連載小説
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#002 メイドのハンドベル
ITEM#:002
CODENAME:メイドのハンドベル
Object Class:Euclid→Safe

取り扱い方:#002は使用されない場合、常に王城第23宝物庫に保管されています
#002の使用には大臣1人の署名及び王室専属魔術会の室長3名以上の同意が無ければ
使用する事は出来ません、自分自身の署名は室長にカウントされませんライト室長
#002を使用する際は使用目的を述べ使用した結果をレポートとして提出して下さい
但し軽い気持ちでは絶対に使わない事、特にライト室長

追記
ライト博士が#002に近付くのは禁止され
またそれを看過した警備員は降格処分になります

概要:#002は小さな白い陶器のハンドベルです
ベルの振鈴装置は失われています
ベルの内側にはビッシリと未知の魔術式が書き込まれ
解析が進められていますが、解析は難航しています

#002は石造りの船にて発見されました、当初はベルを鳴らそうと振った者の魔力を
根こそぎ奪い取る呪われたアイテムの一種として認知されていましたが
#002が奪い取る魔力の限界値を測定しようと様々な魔法使いが#002を振りました
最終的にアイク第四室長が降った際に7割強の魔力を奪われました
そして#002の真の特性が判明しました
#002は室長レベルの魔力の持ち主が#002を振った場合
ベルの音が鳴り響き、一番近くのドアから"デイジー"と言う名前のメイドが現れます

"デイジー"は手首が羽毛に覆われ
足が鳥の鱗に覆われている女性でメイド服を着ています
"デイジー"はベルを鳴らした者のフルネームを適切な敬称で呼び
仰せ付けを受け付けます
彼女が個人名を知る手段は本人曰く"呼ばれた際に頭に入ってくる"らしく
目的は"メイドとして未熟な為、研修の一環として"と語ります

"デイジー"の与えられる大部分の合理的な要求は
満足の行く結果になりますが、限界が存在します
例えば"デイジー"はお使いと命令すれば日によってまちまちですが大体3万G以下の価値が有る物は持って来る事が出来ますが
それ以上の物は持って来る事は出来ないか持って来たとしても必要経費を要求します
これは本人曰く
"呼び出す際に支払われた魔力分の仕事をすると言う契約内容なので"だそうです
支払われた魔力分の仕事を終了すると"デイジー"は一番近くのドアから
"帰宅"します
お使いでは直ぐに"帰宅"しますが、単純な作業なら極めて長い時間作業を続けます
例として掃除や食事の支度、洗濯などメイドとして当然のスキルや
地図の測量、税金管理、文章の添削、家庭教師など
知識が無ければ出来ない物事にも対応します
但し、暗殺を依頼した場合"デイジー"は呼び出した者を引っ叩き"帰宅"します
そして暗殺依頼を行った者が再度#002を鳴らしても決して呼び出しに応じません
しかし魔力はしっかりと奪い取るようです

雑事の中で何かを持って来る"お使い"は特殊な様で
ドアを潜り一旦"帰宅"し、家から物を持って来る形式を取ります
ドアから戻って来る時間は通常数分ですが偶に翌日以降になるケースが有ります
これは"業者が持って来るのに時間がかかった"と証言します



インタビュー記録#002-1

デイジー:こんにちわ、アイク博士、再びお目見え出来て恐悦至極でございます
本日のご用件は?

アイク第四室長:今日は色々と君に聞きたい事が有ってね
まずフルネームと生まれを教えてくれないかな

デイジー:デイジーと言う名だけです
姓は有りません、生まれは記憶に御座いません
遠い昔の事なのでご期待に添えず申し訳ありません

アイク:遠い昔?君の歳は幾つだい?

デイジー:またもご期待に添えず申し訳御座いません旦那様
私達の種族には自身の年齢を数える習慣が御座いません

アイク:大体で良いよ

デイジー:前に良くして頂いたご主人に大体4,50年位お仕えしました
それ以前は思い出せません、申し訳有りません旦那様

アイク:君は歳を取らないのかい?

デイジー:いや、幼年期が有りますので成長はしています、はい
あまり思い出せませんが・・・申し訳有りません旦那様

アイク:そうか、面倒だし以後は様付けしなくて良いよ

デイジー:かしこまいりました

アイク:じゃあ次にお使いを頼んだ際に君はドアを潜って持って来るけど
何処から持って来るんだい?

デイジー:家からです

アイク:君の家?前に君は金塊を持って来たと記憶しているが、それは?
金塊頼まれて自宅に偶々金塊有りましたーって可笑しいだろ
(このインタビューの前の実験で金塊を持って来て貰った)

デイジー:業者に頼みました、その為お待たせしてしまって申し訳有りません
ですが注文しておいてお金を支払って頂けないのは頂けないです
(#002が何でも無料で持って来てくれるとばかり思っていて代金を要求された際に
断ってしまった、反省してます-第七室長ライン)
インタビュー記録に注釈入れんな-第四室長アイク


アイク:彼女もそれには反省していたよ、無料で何でも持って来て貰えるかと

デイジー:ベルの内側に契約内容を書いたのは流石に問題有りましたかね

アイク:あ、このベルの内側のビッシリ書かれた文字って
召喚の為の魔方陣じゃないの?

デイジー:魔方陣なども入っています

アイク:へぇ、この魔方陣に関して色々聞きたいんだけど

デイジー:それは外注でして私は存じ上げません
委託先は人間との取引を行っていないので
紹介する事も叶いません、申し訳有りません

アイク:そういえば君は人間じゃないよね、何なんだい?

デイジー:キキーモラと言う種族で人間の方と御契約を結んで勤労しています
元々はハーピーと言う鳥の翼と足を持つ種族と酷似していましたが
丹念な奉仕を行えるように変化しました

アイク:良く分からないが種族全体で使用人の様な事をしているのかい?

デイジー:はい

アイク:妙な種族だな・・・君の様な存在が他にも居るのかい?

デイジー:はい、最も私の様な流れのメイドでは有りませんが・・・
私は未熟者なので研修の為、転々と流れています

アイク:・・・ちょっと良いかな、前の実験で君に色々させたが
どれもウチで雇用しているメイドよりも上手に出来ていると思うが・・・

デイジー:私の種族では未熟なのです

アイク:分かった、では少々頼みたい事が有るが、良いかい?

デイジー:何なりと

アイク:君の言う業者から購入出来る最も高い商品を買って来て貰いたい
お金は十分に用意してある、3000万G位

デイジー:止めましょうよ

アイク:ん?

デイジー:そんな欲しい訳でも無いからと国民からの税金でしょう?
無駄遣いをするのは如何かと思いますよ?

アイク:お、おう、では保存食を頼む3000万G分

デイジー:業者で頼むよりこの近辺で買った方が良いですよ

アイク:・・・・・じゃあ3000万G分の金塊を頼む、金塊は前にも購入したし行けるな?

デイジー:ええ、ですが前回とは金額のスケールが違います
良くお考えください3000万G分の金塊って必要ですか?

アイク:・・・・・・・要らないな、けど何だ、3000万Gの買い物面倒なのか?

デイジー:主人に対してついつい過干渉を行ってしまう、故に私は未熟者なのです
前の主人はそこが良いと仰って頂けましたが・・・

アイク:正論だから、俺も何も言わないけどな、でもそうだな・・・
何か俺達の役に立つ物を買って来てくれ

デイジー:かしこまいりました

デイジーはは立ち上がりインタビュー室のドアへ向けて歩きノブを回した
実はこのドアの裏で騎士がドアを開けさせまいと待機していたが
デイジーは押して開くドアを引いて開き"帰宅"翌日戻って来た

デイジー:お待たせしました、役に立つ物と言うリクエストだったので
とりあえずホッチキスを買って来ました

アイク:ホッチキス?何に使う物だ?

デイジー:紙を纏める際に使う道具ですね

実際にホッチキスの使い方を実演してみせた
確かに便利だが魔術や特異な物ではない通常の技術なので詳細は省く

アイク:何これ、超便利だ、凄いな、次は・・・そうだな

デイジー:買って来てなんですが
こうやって技術的に優れた物を持って来ると言うのは
こちらの世界の為にならないと思うのですので
次からはこの世界に有る物でご注文お願いします

アイク:・・・・・うんデイジー
君は俺達の事を良く思ってくれる素晴らしい従者だよ!!

デイジー:お褒め頂き恐悦至極

アイク:皮肉だよ!!

この後、炭鉱での労働を命じましたが嫌な顔をせずに
只管ツルハシを振い続け2日後に"帰宅"しました

このホチキス便利だけどもっと凄いの頼めば良かった・・・-第四室長アイク

インタビュー終了


#002のクラス格下げを要求する、デイジーは過干渉する事も有るが
良識が有り大事には至らないだろう-第四室長アイク

格下げ申請を受理する-国王


付録
#002の使用報告レポート

使用者:レフ第二室長
デイジーへの要望:漫画作家[編集済み]のタッチ
絵柄で純愛[削除済み]の漫画の執筆
結果:作家[削除済み]のタッチを知る為に同氏の作品数点を閲覧
「確かに絵は上手いがエルフを[削除済み]している作品ばかりで
話の作り方は単調で面白くない(意訳)」と評し
同氏の最大の特徴であるエルフの[削除済み]顔のシーンを純愛作品でやるのは
聊か話に整合性が無くなってしまうので描けないと丁寧に断った

ここまで考察までするとは・・・出来る!!-レフ第二室長


使用者:グデラス大臣
レフ第二室長にベルを鳴らせ、大臣の言う事を聞く様にと指示を出した
デイジーへの要望:適当な人物の暗殺
結果:グデラス大臣は引っ叩かれデイジーは帰宅した

女に引っ叩かれた位で泣かないで下さい大臣-レフ第二室長

普通に引っ叩いて無いぞあのアマ・・・歯が折れた-グデラス大臣


使用者:ライン第七室長
デイジーへの要望:マッサージ
結果:呼ばれるなり前回の要望時の金塊の買取りを要求され指定の金額を支払い
マッサージを受ける、今までで最高のマッサージと絶賛した


使用者:キーパー第五室長
デイジーへの要望:特に何も指示をしなかった
結果:キーパー室長が眠気で一瞬傾いた隙に"帰宅"した
それまでは微動だにしなかった

まさか何もしないというだけでここまで爆笑するとは思わなかった-ライト第一室長

おっさんと美少女メイドが3日向き合い続けるってシュール過ぎるわ-レフ第二室長


使用者:大臣マラカス
大勢の魔法使いに#002を持たせて鳴らさせた
デイジーへの要望:家の掃除
結果:召喚すら出来なかった


使用者:ライト第一室長

これはまだ取り扱い方がはっきりと定まっていなかった頃の物です
現在ライト第一室長が#002に近付くのは禁止されています

デイジーへの要望:悪戯の仕込みの手伝い
結果:大方の予想を裏切りデイジーは諌める所がノリノリで仕込みを手伝いました
様々な椅子に[編集済み]を仕掛けました
結果王族の方々が大恥をかく結果になりました

ライト室長は#002を鳴らしてはいけない、良いな-国王

了解しました-ライト室長以外全室長


使用者:ジャック第十三室長
デイジーへの要望:不死鳥の羽
結果:デイジーは要望された物の意図が分からず狼狽し何度も聞き直しました
最終的にジャック室長が折れ
「魔力を流すのに最適な羽ペンの材料となる羽」と言い直し
デイジーは自分の羽を一枚渡しました、この羽で作られた羽ペンは
ジャック室長が使っていた物の5割増しの性能を誇ります

素晴らしい・・・箱に入れておこう-ジャック第十三室長

使えよ-レフ第二室長



使用者:"K"第六室長
デイジーへの要望:我々が#■■■■と呼ぶ物の無力化
結果:デイジーは酷く狼狽え自身にはそれを行う事は不可能と話しました

#■■■■は情報漏洩しただけでもアウトな代物だ
以後慎む様に、実験の監視してた連中の記憶消すのも面倒なんだぞ-アイク第四室長



使用者:ライト第一室長

#002に向かい石を投げつけた

デイジーへの要望:12本の万年筆
結果:召喚には成功、直接#002を持たずとも鳴らせれば良いらしい
デイジーは"帰宅"後、2分で戻りライト室長に12本の万年筆を手渡した

一体万年筆を何に使う気だ・・・-レフ第二室長

私の部屋に有った万年筆がさりげなく取り換えられていますね-キーパー第五室長

待て待て12本の万年筆を手に入れて
そして室長の部屋の万年筆と取り換えられたと言う事は・・・-アイク第四室長



使用者:ライト第一室長

警備員の1人に鳴らす様に頼んだ

デイジーへの要望:不明
結果:召喚には成功、誰かが鳴らしたとしても鳴らす様に指示を出したのは
ライト室長なので問題は無いとデイジーは証言した
デイジーとライト室長が一緒に居る所を見られて事態は発覚した
何をデイジーに頼んだかは不明で
デイジーも雇用主のプライベートは話せないと黙秘を貫いています



使用者:恐らくライト第一室長

何故#002を鳴らせたか不明

デイジーへの要望:土木作業?
結果:デイジーが何故か何時ものメイド服では無く、シャツとズボンの姿で
大量の石材の破片を猫車で運んでいる所を発見された
また見つかった時に、とんでもないスピードで"帰宅"した


ライト室長が二度としてはならないリスト
その38:#002を鳴らしてはいけません
a#002に物をぶつけるのも駄目です
b誰かに鳴らすのを頼むのも駄目です
c#002の鳴らすの定義を調べる為と言うのは良いのですが
その理屈ならデイジーに何かを頼む必要は無いですよね?
d一体何をしたんだ、如何やって#002を鳴らしたんだ?
お前を殺そうかと大臣達画策し始めたぞ
15/07/18 03:30更新 / Mr.後困る
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■作者メッセージ

参考にしたSCP及びインタビュー
SCP-662 執事のハンドベル
執筆者Rick Revelry様
http://scpjapan.wiki.fc2.com/wiki/SCP-662

参考にしたインタビュー
662-L1
執筆者Rick Revelry様
http://scpjapan.wiki.fc2.com/wiki/662-L1

閲覧7000越えありがとうございます、これからも頑張っていきます

さてデーズさんの様な完璧な執事キャラにしようとしたら何時の間にか
オカンみたいなキャラになっていた、プロットではこんな筈では無かった筈なのに・・・
キャラが勝手に動くのは楽しいですが、やり過ぎたかな、今回

何だか最近どんどん文章量が多くなっていますね
それ自体は良いのですが書いてみたら文章量少ない、でも何時も文字数多いから
もっと付け足さなきゃとか考え始めて結果、文章がグダグダにならないかと心配しています

今回は執事からメイドに変えてみただけなので結構楽な回でした
原作のデーズさんとブラックウッド卿は主従関係なので、こっちでもデイジーさんとホワイトアッシュ卿を絡ませようかなと思います

次はちょっと無理して元ネタ無しの物を書きます
但し、魔物娘本来の特色を拡大解釈した物なので少々受け付けられない物かもしれません、ではどうぞ

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