読切小説
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ブヒブスブルグ家の夜明け
 ブドルフは、天幕の中で鶏の腿足にかぶりついていた。彼女は、鉄の鎧を身に付けた状態で飯を食らっている。彼女は、夜が開けたら指揮官として都市を攻めなくてはならない。「腹が減っては戦が出来ぬ」という東方の言葉を、彼女は信じている。単に彼女が食い意地を張っているだけだが、そのおかげで臣下の者は戦でも飢える事は無い。
 ブヒブスブルグ家の当主であるブドルフは、領地争いから都市攻めをする事となった。彼女のいる神聖オーク帝国は乱れており、彼女のような田舎領主も戦わなくてはならないのだ。
 ブドルフは、兜を外していた。その顔は健康的な褐色であり、髪は銀色である。肉感的な整った顔をしており、性の魅力がある。鎧を外せば、豊かな胸の目立つ肉付きのいい体が分かるだろう。
 ただ、彼女の特徴は、猪を思わせる耳だ。鎧を脱げば、尻尾が有ることが分かるだろう。彼女は、ハイオークという種族の魔物娘であり、豚の魔物娘であるオークたちを率いている。
 彼女の隣では、彼女の臣下にして夫である者が一緒に鶏を食っている。彼は人間であり、ゲルトハルトという名だ。食うだけ食ったら、二人は性の交わりを楽しむのだ。戦の前には英気を養わなくてはならない。
 突如、「失礼します」と言いう言葉と共に、ブドルフの臣下の者が天幕の中に走り込んできた。「何事だ」と、緊張した顔でブドルフは誰何する。
 臣下の者はあわただしく報告する。選帝侯の急使として、ブヒーフェンツォレルン家のブヒンリッヒ卿が来たと言うのだ。ブヒンリッヒは、ブドルフの旧知の間柄だ。その彼女が、選帝侯の使者としてくるとは尋常ではない。
 ブドルフは、平静を装いながら使者を迎え入れた。

 ブヒーフェンツォレルン家の当主であるブヒンリッヒ卿は、生真面目にあいさつをした。彼女は、体付きが良いハイオークであり、整った顔に険しい表情を浮かべている。いつも険しい表情を浮かべているが、今日は一段と険しい。ブドルフはいぶかしむ。
 それにブヒンリッヒの姿も気になる。戦場に来るのだから鎧をまとうのは当たり前だが、その鎧は正装用の物だ。彼女と一緒に戦場に出た事が有るが、彼女は戦場にそんな物は着てこない。
 ブヒンリッヒは、すぐに本題に入る。彼女によると、ブドルフは「神聖オーク帝国皇帝」に選出されたそうだ。選帝侯会議はブドルフを皇帝に選出し、ブヒンリッヒは選帝侯からブドルフに伝える事を命じられたのだ。
「冗談もたいがいになされよ。いくら何でも、明日は命がけの戦いをする私に言うべき冗談ではありませんぞ」
「このような事を冗談で言ったりはしません」
 責め立てるブドルフに、ブヒンリッヒは憮然として言う。
 確かにブヒンリッヒは、冗談でこのような事を言う者ではない。だが、にわかには信じられない事だ。ブドルフは、帝国南西部の山岳地帯を支配する田舎領主に過ぎない。皇帝になれる勢力は持っていないのだ。
 ブドルフの夫であるゲルトハルトは、彼女の方を心配そうに見ている。だが、それに応える余裕は彼女に無い。
 オークたちの領主であるハイオークは、宙をにらみながら沈黙していた。

 「神聖オーク帝国」という国がある。ハイオークとオークたちの国だ。かつて古代には「オーク帝国」という国が栄えていたが、その帝国は滅亡した。その後継者を気取っているのが神聖オーク帝国だ。
 もっとも、名前負けしている国だ。かつてのオーク帝国の領土の一部を支配しているに過ぎない。しかも現在は、帝国内は乱れていた。皇帝であるブヒードリヒ2世は、主神教団領侵略に失敗した。その結果、彼女は失脚して後継者争いが起こってしまう。三十年間にわたって皇帝が存在しない「大空位時代」と呼ばれるありさまとなってしまったのだ。
 その乱れようは尋常ではない。帝国内の諸侯たちは、勢力を拡大するために戦い合っている。皇帝を選出する役割を果たすべき選帝侯が、その勢力争いの先頭に立つありさまだ。
「おどれ、ワシに楯突こうと言うのか!いい度胸だワレ!」
「貴様、どうけじめをつけるんじゃ!エンコ詰めろや!」
 こんな怒号が帝国中に満ちているのだ。東にある霧の大陸から来た人虎は、帝国内の騒乱を「仁義なき戦い」と評している。
 こんなざまだから「神聖オーク帝国」などと呼ぶのは国内の者くらいである。他国の者は「神聖雌豚帝国」と呼んでいる。「黒豚であるハイオークが、白豚であるオークを支配する国」というわけだ。もっとも支配しきれないのが現状だから、「黒豚白豚雌豚狂騒国」と笑う文士もいる。帝国が外国に侵略されないのは、あまりのアホらしさに放置されているからだ。
 この騒乱に対して介入しようとするのは、主神教団の教皇くらいだ。彼は、ニタニタ笑いながらこう言った。
「ほう、貴卿らは国を治める事すら出来ないのか。では、神に代わって私が治めよう」
 これには、さすがの帝国諸侯たちはあわてた。選帝侯たちは休戦条約を結び、交渉を行った。その結果、選帝侯の責任を持って皇帝を選出する事にしたのだ。
 この時の混乱ぶりは後世に残るものだ。集まった選帝侯たちは、こいつにしろ、いやこのボケはダメだ、あいつはどうだ、あのバカに皇帝が務まるか、などと、てんやわんやの騒ぎである。
 毒を入れられる事を恐れて、選帝侯たちは弁当を持って会議に望んでいる。その弁当は冷めてしまってまずい。それで不機嫌になって、ますます会議は紛糾するありさまだ。
 散々もめた後、ブヒブスブルグ家のブドルフが皇帝に選出されたわけだ。表向きに理由は、義理堅い、公正だという事が挙げられている。本当の理由は、田舎領主だから担ぎやすいという事だ。
 選出されたブドルフは、戦争相手と手早く和睦した。そして帝国議会に出席し、皇帝に選出された事を受け入れる事を宣言した。
 こうしてブドルフは、神聖雌豚帝国皇帝ブドルフ1世として即位する事となったのだ。

 ブドルフが皇帝に即位する時、帝国中の諸侯は顔を見合わせた。
「ブヒブスブルグ家のブドルフ?そんな奴がいたのか?」
 田舎領主に過ぎないブドルフの事を知っている者は限られる。諸侯たちは、ブドルフの選出を呆れたがすぐに納得した。担がれている事が見え見えだからだ。
 帝国は騒乱に飽きていた。そして主神教団に侵略されたくもない。ならば、田舎領主を担いで危機を乗り越えた方が良いと考えたのだ。
 こうしてブドルフの即位は、帝国諸侯の大半の承認を得る事が出来た。

 ただ、承認しない者もいる。帝国東南側の隣国の王であるブタカル2世がそうだ。
「ブヒー、ブヒブヒ!ブヒヒヒヒ、ブヒヒヒヒ!ブヒー、ブヒー、ブヒー!」
 豚が泣き喚いているのではない。ブタカル王が喚いているのだ。彼女は、金のゴブレットを床に叩き付け、絹張りの椅子を蹴飛ばした。
 彼女は、神聖雌豚帝国の皇帝の座を狙っていたのだ。彼女は、隣国の王であると同時に選帝侯の一人なのだ。諸侯の証であるハイオークであり、皇帝になる資格がある。彼女は、早くから皇帝候補として名乗り出ていた。
 ただブタカル王は、他の選帝侯から嫌われていた。隣国の王として強大な勢力を持つ上に、傲慢な野心家だからだ。こんな奴を皇帝にしたら自分の身が危ないとして、選帝侯たちはブタカル王を排除したのだ。そしてブドルフを皇帝に選出した。
「なんで、あの田舎の貧乏貴族が皇帝になるんじゃ!担ぐ事が出来ればなんでもいいのか?だったら、木彫りの人形でも担げや!腐れ×××の××××を担ぐんじゃねえ!」
 このように、自分の居城で喚き散らしている。
 伏せ字となっている所は、馬鹿正直な書記官が記録していた。だが、記録を読んだ後世の歴史家が伏せ字にしてしまっている。
「おのれブドルフめ!他の連中が皇帝として認めても、妾は決して認めぬぞ!貴様を皇帝の座から引きずり落とし、雄豚どもの××××にしてくれる!」
 ブタカル王は、血走った目で喚いた。

 ブドルフは、皇帝になってからは低姿勢に徹した。諸侯たちとまめに連絡を取り、彼女らの話をよく聞いた。諸侯の中にはブドルフを軽んじる態度を取る者もいたが、ブドルフは平静な態度を取る。
 初めはブドルフを軽く見ていた諸侯だが、ブドルフが積極的に諸侯の話を聞こうとするので悪い気はしなくなった。ブドルフは、彼女らの不平、不満、愚痴なども良く聞いたのだ。
 そうすることで、ブドルフは情報を集めたのだ。ブドルフは、諸侯たちの利害損得を知りたかった。そのために諸侯と積極的に交わり、聞き役に徹した。民に対してもよく耳を傾けた。民の利害損得を知るためだ。
 ただブドルフは、口約束をする事は慎重になった。彼女の立場では、口約束を守れない場合が多い。公文書で約束しなければ法的責任は生じないが、口約束を破ると彼女の信用が無くなる。だから、口約束をしないように努めた。そのために諸侯の怒りを買う事もあったが、口約束を破る害に比べればましなのだ。
 こうしたブドルフの態度のために、ブドルフの評価は次第に良くなっていった。選帝侯たちは、自分たちの判断が正しかったと露骨に自慢していた。
 ただ、ブドルフを露骨に敵視する者もいる。ブタカル王がその代表だ。彼女は、ブドルフの戴冠式に欠席して、その後も露骨にブドルフを侮辱する態度を取った。そしてブタカル王の居城にあいさつに来たブドルフを、ブタカル王は門前払いにした。
 門前払いされる事は、ブドルフの計算通りだ。ブドルフは諸侯と話をする時に、この件について持ち出した。そして諸侯たちの反応から、彼女たちがブタカル王を嫌っている事を見て取った。
 こうして状況を見て準備を整えると、ブドルフはブタカル王を潰すために行動に移った。ブドルフは、ブタカル王の婚姻による領地獲得に目を付けた。その手続きに不備がある事を知ると、諸侯を集めて帝国議会を開く。ブドルフは、ブタカル王の領地獲得が無効である事を宣言した。
 当然の事ながら、ブタカル王は反抗する。ブドルフの帝国議会招集に対して、拒否をして欠席する。ブドルフは、これを口実にしてブタカル王を帝国追放刑にした。帝国追放刑とは、神聖雌豚帝国内の全ての権利をはく奪する刑である。
 ついにブタカル王は兵を挙げた。打倒ブドルフを叫んで、帝都に向かって進軍する。全てはブドルフの計算通りだ。諸侯たちの中で、ブタカル王を支持する者はほとんどいない。ブドルフは、諸侯たちを集めてブタカル王を倒すために進軍した。

 ブドルフは、朝日が照らす戦場を見渡した。右手に森があり左手に丘がある平野だ。この平野で両軍はぶつかる。前方には、ブタカル王の軍が整然と並んでいる。両軍とも突撃命令を待っているのだ。
 ブドルフは敵軍をじっと見つめた。報告通り、敵軍はブドルフの軍よりも多い。ブドルフの軍は三万だが、ブタカル王の軍は四万以上いるだろう。ブタカル王は、帝国内での評判が悪いため、帝国諸侯のほとんどが味方しなかった。だが、王国を始めとする広大な領土を持っていることから、兵を大勢集める事が出来る。
 ブドルフは自軍を見渡す。ブタカル王に比べると少ない兵だ。帝国諸侯はブドルフに好意的だが、兵を出して支援する者は限られる。高みの見物をする者が多いのだ。まともにやり合えば、ブドルフが負ける可能性が高い。ただブドルフ軍は、人馬の混ざり合った魔物娘であるケンタウロスの兵が味方に付いている。
 彼女の右隣には、夫であるゲルトハルトがいる。彼は、将軍として彼女と共に戦う。左隣には、ブヒーフェンツォレルン家のブヒンリッヒ卿がいる。ブヒンリッヒは、一貫してブドルフを支持していた。
 ブドルフは微笑みを浮かべると、すぐに顔を引き締める。彼女は手を上げて、兵に角笛を吹かせる。全軍に突撃命令が下ったのだ。地を揺るがす鬨の声が響き渡り、人馬が駆け出す。土埃が舞い、人足と馬蹄が地を叩く音が響く。
 土が舞う平原の中で、剣や槍、鎧が日の光を反射する。人馬が駆け巡る中で、矢が風を切る音が響き、剣と槍が交差する音が鳴る。その中で軍旗が必死に振られる。
 ブドルフ軍は次第に押されていた。ケンタウロス兵が頑張っているが、敵の大軍が力押ししてきているのだ。ブドルフ軍は後退を余儀なくされている。
 ゲルトハルトは、ブドルフの顔を見る。ブドルフは不敵に笑うと、じっと戦場を見つめている。そして顔を上げると、手を上げて合図をした。側にいた兵が角笛を吹く。
 右手の森からオークの歩兵が、左手の丘からケンタウロス兵が現れた。彼らはブタカル王の軍に側面からぶつかっていく。叫喚が響き、剣と槍のぶつかる音が鳴らされ、土埃が高く舞う。ブタカル王の軍は崩れていく。
 ブドルフは伏兵を配置していたのだ。彼女は戦闘が過熱する中で、伏兵を叩きこむ機会を待っていた。そしてその機会が現れたのだ。
「お、おのれ伏兵とは卑怯な!貴様、それでも神聖オーク帝国の貴族か!」
 黄金色の鎧を着たブタカル王は叫ぶ。この時代は騎士が戦場の主役であり、伏兵は卑怯な戦術だと見なされていた。ハイオークとオークは、狡猾で卑劣な事で知られているが、同時に根は単純なのである。神聖雌豚帝国を造った後は、自分たちが高貴だと勘違いしてしまった。その挙句、騎士道を信じてしまったのだ。
 それに対してブドルフは、戦場の現実を知っていた。だから伏兵を使う事もためらわないのだ。
「敵は崩れた!追撃せよ!勝利を確かなものとせよ!」
 ブドルフの命令に鼓舞され、ブドルフ軍は敵を潰していく。すでにブタカル王の軍勢は敗走していた。
「ブヒイイイイッ!ブヒヒヒイイイッ!」
 ブタカル王は、怒り狂って喚くがどうにもならない。彼女は喚きながら逃げ出す。
 戦場のありさまは、戦いから敗残兵狩りへと変わっていた。

 戦場には汚れきった兵たちが倒れていた。彼女たちは、涙、鼻水、よだれ、汗、潮、小便、大便で汚れた状態で倒れている。彼女たちの顔はいずれもアヘ顔だ。死者はいない。
 魔物娘たちの戦いは、死者を出さない事が絶対の決まりだ。
「人や魔物を殺したらダメよ」
 そう魔王が厳命している。神聖雌豚帝国は、魔王領とは別の国だ。だが、現魔王は魔物娘にとっては絶対的な存在であり、その命令を無視する事は出来ない。それに魔物娘は、殺す事を忌避するように魔王によって作り替えられていた。
 それではどのようにして戦争を行うかというと、魔界銀を使った武器で戦うのだ。魔界銀で出来た武器は、銀の持つ魔力により殺傷能力が無い。強い衝撃を与えるだけである。その武器で倒された者はどうなるかというと、戦場に転がっているオークたちのように、アヘ顔を晒しながら小便、大便を漏らすことになる。潮を噴く者もいるのだ。
 ブタカル王も魔界銀の槍で突かれて倒れた。彼女が身に付けている紅玉のはまった金色の鎧は、小便まみれ、大便まみれ、そして潮で濡れていた。彼女がブドルフの前に引き出された時には、彼女の顔は涙、鼻水、よだれで汚れきっていた。
「さっさと殺せ!貴様の顔など見たくはない!」
 ブタカル王は叫ぶが、アヘ顔をしているために無様だ。
「卿を殺したりはせぬよ。帝都で処刑する」
 ブドルフは、ブタカル王が王である事を無視して、あくまで帝国諸侯として扱う。よだれをたらしながら怒り狂うブタカル王を、ブドルフは悠然と笑った。

 ブタカル王の処刑は帝都で行われた。帝都の大広場の中央に処刑台が置かれ、帝都じゅうの者が見物に集まっていた。処刑台に拘束されたブタカル王は裸であり、その全身に虜の果実で出来た媚薬が塗られる。上気した顔でもだえる彼女の回りに、七個の壺が置かれる。
 壺からは、紫色と緑色の混ざり合った物が飛び出してきた。壺には触手が入っていたのだ。触手は、粘液でぬめり光りながらブタカル王の体にまとわりつく。そして彼女の穴という穴を責め立てる。
「お、おのれブドルフ、この田舎貴族!貧乏貴族!成り上がりの雌豚!腐れ×××の売女!××××まみれの豚娼婦!××××食らいの×××!」
 ブタカル王は、触手に責めたてられながらブドルフを罵った。だが、次第に彼女の言葉は意味をなさなくなる。
「んおほおおおぉぉぉおおお!なにぃこれぇぇえ?きぼじいいのおおおぉぉぉおおお!」
「いぐ、いぐ、いぐ、いぎっぱなしなのおおぉぉぉおおおお!おっほおおおぉおおお!」
 強勢を誇ったブタカル王は、アヘ顔ですらないイキ顔を晒しながら喚く。涙は留めなく流れ、鼻水は吹き出し、よだれは飛び散る。それらのものは、触手の粘液と混ざり合いながら彼女の顔を汚す。
 触手は、ヴァギナとアヌスに激しく出入りしている。触手が出入りするたびに、小便と大便が噴き出す。もちろん潮も、くり返し噴き出している。その汚れきった姿でもだえる姿は、王にして選帝侯たる者とは思えない。この地獄の責めは七日間続く。その間、醜態が晒され続ける。
 こうしてブタカル王は、権力だけではなく権威も失墜した。彼女は、歴史の表舞台から姿を消した。

 ブドルフは、ブタカル王の領土を占領した。ブドルフは、捕虜や民間人の虐待を厳しく禁じ、整然と占領していく。占領した際には、財貨には目をくれずに公文書などの記録を確保することに努めた。
 ブドルフと彼女に従った諸侯は、ブタカル王の領土を手に入れた。ブドルフは、法に従って慎重に手続きを踏んで手に入れると、占領地の領内政策に乗り出す。公文書を始めとする記録を読み、土地や作物の取れ高、税収などについて調べる。
 税の取り立ては記録に基づいているために、的確に行われた。税収の使い方も記録に従っているために、適切なものである。ブドルフは、農作物の増産のために税収を積極的に投入する。
 これらの政策により、ブドルフの暴虐を恐れていた占領地の民は、彼女を支持するようになった。また、ブタカル王の臣下の者でも使えそうな者は登用した。彼らは、ブドルフの占領地政策に無くてはならない者となる。
 こうして占領地政策を進めて行くと、ブドルフは自分とブヒブスブルグ家の根拠地を占領地に移した。この占領地は、ブドルフの帝国支配の拠点となっていく事となる。
 ここに至ってやっと、帝国の諸侯はブドルフを警戒し始めた。好きなように担げると思っていた元田舎領主は、食わせ者だと気が付いたのだ。選帝侯たちはブドルフをけん制し始めるが、ブドルフはすでに彼女たちよりも力を持っている。
 諸侯たちにとって苛立たしい事に、ブドルフは主神教団領への侵略には全く興味を持たなかった。歴代皇帝は、主神教団領への侵略に熱中した。かつてのオーク帝国の栄光、世界帝国への夢に溺れ、侵略ばかりしていたのだ。そして帝国内を放置した。諸侯は、それを利用して勢力を拡大していたのだ。中には、主神教団と裏で手を組む諸侯もいた。
「教皇聖下、どうかうちの馬鹿皇帝を引き付けて下さいよ。そうすれば帝国内で皇帝を弱める工作が出来ますから」
「そうして貴卿は、帝国内で勢力を伸ばすのだな。私に対する見返りは何かね?」
「私が勢力下にした地域に教会を建てますよ。そうすれば、聖下に忠実な神父やシスターが活動出来るでしょう。帝国内の司教領も増やせるかもしれませんよ」
「その司教には、貴卿の一族の者が就くのだな。お主も悪よのう」
「いえいえ、聖下ほどではございませぬ」
「グフフフフ」
「ブヒヒヒヒ」
 このように諸侯の中には、帝国を中から食い荒らす者がいたのである。ところがブドルフは、主神教団領侵略をせずに帝国を収める事に専念している。そして教団と裏で結び付いている諸侯を、一人一人潰していった。
 こうしてやりたい放題やってきた諸侯にとっては、小便がちびるような時代が始まったのだ。

 ブドルフは、夫であるゲルトハルトと共に寝所にいた。二人とも、毎日職務に追われている。その疲れを癒すのは、夫婦の営みだ。ただ、普通の夫婦とは違っている。
「どうした?そんなにこれが欲しいのか?」
「欲しいですううぅぅ。ご主人さま、どうかこの雌豚におチンポをお恵み下さいいぃぃ」
 神聖雌豚帝国の皇帝たるハイオークは、床に四つん這いになっていた。彼女は、胸と股間を黒革のベルトで辛うじて隠した姿だ。首輪をつけており、その首輪の鎖は夫であるゲルト春の手に握られている。ゲルトハルトは股間をむき出しにした姿であり、ハイオークの目の前でペニスを振っている。
 人前では、ブドルフは主君として、ゲルトハルトは臣下としてふるまっている。だが二人だけになると、ブドルフは雌豚奴隷として、ゲルトハルトは主人としてふるまっているのだ。
 雌豚となり果てたハイオークは、主人のペニスにキスをしようとする。そうすると主人が喜ぶと知っているからだ。だが、主人はペニスを振るので、彼女の唇はペニスをかすめるばかりだ。皇帝たる者が、這いつくばりながら餌をねだるようにペニスを追っているのだ。
「しつけの悪い豚だな。罰としてチンポをしゃぶるのはお預けだ。臭いを嗅ぐ事だけ許してやる」
 主人はそう言うと、ペニスでハイオークの頬を叩く。そして、彼女の鼻にペニスをこすり付けた。「プギャッ!」と、彼女は悲鳴を上げる。ハイオークは臭いに敏感である。洗っていないペニスをこすり付けられると、全身が欲情に支配されてしまう。
「ほら、お前の好きなこれを付けてやるぞ」
 主人は、淫魔サキュバスの作った鼻フックを垂らした。たちまち雌豚は目を輝かせる。主人は、彼女の鼻に鼻フックを装着した。皇帝の高貴な鼻は広げられてしまう。主人は広げた鼻穴に亀頭を押し付け、鼻を無様に歪ませる。雌豚は、臭いを嗅ぎながら必死に自分の股を手でまさぐる。
「だらしのない雌豚だな。仰向けに寝て腹を見せろ」
 主人の命令に従い、雌豚皇帝は犬のように腹を見せて寝そべった。褐色の贅沢な肉が広げられる。主人は、その上に圧し掛かるとベルトを外し、胸をつかんでペニスをはさんだ。
「この駄肉を使ってやる。舐めていいと言うまでチンポを舐めるな。臭いを嗅いでいろ」
 そう言うと、主人は胸をペニスで弄び始めた。激しく腰が前後して、亀頭がハイオークの鼻先に迫る。彼女がその臭いを嗅ごうとすると、亀頭は胸肉の中に引っ込む。そうかと思うと亀頭が飛び出し、先走り汁を飛び散らせて鼻を濡らす。
「よし、舐めていいぞ」
 主人の許しが出た瞬間に、雌豚はペニスに飛びつく。必死にペニスを咥えて舐め回す。主人は呻くと、彼女の口の中に精液をぶちまけた。男の淫魔であるインキュバスとなっている主人は、人間離れした量の精液を放出する。たちまち雌豚の頬は膨れ上がり、鼻穴からは白濁液が噴き出す。
「ンググググッ!ンググググッグググッ!」
 雌豚は、白目をむきながら必死に精液を飲み下す。彼女の喉は生々しい音を何度も立てる。長い射精が終わり、やっと精液を飲み下す。それでも雌豚は口を離さず、残った精液を吸い上げる。彼女の頬はくぼみ、豚のくせに馬面となっている。
 ハイオークは、ようやくペニスを口から離した。口を開いた瞬間、「グエエエッップ!」という下品極まりない声を上げる。精液を飲み過ぎてゲップをしたのだ。しかも雌豚の口には、主人の陰毛が張り付いている。
「どうだ、ザーメンは旨かったか?まあ、お前のマンコを見れば聞くまでも無いが」
 その言葉の通り、ハイオークの股は濡れそぼっていた。銀色の陰毛に飾られた肉襞からは、溶かしたチーズのような濃厚な匂いが立ち上っている。
「何だ、この臭いマンコは?ここまで濡らして恥ずかしくないのか?」
 雌豚皇帝は、身をよじりながら腰を振って主人を誘う。主人はのしかかると、すでに回復しているペニスを肉壺の中に沈めていった。
 その瞬間に、ハイオークは歓喜の声を上げた。口からよだれを垂れ流しながら、体を震わせる。必死になって腰を動かし、より多くの快楽を味わおうとする。二人の結合部分からは、雌豚の垂れ流す愛液が飛び散り、濡れた肉がこすれる音が響く。
 主人は、ハイオークの左腕をつかんで腋をむき出しにした。褐色のわきは汗で濡れており、濃厚な匂いを振りまいている。主人は腋に顔を埋めた。そのハイオーク特有の濃い臭いを堪能し、舌を這わせて味を貪る。
「臭い腋だな。洗っていないだろ」
「はい、ご主人様に嗅いでもらうために、三日も洗っていません」
「この汚ねえ雌豚め!お前を精液で汚してやる。二度と取れない臭いを付けてやる!」
 罵られた雌豚は、上気した顔で喜ぶ。彼女の腰の動きは激しくなる。主人は、巧みに腰を動かして彼女に合わせる。雌豚マンコの弱点を的確に攻める。
「雌豚マンコに子種汁を出してやる。俺の子供を孕め!」
「出して下さい!この雌豚の子宮をご主人さまの子種汁で満たして下さい!」
 そう言うと、ハイオークは主人の腰に足を巻き付けて逃げられないようにする。
 主人は、雌豚奴隷の中で弾けた。大量の精液を中にぶちまける。ハイオークの子宮を子種汁で撃ち抜き、中に叩き込んでいく。ハイオークは、悲鳴とも歓喜とも言えない声を上げる。彼女の体は震え、汗を飛び散らせる。主人の体も一緒に震える。
 雌豚皇帝が受精した瞬間だった。

 ブドルフは、名実ともに神聖雌豚帝国の最高権力者となった。だが、まだ二つの不安がある。一つは帝国の不安定な現状、もう一つは後継者がいない事だ。
 彼女は、その内の一つの解決に乗り出した。皇帝の名の下に帝国議会を開催して、諸侯を招集した。そしてその場で「豚印勅書」を発布したのだ。豚印勅書とは、帝国内の基本方針を定めた皇帝発布の公文書である。ブドルフは、帝国の安定をもたらすために勅書を発布して諸侯の同意を得ようとしたのだ。
 豚印勅書の内容の最大のものは、選帝侯の地位の確認だ。帝国内の諸侯を潰す事は出来ない。特に選帝侯を潰す事は無理である。ならば選帝侯の立場を公認して安定を図るしかない。選帝侯を七人と定め、彼女らの領内のおける裁判権、関税徴収権、貨幣鋳造権などを勅書により認めた。そして選帝侯への反逆は大逆罪とされた。これにより、皇帝に逆らう事も辞さない選帝侯たちをなだめたのだ。
 ただ、ブドルフの本当の狙いはここからである。皇帝の選出は、選帝侯の単純過半数によって決めるとした。この方式ならば、選帝侯の横暴により二帝が並立して争う事は出来ない。また主神教団の教皇は、皇帝選出には介入出来ないとした。神聖雌豚帝国は教皇の介入に苦労しており、それを排除する事にしたのだ。そして、教皇と裏で結び付く選帝侯を排除する方針を込めたものである。
 これらの方針は、選帝侯としても反対しにくい。帝国内の動乱によって、選帝侯たちは痛めつけられていた。二帝並立も主神教団の介入も動乱をもたらす。選帝侯たちは、承認した方が良いと考えたのだ。
 勅書は、これに加えて諸侯の同盟を禁止した。動乱の際には、諸侯が同盟を結ぶからだ。これに反対する諸侯はいたが、選帝侯が勅書賛成に回ったために押さえつけられた。選帝侯にしてみれば、自分の権利を認めてもらえるならば他の諸侯を抑えても良いのである。また、下手に選帝侯同士で同盟を組めば、ブドルフの標的になる。
 さらに勅書は、帝国内の私闘を禁止した。帝国内の諸権利は、最終的には実力がものを言う。その結果、権利侵害とそれに対する抵抗として私闘が荒れ狂っていた。諸侯がその私闘を始める事も多い。それを公的に禁じたのだ。私闘に疲れていた諸侯たちは、この決まりも承認した。
 ただ、次の決まりは激しく抵抗する者もいた。その決まりとは、一人のハイオーク、オークは、一人の男とだけ愛し合うという決まりである。魔物娘は、一人の男だけを愛する事が多い。魔王もそれを奨励している。だが、欲望の塊であるハイオーク、オークの場合は、それに反する者もいるのである。この男に対する欲望は、帝国を乱す原因の一つだ。
「絶対に嫌だ!私は、世界中の男のチンポをマンコで喰らいたいのだ!」
 ブヒンデンブルグ選帝侯は、そう喚き散らした。
 ブドルフは、直ちにブヒンデンブルグ選帝侯を捕らえた。そして裸にひんむいて拘束し、全身を虜の果実の媚薬漬けにした。悶えるブヒンデンブルク選帝侯を、魔界製の精力剤で強化した彼女の夫に責め立てさせたのだ。三日三晩責め立てられた彼女は、堕ちてしまった。
「旦那さまのおチンポがあれば十分ですううぅぅ」
 全身精液まみれになったブヒンデンブルグ選帝侯は、アヘ顔を晒しながらそう言った。
 こうして豚印勅書は帝国議会、帝国諸侯によって承認された。この豚印勅書は効果を発揮して、その後四百年間にわたって神聖雌豚帝国の基本的な体制を決める事となる。

 ブドルフは、夫であるゲルトハルトと性の快楽に浸っていた。彼女の褐色の肌は、汗と愛液、精液で濡れてぬめり光っている。よだれを垂れ流しながら喘ぐ彼女は、皇帝ではなくてさかった雌豚だ。相変わらずだと言える。
 ただ、現在の彼女の姿は以前とは違う。彼女の腹は大きく膨れていた。彼女は、夫の子を孕んでいるのだ。神聖雌豚帝国の後継者である者が、腹の中にいるのだ。出産したら後継者として宣言するつもりであり、その用意は出来ている。
 不安の材料であった後継者不在問題は、こうして解決に向かっていた。皇帝の顔は、希望と快楽で歓喜に満ちている。妊娠した状態での交わりは危険な場合が多いが、頑健な事で知られるハイオークならば問題は無い。ゲルトハルトは容赦なく突き、雌豚皇帝はアヘ顔ダブルピースを晒している。
「おお、見事ですぞ陛下!それこそ神聖オーク帝国皇帝にふさわしい姿です!」
 ブヒーフェンツォレルン家のブヒンリッヒ卿は、彼女の姿を称えている。ブヒンリッヒは、ブドルフに一貫して忠誠を誓ってきており、共に危機を乗り越えてきた。彼女は、ブドルフの忠臣として知られていた。その忠誠ゆえに、彼女はブドルフの寝所に入る事が出来る。
 ブヒンリッヒも裸になり、彼女の夫によって突かれていた。ブドルフに負けずに精液まみれになっており、恥ずかしげも無くよだれを垂らしている。
「ブヒンリッヒ卿よ、私はいくらでも子供を産んでみせるぞ!ブヒブスブルグ家を子沢山にしてみせるぞ。そなたもブヒーフェンツォレルン家を子沢山にして見せよ!」
「おお、子を産んで見せますとも!陛下に負けぬほど生んで見せましょう!」
 こうして二組の夫婦は、子作りの快楽にのめり込んでいた。

 ブドルフは無事にハイオークの子を出産し、後継者問題を解決した。その後も夫であるゲルトハルトの子を産み続け、子沢山夫婦として知られる事となる。ハイオークである子供たちは、帝国内の人間男性の諸侯と婚姻し、あるいは大陸中の王族や諸侯と婚姻をした。
 この婚姻政策は成功し、ブヒブスブルグ家をさらに繁栄する事になる。ブヒブスブルグ家はその後も婚姻政策を重視し、その政策は成功し続けた。神聖雌豚帝国皇帝の座を独占し、大陸中に勢力を伸ばした。田舎領主一族に過ぎなかったブヒブスブルグ家は、大陸屈指の名門一族となるのである。
 ブドルフの皇帝即位は、まさにブヒブスブルグ家の夜明けだった。

 ブヒーフェンツォレルン家のブヒンリッヒも、子をたくさん産んだ。彼女は帝国北方に領土を得て、地道に勢力を伸ばした。彼女の後継者である歴代のブヒーフェンツォレルン家の者たちは、領土を富ませ兵を強くする事に励んだ。その結果、神聖雌豚帝国の北に「ブヒイセン」という国を建国したのだ。
 ブヒイセンは次第に強くなり、やがて大陸屈指の強国となる。この事により、ブヒブスブルグ家とブヒーフェンツォレルン家は宿敵同士となるのである。
 だが、それはまた別の話である。
18/03/23 18:24更新 / 鬼畜軍曹

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