魔宴『新選組』捕物帖 

「げへへ……」
満月の照る夜。
とある屋敷の一室に男の下卑た笑い声が響く。
彼が手にしているのは大量の小判。それを見ている様子、畳の下に隠していることから真っ当な金ではないことがうかがえる。
「さて……あとどれくらい稼げるかな……ぐへへ」

「そこまでだ、下衆灰汁之助(げしゅう あくのすけ)」

「何奴!?」
外を見ると、塀の上に立つ影が一つ。
「何奴だと? 我が名を知らぬか?」
それは飛び上がり、静かに庭へと降り立った。
「我が名は柳沼竜胆(やぎぬま りんどう)。今宵、貴様を成敗しに参った」
じり、じり、と一歩ずつ下衆の元へと近づいていく。
月光が、その影を照らし出した。

それは背に大きく『誠』を刻んだ水色の衣を纏いし黒髪の幼女。しかしそれは人ならざる者だった。柔らかい獣の耳、大きな山羊の角を頭に携え、その手足もまた山羊のもの。ジパングから離れた西洋では「バフォメット」と呼ばれる魔物であった。

「なっ、柳沼……! 者共! 出会え出会え!」
邸宅から刀を構えた手下が幾人か現れてくる。
「いくら新選組の者とは言え、私の敷地に勝手に足を踏み入れるなどあってはならない! こ奴は! 私の首を狙っているに違いない!」
下衆が叫ぶ。
「ふむ。あくまでしらばっくれるつもりか……この外道めが!」
だん!
柳沼が山羊の足を踏み鳴らす。すると先ほどまで立っていた塀の上に、ぞろぞろと同じ背丈ほどの幼女が上ってきた。その誰もが背に『誠』を抱えている。
江戸のサバト、新選組であった。
「貴様は江戸の方を犯した悪逆者に他ならない! 今ここで! 正義の刃で以て貴様を粛正する!」
怒りの抜刀。銀の刀身が月光を受けてきらめく。
それと同時に新選組が吠える。それは怒号であったり、頭領である柳沼に向けた声援であったり、単なる咆哮であったりした。
「ぐっ……やってしまえーー!!」
それに圧された灰汁之助側はついに動き出す。新選組も塀から飛び降り、その手下たちと刀を交え始める。
「てやーーーっ!」
二人の手下が柳沼に斬りかかった。
「遅い!」
しかし、柳沼は深く一歩を踏み、獣の力で前方に大きく跳んだ。
「ぐあーーっ!」
彼女が二人の間を通り抜けると、彼らは倒れて気絶した。直前に目にもとまらぬ速さで斬りつけたのだ。
「さぁ! 下衆灰汁之助ぇ! 覚悟ぉ!」
柳沼はついに悪党の目の前にたどり着く。やはり同じように獣の一歩を踏み出し、高速の斬撃を――
キィン!
だが、今度は止められた。下衆灰汁之助は悪党ではあるが、伊達に刀を腰に携えていたわけではない。そこらの鈍ら侍とは腕が違った。
「ぬぅん!」
彼は柳沼を押し返す。幼女の軽い肉体は軽々と弾かれてしまった。
すかさず下衆の手下たちが斬りかかる。
「くっ……」

「柳沼殿!」
「リンちゃん!」

颯爽と、二人の幼女が駆け付け、手下たちを斬り捨てる
一人は長い髪を後ろに一つにまとめた血の気のない落武者、藤堂斬子。虚ろな目を柳沼の背に向けている。そこからは心配の色が見て取れた。
もう一人は明らかに目立つ金髪の魔女、柿本メアリー。その目は柳沼を見ておらず、一心に狂気にも似た闘志を込めて敵を見据えていた。
「背中は拙者にお任せを。柳沼殿は安心して頭を潰してください」
「こっちの雑魚たちはおまかせよ〜ん。リンちゃんは安心して悪者斬っちゃって!」
「斬子……メアリー……」
二人を背に、柳沼の目に改めて決意が宿る。
「ひっ」
「さて、下衆灰汁之助……貴様はこの江戸の秩序を乱し、将軍の顔に泥を塗った。その罪! 償ってもらう!」
刀に炎が点る。
それは彼女の情熱……彼女が愛する江戸の正義に懸ける情熱であった。
「はぁぁぁぁぁぁ!! 『炎魔断』!!」
その袈裟斬りの一閃は下衆の刀を砕き、そして彼の魂を焼き尽くした。
「……貴様は燃え尽きた。だがまだ終わりではない……今度は真っ当に生きるがいい」
倒れ伏す下衆に柳沼はそう語りかけた。


今宵、正義は成った。江戸に少しの平穏が戻った。
だが江戸には数知れぬ悪行が今も蔓延っている。それは悪党に力を与え、人々を苦しめているのだ。
柳沼竜胆は明日も、明後日も、また悪と戦い続けるであろう。かけがえのない仲間と共に
――新選組は眠らない。江戸に真の平和が来るまでは。

18/08/26 12:20 鯖の味噌煮


この新選組はリアルの新選組とは一切関係ありません……はい
実際のメンバーの名前とかをもじった感じに(銀魂的な?)しようかとも思ったのですが、にわかなのでいろいろきついかなと思って一から考えました
えっっっっっど時代に組み込みたいなーとか思ってみたりみなかったり……
[エロ魔物娘図鑑・SS投稿所]
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