連載小説
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実習
「確か、貴方は魔術研究部に所属していましたよね?」
「……はい。」
 ベッドに横たわる僕を見下ろすようにしてトワロが口を開く。しかし、開くといっても半開き。というか半笑い。何を考えているのか分からないけれど、多分自分に利は無い事は明白だった。
 しかし、考えていることは大体分かる。
 どうせ、アッチとかの事だろう。この人(?)はバイコーンだし、その種族は、不純の象徴なんて呼ばれている。
「俺に何をするつもりなんですか?」
 俺は恐る恐るトワロさんに訪ねた。
 が、笑顔で無視される。
 
 そして、トワロさんの笑顔によって俺の不安が膨れた頃、
「私と一緒に部室まで行きませんか?」
と声が聞こえ、俺の体が宙に浮く。
「……は?」
 現状が理解できない。ただ、如月が後ろでブーブーとブーイングをしているのはわかる。
 フレイヤさんは、口に手を当てて笑っているが、目が笑っていない。
「な、なななななっ!何でアンタがっ!」
 ミリウは、叫び声をあげ、トワロさんを睨んでいる。
 よく見ると、僕はトワロさんに『お姫様抱っこ』の様な状態で抱きかかえられていた。
「ト、トワロさん!?何で!?」
「ただ、今まで怪我をしていたので……。」
「だっ、だからって哲也さんをを抱きかかえる理由にはなりませんよ!」
 如月が叫び、それに重ねるようにミリウが叫ぶ。
「今は実習期間よ!隊に所属していないものは、ほかの隊員との接触を慎むべきよ!」

 実習期間。
 つまりそれは、作られた小隊どうしで模擬戦を行い、その中で隊の強さを決め、それを成績に加算してくれる、という期間。俺はこの期間に撃破点を稼ぎ、その点数の全てを剣技科目に注ぎ込まなければ留年してしまう。だから、この期間は、命の期間とも呼べる、最重要期間だった。
 
「あら?私はもう入隊届けを提出したはずだけど?そうじゃなければ、HCが居ても、回復魔法は使用できないはずよ?」
 ミリウの言葉を軽くあしらい、トワロさんはフッ、と笑う。
 その含みのある笑みは、とても妖艶で、まるで女郎の様な印象を受けてしまう。やっぱり、魔物は魔物なのか。


「待って。」
 トロワさんが部屋から出ようとした時、突然ドアに黒結界が張られた。
 この結界は、通称『古結界』と呼ばれ、この地方の防御魔術の基礎の基礎となった、現在もよく使用される、現存する結界の中では最も硬い強固な結界であるが、結界内から外を見ることができない。また、外から中を見ることができないし、音も伝わらない。
 そして、消耗する魔力も多く、うまく使用出来るようになるまでは、少し時間がかかる。

 僕は怪我の治療で自らの魔力を消耗しているので、張れない。そして、如月は、この地方出身でないため、張れない。つまり、この結界を張れるのは現在、フレイヤさんだけになる。
 
「どうかしましたか、先生?」
 行く手を阻まれたトワロは、少し苛立ったように振り返り、先生を睨んだ。
 そして、俺を抱く腕に力が込もる。
「そういえば実習期間は部活がなかったような気がしたんだが?」

「……バレた?」

 トワロがそういった瞬間、ミリウの周辺に、火の粉が散った。
 俺を燃やす気ですね?

 そう思ったけれど、トワロが、結界を張り、それを防ぐ。
 彼女が張ったのは、二重結界。ルーン文字と、術式展開用の現代魔法陣を組み合わせて使用する流れは、俺も使用する二重展開式の結界だ。
 俺はそれに、ジパングの結界を組み合わせて、三重結界にするのだが、彼女は、ルーンで作った結界に現代魔法陣を書き込んでその結界を強固にし、現代魔法陣で展開した結界にはルーン文字を書き込んで、それぞれを強固にしていた。
 僕の見たことのない手法。それに驚き、炎を防ぐ結界の美しさに惹かれる。さすが魔術科。といったところだ。

「貴女、哲也さんの事を好いているようだけど、彼を巻き込む様な炎の使い方は止めたほうがいいわよ?貴女の炎は同学年の魔術科でもトップレベルの炎だけど、制御が出来てないわ。」

「なっ…………!?」
 ミリウの顔が、さっきの炎のように赤くなる。
 しかし、トワロの挑発に怒っているわけではなさそうだ。

「えっ!!ミリウさん、隊長のことが好きだったんですか!?

「う、うるさいっ!」

「……あうぅ」
 バシッ、とミリウが如月の頭を殴打し、その痛みに如月が小さくしゃがんで悶える。可愛い。
 そんな如月を見つめていたら、ミリウに睨まれた。

「強い女の子は嫌い?」
「え、あ、いや、あの……」
 睨む、というよりも見つめられていた。
 俺を見つめる目は、いつもよりも柔和で、少しドキドキした。

 ヤバイ、惚れそう。

 
12/12/25 17:41更新 / M1911A1
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■作者メッセージ
嗚呼、ちっとも文章が上手くなってない様な気がする。

ちょっと今まで文章の修行をしていたM1911A1です。

大丈夫です。ちゃんと生きています。


更新はこれから超不定期になりますが、応援よろしくお願いします。


次回はやっとバトルになると思います。

赤髪の女子が登場する可能性アリです。

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