「おはよ、姉さん。助かったよ、寝つきめちゃくちゃ良かった」

「デショ」

姉さんは得意げだ。「お風呂沸かしてあるからね」

本当に姉さんには何から何まで助けられている。

いつもの入浴剤でとろみのある風呂を済ませ、黒いバスタオルで身体を拭く。

このとても肌触りのいいバスタオルも、姉さんが用意したものだ。
なんでも実家から持ってきたものだというが、長い間使っても全然傷まないし、水分の吸収も凄い。質の高いものは違うんだな、と実感したものだ。高級そうな色をしているだけある。

「う」

入浴中から気になっていたが、やけに息子が元気だ。昨日即座に寝たのがそんなに不満だったか？ しかも感覚が鋭敏になっているのか、やけにとろみを感じ取っていた。

バスタオルが触れるたびに肌触りの良さが快感に変わり、ぞくりと背が震える。
そのままバスタオルを添えて、少し動かすとさらさらと舐め上げられるような感触がして。気持ちいい。もう少しだけ。
頭では良くないとわかっている。出すにしても、排水口のあるところに。気持ちいい。手が止められない。

「うっ……」

解放感にため息が出る。やってしまった。後悔が募る。
しかもなんだってそんなに元気なんだお前は。未だに自己主張する息子はもう諦めてバスタオルを見る。
黒地に白が目立っていた。

流そうとすると、吸収性の良さを発揮してその水ごと吸い込んでしまい事態が悪化した。
最悪だ。なんとか取れないものかと試行錯誤しても、塗り広げる結果になりもうダメだった。

「姉さん、洗濯物回しとくねー」

姉さんに呼びかけて勝手に洗濯物を回す。
とりあえずこれで今はなんとかなっただろう。

食事の際、いつも同席して見ている姉さんだが、今日は少し事情が違った。

もじもじしたまま、一向に料理の出来を確かめてくることも無ければ、それどころか目も合わせたりしない。薄紫の肌がはっきりと赤くなっている。

「どうしたの？」

俺が尋ねると、姉さんはおずおずと言った。とても言いづらそうだった。

「あの、その。ちーくんの、アレの、匂いとか……ね？」

心当たりがありすぎる発言に俺は死にたくなった。
そうじゃん。魔物娘じゃん。そういうのに敏感だって知ってた筈だろ俺。
なにが、今はなんとかなっただろう、だ。下手したら出した瞬間に気付かれててもおかしくなかった。

完全に硬直していた俺が箸を取り落とさなかったのは奇跡と言っていい。

姉さんが俺の様子を見て慌てたように言った。

「だっ、ダメってわけじゃくて！ ただ、えと……そう！ そのっ、不意打ちだと。こうなっちゃうから、事前に言って欲しいってだけで！」

「今回は俺が明らかに悪いけど流石に言えるかァ！」

どんなプレイだそれは！
姉さんが反論した。

「でも覚悟が、覚悟が要るから！ そうじゃないと、ダメになるから！」姉さんは泣きそうな顔で続けた。「私、お姉ちゃんだけど、魔物娘だから……」

俺は。
俺は、どうするべきだったんだろうか。
過去は変えられない。
だからこそ、未来を変えるための努力は、今、やらなければならないのかもしれない。


俺は学校でも悩み続けていた。

「千秋、なに難しい顔してんの。なんかあった？」

「いや、まあ。ちょっとな」

声を掛けてきたのはクラスメイトの犬飼だ。クー・シーの彼女がいたはず。魔物娘との付き合いという意味では、先輩にあたる。話してもいいかもしれない。
うん。俺は一つ頷いて事情を説明した。

犬飼は難しい顔をした。

「……キツくね？ つーか状況がわかんねえ。お前が今までの関係を続けたいのは、まあわかるんだけど」

俺は頷いた。

「姉さんが俺を弟として見てるか男として見てるかが分からん」

「ダメじゃねえか」犬飼は言った。「どうすんだよこれ。何もわからねえままじゃねえか」

「あのさ」

横の席から声が掛けられた。スライムの水谷さんだ。

「二人とも勘違いしてるけど、魔物娘が本気出したら男の抵抗なんて意味ないわけよ」

「どういうことだ？」俺は尋ねた。

「いやね。男として見られてたら、まず間違いなく抵抗できないから」

犬飼が口を挟んだ。「そんなことはないだろ、うちのロンは手を出してこないぞ」

「忠犬だねぇ……でも、その分どんなに挑発しても手を出してこないでしょ」図星だったのか犬飼が呻いた。「魔物娘ってそうなの。自分の思う通りにできるだけの意志と力があるの」

俺は尋ねた。「じゃあ、俺はただの弟としてしか見られてないってことか？」

「そこがわかんないんだよね」

水谷さんは首を傾げた。

「明らかに気はある。手ぇ出されてるし、これは間違いないから。なのに弟っつって距離を取ろうとしてる。そこが変」

「結局手詰まりかよ」犬飼は頭を掻いた。

「いや、そうでもないよ」水谷さんが明るく笑う。「言ったでしょ？ 魔物娘はやりたいようにやるんだから、あんたの姉ちゃんのやりたいようにさせてやりなよ。よくわからないけど、絶対上手くいくから」

俺はうむむと考え込んだ。
姉さんのやりたいように。

『事前に言って欲しいってだけで！』

どんなコアなプレイだ。一歩目があまりに大きすぎるだろ。
しかし、姉さんがそれを望んでいるなら。

俺は手に力を込めた。





ちーくんは学校に行った。
私は学校を休んだ。性欲を発散しないと、表にはとても出られない。
脚がぐずぐずと粘液状に崩れる。
流石に精液を塗り広げられることは想定していなかった。

私はお姉ちゃんだ。ちーくんに姉であることを求められている。ちーくんの姉として、できることは何か。

ちーくんが寝ている間に全部搾り取る？
解決になってない。起きてる時に、そういう状態になったらどうするのか。

またバスタオルに出してもらう？ あのバスタオルは私だから、そりゃ問題ないだろうが……ちーくんが辛いだろう。私にバレることがわかっているのだ。

逆に。どこで出してもわかるのを前提として考えよう。実際わかるし、誤魔化すのは難しい。私は考えを改めた。

まず、この時点で隠れてやるのは厳しくなる。
私にバレていると考えたら、今日のような状態になりかねない。
じゃあ私の目の前で？ 想像が興奮を引き起こし、こぽりと沸いた粘液が床に広がった。

どういう手を選んだとしても、あくまで姉と弟としての関係は保ちたい。
そして最重要項目はちーくんの意思だ。
ならば、準備だけはしておかなければ。

私は手に力を込めた。





いつも通りであることを強調するかのような夕食を終え、俺はソファに座り込んでいた。コーヒーゼリーは美味かった。

姉さんは片付けをしている。
姉さんの様子はいつもと変わらない。
俺の様子も、変わらなかった筈だ。

ここまでの時間には、なんの変化もない。
何事もなかったかのように。姉さんが食器を洗い終えた。

脳内の俺が俺を責める。
本当にそれでいいのか、と。安寧とした日々に誤魔化されるだけなのかと。

やはりここは。言わなくてはならないだろう。
それが姉の望むことなら。

俺は今から致すぞと覚悟を決めて報告しようと振り向いて。

「姉さん、俺今からオナニー……」

そこで姉さんが女性の膣を模した半透明で柔らかい素材の例のあのブツ、つまりオナホールを手にしてこちらに来ているのを目撃して仰天した。

顔を赤らめた姉さんがフリーズから復旧して、手にしたオナホールを振りながらあわあわする。卑猥だ。

「ち、違うの。いや、違くなくて、その」

「姉さん」

姉さんが俺の顔を見る。俺はもう一度言った。もうなるようになれ。

「姉さん、俺は今からオナニーします」

姉さんはオナホールを胸の前に掲げて張り合うように言った。

「わっ、私がしてあげようって、思ったのに……ちーくんがそういうなら」

「いや、そういうことなら姉さんが……」

俺と姉さんはしばし無言で向き合った。
姉さんはえへ、と笑った。

「じゃ、じゃあ。一緒にする……？」

俺はゴクリと唾を飲んだ。



「ふふ、こんなことになるなんて。朝は思ってなかったなぁ」

姉さんが耳元で囁く。
姉さんのこぽこぽと沸き立つ粘液の上に座った俺の肩から、姉さんの紫色の腕が回される。その手にはオナホール。

「姉さん、これさ。一緒にやるって」

姉さんは透明なオナホールを緩く振って虚空をシゴいた。

「二人で持って、一緒にシコシコしよ？ ってこと」

俺は呻いた。「ハイレベル……」

「あ、そのままじゃダメだからちょっと待ってね」

オナホールをぐにぐにと揉むとさらさらと透明な粘液が垂れ落ち、俺の剥き出しの下半身が濡れる。当然今まさにいきり立って熱を放つ芯もだ。
さらに怒張が胸を張る。かつてないほどだ。
痛みさえあるその先端に、擬似膣口が添えられた。
姉さんが言う。

「ほら、ちーくんも持って」

俺が姉さんの上に手を重ねると、混じり合うように粘液化して溶けた。しかし、重なった部分以外は明らかに手の形が残っている。姉さんは器用だ。

「じゃあ、最初はゆっくりね、ぐーっと」

二人分の握力。さらさらと肉を溶かすような粘液。弾力に満ちた偽肉膣の不規則な動き。それらを肉棒に感じながら、俺と姉さんはオナホールの奥まで怒張を押し込んだ。

「うわ、すご……先っちょが破れそう」

空いた左手で敏感な亀頭を壁越しに弄られ、堪らず呻き声が出た。
姉さんは構わずに手を動かし始める。

「ほら、しこっ、しこっ。二人でオナニー気持ちいいねー？」

姉さんの濡れた声。
ぐちょりぬちょりと水っぽい音が響く。
姉さんの不規則な手の動きと俺の単調な動きが一緒くたにオナホールを伝わり、肉棒に予測できない快楽を伝えてくる。

「あ、ダメだよ手を止めちゃ。ほら」

過剰な快楽に手を止めようとするも、姉さんの手が俺の手を巻き込んでいるためそれも構わない。

「あは、これ楽しいかも。しこしこ気持ちいい？ いいよね？」

姉さんが耳に吐息を吹きかけて射精を煽る。
とろとろした粘液が、掻き出される側から湧き出し亀頭を受け入れる。
それがまた新しい快楽となり、その間も。

「しこ、しこ。なで、なで。ちーくん、かわいい……」

左手で先端を弄ったり、オナホールから露出した部分を撫で上げたり、乳首の周りを弄ってきたりといった動きが止まらない。
気がつけば腰から下が全て姉さんの粘液に包まれていて、そこら中をどろどろとした重い粘液が伝って刺激してくる。

「ほらー、イッちゃえよー。どぴゅどぴゅしよー？」

姉さんはなんとか耐えようとしている俺を陥落させようと射精を煽る。
もう限界だった。腕を止められない。
姉さんが不意にオナホールの先端をぐりんと捻った瞬間、俺は盛大に射精した。

「んふっ、ふふ。えっちぃ……」

オナホールを突き抜けんばかりに奥へと押し付けて、先端に溜まっていく精液。
姉さんはその上からぐりぐりと掌でさすったり、先っぽだけを軽く何度かシコったりして「全部出しちゃおうね」なんて言う。

尋常じゃなく汗をかいた気がしたが、全て姉さんが吸い取っていてくれた。

オナホールを外すと、湧き出していた粘液が止まった。不思議と色々垂れてこない。

「はいこれあげる」

姉さんがそのオナホールを渡してくる。
やっぱり柔らかい。ぐにぐにと揉むと、奥からまた粘液が垂れてくる。

「魔界特製オナホール。ローションが勝手に出てくるから、使わないときは上向きにしといてね。そしたら止まるから」

俺は尋ねた。

「これ精液は、どこに消えたの？」

精液は出てこないままなのだ。
姉さんは言う。

「精液は吸収されて粘液の材料になるから出てこないよ。これで匂いもちょっとマシになる、と思う」

でも、やっぱりわかるから、するときは出来るだけ言って欲しい。姉さんは顔を赤らめて言った。今度は私がやりたい、と呟いたのを俺は聞き逃さなかった。

あと粘液は間違って口に入っても大丈夫なようにできてるし、精力剤でもあるから飲むといいらしい。ただ、俺としては材料を考えるとあまり飲みたくない代物だった。

ともかく、凄い体験だった。

俺はその場でしばらくぐったりして、今更密着していることを恥ずかしそうにする姉さんの誤魔化すような悪戯にまた勃起し、今度は姉さん一人でオナホールを動かして貰った。乳首やらアナルやらをつついてくるのには困ったが、恐ろしい量の射精となった。

よくわからないことになったが、概ね上手くいったと思う。
俺は安心して眠りについた。