いたのか、もしくは誰かの飼い猫かと思ったが、首輪は付いていないし、何より家の周りだけでなく休日に散歩の休憩場所に使ってる公園やコンビニ、秋葉原に遊びに行ったときに路地裏に居たし、果ては通勤途中でも見かけた。
なんというか、どう考えてもストーカーされている、
いったい何なのだろうと思い近づこうとしたこともあったが、そこは普通の猫と同じなのか逃げられてしまった。

そろそろ帰るか

ベンチから立ち上がり、家に帰ろうとする。
ちらりと後ろを見るとさっきの猫も立ち上がりながら私についてくるように歩き始めた。
何度かフェイントをかけて待ち伏せしたのだが、どれもバレていたらしく失敗してしまった。
本当にあの猫はなんなのだろう……何かの呪いなのか……とにかく何もトラブルが起こらないことを祈りながら私は家へ帰った。




その日は熱帯夜で、私はあまりの暑さに寝れずにいた。
何せこの夏真っ盛りの時期に、エアコンを付けないでいるのだから当然と言えば当然だ。
エアコン自体は無事なのだが、コードが切れてしまったらしく明日コードが届くまで、つまりは今夜はエアコンが使えないという絶体絶命の状況だった。
唯一の幸運は、今日は土曜日で最悪寝れずとも平日の最初を一睡もせずに始めることにはならないということだ。
扇風機を最大出力にしているが焼け石に水。私は耐え切れず、コンビニにでも行って涼もうと思い財布とスマホだけ持って家を出て行った。
私の住んでいるマンションは一階がコンビニになっているので、こういう時はとてつもなく便利だった。



うまい!

コンビニスイーツのプリンをイートインで味わいながら、私は外の景色を見ていた。
国道沿いゆえに、こんな深夜でもそこそこ車が走っているのを眺めながら、深夜のコンビニで甘味を味わっている非日常感をなんだかんだ楽しんでいた。
そして、外を眺めている時に私がふと気づいた。

あの猫がいないな……

このコンビニを使った時もあの猫を見かけたのだが、今夜はどこにも見当たらなかった。
どうやら居ないと違和感を感じるほどに自分の日常に入り込んでいたようだ。

まぁ猫だし、気まぐれな生き物だしな

そう自分を納得させ、スプーンで取ったプリンを口に入れようとした瞬間

「ここ、いいですか?」

そこにいたのは一言でいうなら自分好みな美少女だった。
チャックを胸のあたりまで降ろしたパーカー、開かれたチャックから見える豊満な胸に押し出されたシャツ、太ももをこれでもかと見せつけるほどに短いホットパンツ、鍔が正面より少し斜めになるように被った帽子、そして、とても楽しそうな笑顔。
そんな少女に声を掛けられ、私はフリーズしていた。すると彼女が少し不安そうな表情を見せた。

「えっと……ダメでしたか…?」

いえ、とんでもないです!

慌てて否定する。別に誰かが座ってたわけでもないし、何より彼女が見せた暗い顔を見たくなかった。
とっさにそんな考えが浮かぶくらい、私は既に彼女の魅力に惹かれていた。

「あ、よかったぁ!じゃあ失礼しますね!」

そう言うと、彼女は私の二つ隣の席に座った。
隣じゃないのか…正直そう思ってしまった。
すぐさま何を考えているんだと頭を振り、スプーンに乗ったまま放置されていたプリンを口に入れる。
さっきより甘さを感じない気がする…というより、意識がだいぶ隣の少女に向いているようだ。
ちらりと横目で少女を見ると、彼女は何か食べたりするでもなく外を見ていた。

どうしてこんな夜にコンビニに?

そう聞くと彼女はこちらに笑顔を向けながら答えた。

「ここのコンビニのオーナーが私の知り合いなんです。それで、好きに居ていいって言われてるんです。だから、たまに公園みたいな感じで来てるんです。エアコンも効いてますしね!それと…」

彼女は頬を赤らめながら続けた。

「誰か素敵な人に会いたくて…とか……♡」

突然私は捕食者の目に見つめられ、心臓の鼓動が早くなっているのをはっきりと感じた。
さらには体温も上がり、スプーンを握っている右手も机の上に置いてる左手もじっとりと手汗が滲んでいた。
そんな私を無視して、最初の明るい少女の顔に戻った彼女は私のプリンに視線を向けた。

「それ、ここの新作スイーツですよね!私も食べてみようかな〜」

そう言いながら彼女は自分のポケットに手を入れると、楽しそうな顔から一変、絶望の表情を見せた。

「あっ……お財布持ってきてなかった…うぅぅぅぅ……」

じゃあこれ食べる?

さっきと同じように、そんな顔を見たくない一心で私は手元のプリンを彼女の方へと差し出した。
しかし言って私はすぐに気づいた、だいぶとんでもないことを言ってしまっている…!
流石に男の食べかけなんて良くないでしょ……やっぱり止めようと言おうとしたら、彼女は既に太陽のように明るい笑顔をこちらに向けていた。

「ほんとですか!わぁ、嬉しいな!」

その顔には逆らえなかった。私は素直にプリンとスプーンを渡した。
ワクワクした顔で受け取ると、彼女はパクパクとプリンを食べ始めた。

「おいしい〜!初めてここのコンビニのスイーツ食べたけど、こんなにおいしいんだ!」

彼女の笑顔を見て、私も不思議と幸せな気持ちになっていた。
そんな彼女を見ていて、ふと私は気になったことを聞いた。

よくここのコンビニに来ると言っていたけど、家は近いの?

そう言うと彼女は食べながら答えた。

「はい!というかここのマンションですね、一週間前に来ました!」

なるほど……ん?一週間前…?
一週間前というとあの猫がうろつき始めたころだけど…まあ特に関係はないか
頭に浮かんだ疑問が消え切った頃には、彼女はプリンを食べ終えていた。

「おいしかったですお兄さん!」

お兄さんだなんて…少し恥ずかしいが、それ以上に『お兄さん』なんて親密さを感じる呼ばれ方をして嬉しく、そう呼ぶことを止めれなかった。

「でもこんなにおいしいものを貰っちゃったなんて、なにかお礼をしないとですね!」

お礼…いかん!僅かに浮かんだ邪な考えを振り払い、私は紳士的な態度を心掛けようとした。

別にお礼なんて気にする必要ないよ、君が居てくれたおかげで楽しかったからね

実際そうだった、暑さで寝れず気分転換に来たコンビニだったが、こんな素敵な少女と出会えたのだ。間違いなく今夜は楽しかった。
そうすると彼女は嬉しそうに笑った。

「私もですよお兄さん!でも、お礼はちゃんと受け取って欲しいです、というか、つい全部食べちゃいましたし……貰っただけなんて納得できないです!なので来週の土曜日の夜。ここに来てもらえますか?」

こうまで押して来るとは…さすがにここまで言われてしまった以上断るのは悪いだろう。

分かった、来週を楽しみにしているよ!

そうやって私はコンビニから出た。
………コンビニの中からずっと手を振っている姿可愛かったなぁ…




彼が居なくなった後、さっきの少女は店員と話していた

「いいの?どう見ても彼、もう十分アンタに魅了されてるけど、来週まで待って」

それを聞いて苦しそうに胸を抑えたまま少女は答えた。

「もう少しだから…あと一週間あれば、私の体はお兄さん専用になる…お兄さんには、最高のカラダを味わってほしいの…でも……」

まるで全力で走ったかのように息を切らしている彼女は

「お兄さんの匂い…それに精まで味わっちゃっておかしくなりそうっ♡」

縦長の瞳孔を開き切り、口の端から涎を垂らしながら恍惚の表情を浮かべていた。




あのコンビニの出来事以来、少し私の日常は変わっていた。
何かというと、あの猫との距離が僅かに縮まったのだ。
普段そこそこ遠い距離から私を眺めていた猫だが、以前の半分くらいの距離で眺めるようになっていた。
おまけに金曜日には一回だけだは撫でることに成功した。
まぁ撫でた瞬間逃げられてしまったわけだが…
そして約束の日である今日はなぜだか一切見かけなかった。
なんでだろうか……しかし考えても仕方ない。そう思いながら私は、今夜の準備をしていた。




先週と同じ時間、私は先週と同じプリンを買って同じ席に座っていた。
唯一違う点は、一つだったプリンが二つに増えている所だろう。
またあの娘に会える…心臓の鼓動を感じながら私は少女が現れるのを待っていた。
そして、席に着いてから数分後、コンビニのドアが開く音がしそちらに視線を向けると、そこにはあの少女が居た。

「あっお兄さん!ちゃんと来てくれたんだね!」

小走りしながらやってくると、先週とは違って私のすぐ隣の席に座った。
あっいい匂い…だから!ダメだってそういうのは!咄嗟に冷静になろうとするが、私の意識はがっつりと少女に向いていた。
さらには位置と身長差のせいで少女の胸が良く見えてしまっていた。
なんとか目をそらしても、磁力のように引き寄せられる。何とかしないとと焦っている私に気づいていないのか、少女は平然と話し始めた。

「さて、それで先週言ったようにお礼をしたいんだけど……その前に私、お兄さんに言わないといけないことがあるんだ…」

言わないといけないこと?いったいそれは……

「私ね、お兄さんと会うの、ここが初めてじゃないの。ほんとはもっと前、ここに引っ越して来た時から…」

そうだったのか…私はこんな娘が引っ越してきたなんて全然知らなかったな…そう思っていると、少女は続けた

「それでね、私、お兄さんを初めて見たときにね、その…恋…しちゃったんだ……」

………?恋?

「えっへへ……一目惚れ…かな?それでね、それからずっと姿を変えてお兄さんの事を見てたの」

……………?姿?
さっきから脳のキャパシティーを超えフリーズしている私に、少女は帽子を取って見せてきた。
その頭に生えている猫耳を

耳!?それに姿って!?いやいやいやその前に一目惚れって!?

疑問だらけの私に、少女は笑いながら答える。

「まぁその、簡単に言っちゃうと私は人じゃなくて、ネコマタって言う生き物なの。で、猫に化ける力を持ってるから猫の姿でお兄さんの事をずっと見てたの。ただ……」

少女は少し恥ずかしそうにすると

「実はね、いつ人の姿で会おうかなってずっと考えてたんだ。この姿で会いに行こうとしても理由がなかなか見つからなくて…それでお兄さんがコンビニに行くのを見て、この時間なら他の人もいないし今なら!って思って……だからあの時、お兄さんにとっては初対面だったんだろうけど、私はもうお兄さんの事知ってたんだ」

そうだったのか……まぁまだ飲み込み切れていないことの方が多いが、とにかく私は一番の疑問について聞いた。

それで、一目惚れって言ってたけど、それってその、恋人になりたい的なあれ…?

それを聞いて少女はクスリと笑うと

「えっとね、それはね……えいっ♡」

突然少女は抱き着き、妖しく光る眼で私を見つめながら言った。

「私、お兄さんの愛玩動物になりたいんだ……♡」

その言葉を聞いて、何かタガが壊れたような気がした。
こんな美少女に一目惚れだと言われて嬉しくないはずはない。一方で、自分の中の倫理観がこんないくつも年下だろう娘とあれこれなんてまずいだろ…という物があった。
しかし、彼女の言葉を聞いて、そんな理性が消えた実感がした。
抱き着いてきた彼女を離すために構えた手は、無意識のうちに彼女の胸を揉んでいる。
なにも言わずにその柔らかな双丘を揉み続けていると、彼女の喘ぎ声が聞こえ始める。それに興奮しさらに揉みしだく。
股間に熱が集まり始め、胸を揉んでいた腕は既に彼女の服のチャックを降ろし始めていた。
彼女が人じゃないだとか、年齢差だとか、ここがコンビニだとかもうそんなことはどうでもよかった。
ただ自分に残った唯一の思考は、目の前のメスを自分のものにしたいという欲求のみだった。

「お兄さんのことずっと見てたから♡こういう格好が好みなのも知ってたし、それに猫耳の女の子、大好きなんでしょ♡」

私もパンツごとズボンを降ろし、彼女の股間に男性器を触れさせる。
それに彼女は抵抗することなく、いつの間にか現れていた2本の尻尾でハートを形作っていた。

「お兄さんっ♡いっぱい可愛がってください♡」




「このプリン、本当においしいね!」

エアコンの効いた自室で、私は少女と並んでプリンを食べていた。
いろいろ聞かなくてはいけないことはあるだろう、それに、これからのことも考えなくてはだし……
ただ、今のところ理解できたことは

「いや、お兄さんと食べたプリンだからかな♡」

我が家に可愛い猫が来たという事









22/01/02 23:04更新 / ゆうさん

■作者メッセージ
「そうそう、私、お兄さんに謝らないといけないことがあるの」

謝らないといけないこと?

「はい…あの夜、お兄さんに可愛がられるのが楽しみすぎて、魅了の魔法の加減を間違えちゃったんだ…だから、コンビニであんなことに……」

なるほど…道理でいきなり理性が飛んだわけだ…

「でもあの時の乱暴なお兄さんも素敵だったな……またしちゃおっかな♡」



マジか…という思い以上に、楽しみだなと思ってしまっている当たり、お似合いカップルなのかもなんてふと思っていた

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