連載小説
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(37)ベルゼブブ
「♪〜♪〜♪〜」
鼻歌とともに左右に揺れる褐色の背中を、少年は見ていた。
彼の目の先に立っているのは、少年と変わらぬ背丈の少女だった。
だが、その短く切られた髪の間からは触覚めいた突起が延びており、背中にはドクロの模様が浮かんだ薄い羽が生えている。
よくよく見ると、尻の上には楕円形の黒い物がついており、手足の末端は甲殻に覆われていた。
まるで、人と蠅を組み合わせたような姿だ。
「♪〜♪〜♪〜」
ベルゼブブは、少年の視線を背中で受け止めながら、静かに鍋をかき回していた。
そしてお玉で鍋の中身を掬いとると、小皿に移して軽く口に含んだ。
「・・・んー・・・」
傍らに置いていた塩の小瓶を手に取り、数度鍋の上で振る。ぱらぱらと落ちた白い粒を、よくお玉でかき回してから、彼女は再び味を見た。
「よし」
彼女は一つうなづくと、お玉から手を離してくるりと振り返った。
「いま注ぐからね」
台所から数歩、少年が着いている食卓の上に置かれた、大小二枚の皿を手に取ると、ベルゼブブは少年に向けてにっこりほほえんだ。
そして鍋に向き直り、お玉で皿に鍋の中身を注いでいく。
細かく切られた肉と野菜。そして透き通ったスープが、皿の中身を満たしていく。
「はい、お待たせ〜」
ベルゼブブは二枚の皿を手に、食卓に歩み寄ると、大きい方を少年の前に置いた。
「わぁ、おいしそう・・・!」
「へへ、最近本で勉強したんだ」
少年の言葉に、ベルゼブブは照れくさそうに頬を甲殻に覆われた指先で掻いた。
「さ、召し上がれ」
「いただきます!」
少年はスプーンを手に取ると、皿のスープに先端を沈め、肉のかけらとともにすくい上げた。そしてそのまま、口元に運び、ぱくりと咥える。
「どう?」
「ん〜、おいしい!」
数度の咀嚼を挟んでから、少年はそう賞賛した。
「よかったぁ・・・」
一口、また一口とスプーンを上下に動かす少年に、ベルゼブブは胸を撫で下ろした。
初めて作る料理だったが、うまく行ったようだった。
これなら、少年の好みの味付けに調整すれば、もっと喜んでもらえるだろう。
「ほら、お代わりはまだあるけど、そんなに慌てなくても大丈夫よ」
がつがつと、数日何も食べていなかったような勢いでスープを飲む少年に、彼女はそう声をかけた。
「おいしすぎて手が止まらないんだよ〜」
「もう、そんなこと言って・・・」
冗談めかした少年の返答に、ベルゼブブは苦笑した。
そして彼女も遅れてスプーンを手に取ると、少年の物に比べれば小さな皿に、その先端を沈めた。


食後、少年が流しに向かい、食器を洗っている様子を見ながら、ベルゼブブは奇妙な満足感を覚えていた。
豊穣をもたらす魔物として捕らえられ。この小さな小屋に少年とともに押し込められてどれほどになるだろうか。
自由奔放な気質のベルゼブブにとって、行動の制限、特に閉じこめられることは我慢がならなかった。
監禁されて最初の数時間は、どうにか外に出ようと暴れ回った。だが、小屋の壁はもちろん、薄い窓ガラスさえひび一つ入れることはできなかった。
暴れ回り、体力を無駄に消耗し、疲れきったベルゼブブの目に入ったのは、おびえきった少年だった。魔力を補うため、彼女が少年に襲いかかるのに、躊躇いはいっさいなかった。
十と幾つかになったばかりと思しき少年は、その日のうちにベルゼブブに様々な物を奪われた。そして全てが一通り終わったとき、少年は未知の感覚の残滓と、ベルゼブブへの恐怖にむせび泣くほか、何もできなかった。
それから数日間、ベルゼブブは小屋の中で気ままに、彼女伸したいことをして過ごした。
小屋の入り口に時折押し込まれる食料をかじり、戯れに少年を弄び、疲れれば横になる。そして目を覚ませば、隠れる場所もろくにないのに、必死にベルゼブブに見つかるまいとする少年を探し出し、弄ぶのだった。
そんな二人の関係が変わったのは、いつの頃だったろうか。
扉から差し入れられる食料を一通り平らげ、いつものように食べ残しを少年に押しつけてから、ベルゼブブはベッドに横になった。
しばしの間をおいて、彼女を眠りから呼び起こしたのは、少年のうめき声だった。見ると、少年は床の上に横になり、腹を押さえたまま呻いていた。
最初は、知恵を絞っての仮病かとベルゼブブは考えたが、少年の額に浮かぶ汗を舐めとって、ようやく違いに気がついた。彼は本当に具合が悪いのだ。
これまで弄ぶ対象でしかなく、ペット程度の認識だった少年がいざ死ぬかもしれないとなったとき、ベルゼブブの内側でにわかにその存在感を増した。
彼女は少年を薄汚れたベッドに横たえ、小屋の戸に向かうと、食料が入ってくる小さな穴から必死に声を上げた。
そして、彼女が数度扉と少年の間を往復したところで、ようやく人がやってきた。
「大変だ、あのガキが病気なんだ。助けてやってくれ」
彼女は必死に、扉越しに訴えた。扉の向こうの何者かは、狼狽えた様子のベルゼブブを落ち着かせつつ、少年の病状を聞き出すと、こう言った。
「どうやら食中りのようだが・・・まさか、今まで生で食べていたのか?」
ベルゼブブは構うことなく食べていたが、どうやら差し入れられていた食料は調理が必要らしかった。加えて、ベルゼブブの弄びとストレスにより、少年の体力が落ちていたのもまずかったようだ。
扉の向こうの何者かは、ベルゼブブに薬を渡して看病の方法を伝えると、小屋から離れていった。
彼女は藁にもすがる思いで、言われたとおりに少年に薬を飲ませ、小屋の中の井戸の水で濡らしたタオルを額に置き、必死に看病した。
すると、一晩もしないうちに少年の熱は下がり、安らかな寝息をたて始めた。
彼女は少年の無事にほっと胸を撫で下ろした。
それから、彼女は変わったのだった。
「本当によかった・・・」
皿を洗う少年の背中を見ながら、彼女は思わず口にしていた。
「え?何?」
「何でもないわ。味付けが気に入ってもらってよかった、ってだけよ」
独り言に反応した少年に、彼女はそう誤魔化した。
少年の食中りで反省し、ベルゼブブが態度を改めたところで、あの一件は終わっているのだ。今更蒸し返す必要はない。
「はい、終わり」
しばしの間をおいて、少年は皿を拭き終えてそう言った。
「お疲れさま」
食後の後かたづけを終え、食卓に歩み寄る少年に、彼女はそうほほえんだ。
「じゃあ、今度はキレイキレイしようか」
「うん!」
ベルゼブブの言葉に、少年はうなづくと、衣服を脱ぎ始めた。
キレイキレイというのは、少年の体をきれいにする、という二人だけに通じる言葉だった。
少年が食中りを起こす前は、彼女が適度に溜まった少年の垢を舐めとることで風呂の代わりとしていた。だが、そのたびに噛みつかれるのではないか、と少年は体を震わせていた。
少年が倒れた後は、教えられたとおり清潔な濡れタオルで少年の体を拭くことで、彼女は風呂の代わりとしていた。もちろん、彼の汗や垢を舐めたいという欲求はあったが、不要な恐怖を与えるわけにもいかないため、タオルを濯いだタライの水を飲み干して我慢していたのだった。
だがそれも、変わった彼女を少年が受け入れ、心を開くようになるまでのことだった。
「よっと・・・」
衣服を脱ぎ捨て、一糸纏わぬ姿になると、少年は微かな照れを表情に浮かべながらもベルゼブブの前にたった。
「はい、キレイキレイしようね・・・」
彼女は膝を床に着き、少年を抱き寄せるようにしながらそう囁いた。
そして、やや長い舌を出して、少年の顔をベロリと舐めた。
「ん・・・」
目と口を閉じ、くすぐったさをこらえながら、少年は彼女の舌を受け止めた。
ベルゼブブは、少年の顔全体を残すところなく舐めていく。
額には汗の味、口の回りにはつい先ほど食べた料理の味が残っている。
やや味の薄い頬を舐めると、今度は耳の裏側。そこには一日でそこそこの垢が溜まっており、ほのかな塩味と皮膚だったタンパク質の作り出すうま味があった。
「んん・・・」
舌先が耳の裏をくすぐり、耳の中、穴の浅いところを舐める感覚に、彼は小さく身じろぎしながら呻いた。
なかなかおいしいが、これ以上くすぐるとかわいそうだ。ベルゼブブは耳垢の深追いをやめると、舌を口に引っ込めて、唾液で軽く舌先を濯いだ。
そして今度は首筋。背中を屈め、少年の喉をのぞき込むようにしながら、肌を舌で拭っていく。
皮膚一枚下で脈打つ血管に、呼吸にあわせて小さく動く未発達な喉仏。少年の小さな蠢きを感じながら、汗と垢を舐めとっていく。首の前面が終われば、今度は彼の肩を抱えるようにしながら、うなじへ下をのばす。
襟足の生え際の、やや強い塩味を堪能したら、今度は肩だ。
衣服に覆われ、布地が汗を吸ったせいで塩味こそあまりなかったが、運動による摩擦で垢が少しだけ浮かんでいる。垢をそぎ落とす、という意識もなく、ベルゼブブは浮かび上がった汚れを、舌で口内へ運んでいった。
薄く浮かび上がる鎖骨も、その内側の小さなくぼみも、綺麗にしていく。
「ん・・・」
くすぐったさに耐える少年の声と、小さな身じろぎ。そして肌を舌が這い回る音だけが、小屋の中に響く。
やがて、少年の腕や腋、背中に薄い胸板に、小さなおへそまでを清めたところで、彼女はついに少年の肉棒まで顔を下ろした。
少年のそこは、肌を這い回る舌の感触と、ベルゼブブに裸身をさらす興奮によって固く勃っていた。
彼女が自由気ままに振る舞っていた頃、毎日のように弄んだそれ。
ベルゼブブは小さくほほえむと、あえてそこに舌を触れさせず、少年の足を先に清めた。
腰を飛び越し、少年をいすに座らせ、足をあげる。そして太股やすね、膝とその裏側を順番に舐め清め、くるぶしから先をねっとりと舐める。
幼いながらも、固く角質化した足の裏を堪能し、足の指の間をくすぐってやる。
「あ、ああ・・・も、もうやめて・・・!」
たまらず少年が声を上げると、彼女は彼の求め通り、舌を止めた。
「なあに?キレイキレイやめてほしいの?」
もちろん、足の指の間をくすぐるのをやめてほしい、というのはわかっている。
だが、これぐらいの軽い意地悪をしてやった方が、少年も言いやすいのだ。
「ち、違う・・・足をやめて、もっと僕の汚いところを、キレイキレイしてください・・・」
もっと汚いところ。小さな、年相応の屹立も含めた、腰のあたり。
「わかったわ・・・」
少年の同意と求めに、ベルゼブブは舌を口に引っ込ませ、いすに腰掛ける少年の股間に、顔を寄せた。
顔の側面から垂れる銀色の髪を手で押さえつつ、芳しい香りを放つ肉棒を、彼女は口に含んだ。
「んん・・・!」
股間を包み込む温もりに少年が声を漏らす。しかしベルゼブブもまた、下手すれば少年以上に快感を覚えていた。
少年の肉棒にへばりつく白い垢。それがもたらす臭気が、ベルゼブブの脳髄に突き刺さったからだ。
新陳代謝活発なうえ、肉棒が未発達なため余り気味の包皮。その二つが、少年の肉棒に恥垢を付着させ、海産物を思わせる塩辛さと生臭さを含んだ臭いを作り出していた。
ベルゼブブは少年の勃起を根本まで口に含むと、臭いを漏らすまいと唇を締めた。
彼女の唇の感触に、少年の陰茎が小さく跳ね、彼女の舌に亀頭と竿の境目を擦りつける。塩辛い恥垢がベルゼブブの舌にへばりつき、味と共に痺れるような感覚を彼女に伝えた。
彼女の感じたそれは、明らかに性的快感だった。
自分の指で、あるいは肉棒で女陰をえぐる際の、腰から背中へ駆け上る痺れ。それと全く同じだった。
違いといえば、女陰より舌の方が脳髄に近いためか、背筋のゾクゾクする感覚を挟むことなく、直接快感が意識にたたき込まれることだろうか。
「・・・!」
脳髄のしびれに、ベルゼブブの股間が湿り気を帯び、同時に口中に唾液が溢れ出す。
彼女は口内の唾液を舌に絡めると、直接肉棒に触れぬよう注意しながら、唾液を屹立に垂らした。
温もりはあるものの、妙に空虚なベルゼブブの口内を感じていた少年は、突然の熱とぬめりに体を震わせた。
「あぁ・・・!」
心優しいベルゼブブが、言葉を紡ぐ唇で少年の汚れた場所を包んでいる。その事実が、少年の口から短いあえぎ声を紡がせた。
同時に、少年の肉棒に絡みついた粘液は、ゆっくりと付着する恥垢を溶かしだしていた。
唾液の中に、紅茶の茶葉のごとく恥垢の匂いが移り、遅れて味が溶け込んでいく。
ベルゼブブは、口の奥に舌を引っ込めて、極力唾液を感じないようにしていた。だが、唾液に溶け込み揮発した少年の匂いは、容赦なく口中のわずかな空気を伝わって彼女の舌にまとわり付き、呼気と共に鼻孔に入り込んだ。
「んん・・・」
脳髄に食い込む少年の香りと、唇で感じる熱と固さ。それらがベルゼブブの意識を蕩かし、舌を、喉を、鼻孔を疼かせる。
少年を味わいたい。
その瞬間、彼女の意識の枷が、ついに弾け飛んだ。
「・・・!」
口の奥に引っ込め、縮こまらせていた舌が、少年の屹立に絡み付く。
少年の恥垢をたっぷりと溶け込ませた唾液と、溶けきれなかった恥垢そのものが、ベルゼブブの舌に肉棒と共に触れた。
最初に彼女が感じたのは熱。しかしそれは、屹立そのものが帯びた熱と、舌を焼くほど濃厚な味だった。
軟らかな肉が快味に痺れ、彼女の脳髄が震える。そして、接触の瞬間の刺激を求めるように、ベルゼブブは舌を少年の肉棒に巻き付けて、未だへばりつく恥垢を自身の舌に塗りたくっていった。
「あぁぁ・・・!?」
突然蠢きだしたベルゼブブの舌に、少年は思わず声を上げ、彼女の銀髪で包まれた頭に触れた。
肉棒を溶かされ食べられるのではないか、という本能からの恐怖と、まだ止めてほしくないという期待がごちゃ混ぜになり、ベルゼブブを扱かんから引き剥がすわけでも押しつけるわけでもない、中途半端な力のこもり具合のまま動きが止まる。
一方ベルゼブブは、頭髪越しに頭を締め付ける少年の指に、荒々しく口中に勃起を押し込まれたような錯覚を味わっていた。
少年のとっさの挙動が、彼女に力強い雄を感じさせ、彼女の口内と股間に粘液を分泌させる。
さらりとした唾液が妙な唾液を帯び、ベルゼブブの頬の内側や舌に絡みついて、味と痺れをもたらす。
もはやその量は口から溢れ出さんばかりで、彼女の舌に逃げ場はなかった。
「ん・・・!」
興奮に煮え上がった意識のどこかで、幾ばくかのもったいなさを覚えながらも、彼女は口内の唾液を飲み込む。
すると、たっぷりの唾液は彼女の喉をこすりながら滑り落ちていき、胃袋に入って熱を放った。
強い酒を飲んだように。いや、通り過ぎただけの喉さえも熱と痺れを感じている。
口はもちろん、喉から胃袋までが別の器官に変化してしまったのだ。
「んっ・・・んん!?」
喘ぎを含んだ吐息を吐こうとした瞬間、彼女の鼻孔を強い匂いがおそった。今し方飲み干した唾液の残滓が喉にへばりつき、出入りする息に匂いをつけているのだ。
少年の恥垢が、口の中はもちろん胃袋から喉、そして肺の内側を満たしたような錯覚が、一瞬ベルゼブブの脳裏に浮かぶ。
同時に、その錯覚を現実にしてほしい、いや皮膚の下、肋骨の内側を少年で満たしてほしいという衝動が芽生える。
もはや彼女に、それを止めるだけの理性はなかった。
「うぁ、あぁぁ・・・!」
猛然と舌を絡み付かせ、唇をすぼめ、肉棒をすいたてるベルゼブブの動きに、少年は声を上げながら身悶えした。
強烈な快感に、少年はたちどころに限界を迎え、ベルゼブブの口中で達した。
肉棒が脈動し、彼女の口中に精液が迸る。
喉の奥を打ち据える粘液は、熱とその固さをベルゼブブに伝えてから、その臭いをたっぷりと放った。
青臭く、生臭い、栗の花のような臭い。例え方はいくらでもあるが、彼女が舌で感じた臭いを形容することは、彼女自身にも無理だった。
彼女は少年の放った粘液を、ろくに味わう間もなく飲み干すと、肺を出入りする呼吸に精液の臭いを加えた。
一呼吸ごとに、直接鼻に精液をそそぎ込まれたような強い香りが、彼女の意識を焼く。
ベルゼブブの興奮は燃え上がり、少年の肉棒を更に吸い立て、白濁を、より強い臭いを搾り取ろうとした。
しかし、今し方ようやく射精を終えた少年の肉体は、快感に対し肉棒を脈動させることしかできなかった。
「あっ、あぁっ、ひぐっ・・・!」
すでに達してもいいほどの刺激を受けたにも関わらず、何も出ない。
絶頂で発散されることのない肉棒への刺激は、少年の意識を快感で焦がした。
やがて、肉体がようやく次の射精の準備を整え、精液を即座に放つ。
ベルゼブブは待ちこがれていた臭い粘液を注がれるそばから飲み干すと、お代わりを要求するべく強く吸った。
舌先が段の浅い少年のカリ首を擦り、わずかに残った恥垢をそぎ落とす。
射精直後の亀頭への刺激に、少年は涙を浮かべながら体を震わせた。
そして、射精とベルゼブブの責めを何度繰り返しただろうか。少年の睾丸が空になり、どうにか残った体液をかき集めては肉棒の先端からにじませるようになった頃、ベルゼブブは物足りないといった様子で、ひときわ強く、激しく口中を蠢かせた。
舌が少年の裏筋を撫で擦り、柔らかな口蓋が亀頭を圧迫し、唇が根本を締め付け、頬が竿を擦る。
今までに少年が味わってきたばらばらの刺激を一度に与えられ、少年はたちどころに達した。
しかし、いくら屹立が脈打てど迸るものはなく、肉棒と少年は切なげに震えるばかりだった。そして、繰り返し与えられた絶頂に至る快感に、ついに肉体が何かの間違いを犯した。
ベルゼブブの口内に、液体が迸った。
空になった睾丸からでなく、溜まりに溜まっていた、肉棒から出るもう一つの液体。
「んん!?」
口内をたちどころに満たした少年の尿に、彼女は一瞬声を上げると、漏らすまいとその塩味のきつい液体を喉へ送っていった。
ベルゼブブの細い喉が上下し、金色の液体が胃袋へそそぎ込まれていく。
精液の臭いを放っていた彼女の吐息が、いつしか尿の臭いを帯び、上書きされていく。
そして、少年が最後の一滴まで排尿を終えたところで、ベルゼブブはようやく彼の肉棒を解放した。
「ふぁ・・・」
小便臭い声を漏らしながら、彼女は床にしりもちを付き、そのまま仰向けに倒れた。
彼女の股間も、尿でも漏らしたかのようにしとどに濡れていた。
だが、その表情は、どこか満足げだった。
「はぁはぁはぁ・・・」
少年は刺激から解放され、荒く乱れていた呼吸を整えながら、床に倒れるベルゼブブに向けて口を開いた。
「今度は、僕がキレイキレイしてあげるね・・・」
射精こそできないものの、少年の内側にくすぶる欲情の炎。その熱を帯びた彼の言葉に、ベルゼブブは小さくうなづいた。
12/09/14 17:05更新 / 十二屋月蝕
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■作者メッセージ
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