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『外伝♪ アイルー&メラルーの場合』


「にゃ〜…いっぱい採れたかにゃ? 二人とも?」
「オッケーにゃ!」
「大丈夫ですにゃ!」
岩肌が剥き出しなその一角。ついでに言えばもう目と鼻の先に砂の山が延々と見える。
にゃーにゃー口調の小さい生き物たちは肩から提げているバックにこんもりと鉱石であろう物を詰めてちょうど立ち上がったところであった。

「んみ〜…それにしても暑いですにゃ〜…」
「サクラ、それはここが砂漠だからにゃ」
「んにゃ! それは分かっていますにゃ、メルー姉さん! それでも暑いということにゃ〜…」
毛色が桜色したユクモ装備の猫…アイルーは岩陰に座ってへたりながら文句を漏らすとそれを「何言っているの? この子」見たいな視線と共に旗本装備のメラルーが問いを返すもお気に召さなかったようである。

「にゃぅ〜…」
「にゃにゃっ!? 大丈夫かにゃ!? ハッカちゃん?!」
「にゃぅ〜…世界がぁ〜回るにゃ〜…えへへ…」
その問答をしているとなにやら二人の視界の端にふらりふらりと揺れる影が…。
気になってそちらに振り向くと目が漫画のキャラのようなグルグルになって千鳥足になるもう一匹のオトモがいた。
どうやら砂漠の熱による熱中症のようで…。

「た、大変にゃ! すぐにマスター達の下へ行ってクーラードリンクを貰いにいかにゃいとっ!?」
「私が担ぐにゃ! メルー姉さん!」
「分かったにゃ! ハッカの荷物はあたしが持つにゃ!」
重度の熱中症になったガイドネコ装備の妹分のハッカを担いだサクラとメルーは急いで岩肌を駆け下りてそれぞれの雇い主の下まで風の如く駆けるっ!


しかし…


「あ、ご主人様たち…」
「おーi…」
砂漠のど真ん中で背を預けあう男女のハンターを見つけるとその二人に近づいて声をかけ…


ざばぁぁーーっ!!


『えっ!? ご、ご主人様ぁぁーーー!!』
タイミングがいいか悪いかといわれればまさに最悪であった。
あと数メートルというその目前で彼らの雇い主が下からの急激な突き上げにて大空高く舞った瞬間なのだから。
行き成りの強襲に対応が間に合わず、そのハンターのペアはほぼ隣同士になる形で数m先に投げ出されて突っ伏してしまうのだがすぐに顔を上げて上体を戻して抜刀しながら後ろを向く。


だが!


「あぁ! 尻尾! 尻尾にゃぁぁぁ!!」
「ご主人達しゃがんでぇぇぇ!!」
そのアイルーたちの的確な声空しく横からの尻尾による追撃でハンターたちはそのまま尻尾をほぼノーガードで食らってしまう。

・・・南無三。


ドゴッ!


「っぎゃぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・ァァァ・・・」
「っきゃぁぁ・・・・・・・・・・・・ィィァァァァ・・・」
残響を残して飛んでいくハンター達の放物線の落下予定地にはくしくも湖が出来ておりすぐそばには滝があった。
ハンター達は着水した後暫くその衝撃で動けないところに滝に巻き込まれて落下という不運な事故に見舞われてとてもクエストが出来る状況ではなかたのは言うまでもない。

そしてアイルーたちの前に立ちはだかる黒い大きな塊は雄たけびを上げる。

「ぐぉぉぉぉぉぉーーーーーーー!!!!」
(あたいのシマに勝手にはいってくんじゃねぇぇ!!!)

荒ぶっていた。
彼女、ディアブロス亜種はちょうどここを縄張りとし、黒角竜の名に恥じない黒くて太く大きく捻じ曲がった角を使い砂漠に住まう「あらゆる生き物」をすべて追い出していた。
まさに砂漠に降り立った暴姫だ。

「に゛ぃぁぁ!! ディアブロス亜種にゃぁぁぁぁ!!!!??」
「あへへ〜なんかぁ…きもちよくなってきたにゃぁ〜…♪」
「だぁ! サクラ落ち着くにゃ! ハッカはまだソッチいっちゃだめにゃ!!!」
勿論ほぼゼロ距離の彼女らにとっては恐怖以外の何者でもないのは明らかで、しかも一匹戦闘不能な上にもう一匹も看護のために戦えないというまさに絶体絶命に等しい状況にサクラはあわあわと慌てだしてしまう。
だがクエ慣れしているメルーがサクラに一喝して落ち着きを取り戻させることに成功した。

「…し、仕方ないにゃ…サクラっ! 逃げ切るためにも戦うにゃ!」
「にゃにゃっ!? …し、しかたないのかにゃ…や、やってやるにゃ!」
「えへへ〜やってやらぁにゃぁ〜」
決意を胸に二匹と一匹はディアブロス亜種と対峙すると向こうもこちらに気付いて振り向きざまに突進の体制をとる。
そしてあちらが今まさにアイルー達へ駆け出した、その瞬間。

ピカッ!

「うみゃっ!?」
「ま、眩しいにゃっ!?」
「えへへ〜ぴかぴかぁ〜♪」
足元が異常な光度で輝きだして思わずそれぞれの獲物を手放して目を守ってしまったアイルー達は光が晴れた次の瞬間には彼らのいた場所にピッケルと杖を残して跡形も無く消え去っていた。

…ディアブロスと共に。



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「…うみゅぅ…ハッ!?」
眩しさが段々と収まっていきメルーが恐る恐る目を開ける。
すると 目の前には…


ひゅぅっ


風きり音を立てて自分達に迫る大きな大きな槌状の尻尾の先端がっ!!

「に゛ゃぁ!? 」
「に゛ぃ?!」
サクラもそれに気がついたようだがその速度はあまりにも速くて…

ドゴッ!


「みぎゃぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・ァァァ・・・」
「イ゛ェ゛ァァァ・・・・・・・・・・・・ィィァァァァ・・・」

クリーンヒット。

そのままメルー達は空の彼方まで吹き飛んでしまう。
しかし空に上がったということは自然、落ちるのみということで…

「ァァ…ぁぁぁあああ!!!(ボグゥッ!) み゛ぃ!?…(ドサッ」
「ァァァ…ぁぁああ!!(ドゴッ!) フミ゛ィ?! …(バタッ」
「…えへへ…へ…キュゥゥ〜〜…(ペタン」
運がいいのか悪いのか彼らは木々が生い茂る森の中の太い木の幹にちょうど当たり打ち所が悪かったのかメルーとサクラは変な声を上げて数十センチ下の苔むした地面までうつ伏せになるようにして倒れこむ。
メルーの背に背負われていたハッカもとうとうダウンしてしまいそのままメルーの背の中で突っ伏してしまったのであった。
…倒れこんだ彼らの周りにはさっきまでサクラとメルーが装着していた防具の破片が散らばっておりディアブロスの衝撃が如何程のものだったか物語る

小鳥のさえずりが聞こえる森の中…。

そのまま彼女らが倒れて数分が立つと何か遠くから風のせいとは違う自然に出るものとは全く違う不自然な木の軋み音が徐々に近づいてくる。

…バサッ…ギシッ…ミシッ…ドサァン!

暗がりから目を紅く輝かせながら木々を飛び移ってきたそれはアイルー達に気付いた、というよりもアイルー達がいる場所が目的地だったようでその深い蒼の毛並みの巨躯をアイルー達を踏まないようにして彼らの前に降り立つとふぅ、と一呼吸置いて…

『…なんでアイルーちゃんたちがいるのかしら? 』
と首をかしげる我等がナルガのアリアさんが発する。
実は森林内を警邏中だったアリアが空の彼方から飛んでくるアイルー達を見つけていち早く駆けつけたのだ。
やがて人型に戻ったアリアは一匹一匹見て周り怪我が無いか確認する。
しかしアイルー達、その中でも一匹は特に荒い息をして全身が異常なほどの熱を持っているのを確認するアリア。

「えっ?! やだこの子すごい熱…急いでセイヴさんに診せに行かないとっ!!」
そういうやアリアは小脇に一匹と二匹に分けてアイルーを抱え込んで人型のまま先ほどより落ちるスピードで森の木々たちを縫うようにして飛びはじめるとあっという間に森の出口までついてしまう。
そのまま彼女はその足のスピードを緩めることなく街医者であるセイヴのところまで駆けて行く。
そして医院の入り口まで来るとドアを申し訳ないと思いながらも蹴り開けて中の受付嬢が驚くのも気にせずに事情を説明する。

「すいません急患ですっ! うち一匹が酷い高熱ですっ!!」
「は、はいっ! すぐにタンカを!…っえ!?」
「ん? …えっ!?」
殆ど怒鳴るようにして告げると看護婦たちはすぐに動き出すがココで思わぬ現象が…
なんと彼らアイルーが青白い光に包まれていってしまったのだ。
小脇に抱えていたアリアもそれに驚いて近くの待合所のソファに彼らを急ぎ寝かせる。

すると自分達と同じように彼女らの体は徐々に「あちら」から「こちら」の者へと変化を始めていく。
順にその様子を見ていこう。



まずサクラ。
彼女は徐々に背が伸びて行き大体160くらいの身長で止まった。
…胸はそこそこある。
そして顔立ちは右に泣き黒子がある美しい聖母のように慈愛を感じられるものへ。
白磁のような肌に紅い林檎の様な色の唇。
…そして腰から伸びる尻尾と耳が付いている肩口迄のショートカットの髪の毛は薄い桜色である。

次にハッカ。
彼女は背が少しだけ伸びて大体130くらいで止まった。
…ぺったぺた。何が、とは言わない。
顔は童顔、というより童そのままで眉毛がちょっと太い。
サクラと同じように白磁のような肌と頬が熱のためか真っ赤にっていた。
…腰からは2本の尻尾、肩甲骨下まで伸ばした髪には耳がありそれぞれ薄い水色をしている。

最後にメルー。
三匹の中でもどんどん背が高くなっていき成長が止まったのがアリアとほぼ同じ190くらいである。
…たゆんたゆんでも型崩れしていない弾力を誇っている。
顔は凛という言葉がしっくり来るような切れ長の目で細い眉。
他の2匹と違って肌はこんがりとした小麦色になり、その肌色はアリアが知る中でもっとも近いものがアヌビスのラガのものだった。
…腰から尻尾、頭から耳は一緒であるが毛色が『白銀』である。



粗方変化が終わったのか光が段々収束していくと真っ先に我に返ったアリアが看護婦達に治療を再び依頼すると看護婦の方達も順次準備と治療始めるのであった。

壁掛けの時計が遅れなく正確に秒針を進ませる…。

一体何回りしたか分からない秒針を見つめながらアリアが院内の待合所にてソファに座して待っているとアイルーの騒ぎを聞きつけたトルネオが入り口から扉を両手で押し開いてとことこと小走りにて彼女の隣までやってきた。

「なんじゃコッチもか…」
「『コッチも』?」
「うむ、先ほどまた召喚されたらしくてのぅ…こちらはインスとパイアに任せてもうそろそろ帰ってくる頃じゃ」
バフォメットのトルネオがアリアの横にぽふんと音を立てて腰を落ち着かせながら話しかける。

「あらら…あ、もしかしたら彼女達もその時に…」
鋭い。アリア鋭い。

「まぁそれはおいおい調べるとしよう。まずは治療が先決じゃ。」
「えぇ、そうですね…」
そのまま彼女らはそこへいたがトルネオはリオレウスのインスたちが帰ってきたということでその場を後にするもアリアだけは看護婦が大事を告げるまで待っていたという…。


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「…ぅ、う〜ん…っはっ!? こ、ここは!? 」
「みゃぁ〜…もう食べれなぃ〜…Zzz…」
「…へ? だ、誰? この…ネココスのハンターさんは…??」
真っ白い部屋の中、三つ横に並んだベッドのうちの一つ。
桜色の毛並みのワーキャットが弾かれる様にして起き上がり左隣を見ると幼さが残る見た目幼女の耳と二本の尻尾を生やした水色の毛の少女が枕を大事そうにギュッと抱え込んでムニャムニャと寝言を呟いていた。

「起きたかい? サクラ」
「ふぇっ!? …え、ど、どちら…様?」
「やだねぇ…あたしだよ。メルーだよ?」
その可愛い寝言を言う幼女に暖かな微笑を送っていると不意に顔を向けているほうと反対側から声をかけられてそちらに振り向くと病人服を着た長身の美しい女ハンター(?)が壁に凭れ掛かって彼女へと視線と微笑を向けていた。
自分の名前を見ず知らずの他人に呼ばれてかなり動揺を隠せない彼女だったがサクラの様子を困った顔をして壁に凭れていた女性が自分の顔を大きな猫手でピッと指差してニヤッと笑う。
…彼女が更に混乱したのは言うまでも無い。

だがそんな彼女のことはお構いなしに病室のドアが開けられると自然と目が覚めているものはそちらに向かって顔を向ける。
そこには白衣の男と水色と桃色のナース服を着た…竜人(?)らしき女性がいた。

「お? なんだ元気そうじゃねぇか」
「どうメルー? 話は伝わった?」
「そっちの娘の診察に着たんだが…君らはインス達とは知り合いかい?」
ぶっきら棒な青ナースはサクラの様子を見てニカッと笑い、桃色ナースはメルーに問いかけるもメルー(?)は両手を挙げて苦笑い。
白衣を着た男性はそのままサクラを通り過ぎて隣で寝ている女の子に服越しに聴診器を当て始めた。

「え? は? え?」
「サクラ、その子たち『蒼火竜』と『桜火竜』だよ?」
「…キュゥゥ…(ポフン」
え、は、へ、と混乱の余り単語しか話せないサクラにメルーと呼ばれた女性は更に爆弾を投げ込むとサクラは耳と尻尾をコレでもかとバタ付かせてしまい冷静さを欠いて…そのままフカフカの枕へ倒れた。

「あー…ちゃんと説明してやらなかっただろ? お前」
「いやー…いつも真面目なサクラの慌てっぷりが面白くて…つい、ね♪」
「…たちが悪いわぁぁ!」
意識が遠のく前に見たのは青ナースに裏拳ツッコミを入れられるメルーと名乗った女性だった。
だが桃色ナースによる当身ですぐに現実へと戻ってきたサクラは同じように起こされた幼女と共にこの世界と自分達に起こった異変を説明される。

「…という訳だ。何か質問は?」
「…えっと…じゃあココでの生活になるってこと?」
「そうですね。そしてここから元の世界には戻れません…今では戻る気は更々無いですけどね…
アイルー達全員は一頻り説明を受けて一応は納得したようで、サクラの最終確認にもパイアが答える。
…惚気が最後に付いたが。

「というわけで説明は以上だ。これからどうするんだ? お前らは? あ、オレの名前はインスだ」
「衣食住は保障されているけどそこから先は貴方達しだいよ? 私はパイアね」
「…どうしよう、メルー姉さん?」
変化して行き成りのことに今だ戸惑いを隠せないサクラは自身の中で最も頼りになる姉御であるメルーに救いの視線とともに質問を投げかけるとその答えはあっさり返ってきた。

「ん? とりあえず町を見ましょう。話はそこからでいんじゃないかな?」
「あちきもさんせぇーぃ♪」
「えっ? ハッカまでぇ?! じゃ、じゃぁ私もっ!」
まずは自分達の置かれている状況を理解するべく行動派のメルーは町に行くことを提案したのだ。
それに喜色満面の笑みで賛同するのは幼女…もといハッカであり、彼女だけ対応が遅れる形になってあわてて彼女も賛同する。

「んじゃ決定だな。あぁ、町に行くなら下に居るヤツに声かけていけよ?」
「えぇ。あの人たち貴方達に会いたがっていたから♪」
『…??』
あの人とは一体…???

「まぁ…とりあえず着替えろよ」
「へ?  これ脱げばいいの?」
「…おい、いや…まてまてまて…まさか…」
そんな疑問を抱きながら彼女らはそのままで行こうとして止められて青ナースから着替えろといわれるも彼女らの頭の上には疑問符が…
青ナースはまさかと思ってとある疑問を彼女らにぶつける。





「お前ら…服着たこと無いのか!?」
「服? 服ってなんですか?」
「鎧とかとは違うのかしら?」





…ニャンニャンズ以外が盛大なため息をしたのは余談である。

その後服についてインスから熱烈な説明がありインスとパイアのものから数着借りて退院の手続きをとったのであった。
…インスはトルネオによってファッション・マニアになっていたのだっ!!(ババン

そして医院の入り口に着くとそこにはアリアと共にサクラほどの身長で白髪に白肌に白い鱗と白で眩しいくらいに包まれた熟女と、メルーとアリアと同じ位に背が高く先ほどの人(?)と違い黒一色にまとまった凛とした表情の女の人が居た。

「ぁ…よ、よぅ…怪我は…そのぉ…大丈夫か?」
胸の前で腕を組んで待っていた黒一色の人が彼女らへいち早く気付いて彼女らに気さく、とまでは行かなくとも出来るだけ自然を装って声をかける。

「スパイクったら…ふふ♪」
「はじめましてアイルーちゃん…いえ、元アイルーちゃん達♪ 私は元フルフルのシィアズィー。よろしくね♪」
「あ、お、あ、あたいは元ディアブロスのスパイクだ。…そのぉ…尻尾で飛ばしちまったみたいで悪かったな…」
にこやかな挨拶のシィアズィーに対して俯いて眉尻をひそめるスパイク。
非戦闘員だったメルーたちを攻撃したのがちょっと心に引っかかっているようで…。

「え、あぁ! 貴女が…大丈夫だよ。私たちはそんなに柔じゃあないからさ!」
「うん。気にしないで下さいね?」
「大丈夫なのだぁ♪」
しかし被害者側の彼女らはとてもあっけらかんとしていた。

「うぅ…ありがとな…っ」
「さて! では…私が元ナルガのアリアよ。気絶した貴方達を運んだのも私ね♪」
「えっ!! あ、ありがとうございましたっ!」
目頭を抑えるスパイクを他所にアリアが自己紹介をする。
サクラはアリアの発言に空かさず謝辞を述べるとクスクスと微笑みのままそのモフモフとした手でアリアは腰を折ろうとするサクラを制する。

「いいの、困ったときはお互い様ってね♪ じゃあ町へ行きましょうか?」
「いきたぃぞぉー♪」
「あらあら元気ね♪」
アリアが手をポンと音も無く合わせて町へ行くことを提案するとハッカはメルーの横から手を上げて明るい声で答えてシィアズィーがそれを見てホクホク顔になった。

「…」
「ん? な、なんだ?」
「ねぇねぇスパイクさん…肩車して?」
そして何故か走り出したハッカは真っ直ぐスパイクの元へよるとジーッと上目遣いでスパイクの顔を見上げるとスパイクはバツが悪いのか困り顔で困惑気味に言葉をかける。

「へ?…あ、あぁ…別に構わないが…よいしょっと…」
「わぁー♪たかーい♪」
「そ、そうか? …へへっ♪」
嬉しそうにスパイクの長身に肩車をしてもらいそれを享受するハッカを見て自然と笑みがこぼれるスパイクとその他の面々であった。

「では…いきましょうか?」
「はーい!!」
「おぅ!」
そして一行は町へと飛び出したのであった。

町の各名所を回っていく間に真面目なサクラと姉御気質のメルーがアリアとシィアズィーへ其の都度質問をし町のことをより詳しく聞いていたそんな中。

「ぅん? ねぇねぇスパイクお姉ちゃん?」
「ん? なんだハッカ?」
「あれ、何をしているの?」
他の四人を他所にすっかり親子のような関係になったハッカとスパイク組みがとあるイベントを見つけたようだ。

「ん? …あれなんだろうな?」
「ちょっとスパイク…って、あら? 料理ショーじゃない?」
『料理ショー??』
先に行くスパイク組みを止めるために呼び止めるアリアがその二人の視線の先に気付いて声を上げるとシィアズィーとアリア以外の面子がそろって首を傾げてしまう。

「えっと…指定された料理をおいしく作るのを見るもの、といえばいいのかなぁ…??」
「ええ、そうですよ。…今回は『オムライス』のようですね?」
「ふぅん…ま、あたいは料理なんて出来ないがな。ハッカもそうだろう?」
興味なさそうに答えるスパイクはそのままハッカに同意を求めようと首を少し上に向けて視線をハッカに合わせる。

…しかしかえってきたのは意外な言葉。

「ん? あちきの得意料理だよ?」
『なん…だと…っ?!』
「…もしかして…キッチンアイルーだったの?」
しれっと然も当然のようにいうハッカはニッと笑いながら返すとドラゴンズの面々が驚愕に染まった。
其の中から逸早く回復したシィアズィーが「あっ」と何かに気付いたそぶりを見せてハッカに質問すると…

「うん! そうだよ!」
「あたしは刺身がメインだったなぁ…」
「私は煮込み系でしたね…」

なんと全員元キッチンアイルーであった!!

「…じゃあさ『おむらいす』? って材料あれば作れるのか?」
「うん! スパイクお姉ちゃん好みの味を作ってあげるよ!」
「…すいません飛び入りは勘弁してください」
すがすがしい笑顔で答えるハッカにスパイクは危うく目の前のイベントに走り出しそうになったがアリアによって止められてしまう。

「なんでだよっ! 愛しのハッカが料理自慢できるんだぞっ!?」
「とりあえず落ち着いて。…ね?(バチバチッ」
「…ハイ、オチツキマス」
可愛い妹…というより娘みたいに接するスパイクが我を忘れかけて再び特攻をかけようとしたところでシィアズィーが笑顔で目に見えるくらい帯電してスパイクに釘を刺してスパイクは体を震わせながらその場に停止した。
…トラウマ…か…。

「じゃあスパイクお姉ちゃんのために作ってあげる! だから市場にいこー♪」
「よしきた! …アリア、市場は何所だ?」
「復活早いわね…じゃあ皆で市場に行きましょう!」
ハッカの笑顔が発破になって再びテンションが上がったスパイクに皆苦笑しながらも笑顔になる面々であった。



…尚、ニャンニャンズが作った料理は食通のシィアズィー曰く。
『これで店を出したら間違いなく売れるっ! 絶対によ!! 』

このことが後にトルネオに伝わり、アヌビスのラガ、果てはエキドナのエレメントにまで伝わり何れの人物からも大変に好評で…結果…。


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「…いやぁ…まさか数週間で出来るなんて…」
「ふふん♪ わしら魔物の技術を甘くみないで貰おうかのぉ♪」
「金に関しては大丈夫だ。どんなにつぎ込んでも私が意見をねじ伏せてあげるから♪」
トルネオ達に知られて数週間、彼女らがこちらに来てから一ヶ月余り。
其の間にいつの間にやら料理屋を出すということになり…
トントン拍子で話が彼女らの水面下でトルネオ達トップスリーにより進み…
店も出来てプレ開店ということでアリア達一部の関係者にのみ招待状が配られて…

今、アリア夫妻は店の前でトルネオとエレメントと共にたむろっている。

「…やはりあの味は忘れられない…あんなにうまいものは生まれて初めてだったぞ!? 向こうの世界はあれ普通なのかっ!? アリアよ!?」
「う、うーん…私は向こうじゃただの野生のドラゴンだったし…どうなんだろう…」
「あらあら? 皆さんアリアちゃんをいじめてはいけませんよ? ふふッ♪」
すごい剣幕で迫り尻尾をブンブン振らせながらアリアに問うもアリアは汗を流して困り顔になるとそのアリアの後ろからシィアズィー夫婦とともにスパイクが現れた。

「やっと…やっとハッカの料理がもう一回食えるぜっ! うぉぉぉぉぉ!!!」
「…どっ、どうしたの? スパイク??」
「まぁ、気持ちは分からないでもない…」
とはラガの意見。

やがてチリンチリン、と鐘の音が響きそちらを見やるとちょうどドアベルがなり終えた所であった。
そして前回になったドアから黒基調のコック帽とシェフが着るような服をしたハッカ、色違いで青の服のサクラ、白の色違いのメルーが診せの中から出てきて招待して診せの前に来てもらった面々に挨拶をする。



ーーー『ようこそ! 【あいるぅ・きっちん】へ♪』ーーー


行列が絶えない超人気店になる彼女らの店の記念すべき一日目であった。


【完】

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久々の更新♪
今回はアイルー&メラルーでしたぁ!w
…個人的にはメルーさんが一番やっ!(ナニッ!?

ちなみにまだ闘技場ができる前なのでスパイクの姉御は独身の頃ですぜww
しかし、結婚しても足しげく通っては店に居ますが…(汗

いかがでしたでしょうか?(´・ω・)



ちなみに次回は…龍が出たのでMHP3の白いアレにするか、復活記念で釣りにまつわるアイツにするか…うーん…迷う…www

12/03/07 21:32 じゃっくりー

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