連載小説
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ギルタブリルの場合
あなたはカウンター席でお酒を飲んでいた。店内は数人の客
カウンターにはマミーが1人。
あなたは店番がマミー1人しかいないことが気になっていました。
常連のあなたは店番がマミーの場合1人ではなく複数で店番することを知っています。

「今日の店番は君ひとりなの?」
マミーに尋ねる。

「いいえ、私はアシスタントなんです。今日の当番の者は用があって遅れて来るんです。」
「なるほど」
納得するあなた。
しばらくして店の扉が開く。
客かと思いあなたは入口を見る

「遅れてごめんなさい。」
入ってきたのはギルタブリル。
店内が少しざわつきます。無理もありません、砂漠の暗殺者と呼ばれるギルタブリルはその名の通り気に行った男性を見つけると気付かれないよう近づき尾の毒針で刺して巣にお持ち帰りしてしまうのです。そしてその毒で体の自由を奪われた男性はひたすら犯されてしまうのです。

「この時間帯にひとりはきつかったでしょ」
「いえいえ、そんなことは」
アシスタントのマミーを気遣うギルタブリル。
彼女が今日の当番のようです。

「ありがとう、少し休んでて、あとはこっちでやるわ」
カウンターに入るとマミーと仕事の引き継ぎをする。

「会計お願いします」
「こっちもー」
店番がギルタブリルに変わるとお客たちがあわてて次々と帰って行きます。
店内にはあなたと彼女の2人だけに

「2人だけになっちゃいましたね」
あなたは話しかける。

「もう慣れたわ、あたしが担当の時はいつもこうなの」
「・・・そうなんですか」
「お陰で仕事が少なくて楽だわ。それより追加の注文は?」
「それじゃ・・・」
おかわりを注文するあなた。早速作り始めるギルタブリル。

「・・・・楽すぎてつまらないわ」
作りながら彼女が小さくつぶやいたのをあなたは聞き逃しませんでした。

「・・・・・。」
あなたは何か言葉をかけようとして何も言えませんでした。
この日、2人の会話はそれ以降ありませんでした。








数日後、あなたはカウンター席でお酒を飲んでいました。
店番はあのギルタブリル。店内にはあなたと彼女の2人だけ。
他の客は怖がって扉を開けてやめるか入店してもすぐに出て行ってしまいます。
客が少ないということで今日はアシスタントのマミーは来ていません。



ギルタブリルがグラスを拭く手を止め、あなたに話しかける

「あなたはあたしが怖くないの?」
「・・・怖くないと言えばうそになるかな」
「じゃあ、なんでここに来るのかしら?」
「うーん、・・・怖いもの見たさかな」
「そう」
そう言うと再び手を動かす。2人の間に沈黙が訪れる。
あなたは静かにお酒が飲めるので都合がいいのだがギルタブリルにはこの沈黙は少しつらいようでしばらくして再び。

「あなたのような客は初めてだわ」
「みんなは君のことを避けてるみたいだけど、その・・・・僕はきれいだと思う君のこと」
あなたは何とか言葉をひねり出し彼女に言いました。

「・・・・慰めてくれるの、優しいのね」
「・・・・・。」
急に恥ずかしくなり黙ってお酒をあおる。
この日もこれ以降会話はありませんでした。








それからまたしばらく経ってあなたは彼女のことが気になり店に訪れましたがあいにく店番はあのギルタブリルではありませんでした。そんなことが何回かあり、あなたはいつ彼女の店番になるのか尋ね、その日を狙うことにしました。

当日、あなたが店を訪れると彼女はいました。
あなたはカウンター席に着きます。店に他の客はいません。
「いらっしゃい」
彼女はカウンターから出て入口の開店と書かれた看板をしまいました。

「今日はもう誰も来ないから・・・。注文はいつものでよかったわね?」
あなたはうなずく
しばらくして注文した飲み物が出され飲み始めるあなた。
静かに時間だけが過ぎてゆく。


「マミーたちから聞いたわ、あなたがあたしに会いたがってるって。あたしに会いに来るなんて変わってるわね、あなた?」
あなたに話しかける。

「そうかな・・・それに君は襲ってこないみたいだし」
「大人しいふりをしているかもしれないわよ?」
「かもしれないですね」
苦笑いするあなた。


「それから私のこときれいだって言ってくれたわね」
「・・・うん」
「うれしかったわ、あたしに興味を持ってくれたんだから」
心情を吐露するギルタブリル。

「前に怖いもの見たさだって言ってたけど、今のあなたはあたしのことどう思ってるのかしら?」
「・・・まだよくわからないかな。」
「そう・・・つまりあたしが本当に怖いのかどうかまだ知らないのよね?」
言いつつカウンターをよじ登りあなたの目の前に迫ってくるギルタブリル。

「ちょっと」
驚き立ちあがろうとするあなた、しかし大きなハサミに両腕を挟まれ着席させられてしまう。
彼女の両手であなたの顔が固定される。鼻の頭がつくかつかないかくらいの距離まで彼女は顔が近づける。
チクリと太ももに痛みがはしる。全身が動かなくなるあなた。


「教えてあげる、本当のあたし」



どうやらこの日は2人は活発な会話ができそうです。

14/05/20 23:16更新 / 明後日の女神
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■作者メッセージ
というわけでギルタブリルの場合でした。
個人的にはギルタブリルさんがこういう店に一番似合ってると思うのですが
読者の皆さんはどうでしょうか

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