読切小説
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捨てヘルハウンドを拾おう
 秋彦は、公園を通り抜けようとしていた。通学路の途中にある公園を抜けると、近道をすることが出来る。すでに日は暮れようとしており、公園の地面は赤く染まっている。
 秋彦は、木々の間に置いてある箱のような物が目に入った。つい、そちらを見てしまう。大型のダンボール箱が置いてあり、その中に黒いものが入っている。その黒いものは、獣毛に覆われた耳を持っており、豊かな毛並みの尻尾を箱からはみ出させている。
 見ない方がいいと分かっていながら、秋彦はそれを見てしまう。炎のような赤い目をした犬を思わせる女だ。人間の女と黒犬を合わせたら、それのような形になるだろう。彼女は赤い舌を出しながら笑っている。
 ダンボール箱を見ると、「拾ってください」とへたくそな字で書かれた張り紙がしてある。秋彦はそれを一瞥すると、足早に通り過ぎようとした。
「おい、ちょっと待て」
 秋彦は、声を無視して通り過ぎようとする。
 黒いものは、ダンボール箱から飛び出して秋彦に覆いかぶさった。秋彦は、地面に押し倒されてしまう。
「良い子は、捨て犬を拾わなければならないんだぞ」
 秋彦は、ポケットからスマートフォンを取り出す。
「どこへ電話をかけるつもりだ?」
「保健所」
 黒いものは、秋彦からスマートフォンを取り上がると、彼の頭を抱えて締め上げた。
「あたしはそんな冗談は嫌いだな」
「冗談じゃないけど」
 秋彦の頭はさらに締め上げられる。黒いものは、そのまま秋彦の頭を抱えたまま歩き出す。
「さあ、家に帰るぞ」
 こうして秋彦は、無理やりヘルハウンドなる魔物娘を拾わされる羽目となった。

 今の世の中は、魔物娘が社会に溶け込んできている。蛇の下半身を持った女や翼の生えた女の姿は、日本では日常的に見ることが出来る。魔犬と呼ばれる魔物娘であるヘルハウンドもそうだ。
 ダナは、秋彦の近所に住んでいるヘルハウンドだ。とは言っても、どこに住んでいるのか秋彦にはよく分からない。ただ、やたらと秋彦の目につく所にいる。そしてなれなれしい態度を取る。
 秋彦はダナを避けていた。やることなすことが非常識なのだ。裸に近い恰好をして平然と表を歩く。昼間から公園や河川敷で酒を飲んでいる。女であるにもかかわらず、電柱に立小便をする。まともとは思えない行動ばかりするのだ。
 ダナは、以前は車を運転していた。だが、飲酒運転の常習犯であり、警察に捕まり免許の取り消しとなっている。現在は自転車に乗っているが、それも飲酒運転で何度も捕まっている。「酒飲んで自転車に乗るくらいかまわないだろ」と、本人は反省する気は無い。
 いったいこいつは何の仕事をしているんだと、秋彦は思っている。いつも酒を飲んでゴロゴロしている。どのような方法で収入を得ているのか、さっぱり分からない。
 秋彦は、こんな魔物娘と関わりたくは無かったが、やたらと付きまとわれる。その挙句、彼女を飼うことを強要されてしまった。

 驚いたことに、秋彦の両親はダナを飼うことを了承した。二人とも、奇妙な笑顔で飼っても良いと言ったのだ。秋彦は、二人をまじまじと見てしまう。
 秋彦は後で知るのだが、魔物娘の互助団体が秋彦の両親と話を付けていたらしい。迷惑料を秋彦の両親に渡して、ダナを飼うことを了承させたのだ。魔物娘たちがダナのようなトラブルメーカーのために、なぜそんなことをするのかは分からない。ただ、ダナは秋彦と一緒に暮らすことになったのだ。
「これからよろしくな、秋彦」
 ダナは、尻尾を振りながら秋彦の頬を舐めた。

 秋彦は、股間から感じるぬめる感触で目覚めた。自分の下半身を見ると、黒いものが覆いかぶさっている。パジャマのズボンとトランクスはずり下げられており、ペニスは犬の口の中に含まれている。ペニスからは激しい水音が立っている。
「よう、目が覚めたか。朝だぞ、起きろ」
 ダナは、秋彦のペニスをしゃぶるのを中断すると、笑いながら言った。秋彦のペニスは唾液まみれとなっており、カーテンからさす朝日で光っている。
「何してるんだよ?」
「何って、フェラだよ、フェラチオ。チンポをしゃぶって気持ち良くすることだよ。前に教えてやっただろ?」
 ダナはあっけらかんと言うと、再びペニスを舐め始める。秋彦がやめろと言っても止めない。毎朝のことだ。ダナは、秋彦と同じ部屋で同じベッドに寝ている。そして朝になるとフェラチオをして起こす。
「相変わらず、お前のチンポはいい臭いがするな。しゃぶっていると、口と鼻がお前の臭いでいっぱいになるぞ」
 ヘルハウンドは、おいしそうにペニスを吸い上げる。
 秋彦は、自分のペニスをしゃぶるダナを見た。ダナは、肉食獣としての肉感的な顔をしており、野生の魅力がある。その美女が自分のペニスにむしゃぶりついているのだ。性に目覚めたばかりの秋彦にはたまらない。
 ただ秋彦には、その行為が非常識に思える。いくら気持ち良くても、やらない方が良いように感じるのだ。だがダナは、気に留めずに毎朝しゃぶる。
 ダナはペニスから口を離すと、秋彦の腰の上に乗った。彼女の股はむき出しとなっており、黒色の濃い陰毛は濡れそぼっている。彼女の股からはチーズのような匂いが漂ってくる。
「さあ、朝の運動を始めるぞ」
 そう言うと、ダナはヴァギナにペニスを飲み込んだ。柔らかい肉が秋彦のペニスを締め付ける。ペニスをしっかりと咥え込むと、ダナは彼の上で腰を動かし始めた。熱い肉の渦が秋彦のものを締め上げる。彼の目前で、雌犬の豊かな胸が弾む。雌犬は、舌を垂らしながら笑っている。
 秋彦の部屋に、雌けだものと少年の喘ぎ声が響き渡った。

 セックスが終わると、ダナは秋彦を散歩に連れ出した。起きたばかりなのにセックスをした秋彦は、散歩に出る気力、体力は湧かなかった。だがダナは、彼を無理やり引き出す。
「犬を飼ったら、毎日、散歩に連れていかないとダメだぞ」
 そう言いながら、腕をつかんで引きずっていく。
 散歩のルートは決まっていない。ダナのその日の気分次第だ。一日中散歩に付き合わされた挙句、別の市まで連れていかれたこともある。その挙句、ダナはホルモン焼き屋で飲んでしまい、秋彦は酔っぱらった彼女を連れて帰らなくてはならなかった。
 今日は、近所の河川敷を歩いている。ダナにしてはまともなルートだ。朝日が河川を照らし、水が白く光っている。そのまぶしさは、秋彦の心を軽くする。散歩も悪くないなと、心の中で言う。
「ちょっと待て、もよおしてきた」
 ダナの言葉に、秋彦は背を震わせる。彼女が「もよおしてきた」と言う時は、彼女が小便をしたくなってきた時だ。彼女は、人前で立小便をしても気に留めない女だ。
「じゃあ、草の茂みの中でやりなよ」
 ダナは、家までがまんする気は無いだろう。だったら、茂みでやらせるしかない。しかし、彼女はホットパンツを脱いで、その場にしゃがみ込む。ここでやるつもりだ。辺りに遮蔽物は無く丸見えだ。秋彦はうめき声を上げる。
 ふと、秋彦はおかしなことに気が付いた。ダナは、外で小便をする時は立小便をしている。それなのに彼女はしゃがみ込んでいる。秋彦は、まさかという思いで彼女を見た。
 聞くに堪えられない音と共に、彼女の尻穴から大便が飛び出した。同時に、彼女の股から小便が噴き出す。豪快な音を立てて、大小の排泄が行われる。辺りに鼻を突き刺す臭いが放たれる。それは秋彦のものよりも強烈だ。秋彦は必死に顔をそむける。
「やっぱり野グソは気持ちいいな。開放感がある」
 ダナは、やり遂げたようなすっきりとした顔で言った。
「こんなところでクソしないでよ!何を考えているの!」
 秋彦は、人目につくところで大便をする奴は始めて見た。信じがたいものを見てしまったせいで、彼の声は裏返っている。
「何を言っているんだ?野グソをすることは当たり前のことだぞ。あたしが元いた世界でも普通にやっていた。この世界でもやっている所はあるし、日本だって少し前は野グソをしていたと聞いているぞ」
「現代の日本で野グソをする奴はいないよ!」
 秋彦は悲鳴のような声で言う。
 彼はコンビニに行って、トイレットペーパーとトング、ゴミ袋を買ってきた。トイレットペーパーでダナの尻を拭い、使用済みのペーパーをゴミ袋に入れる。そしてトングで大便を拾ってゴミ袋に入れた。
 尻を拭かれている時、ダナは楽しそうな顔をしていた。それに対して、秋彦との表情は虚ろだった。

 秋彦は、教室で宙を見つめていた。彼は学校が嫌いだが、最近は気の休まる場所となっている。ダナから解放されるからだ。窓からさす日の光が、疲れた彼を照らしている。
 彼は平穏な生活を望んでいる。確かにダナとの生活は刺激があるが、だからと言って限度というものがある。彼の日常には、刺激だけではなく安らぎも欲しいのだ。しかしダナは平穏を許さない。
 秋彦は、魔物娘について知っている教師から話を聞いた。彼によると、ヘルハウンドは魔物娘の中でも特に強引なのだそうだ。しかも、わがままで自分勝手な魔物だ。あまりにもひどい行動のため、刑務所に入れられたヘルハウンドもいるそうだ。
 その教師は、秋彦の実情を知ると彼の相談にのった。そして児童相談所に通報しようとまでした。だが秋彦は、通報は止めてもらった。
 秋彦は、ダナを犯罪者として捕まえてもらいたいわけでは無い。ダナのことは嫌いではないのだ。ただ、ダナの非常識さと強引さについていけないのだ。
 彼は、窓の外を見ながらため息をついた。

 秋彦は、ダナと一緒に浴室に入った。ダナは無精であるために、三日くらい風呂に入らないことが有る。毎日、風呂に入ることをしつけられている秋彦には、耐えられないことだ。ダナに風呂に入ってくれと頼んだが、ダナは尻をかいて寝そべっている。そして、秋彦が一緒に入るのなら入ってもいいと言うのだ。
 ダナは裸になると、秋彦を抱きしめながら浴室に入った。彼女からは独特の甘い匂いがする。人間の女体と雌犬の獣臭が混ざり合った匂いだ。風呂に三日も入っていないから、匂いは濃い。その匂いと熱い女体の感触は、秋彦の腰を落ち着かなくさせる。
 ダナは、秋彦の体に鼻を付けて匂いを嗅いでいる。彼女は、やたらと秋彦の匂いを嗅ぎたがるのだ。彼が恥ずかしがると、かえって喜んで嗅ぐ始末だ。
「よし、あたしの体を洗ってくれ」
「自分で洗いなよ」
「飼い犬の体を洗うのは、飼い主の責任だぞ」
 秋彦は、仕方なくダナの体を洗う。スポンジにボディーソープを付けて泡立たせ、彼女の体を洗っていく。肉感的な体をしたヘルハウンドは、気持ち良さそうに声を上げて喜んでいる。
 彼女の胸を洗うときは、秋彦は赤面した。既に彼女とセックスをしているが、それでも年頃の少年としては恥ずかしい。あまり力を入れないで洗っていると、もっとしっかりと洗ってくれと催促される。
 ダナの股を洗うときは、秋彦の顔は茹っているように赤くなっていた。あまり力を入れたくないが、汚れやすい所だからきちんと洗う。こういう所に、彼の几帳面さが出てしまう。そんな彼を、ダナはニヤニヤしながら見ている。
「よし、今度はあたしがお前を洗ってやるぞ」
 そう言うとダナは、ボディーソープで泡立っている自分の体を秋彦に押し付けた。そして自分の体を上下左右に動かして、秋彦の体を愛撫する。特に、胸を使って秋彦の体を洗う。
「ス、スポンジで洗ってよ!」
「あたしの体はスポンジ代わりさ。しっかりと洗ってやるぞ」
 弾力のある体はぬめっており、秋彦の体に確かな感触を伝える。彼の敏感なペニスやアヌスも、しっかりと洗われる。勃ちかけていた彼のペニスは、固く反り返ってしまう。
「どうだ、パイズリは気持ちいいだろ。あたしくらい胸が大きいと、こんなことも出来るんだぞ」
 秋彦のペニスは、ヘルハウンドの黒い胸に包まれていた。ソープでぬめる黒い柔肉は、少年の最も敏感な場所を上下に愛撫する。性の体験を味わい始めて間もない少年に耐えられるものではない。秋彦が出そうだと言うと、ダナは出しちまえと笑う。
 秋彦のペニスは弾けた。先端から白濁液が飛び出す。黒い胸肉に飛び散り、ソープと混ざり合う。秋彦は、子犬のように喘いでいる。
「元気でいいぞ。でも、まだ勃たせてもらうからな。あたしのマンコを気持ち良くしてくれよ」
 そう言うとダナは、再び胸でペニスを愛撫し始める。秋彦は答えることが出来ずに、震えながらよだれを垂らしていた。

 秋彦とダナは、ベッドの上で一緒に寝ていた。風呂でセックスを楽しんだダナは、いびきをかきながら寝ている。彼女の腕は、しっかりと秋彦の体を抱きしめている。
 ダナのいびきを聞きながら、秋彦は天井を見つめていた。逃げようとしても無駄なんだね。彼は声に出さずに言う。ダナと生活をしていくしかないんだ。
 ただ、ダナのやりたいようにやらせるわけにはいかないよ。きちんとやることをやらなくてはいけないね。そう、秋彦は心に決めた。

 秋彦は、ダナと散歩をしていた。今日は、秋彦の方から誘った。ダナは嬉しそうについてくる。
「今日はいい天気だからな。お前も外に出たかったんだろ」
 ダナは楽しそうに言う。そうだねと、秋彦は穏やかに答える。ダナの言う通り、明るい日差しが彼らを照らしていた。日を浴びているダナからは、健康そうな犬の匂いがする。彼らの行く先に、公民館の壁が白く光っている。
 突然、物陰から現れた二人の女は、ダナを取り押さえた。ダナは、わめき声を上げながら振りほどこうとする。だが彼女は、がっしりと取り押さえられている。
 取り押さえている二人の女は魔物娘だ。一人は緑色の体をした鬼のような女、もう一人は赤色の体をした鬼のような女だ。二人とも白衣を着ている。彼女たちは、猛犬ヘルハウンドをしっかりと取り押さえている。尋常ではない力を持った女たちだ。
「このヘルハウンドが患者さんですね」
「そうです。よろしくお願いします」
 緑色の鬼女であるオーガは秋彦に確認し、彼は答える。
「秋彦、どういうつもりだ!」
「予防注射をしてもらうんだよ。犬を飼ったら、しなければならないからね」
 怒号を叩き付けるダナに、秋彦は涼しげな顔で答える。
 オーガとアカオニの獣医は、ヘルハウンドを公民館へ引きずっていく。公民館の入り口には、立て看板が出ている。ウルフ属の魔物娘を対象とした予防接種の会場だと書いてあった。ダナは血相を変えて暴れるが、鬼の魔物娘たちは完全に押さえている。ダナは会場内に連れていかれる。
 公民館の室内には、青い肌をした鬼の魔物娘が待ち構えていた。白衣を着ていることから彼女も獣医だと分かる。すでに注射の準備は出来ている。
 ダナは、注射器を見て引きつるような声を上げた。漫画に出てくるような馬鹿でかい注射器だ。アオオニの獣医は、微笑みながら注射器を手にしている。オーガとアカオニは、ヘルハウンドをしっかりと取り押さえている。逃げることは出来ない。
「頼む、許してくれ。あたしは死にたくねえよ」
「死んだりはしないよ。この注射でダナはおとなしくなるんだよ」
 声を振るわせるヘルハウンドに、飼い主は薄く笑う。
 公民館の中から、猛犬の絶叫が響き渡った。
18/03/09 18:18更新 / 鬼畜軍曹

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