連載小説
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#4 永夜
「隣国の剣術大会に?」
 突然の神官長の申し出に私は困り果てた。
「私の剣は父と母上のためのものです。剣術大会などで見世物にするための剣ではありません」
「我が国の王だけでなく、隣国の王も勇者様の出場をお望みなのです。勇者様のお気持ちはよくわかりますが、ここはどうか…」
 ピシャリと断るが、神官長は諦めずに粘ってきた。
 彼はこの国の中でも五本の指に入るほどの権力者だが、私と母にだけは強く出ることができない。
 国王ですら私と母に命令をすることはできないのだから、当たり前といえば当たり前なのかもしれないが。
「そう言われましても…」
 私の剣は見世物にするものでも、ましてやこの国の外交のためのものでも無いのだ。
 ほとほと困り果てた私は目で母に助けを求める。
 だが、母の答えは私の欲したものとは反対のものであった。
「良いではないですか」
「は、母上っ!?」
「貴方は少々生真面目に過ぎますよ? 見世物になると考えるからいけないのです。貴方の力を、ひいては父の力を示す良い機会ではないですか」
 そう言って母はクスクスと笑った。最近、母はよく笑うようになったと思う。
 それ自体は良いことなのだが…どうも、なにか引っかかるのは私の気のせいだろうか。
「おお! ではよろしいのですか?」
「人々の希望となるべき勇者が、恥ずかしくて人々の前に姿を現せないようでは様にならないでしょう?」
 母にそうまで言われてしまっては仕方が無い。
「ふぅ…わかりました。その話、お受けします」
 私は溜め息を吐いてその申し出を承諾する。
「おお! ありがとうございます! 私は早速国王に伝えて参ります!」
 満面の笑みを浮かべて神官長が去って行く。今にスキップでもしそうな勢いだ。
「…母上、何故あのような」
「ふふ、たまには良いではないですか。それに剣術大会には世界中から腕自慢が集まります、貴方の見聞を広める良い機会でしょう」
 そうニコニコと天使のような(現に天使なのだが)邪気の無い笑みを浮かべながら言われてしまうと、私はそれ以上の文句を言えなくなってしまう。
「やれやれ…出る以上は全力で戦ってまいります。きっと優勝してみせますから、楽しみに待っていてください」
「ええ、帰って来るのを楽しみに待っていますよ。私もお祝いの準備をしておきましょう」

―――― ―――― ―――― ―――― ―――― ―――― ――――

 勇者は旅立つ。
 盲目的に信じるあまりに何にも気付かず、祖国を後にする。
 生真面目に過ぎるが故に、彼女を疑うこともできずに。
 守護者は祖国を後にする。
 護るべき羊の中に、羊の皮を被った凶悪な狼が居るとも知らずに。

―――― ―――― ―――― ―――― ―――― ―――― ――――

「そんな…そんな筈はありません!」
 隣国の外交官から告げられた言葉に私は思わず声を荒げた。
「勇者様…しかし、私どもの特使は確かにその目で見たのです。貴方様の祖国、その王都が邪気に呑み込まれるのを」
「我が国は精強な聖堂騎士達や、敬虔な神官を数多く擁しています。それが、たった三日で…ありえません、何かの間違いです!」
 私がこの国の剣術大会に招かれ、祖国を発ってからまだ三日。たった三日だ。
 聖堂騎士団と神官達、何より母が護っている王都がたった三日で魔物の手に堕ちるなど、考えられないことだ。
「大変申し訳ありませんが、急ぎ発ちます。王には私が陳謝していたとお伝え下さい」
「ゆ、勇者様! いけません、お戻り下さい!」
 私は制止の声を振り切って控え室から駆け出す。
(何かの間違いだ。そうに決まっている!)
 心の中でそう叫びながら走り続け、会場の出口な差し掛かったその時。小さな一つの影が私の前に立ち塞がった。
「どこへ征くのだ? 勇者殿」
 私の前に立ち塞がったのは一人の少年だった。
 赤い外套に身を包み、口元には見た目の幼さに合わない不敵な笑みを浮かべている少年だ。
「俺様を斬るのか? 折角助言をしてやろうと思ったのに」
 そう言いながら、少年がニヤニヤと笑う。
 気がつけば、私は聖剣の柄に手をかけていた。少年の放つ異様な気配に身体が勝手に反応してしまったようだ。
「これは…失礼」
「ククク、なかなか素直じゃないか。お前は頭が固いだけの教団関係者とは一味違うようだ」
 聖剣の柄から手を離した私を見て少年が満足げに目を細める。魔物ではないようだが、それに限りなく近い気配だ。
 さしずめ魔人、とでも言ったところだろうか。
「助言、とはなんでしょうか。貴方は何かを知っているのですか?」
「まぁ、以前遠目にお前の母上を見たことがあってね。その時からいつかこうなるであろう事はある程度予想がついていたんだ。このタイミングで事が起こったのはまさしく偶然だがね」
 少年はそう言うと、道を空けて外を指し示してみせた。
「このまま祖国へ走ればお前はお前の信仰の礎を失う。代わりに永遠の愛が与えられ、凍りついた時の中へと囚われる」
 多少一方的かもしれんがね、と言いながら次に彼は剣術大会の会場へと戻る道を指し示してみせた。
「このまま大会の会場へと戻ればお前の信仰の礎は永遠に守られるだろう。代わりにお前は永遠の愛を失い、やがて戦いに憑かれた修羅と化す」
 これがお前さんのオトーサマの望む道だ、そう言いながら彼は最後に私の目を見据えて両手を広げてみせた。
「どちらへも行かず、信仰も、勇者としての地位も責任も全て捨てて野に生きれば、お前は暖かく平穏な人生を手に入れるだろう」
 在るべき場所に戻るだけだ。俺様これを薦めるがね、と前置いて彼は私に再びあの不敵な笑みを浮かべて見せた。
「さぁ、どうする?」
 少年がそう問いかけてくる。
 悩むまでもなく、私の答えは決まっていた。
「やはり、その道を選ぶかね」
 少年は一つ溜息を吐くと、歩き出した私にそう声をかけた。
「あそこにはかけがえの無い、私の母がいます。それを放り出して生きることなど、できる筈がありません」
「ま、そうだよな。お前さんの選択だ、俺様はとやかく言わんよ。達者でやれ」
 ぞんざいにヒラヒラと手を振る少年に背を向けて私は走り出した。
 この目で全てを確かめるために。

―――― ―――― ―――― ―――― ―――― ―――― ――――

 祖国に近づくにつれ空は濁り、空気も澱んできた。
 いつもは交易商人や巡礼者が行き交う美しい街道も、今歩いているのは私ただ独りだけだ。
 脳裏に道を指し示してくれたあの少年のことがよぎる。
 彼が何者だったのか今となっては知る由も無いが、名前くらいは聞いておくべきだったかと後悔する。
「あれは…」
 王都に向けて街道をひた走っていると、前方からヨタヨタと頼りない足取りでこちらへと歩いてくる人影が見えてきた。
 近づくことによって、その人物がよく見知った顔だと気付く。
「神官長!」
「ゆ、勇者様…――ッ! 来ては、なりませぬっ!」
 彼はそう叫び、血に塗れたメイスを振りかざして結界を展開した。
 輝く力場に行く手を阻まれ、彼に駆け寄ろうとした私はたたらを踏む
「なりませぬ…私は、貴方様を、この先に進ませるわけには、いかぬのです。この命に代えても…!」
「し、神官長…」
 血に塗れたメイス水平に構え、鬼気迫る様子で結界を張る神官長の様子に私は思わず後退さる。
「貴方様は我らの最後の希望。なればこそ、私は貴方様をこの先に進ませるわけには参りませぬ…」
「何が起こったというのですか! 何故、私はこの先に進んではならぬのですか!?」
 私の言葉に、神官長は悲しげな表情でただ首を横に振った。
「私には、話せないと?」
「何も聞かず、お戻り下さい…」
 何故話す事ができないのか、考えられることはたった一つだ。
 だが、それはあまりにも信じ難い。
「まさか…そんな馬鹿な! そんなこと、ある筈が無い!」
「勇者様、それ以上は考えず、お戻り下さい…」
「嘘だ! 母上が堕ちたなどと…そんな出鱈目な話を私に信じろというのですか!?」
 私の言葉に神官長は目を閉じ、黙して何も語らなかった。
「お戻り下さい…行けば、必ず後悔します」
 苦しげにそう呻く神官長に対し、私は自らの掌を向けた。
「ゆ、勇者様!」
 私は神官長の展開する術式に干渉し、結界を維持する神官長自身の力に自らの力を乗せて神官長へと逆流させる。
「い、けませ、ん…ゆ、ゃ…ま…」
「私は、行かなければならないのです。許してください、神官長」
 私は倒れた神官長にそう言って、再び王都への道を歩き始める。
 これで全貌はわかった。それならば、私が彼女を止めなくてはならない。
 私は丘を上がり始める。
 この丘を登れば、王都が一望できる。
「なんと、惨い…」
 王都の各所から火の手が上がっていた。風に乗って僅かに血の匂いも漂ってくる。
「…父よ、私をお守り下さい」
 そう呟き、聖印を切ってから抜剣する。
 私が抜いたのは、聖剣。かつて母自身が祝福を授けた聖剣だ。
「今参ります、母上」
 私は足を踏み出す。
 母の元へ。

―――― ―――― ―――― ―――― ―――― ―――― ――――

 王都は酷い有様だった。
 そこかしこに斬り捨てられた死体や頭を叩き潰された死体が打ち捨てられており、その上どことも知れぬ場所から淫らな嬌声が響いてくる。
 かつて各地から敬虔な巡礼者の集まっていた神都は、私が離れてからたったの三日間で魔物の跳梁跋扈する魔都と化していた。
「あ、あひいぃっ! もっとぉ!」
「すごっ、凄いぃっ! おくまで、しきゅうまでゴツゴツきてるぅっ!」
「おしり、きもちいいっ! あ、ダメ!? イクッ! またおしりのあなでイッちゃ――〜〜ッ!!」
 聞くに堪えない淫らな言葉を叫びながら、かつて敬虔な父の信徒であった者達が獣のように交わり合っている。
 短い角、薄く小さな羽、腰から伸びる禍々しい尾…女達は、既に魔物への変化を始めていた。
「赦して下さい…これが、私にできる精一杯なのです」
 聖剣を閃かせ、半ば魔物と化してしまった女達と、その下に組み伏せられた男達の首を刎ねる。
 この淫気の中では男達も魔物の糧となり、取り殺されるのを待つだけだ。ならばいっそ、父の元へ送ってやるのがせめてもの慈悲だろう。
「惨すぎる…」
 斬られた者達が火葬術式によって瞬く間に激しい炎に包まれ、すぐに灰となる。
「彼らが何をしたというのですか、母上…」
 彼らはただ父を信じて心穏やかに生きていただけなのに。
 その彼らの心を踏み躙り、こうして魔へと堕とす権利などどのような存在にも許されるはずが無い。
「これは心の虐殺です、母上…!」
 私が斬った彼らが迷わず父の元へと辿りつけるよう心中で祈りを捧げながら、私は先へと進む。
 出会う者を斬り、斬り、斬って進む。
 男も、女も、大人も子供も関係無く。
 心を鬼にしてその全てを斬り捨て、灰の山を築きながら私は進む。
 やがて彼女を奉る聖堂の扉の前に辿り着いた私は、幾重もの防御術式を組み込まれたそれを一刀の元に斬り捨てた。
「母上!」
 正面、自分自身の降臨の様子を描いたステンドグラスの下に、彼女は居た。
 いつもと変わらぬ姿で、いつもと同じように祈りを捧げていた。
「あら、随分と早かったですね…なるほど、途中で抜け出してきたのですか。いけない子ですね」
 そう言って彼女は背を向けたまま立ち上がる。
「本当にいけない子。まだお祝いの準備は途中だったというのに」
「やはり、貴女なのですね…。何故ですか、母上。何故 貴女はこんな恐ろしい事を」
「何故…何故と問うのですか、貴方は」
 そう言って彼女は私へと振り返った。劣情に頬を染め、淫欲に塗れた炎をその蒼い瞳に灯して。
「私はね、貴方が愛しいのです。どうしようもなく、狂おしいほど」
 そう言って彼女は純白の翼を広げ、ふわりと浮き上がった。
 普段であれば幻想的に見えるであろうその光景は、今この瞬間に限っては途轍もなく禍々しく見える。
「ですが、私が『御使い様』で貴方が『勇者様』である限りそれはかないません。使命を果たしたとしても、人々は私達を野に咲く花にしてはくれないでしょう
「だから、この国を滅ぼしたというのですか」
「滅ぼしたつもりはありませんよ? 私はこの国の人々を救って差し上げただけです」
 そう言って、私の見上げる先で彼女はクスクスと哂う。
「この国の人々は皆、己を抑圧して生きているでしょう? 特に、異性を欲しいと想う気持ちは殊更に強く抑圧されている。私は、それを解放してあげただけです」
「母上…それは、心の在りようの押し付けです。それは、心の虐殺に他なりません…」
 私は彼女に聖剣を向ける。
「貴女をそうしてしまった責任が私にあるというならば、私は貴女を斬らなければならない」
「ふふ…貴方に私が斬れますか?」
「斬れるとか斬れないとかいう次元の話ではなく、斬らなくてはならないのです!」
 ダンッ! と強く床を蹴り、宙に浮かぶ彼女に聖剣の一閃を放つ。
「――光よ」
 が、その一撃は彼女の呟きと共に発生した光の障壁に弾かれた。
 弾き飛ばされながら、私はすかさず左手で聖印を切る。
「光条よ!」
 聖印から放たれた膨大な光が収束し、一本の巨大な槍となって彼女に飛ぶがこれもやはり彼女の展開した障壁を貫くには至らない。
「ならば…ッ!」
 着地した私は右半身を後ろに引いて左手を彼女へ向かって突き出し、弓を構えるような体勢を取る。
「その一撃に全身全霊を込めなさい。それでも私を殺せなければ、貴方の負けです」
 私の全ての力をその身に受けた聖剣が眩く輝き、聖堂内に漂っていた闇を駆逐した。
 全身のバネを引き絞り、空中に浮かぶ彼女へと狙いを定める。
「母上ぇっ!」
 神速の踏み込みから放った必殺の一撃が彼女の展開した障壁とぶつかり、その接触点を中心として凄まじい爆風――というより衝撃波に近いモノが発生した。
 聖堂内に設置された長椅子が木っ端微塵に弾け飛び、彼女の降臨を描いたステンドグラスが砕け散る。
「クッ、おおぉぉォォァァァッ!!!」
 じり、じりと少しずつ聖剣の切っ先が彼女へと迫る。
 だというのに、彼女の顔は焦燥ではなく待ち焦がれた瞬間を迎えたかのような激しい興奮に彩られていた。
 嫌な、予感がする。
「この時を、どれほど待ちわびたことか」
 彼女の手が、ゆっくりと進む聖剣の切っ先に触れる。
「この聖剣をこの手で壊す、この瞬間を待ちわびていました」
「な――ッ!?」
 ピシリ、と彼女の手が触れた聖剣の切っ先にヒビが入る。
「この聖剣が、私を私たらしめている最後の楔でした」
 一度走り始めたヒビはピシリ、ピシリと音を立てて瞬く間に刀身全体へと広がる。
「これで、私はやっと貴方を…」
 りぃん、と鈴の音のような音を立てて聖剣の刀身が粉々に砕け散ると同時に、彼女の身体から途轍もない邪気が放たれた。
「うわぁっ!」
 押し寄せる邪気に吹き飛ばされ、私は聖堂の床へと投げ出される。
「ああぁ…素晴らしい! 素晴らしい開放感です!」
 声のする先を見上げる。
「はは…うえ…」
 割れたステンドグラスの向こうには満月。
 その満月を背負って、翼を黒く染めた彼女が歓喜の叫びを上げていた。
 健康的だった彼女の肌はまるで伝承にある古の悪魔のように蒼ざめ、私と同じであった蒼い瞳は情欲の炎に染まったかのように紅い輝きを灯す。
 そして、頭上に戴いていた天使の象徴である光輪までもがついに禍々しい紫色へと染まった。
「さぁ、愛し合いましょう…我が子よ」
 かつて母であった存在がそう言ってその顔を情欲に染め、ペロリと扇情的に舌なめずりをした。
 全ての力を使い果たし、その上大量の邪気を浴びて床に投げ出された私は無様に這いずることしかできない。
「怖がることはありませんよ。痛い事はしませんから…うふふ」
 彼女が目の前に降り立ち、無様に地を這う私に馬乗りになる。
「や、やめてください、ははうえ」
「まだ私のことを母上と呼んでくれるのですね…」
 興奮した様子でそのまま彼女は私に覆い被さり、首筋に舌を這わせてきた。
「うっ…ぁっ!」
「ハァ…ハァ…今から可愛い我が子を犯すのかと思うと、興奮して頭がどうにかりそうです」
 熱い舌が首筋を這い、耳を舐め、その間に彼女の両手は私の衣服と鎧を剥ぎ取っていく。
「ん、ちゅぷっ…ふぁっ」
 彼女の舌がついに私の唇へと到達し、そのまま口腔の中に侵入して一方的に蹂躙し始めた。
 同時に彼女が腰を揺すって私の一物を刺激する。
「ちゅ…くちゅ…ぷぁっ!」
 やや暫く私を蹂躙した彼女はやっと満足したのか私の顔から口を離した。
 私と彼女の唇の間にねっとりとした唾液の橋がかかる。
「あ、あなたも感じてくれているのですね? 凄く、逞しく私を押し返していますよ」
「ぅ…ぁ…」
 頭の芯がぼーっとして何も考えられない。
 熱い、ただ熱い。熱の源が彼女の手によって解放される。
「ふっ! ふぅっ――! やっと、やっとくる!」
 激しい腰使いで彼女が焼けるように熱い彼女自身を私の一物に擦り付け始めた。
 彼女が動くたびにぐちゅぐちゅと水っぽい音が鳴り、その音が彼女と私をより一層興奮させる。
「い、イキますよ? いいですよね? もうイイですよね!? イキますよっ!? あっ――…あぁっ!」
 彼女に一物が飲み込まれ、そのあまりの熱と快感に私の一物がすぐに爆発する。
「ぁ…すごいです、入ってきてるぅ…」
 ビクビクと震え、口の端から涎を垂らしながら彼女が恍惚とした表情を浮かべる。
「もっと、もっとぉ…こんなんじゃ全然足りません! 凄く我慢してきたんですっ! ずっと、ずっと!」
 紅い瞳を爛々と輝かせ、彼女は絶頂したばかりの私を激しく責め立てはじめた。
 キツくて、あつくて、ぬるぬるしていて、きもちよくて、なにも、わからなく。
「はっ、はっ、はっ、はっ! 私の可愛い子っ! もう、離さないっ! 永遠にっ! 永遠にっ!」
 舌を出し、荒い息を吐きながら彼女が獣のように腰を打ちつける。
 朝の来ない、空けない夜が始まる。
09/12/29 04:32更新 / R
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■作者メッセージ
こうして、彼と彼女の物語は終焉を迎えます。
新たな始まりではないか? いいえ、終わりなき繰り返しは終焉と同義でしょう。
もしかしたら、彼を救うためにある女性が立ち上がるかもしれませんが…
それはまた、別のお話。

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