連載小説
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3話 新たな仕事と勇者襲撃
「皆注目してくれ。今日から入る新人の紹介をしたい」
「はじめまして、タイトといいます。よろしくお願いします」

自警団本部に入り、団長である人虎のジェニアに連れられて入った大きな扉の先には、人間と魔物が入り混じって十数人ほどいた。

「あ、さっきのお隣さん!」
「お、ジュリーか。また会ったな」
「なんだお前達は既に知り合いか。では当分はジュリーが面倒見るってことで良いか?」
「良いですよジェニアさん。お隣なので都合もいいですしね」

その中には先程会った、隣に住んでるジュリーの姿があった。
まあ同じ職場だと言っていたし居てもおかしくはないだろう……少しではあるが、知っている人がいると緊張がほぐれる。

「ところで、タイトだっけ? こいつの実力ってどんなもんなんですか?」
「まだ実戦を交えてないから実際はわからんが、少なくとも旧魔王時代にあの村長さんと互角に戦っていたらしい。ああ、事前に説明していたと思うが、タイトは五百年前からタイムトラベルしてきた人間だ」
「あ、それ結局本当なんですか?」
「本当だ。いまだに自分ではこれが現実だと受け入れきれてない。なにせ魔物が全員女性で人間に近くなるなんて夢にも思っていなかったからな」

様子を見た感じだとどうやら事前に俺の事は自警団員全員に伝わっていたらしい。
だから先程ジュリーに会った時も俺が同じ職場とわかったら「あー」と納得したような顔をしていたみたいだ。

「他に質問がある奴は自己紹介と共にどんどん言え。これから共に働くし、お互いの事は知っておくべきだからな」
「じゃあアタシから。おいお前、剣を持っているという事は剣士か?」

一通り自己紹介が終わったところで質問タイムがやってきた。
その瞬間いきなり手を上げてそう聞いてきたのは……尻尾から炎が出ているトカゲの魔物だった。
炎とトカゲという点からしておそらくサラマンダーだろう。

「いや、そうでもない。剣は好きだから使っているが、ティマ曰く下手の横好きらしい……俺はそこそこ使えてるつもりだけどな」
「なんだ残念。剣士なら是非手合わせしたかったが……いや、見た感じ身体は出来ているようだし、下手ならアタシが鍛えてやるって事も可能か……あ、アタシはサラマンダーのメイ。よろしくな」

何か不穏な事を言ったサラマンダーのメイは、大剣を掲げているのできっと剣士なのだろう。
パッと見た感じ他にも剣士は何人かいるが、彼女ほどの使い手はいないのだろう。サラマンダーというのは熱い戦いが好きな種族だが、そんな彼女が相手を欲しているのでそう考えられる。

「じゃあ次は俺、オストが。タイトは今何歳なんだ? それとティマさんとの関係は?」
「俺は今22歳だ。まあ、時を越えたからよくわからなくなっているが、一応誕生日はちょっと過ぎた。それと、ティマとの関係だが……昔は宿敵同士、今は……どうなんだろうか。自分でもわかってない」

次に聞いてきたのはパッとしない長身の男性、オスト。
年齢は別に身体が急成長したり逆に若返ったりした様子はないため変わらないと思うが、それと同時にそういえば今日が何日かわからない事に気付いた。
自分達がこの時代に飛ばされた日と全く同じなら問題無いが、1日でもずれていたら変わってくる気がする。
それと何故かティマとの関係を聞かれたので、それにも素直に答えた。
この時代のティマにはいろいろと世話をしてもらっているし、かつてのように殺し合う必要はないので普通に仲良くやっていたので、もはや宿敵とは呼べない……ならば今の奴と俺の関係はいったい何だろうか。自分では全くわからない。

「じゃあ恋人関係という事ではないんだね」
「は? いやいやそれはない。ティマの身体は少女でも中身は男だぞ?」
「元は男でも今は女性だろ? まあ恋人関係がないって事はわかったよ」

まあ少なくともオストが言ったように恋人関係という事だけはありえない。
たしかに元は男でも今は女性と言えるだろうし、魔物と人間の間に恋愛が産まれるのもこの時代では普通の事だとは理解しているが、俺自身がそうであるかはまた別の話だ。
ティマは元々オス、それに女に変わったと言っても魔物、しかも実年齢はともかくその姿は異形の少女のものだ……恋人なんかになるわけがない。

「へぇ……という事は今はフリーか……」
「なーるほど……」
「それっぽい事言ってたもんね……」
「ふーん……」

ただ、恋人関係ではないと言った瞬間、一部からねっとりとした視線が飛んできた気がした。
一部というか……ジュリーとメイ、それに蜘蛛の下半身を持つ女性と牛の獣人と言うべきか。

「えっと……そこの4人、何か用か?」
「あ、いや別に……」
「なんでもないよ……強いて言うなら後で模擬戦でも頼もうかなとか思ってただけだ」
「私も別に……あ、私はアラクネのミーナ。今後もよろしく」
「別にウチも……あ、ウチはミノタウロスのプリルだ。よろしくなタイト!」
「あ、ああ。よろしく」

今紹介されたミーナとプリル、それにジュリーとメイも一斉に顔を背けた。
いったい何を……というか、前日のティマの話からして大体予想できる。
おそらく4人とも男がいない魔物なんだろう……サキュバスの特徴を少なからず持つ今の魔物からして、恋人がいない男は絶好のチャンスだという事か。

……これはたしかにティマの言う通り今後も気を付けないと大事な場所を気がついたら咥えられているなんてシャレにならない事が起こるかもしれない。

「じゃあ次は僕が。僕はディッセです」
「ディッセね。よろしく」
「それでは質問を……タイトさんは昨日のお昼前に五百年前から時間移動してきたと聞きましたが、こちらに来て一番驚いた事ってなんですか?」

そんな中、次に口を開いたのはまだ幼さが残っている少年、ディッセだった。

「むしろ驚かなかった事の方が少ないが……やはり魔物の生態が変わっていた事だな。普通に人間を食べていたし命を奪う化け物だったのが、時間を移動したら人間に近い女性体になっていて人間を食べないようになっているだなんて思いもしないからな」
「やっぱり私達魔物は魔王様が交代する前はそんな生き物だったのか……想像もつかないな」
「今は普通に顔を知られていて村長をやってるティマだって俺が知っている時代では俺よりも体格がでかい山羊の化け物だったしな。奴が人間を食べているのを見た事もあるし、その度に助けられなかった人を想い胸が痛くなった事もあった」
「旧時代を生きていない私には信じられないが、その話は昔村長さんから聞いた事ある……今は思い出しただけで罪悪感と吐き気に襲われるらしい」
「そうなのか……」

この時代に来て驚いた事……村の様子が変わっていたり、そもそも時間を移動している事自体驚いているが……中でも特に驚いたのは、やはり宿敵の変化だろう。
人間は餌、もしくは憎悪の対象と言っていたあのティマが人間がいる村の村長を務めていると言われても、実際に今日村人たちに慕われているのを見るまでは信じられなかった。
正直俺達の事を知らなければ別人だと言える程変わっていた。言われてみれば面影こそあるものの、姿や性別は大きく変わり、その性格もかなり変わっているのだ。
しかもそれはティマだけでなく他の魔物全員と来た……驚くなと言われるほうが無理である。

「というか今私達魔物はって言ったが、あんたは魔物なのか?」
「ああ。私はレノア。ダンピールさ」

旧時代の魔物は人を食べるものだという話に対して信じられないと言った金髪の女性は、どこからどう見ても人間のようにしか見えなかったので「我々魔物」といった事に対し疑問を持ったが、どうやら彼女はダンピールらしい。
たしかに、口を開けると見える八重歯は牙といえるし、紅い瞳も魔性を浮かべている。
ダンピールと言えばたしかヴァンパイアと人間のハーフだったはず……どうやら今の時代では完全に魔物扱いみたいだ。

「じゃあそっちの茶髪に青い瞳の女性は?」
「あたし? あたしはこの自警団唯一の人間女性のヒーナ。人間だって言ってもここにいる男や魔物達には負けてないよ!」
「そうか。君は人間なんだね。よろしくヒーナ」

そしてもう一人女性がいたが、この人だけはきちんと人間らしい。
周りが魔物ばかりだったので少し不安はあったが、人間も一緒だとわかると少し安心した。

「もう特に質問はなさそうか……」
「じゃあこっちから。後ろの方にいる男二人の名前は何て言うんだ?」
「俺はノルヴェ! 聞きたい事があったら随時聞いてくからそん時はよろしくな!」
「ボクはフェイブ。先程のレノアの夫だ。今後もよろしくなタイト」
「ああよろしく」

そして俺は、残りの男達に名前を聞いた。
右に居た活発な青年はノルヴェ、左に居たきちっとした青年はフェイブというらしい。
しかもフェイブはレノアの夫だとは……やはり魔物と人間の夫婦というのはこの村には大勢いるらしい。

「これで全員……と言いたいところだが、実はもう一人だけいる。環奈というカラステングだが、今は村の外れにある見張り塔で神通力で周囲の見張りをしてもらっている為この場にはいない。また機会があったら紹介しよう」
「え、むしろその一人と俺も含めて13人しかいないんですが……」
「一人一人が相当強いのと、いざ村に聞きが迫った時は村長さんのところの魔女達も出てくるから問題はない。それに自警団としてではなくサポートとして働いてくれている者もいて、事務的な物はそちらに任せてあるから問題無い」
「そうですか……」

そして、あと一人だけこの場にいないカラステングの環奈という者がいるらしいが……それはつまりこの自警団は全員で13人という事になる。
そんな少人数で大丈夫なのかと思ったが、たしかに姿が変われど強い魔物である事には変わりないだろうし、そんな魔物達と肩を並べられる人間達も充分実力はあるだろうし、ティマ達の方も出てくるのであればさほど問題はないのだろう。

「それでは解散! シフト外の者は訓練していても帰ってもよし、シフトに入ってる者は各自持ち場に着け!」
『はいっ!』

俺の紹介が一通り終わったので、解散して各自持ち場に就くようだ。

「俺はこれからどうすればいいのですか?」
「お前は……そうだな。実際に見回りなどは明日から入ってもらう予定だし……おいメイ!」
「なんだい団長?」

入ったばかりの自分はどうすればいいのかをジェニアさんに尋ねたら、何故かメイを呼んだ。

「お前先程タイトと手合わせしたがっていたよな?」
「まあ……そりゃあ熱く戦えるような男だったら良いなと思ってさ」
「なら丁度いい。お前シフト夜中で今はフリーだろ? タイトの実力もきちんと知っておきたいし相手しろ」
「了解! じゃあ早速訓練所に行って闘おうぜ!」

どうやら俺の実力を確かめたいらしく、先程模擬戦を申し込みたいとか言っていたメイに相手をさせるつもりらしい。
サラマンダーが相手か……今の時代のサラマンダーの強さがどれ程のものかはわからないが、身体を動かすには丁度良い相手だろう。

「でも本当にいいのかい団長、アタシが相手でさ。団長がやりたかったんじゃないのか?」
「たしかにあの村長さんと引き分けていたという力には興味があるが、ついさっきまで訓練していて今は身体を休めている時間だからな。それを破ると旦那が煩いもんでな……」
「へいへい旦那自慢ですか……じゃあアタシがやらせてもらうよ」

という事で俺達は広く頑丈な壁で作られた建物……様々な武器が置かれていたり、トレーニング用の機材が置いてある事からもここが訓練所だろう……へ移動した。

「それじゃあ始めるか! 相手が参ったと言ったり、明らかに勝負がついた状況になったら終わりな!」
「ああ……得物はどうすれば?」
「そうだな……普段はそこに飾ってある殺傷能力のない武器を使うのだが、今日はそのままの実力を知りたいから自分の持っている武器を使ってくれ」
「了解。では始めようか!」

中央にある広いリングの上で俺とメイは向かい合い、お互いの武器を構えあった。
俺は自慢の剣を、メイは自分の黒光りする大剣を構え、開始の合図を集中して待つ。

「それでは……始め!」
「うぉおおおおおおおっ!!」
「はぁああああああああああっ!!」

そして、ジェニアさんの開始の掛け声とともに、俺達は同時に相手に向かって駆けだした。

「はっ、やあっ!!」
「ふんっ! たしかに下手の横好きみたいだな……動きが単調すぎるぞ!」

先手必勝と言わんばかりに俺は剣を振り回す……が、全て余裕で受け止められてしまっている。
右から、左から、上からと一歩ずつ踏み込みながら振り下ろすが、その全てを悠々と防ぐ。

「はぁ……つまらん……さっさと終わらせてやる!」
「うわっ!?」

大きく溜息を吐いた後、メイは身体を捻らせ、その勢いに乗せたまま俺の剣を弾き飛ばした。

「これで終わりだ。お前本当にあのティマさんと戦えてたのか? いくらなんでも弱過ぎだろ」

そして、文句を言いながらその剣先を俺の喉に添えた。

「はぁ……絶対熱い戦いが出来ると思ったのに……見当違いとはアタシの眼も腐ってきたのかねぇ……」

あっという間に剣を弾き飛ばせた事で勝手に落胆しているようで、何やらぶつくさと文句を言っているメイ。
たしかに一見ケリはついたように見えるが……まだジェニアさんからストップは掛かっていない。

「アタシをワクワクさせてくれる奴はいつ現れるのか……」
「さあなっと!」
「なっ!?」

だから俺は、ぶつくさと小言を言っている隙に身体を捻り、剣先を蹴り剣を弾き飛ばした。

「これで条件は互角だな。闘いはこれからだ!」
「うぐっ!? ……何が互角だ。お前さっきよりも動きがいいじゃねえか!」

メイが呆気に取られているうちに体勢を整え、大きく一歩踏み出して相手の腹部へ拳を突き入れる。
何も身に着けていない柔らかな肌と、その内側の引き締まった筋肉の感覚を拳に感じる。防がれる事無く当たった事を確認し、万が一に捕まらないようにすぐに後ろへ飛び退く。

「メイ、今更だがタイトの本当の武器はその拳だ。油断するなよ」
「言うのが遅い団長! でもまあこれで少しは楽しめそうだ!!」

やる気が戻ってきたのか、穏やかに燃えていた炎が天井まで届くのではないかという程に勢いよく燃え上がり始めた。
脇を締め、姿勢を低く構えたメイ……隙が無くなり、迂闊に手を出せない。

「どうした来ないのか? だったらこちらから行かせてもらう!!」
「……こい!!」

こちらもさらに気を引き締めて、メイとの闘いに挑んだのであった。



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「よし着いたぞ。ここがホーラの就職先だ」
「……やっぱりティマさんのとこなんだね」
「予想はついていたか。そうだ。ホーラはうちの魔術研究室で働いてもらう」

お兄ちゃんと別れた後、私はティマさんに連れられてきた場所は……やはり魔術を取り扱う場所、ティムフィトの村長宅……つまりティマさんのサバト支部の拠点だった。

「ねえ……まさか幼女化しろなんて言わないよね?」
「言わねえよ。サバトに入るんじゃなくてあくまでも魔術研究室で働いてもらうだけだからな。実際ホーラ以外にも数人だけ大きな魔物もいる。バフォメットとしては異端と言われる事もあるが、大きい人も居たほうが何かと便利だからな。魔女の兄上達に任せるにしてもきちんと知識を持ってるのは少ないからお前にも働いてもらうってわけだ」
「そういう事……まあ魔女になれって言わないなら快く引き受けるよ」

ティマさんの所で働くという事はもしや眷属になれとでも言ってきたのかと思ったが、別にそういう事ではないらしい。
流石に魔物になる気はないが、そうでないなら魔術に携われるこの職場はまさに天職と言えよう。

「あ、ようやく来たのね。それじゃあホーラ、私について来て」
「あ、ウェーラ。今日は珍しくいないと思ったらここで待ってたんだ」
「別に珍しくも……あー、まあ旧魔王時代はずっとティマ様に付き添っていたからね。今はここを任されているし、それにお兄様との時間もあるから四六時中共にいるわけではないわよ」
「むしろ今はエイン共々オレの秘書的ポジションだしな。それに昔はオレに絶対服従だったが今はそうでもない。よく説教を喰らうようになった気がするよ」
「ティマ様の眷属としてティマ様にはしっかりしてもらいたいだけですよ」
「へぇ……やっぱいろいろと変わってるのね……」

建物の中に入ると、そこには今日一切姿を見せなかったウェーラが座って待っていた。
どうやらここからはウェーラが案内してくれるらしい……というか、言い方からしておそらく魔術研究室の責任者はウェーラなのだろう。

「……って事はつまり私はウェーラの下で働くって事?」
「そうだけど……何、嫌なの?」
「あ、いや、嫌ってわけじゃ……」
「まああの頃の私のイメージしかないなら嫌なのもわからないでもないわ。でもね、もうあなたを殺そうと躍起になっていた時とは違うから」
「そ、そりゃ見た目は全く違うけどさ〜……」

興味深い職場だし嫌とまでは言わないが、かつて、それこそ私にとっては2週間前まで敵対しているどころか執拗に命を狙ってきていた相手の下で働くというのは気が引ける。

「安心しなさい。あの時は自分の主に歯向かう人間なうえにあなたの才能に嫉妬してたから殺そうと躍起になってたけど、お婆ちゃんになった今は余裕が出来てあなたの腕前を素直に認めているからそんな気は起きないわ」
「……え? 私に嫉妬? あんたが?」
「ええそうよ。私は魔術を究めたくてティマ様の眷属に堕ちた。でも、そんな私よりも立派な魔術の才能を持ち、それでいて堕ちる事のないあなたにね」
「へぇ〜……」
「……何よそのにやけ顔は。ちょっとむかつくわね……」

どうやらかつてのウェーラは私に嫉妬をしていたらしい。
ティマさんに攻撃した時なんかはわかるが、そうでない時すら「おのれ小娘! 激しい苦痛にのたうちまわりながら朽ち果てるがよい!!」なんて事を言いながら執拗に襲ってくるなと思っていたが、それも嫉妬心からくる怒りだったのだろう。
なんだか勝ち誇った気分に、私は思わずにやけ顔を浮かべた。

「いやあ……それにしてもお婆ちゃんか〜……そういえばあんたもう500歳以上なんだもんね〜」
「実年齢528歳よ。でもあなたと違って永遠に少女の姿だからお肌もプニプニ髪も艶々よ」
「う……それを聞くとちょっと魔女が羨ましいかも……で、でも胸は成長しないのよね!」
「まあね。でもお兄様はこのつるぺたボディが大好きだから欲しいとも思わないわ。それにあなたも大きくないじゃない」
「ぬぐぐ……私はまだ成長期なだけだもん……」
「……あなたって普通に話をすると案外子供っぽいところあるわね」

ティマさんと別れて、しばらく長い廊下をウェーラと話しながら歩く。
こうしてこの魔女と長々と話をする機会なんて来るとは思いもしなかった……意外と楽しいもので、これも時を越えて魔王が交代していなかったら出来なかった事なのだろう。
かつては互いに死ねだの殺すだの言い合っていた仲だと思えば妙な気分にもなるが、ちょっとだけ親近感が湧いた気がした。

「さて到着したわ。あなたはこれからここで私の指示で働いてもらうわ。と言っても多分最初だけだろうけどね」
「ん?」
「五百年前には少なくとも人間界には無かった物や、魔界にすらなかった物まで取り扱ってるけどあなたにその知識はないから当分は私の下で勉強してもらうって事。でもあなたの魔術の才能からしたらおそらく1ヶ月もしないうちに覚えて使いこなせるようになるでしょうし、そうしたら私と同じ立場で働いてもらう事になるわ」
「へぇ〜……いきなり重役とは結構期待されてるのね……燃えてきたわ!」

そして、私達は硬い金属の扉の前で止まった。
横についていたルーン文字が彫られた9つのボタンを何かしらの規則で押し、ガチャリという音が響いたと思ったら開き始めた扉……どうやら何かの施錠装置みたいだ。

「あ、おかえりなさい主任。その女性が新しく配属される例の五百年前から来たっていう人ですか?」
「ええそうよ。ほら自己紹介」
「あっと……は、はじめまして皆さん。ホーラです。今18歳で好きな物は道具を使う魔術、嫌いな物は20代の頃のウェーラです」
「あんた本人の横でよくそれ言えるわね……まあ良い思い出だからいいけど」

部屋に入ると数人の男性と幼い女の子……おそらく魔女だろう……が、一斉に私の方を向いた。
そしていきなり自己紹介しろと言われてもパッと思い付かないので、頭に思い浮かんだ事を適当に言った。

「たしか昨日会議で出ていた魔力異常によって五百年前からタイムトラベルしてきた兄妹の妹のほうですよね?」
「そう。昨日も言ったけど、かつて私とティマ様と戦っていた者よ。その魔術の腕前は下手な魔女よりは上よ」
「へぇ〜そうなんですか〜」

よく見ると魔女以外に幼い魔物も何人かいるようだ。
奥で爆発草を触っている女の子の頭には狐耳が生えて狐の尻尾も数本背中側に見えるからたぶん妖狐か何かだろうし、手前のテーブルの上で緑色の液体が入っているフラスコを振っている女の子も頭に角が生え腰から小さな翼と尻尾が生えているので幼いサキュバスかさっき会ったイースちゃんと同じアリスって魔物、もしくは現代版インプってところだろう。
それにさっきティマさんが言っていたように確かに大きな身体の魔物も居る……幼女だけではなさそうだ。

「まあ当分は現代にある魔道具や特殊な植物の種類を頭に叩き込んでもらうわ。そうね……ヴェン、あなたが教えてあげて」
「ぼ、僕ですか!?」
「ええそうよ。一番の新人とはいえ、ここに来てからもう1年でしょ? それに多分ホーラと一番気が合うと思うからあなたが面倒を見てあげてね」

私の世話係と指名されたのは、同じくらいの年齢だと思う気弱そうな男の子だった。
名前はヴェンというらしい……優しそうではあるが、何とも頼りない風貌をした男の子である。

「そ、それではこれからよろしくお願いしますねホーラさん」
「こちらこそよろしくですヴェンさん。というかヴェンさんが私の先輩になるのだから敬語でなくても……」
「い、いえ、話によるとすぐにでも上司になるみたいですし……」
「気にしなくていいですよ。ヴェンさんはおいくつですか?」
「えっと……今年で18になります」
「なら同い年だし尚更だよ! 上司になるって言っても職場の後輩だし、硬い感じで接されても逆に困るというか……」
「そ、そうですか……ではよろしく……」

私の方が後輩なのに堅苦しい感じがなんか嫌だったので、そうお願いしたら改善してくれるようだ。

「ではとりあえずここにある植物から……わからないものはどれぐらいあるんだい?」
「そうですね……この赤黒い平らな葉と細くて蔓状になってるこの緑色のもの、それとこの青い葉っぱはわからないです」
「そうか……とりあえず青いのは魔界ハーブの一種だから、今後の為にもすぐに覚えておくといいよ。それと残り二つはここのオリジナルで、赤黒いのは水を付けると発熱反応を起こす葉で、細長いのは火をつけると水分を多く含んだ煙を噴き出すものだよ」
「へぇ〜……ここでオリジナルも作っているんですか」
「そうだよ。その為に様々な機器を専門ではないロロアさんに頼んで作ってもらったり品種改良を行ったりしてるんだ。ちなみにこの蔓状の物は僕が作りあげたんだよ。雨を降らす魔道具があるのは知っているかい?」
「はい。水分凝縮魔術を掛けてある筒にケムリ草を入れ、それに点火して打ち出すものなら知ってます」
「なら話が早いや。あれをこの植物一つで出来るようにしたんだ。とは言っても複数使わないとウェーラ主任の頭上を濡らす事すら出来ないけどね」
「そうですか……ちなみにティマさんはよく火属性の魔術も使ってきたのでそれに対抗するためよく使ってたので知ってました」
「へぇ……あれは限定的だからどちらかといえば農作業用だけど、それを戦闘に使うとは……」
「私なりに改造して出力を上げたのですよ。ケムリ草1の他に火炎ダケ0.5とウェブパウダー0.2、そしてウンディーネの水を凝縮したものを2,3滴入れればこの村全体を覆う程の雨雲を出せるようになります。効果は10分程度になっちゃいますけどね」
「なるほど……元は1時間程は出せた物を一気に放出してる感じか。でも今の時代ウンディーネの水は性質が変わっているから同じものは使えないな……聖水に岩塩とネムリ草を刻んだものを混ぜ合わせた物に電気系の魔術を流した物で代用できるかな……」
「なるほど……たしかにそれならいけるかもしれませんね……」

そして私は、近くに置かれていた見知らぬ魔草について説明してもらった。
見た事ない植物という事だけでなく、ここで作られたオリジナルもあるらしい……実に興味深く、ついつい夢中で話を始めてしまった。
だがそれは説明する側のヴェンも同じみたいだ。先程までの大人しさは消え失せ、目を輝かせながら私と話をしている。
さっきウェーラが1番気が合いそうとは言っていたが……ここまで話が合うなんて、たしかに気は合いそうである。

「あと私が気にいっているのはこの触手の種で、これは魔力を籠めて地面に植えると急成長して無差別に拘束し始めるんですけど、この時に物を操作する魔術を応用すれば成長した触手を意のままに操る事が出来るように出来てとても便利なんですよ」
「へぇ……これは逆に今の時代ではあまりお目にかかれないものだね。ちょっと見せて……」
「あ、あの……熱中するのは良いですが、私達同僚の紹介も先にさせてもらえませんか?」
「え? あ、ご、ごめんなさいレニュー先輩! そうですよねまずは皆さんの紹介からですよね!」

そして私が持っている物の話をし始めたところで、一人の魔女が話に割り込んできた。
たしかにこのままではずっと話を続けてしまいヴェン以外の人の事を知らないまま終わってしまう可能性があるので、レニューと呼ばれたこの魔女の言い分ももっともだ。

「という事で私はレニューです。よろしくお願いしますねホーラさん」
「あ、うん。よろしくね!」
「はい!」

丁寧な挨拶をしてくるレニュー。
魔女なので実年齢は私より上かもしれない……というか、同い年のヴェンが先輩と言っているので確実に年上だろうけど、見た目のせいでそう思えない為私は普通に幼い娘相手にするような挨拶をしてしまったが、相手は特に気にしていないようだ。

「ところでレニュー先輩はウェーラと若干似てる気がするのですが……魔女は皆そんなものですか?」

ただ、そんなレニューはどこかウェーラと似たような雰囲気を感じた。
まだ魔女はこれで昨日ちらっと見た2人も含めて4人目ではあるし、その二人の顔は暗かった事もあってよく見えなかったが、もしかしたら種族的に似るものなのだろうかと聞いてみたところ……

「あ、いえ。そういうわけではないですよ。ただ私は娘ですから似てるかと」
「……え、ごめん。今なんて言った?」
「ですから、私はホーラさんがよく知っているウェーラの娘です」
「……え、それ本当に?」

なんと、信じられない事にレニューはウェーラの娘だと言い始めた。
どうしても信じられないので、私はウェーラの方を向いて確認してみたところ……

「ええ本当よ。そこにいるレニューは私がお腹を痛めて産んだ正真正銘私とお兄様の娘よ」
「……うっそぉ……」
「いくら信じられなくても親子関係まで否定してほしくないわ。ちなみに言っておくけどその子は4番目の娘よ」
「はい。私は4姉妹の末っ子で、まだ27歳です。ホーラさんの事は小さい時からよく母から聞いてましたが、実際にお会い出来るとは思ってませんでした」
「4人もいるんだ……」

どうやら本当のようで、しかも他に3人も娘がいるようだ。
夫はいるようだが、まさかウェーラが母親になっているなんてこれっぽっちも思っていなかった為、時間を越えてからの出来事でこれが一番驚いたと言えよう。

「というかさっきお婆ちゃんになったからって言ったでしょ?」
「……え? ちょっと待ってまさか孫までいるって言うの!?」
「そうよ。長女のプリンは既婚で子供もいるからね。今は自立して遠くの街で夫婦で薬局を開いているから残念ながら紹介は出来ないけどね」
「ひえぇ……」

それどころか孫までいるようだ。
先程のお婆ちゃんになったというのはどうやら単に歳をとったという事ではなく、祖母になったという意味だったらしい……驚きどころではない。

「ちなみに三女のオルタはちょっと離れた町のサバトに勤めているわ。次女のサマは……どこかでのたれ死んでるんじゃないかしらね」
「ちょっとお母さん! サマお姉ちゃんは世界中を旅しながら魔術を極めようとしてるんでしょ!」
「私に何も言わずに出て行った事と魔術ならここでティマ様に習えばいいだけなのに勝手に家を出て行った事が気にくわないのよ。もう何年も連絡の一つすら寄越さないしもう知らないわよあんな娘」
「ははは……あんたも苦労してるのね……」

ウェーラの母親としての苦悩という時を越えていなければ絶対に聞く事のなかった物を聞きながらも、私は他の人達の紹介もしてもらった後、またヴェンに魔道具や魔草の説明をしてもらい、自分達の世界に浸ったのであった……



…………



………



……







「ふぅ……今日は楽しかった!」

日も暮れてあたりはすっかり暗くなりながらも、所々魔力の光がほのかに浮かぶ夜の道。
私は就業時間が終わったので、一人買い物袋を掲げながら帰宅をしていた。

「服も食材も買ったし、当分は大丈夫かな……」

教えてもらう立場なのにいつの間にか話が盛り上がってしまい、ウェーラに止められるまでずっとヴェンと話を続けてしまっていたらすっかり遅くなってしまっていた。
最後に私達がこの時代に来た事を発見した巨大な球体型の機械……魔力管理装置と言って、この装置でこの村やその周辺の魔力量を見て魔界化しないように調整しているらしく、魔力の異常があれば球の表面が波打ち、近くにセットしてある媒体で詳しい数値が出る装置……の事を説明された後、私は昼に案内された香恋さんの店や服屋で買い物をし、お兄ちゃんが待っているだろう家に急いで帰っていた。

「キッチンとかどう変わってるかな?」

今朝のティマさんの話では今日のお昼に水道を使えるようにしてあるうえ、キッチンも改修工事してあるはずだ。
仕組みが同じならばすぐ使えるとは思うが……どうなっているのか楽しみである。

「……ん? あれは……」

見慣れた我が家が見えてきたところで、家の前に複数の人影がある事に気付いた。
いったいなんだろうと思いながら近付いてみると……見知らぬ茶髪で長身な男の人と夜でもわかりやすい紅い瞳の女の人、それとボロボロになったお兄ちゃんが……

「……へ? どうしたのお兄ちゃん!?」

見知らぬ二人に抱えられているボロボロになったお兄ちゃんを見た私は、荷物をその場に置いて急いで駆け寄った。

「ん? 君がタイトの妹さんかい?」
「あ、はい。そうですが……」
「僕達はタイトと同じ自警団さ。ボクはフェイブでこっちは妻のレノア。よっぽど疲れちゃったみたいで寝てしまったからボクらが連れて帰って来たんだけど鍵が見当たらなくてさ」
「あ、では今開けます。お兄ちゃんを運んで下さりありがとうございます!」

どうやらお兄ちゃんは職場で相当厳しい訓練か何かをしたようで、たしかに疲れ果てて眠っていた。

「広くていい家だ。私達もいつかはこんな大きな家に住みたいな」
「そうだね。娘が出来るまでには増築できるように頑張らないとな」

玄関を開け、二人にそのままお兄ちゃんの部屋のベッドまで寝ているお兄ちゃんを運んでもらった。

「本当にありがとうございました。自警団の仕事ってキツイのですか?」
「あ、いや。そんな事はないよ。ただタイトは……」
「彼は今日同じ職場にいるメイっていうサラマンダーと手合わせをしていたんだ。結果はタイトの辛勝だったが、その後メイが「お前の強さは気に行った! だが剣が下手過ぎるのはいただけないから今から鍛えてやる!」と言いだして……」
「あー、それでその特訓が厳し過ぎて……」
「あ、いや……まあ確かにサラマンダー流の特訓だから人間にはちょっとキツイだろうけど、タイトはこなしていたさ。確かにそれで疲労は蓄積されていたと思うが……そうじゃないんだ」

ここまでへとへとになっているという事は仕事がきつかったのかと思ったが、そうではないらしい。
どうやらお兄ちゃんは自警団に所属しているサラマンダーと特訓をしたが、それが厳し過ぎて体力が空っぽになった……わけでもないらしい。

「ではいったい……」
「いやあ……その後に隣に住むジュリーとそのメイを含めた独身の魔物達がね……ここぞとばかりにタイトに付きまとってね……」
「魔物と恋人になどならないと言っていたけど、私はともかく魔物は押しが強いからね……その後は拠地内鬼ごっこの始まりってわけさ。まあ最終的にはジェニアさんが止めてくれたから事は治まったんだけど、何せ必死だったからね……」
「……あー……」

では理由は何かと思いきや、まさかの魔物からの求愛を振り切る為に逃げ疲れていたという事らしい。
私達はついこの前まで凶悪な魔物を殺してきた……今はわかり合える存在だと言っても、そこまでの関係にはなれないのだろう。
もしお兄ちゃんが隔たりなく魔物と付き合えるようになるとしても、可能性があるのはなんだかんだ言って仲が良さそうにしていたティマさんしかいない気がする。
モックさんのように少しは魔物と交流があった私だって今日はモックさんとウェーラ以外の魔物とは少し距離を置いていたのだ……知り合って早々の魔物に求愛なんかされても逃げるに決まっている。

「まあ今度からはそんな事が起きないようにジェニアさんがキツーイお仕置きをしてくれたから安心してくれていいよ」
「そうですか……」
「それじゃあボク達は帰るよ。眼を覚ましたらタイトには明日のシフトは昼だって言っておいてね」
「了解です。今日はありがとうございました!」

一通り事の顛末を話した後、二人は仲良く帰っていった。

「……」

時間を越えてやってきたこの時代……私は見た事ない魔道具に心躍ったり、ヴェンという共通の趣味を持った人間が同じ仕事場にいるから、時間は掛かるが馴染める気はする。
でも、お兄ちゃんはどうなのだろうか。
この時代に馴染む事は出来ているのだろうか。

「……まあ、こればかりはお兄ちゃん次第だもんね……それよりもキッチンとシャワーの確認してこようっと!」

そんな事、私が今どんなに心配したって解決するものではないし、そもそも私の心配をよそに案外馴染めているかもしれない。
だから私はこれ以上この事について考える事を止め、お兄ちゃんが起きる前に新しくなったキッチンでご飯を作ったり丸1日以上浴びてないシャワーを浴びる為に動き始めたのだった。






きちんとこの事について考えて、私がお兄ちゃんを支えていれば良かったと、後悔する時が来るなんて、この時は微塵も思わずに……





====================



「ジェニア団長」
「ん? どうした環奈、何かあったのか?」

月が頂点に登り、そろそろ就寝時間だという頃。
普段は見張り台で神通力を使い村の内外を千里眼で見張っている彼女が本拠地の宿舎で暮らしている私の元に飛んできた。
彼女は自警団と言っても見張り台の居住スペースでサポートである夫と共に暮らしているので、本拠地に来ることは滅多にない。1日の報告も夕方に私が聞きに行っている。
そんな彼女がここに来たという事は、何か緊急事態が起きたのだろう。

「おそらく二日後に、この村に勇者の男が一人でやってくる」
「そうか。勇者が襲撃してくるか……」

ある程度予想はついていたが、どうやら勇者が攻めてくるらしい。
この村には魔物が多く、特にバフォメットといった強力な者までいる事から教団や勇者の襲撃はそう珍しいものではなかった。
一人だけで来るという事は相当の実力者か、あるいは無謀なバカのどちらかだろう。

「強さや特徴、ここに来る目的などは?」
「それは明日調査する。だけどいつも通り村長の討伐目的だとは思う」
「そうか……」

だがどんな強さであれ勇者というだけでそこら辺の兵士よりは強力な存在だ。
こちらも普段から鍛えているとはいえ、余裕で返り討ちに出来るかと言えば怪しい所がある。
だからこそしっかりと明日の内に準備を整えなければならない。

「宿舎にいるプリル、オスト、ヒーナの3人には今すぐに、夜勤のメイ、ノルヴェ、ミーナにはここに戻ってき次第すぐに伝えてほしい。それに合わせて各自の時間調整もしてもらいたい」
「ああわかってる。寝る前だったがそんな事は言っておれんな。寝ている奴や自慰している奴も問答無用で叩き起す」
「それと、朝組や昼組のディッセ、ジュリー、フェイブ、レノア、それに今日入った新人にもここに来たらすぐに伝えてほしい」
「もちろんだ。あ、そうそう、新人はタイトと言うんだ。今度挨拶しておけよ」
「了解。あの男の事は調査済み。魔物狩りをしていたみたいだけど、今の時代の魔物に手を出す気はないみたいだから安全であると言えるでしょうね」
「そんなものは直接会えばわかるさ。その実力もな。あのメイが拳の勝負とはいえ負けたのだからな」
「へぇ……」

それは団員全員に、もちろん今日入ったばかりのタイトも含め全員に伝えなければいけないだろう。
全員が全力を持って勇者を追い返す。そうしてこの村の平和を護るのだ。

「……いや、まてよ。ちょっと試してみるか……」
「何を?」
「タイトの実力をだ。あいつは旧時代の村長さんと張り合っていたというし、勇者相手にどこまで通用するか見てみたい」
「そう。そこはジェニア団長に任せるわ。でもだからって他の人達に伝えないのは駄目」
「だからわかってる。それにもちろん危ないとわかったら私も割り込むさ」

と、いつもなら総力を持って全力で相手を叩き、独身の魔物の夫になってもらったりするわけだが、今回は入ったばかりのタイトの実力をもう少し見てみようと考えた。
今日のメイとの模擬戦でも充分見られたと言えばそうではある……剣の腕前は酷いが、拳での闘いはサラマンダーのメイを圧倒していた程だ。
尻尾や炎での攻撃に不意をつかれていたりしていたが、それらもすぐ対処していたし、実力は半端な魔物よりは上だ……下手したら私よりも上かもしれない。

ただ、相手が女性の姿をしているからか全ての実力は出し切れていなかったみたいだし、男の勇者相手ならその全力も見えるかもと思ったのだ。
もちろん、それは一人に任せる事になり危険過ぎるので、ある程度危ないと判断したら私が割り込むつもりだ。
そもそも明日聞いてみて本人が嫌だと言ったり周りが猛反対したらそんな事もしないつもりだ。

「じゃあそういう事で。明日また詳しく調べた事を報告しにくるから」
「ああ、わかった。では私も他の者達に伝えてくる」

ある程度今後の動きを決めたので、早速私達は動き始めたのだった……



====================



「……で、本当に俺一人で勇者の相手をするのですか?」
「ああ。昨日も言ったが、お前の実力をきちんと知っておきたい」

自警団に就いてから2日。
この日、俺は一人で勇者を追い返すという重大な仕事を与えられていた。
どうやら勇者はこの村にいるバフォメット……つまりティマを討伐するためにここへ来るらしい。そしてその勇者を俺一人で相手しろと昨日ジェニアさんから命じられた。

「不安か?」
「まあ……勇者と言えば魔王を倒す存在で、神にも匹敵する人物だからな。俺なんかが相手になる筈がない」
「そこは大丈夫だ。環奈に調べてもらったが、村長さんの命を狙っているにしてはそれに見合った実力は全く無いらしいからな。彼女と張り合っていたお前なら出来る」
「そうは言いましても、そのティマは5百年前のティマであってそれより力を付けたであろう今のティマには俺でも敵わないでしょうし……」

勇者と言えば主神から力を与えられ魔物を滅ぼし魔王を討つ使命を背負った人類の希望だが、魔物の立場からしてみれば勇者はただの強大な敵でしかない。
どうやら今の魔物と共存できる時代でも勇者のやる事は変わらないらしい……前から教団の上部は何でもかんでも神様神様と頭の固い者が多いと思っていたが、それは今の時代でも同じらしい。
共存できる相手を一方的に殺すというのは間違っていると思うので、勇者を相手するというのには賛成だが……それを俺一人でやれと言うのであれば話は別だ。

「安心しろ。もちろんお前がやられそうになったらすぐさま私が助けに入るし、大怪我をしても……」
「オレが治してやるから安心しな!」
「いや……お前そもそも治癒魔術なんぞ使えたのか?」
「お前が飛ばした5百年という歳月を嘗めるなよ。バフォメットのオレに掛かれば余裕だ」

今の時代の魔物は本気で人間を殺そうとする事は滅多にないからそれに合わせ勇者の実力も下がっていると、俺の目の前で治癒魔術を使える事を自慢げに話すティマが昨日言っていた。
当時神に匹敵する程の力を持った勇者が魔王と手を組んだ事で、世界の設定とやらを書き替えようとしているのを阻止するべく勇者を大量投入しており、いわば現在の勇者は質より量な状態らしい。
だが、そうは言っても俺自身の力は5百年前のものだ。昨日メイ相手には通じたが、果たして量産型とは言え通常の人間の何十倍も強い勇者相手にも通用するのだろうか。

「無駄話はそこまで。もうここへ来る。準備の為か身に着けている鎧に聖水を掛けている」
「どうやらジェニアの存在も知っているようだな。これじゃうかつに魔物の身体では鎧に攻撃できねえな」
「そういった点に関しても、やはりタイトにまず任せてみて正解だったみたいだ」
「そう……か?」
「いい加減自信持てよ。大丈夫だ、何度も殺し合いをしてきたオレが保証する。お前は今の時代の下手な勇者より強い。そもそも今からくる奴なんて聞いた限りだと勇者なりたての雑魚みたいだしな。お前なら一発も喰らう事無く余裕で倒せるって」
「そうかい……ま、頑張ってみるさ」

くよくよ悩んでいたって戦う事には変わらない。その為の準備は完璧にしてある。
俺は自分の頬をバシッと叩いて気合を入れ、勇者が来ると言う道の先をジッと見た。

「……なんか来たな……」
「あれが勇者。タイト、準備はいい?」
「ああ、期待に応えられるよう出来るだけ頑張ってみるさ」

その道の先から、いかにも神聖そうな銀色に輝く鎧を身に纏った男がゆっくりと近付いてきた。
見たところ武器らしき物は剣一つだ……今日は始めから拳で戦えと言われているので自分は剣を手にしていないから、あの剣をまずどうするか悩むところだ。

「ちっ……村に入って早々バフォメットに人虎とボスクラスのお出迎えか……お前らそんなに俺に殺されたいのか?」
「第一声がそれとはお前余裕がねえな」
「う、うるさい! 余裕がないのはそっちだろうが! それにお前らたった4人で俺を相手に出来ると思っているのか?」
「4人? 1人で充分だろ」
「な、何だとー!!」

眼の前まで来た勇者……いかにもな格好をしているが、環奈が言う通り実力はたいした事ないかもしれない、そんな第一印象だった。
まだ俺より若く見え、本当に駆け出しの兵士のような雰囲気を醸し出している。
それに、今ハッキリとたった4人と言ったが……ちょっと気配を探れば他の自警団のメンバーやサバトの魔女達、それに妹など多くの者が待ち構えている事がわかりそうだが……自分が達観しているとは言わないが、この者は俺よりもよっぽど未熟と言えるだろう。

「という事で任せたぞタイト。しっかりオレを護ってくれよな!」
「なっ!? ふ、ふざけるな!!」
「そうだふざけるな。お前は俺に護られるような弱さではないだろ。むしろ一人で返り討ちにするのも余裕だろ?」
「まあな。でも今回はお前が一人で相手するんだ。大丈夫相手がこんなレベルなら余裕だって」
「お前もふざけるな!! というか一人だけで俺を返り討ちに出来るとか嘗めやがって!!」

とはいえ、勇者である事には変わりはない。
こちらは身軽に動けるよう最低限の防具しか身に着けていないのだから、聖剣による攻撃を一撃でも受けたら大怪我は避けられないので、油断していたらこちらが殺されてしまうだろう。
勝手に怒っている勇者から目を離さずに集中する……

「死ね、背信者!!」
「おっと」

俺とティマの他愛のない会話を挑発と受け取ったのか、いきなり聖剣を振り回しながら突っ込んできた勇者。
だが、その動きはもの凄く単調だったため、簡単に避ける事ができた。
この程度の実力で勇者を名のれるとは……昨日聞いた通り、今の時代の魔物が本気で人間を殺そうとしない分勇者の実力は低くなっているみたいだ。
自分が密かに憧れていた存在である勇者がスライムに毛が生えた程度の実力とは……なんだか虚しくなる。

「魔物共も滅べ!」
「嫌よ。じゃあ後は任せたわ」
「了解。お前の相手は俺だよ!」
「くっ!」

その後は俺の後ろに下がっていたティマやジェニアさん、それに環奈を狙って無防備に突っ込んでいった勇者。
狙いがティマだし、そもそも勇者なので魔物を狙うのはわかるが、だからといって俺の事を一瞬でも忘れているのはいただけない。
という事で、撃退を頼まれた事もあり俺は奴の後ろから横腹に蹴りを入れた。
完全に油断していたみたいで完璧に決まり、バランスを崩し尻もちをつかせられたが、流石に鎧がある為ダメージはあまりなさそうだ。

「ふ、ふん! 鎧があるから物理攻撃なぞ効かんぶぉっ!?」
「鎧が護るのはあくまで身体だけだ。無駄口を叩いている暇があればこちらの追撃を受けないように体勢を立て直すんだな」
「ぐ、ぐぞ……」

威勢良く装備自慢をする勇者だが、そんな事をしてる暇があれば起きあがればいいのにと思う。
ただ、このチャンスを見逃す気はないので、鎧に護られていない顔面に蹴りを入れてついでに黙らせた。
兜まではいかなくても帽子の一つぐらい被っていれば頭を護れるのにそれすら付けていないこの勇者にダメージを入れるのであれば頭や顔しかないかと考えていたが、まさかこうも上手く決まってくれるとは思わなかった。
やはりまだまだ未熟者だったようだ……これならたとえ油断しても俺一人で倒せるだろう。

「どこまでも嘗めやがって……今度こそ魔物に味方する堕ちた人間であるお前を斬りつけてやる!」
「別に堕落したつもりはないが……それに、今の時代の魔物は悪というわけでもないだろ」
「その考えが堕ちていると言うんだ! いつの時代だろうと魔物は人を襲う悪に変わりはない!! 人々の平和の為、俺はお前達のような悪人を打ち倒す!!」
「……そうか……志は立派だが、自分で正しい判断が出来ない奴が勇者とは世も末だな……」

鼻血を出しながらも後ろへ転がって俺の蹴りをかわしながら起きあがる勇者。
昨日ティマやジェニアさんに聞いた通り、この勇者のように教団の人間は今の魔物も凶悪で人を滅ぼすと頑なに信じているらしい。
ちょっと考えれば今の魔物達に人間の命への危機が及ぶとは思えないと思うのだが……まあ、貞操の危機は迎えるだろうけど、それでも相手の命を奪う必要はない程度だ。
今の魔物には全員言葉が通じるし、手を取り合って暮らす事も容易で、人間を殺す事は本能的に嫌悪を覚えている……昔みたいに人間=餌や敵という思考を持っていない魔物を悪だなんてとてもじゃないが言えないだろう。
そんな事すら気付けないとは……この勇者はまさに「量産型」という言葉がふさわしいだろう。

……まあ、未だにどこか疑っている自分が言えたものじゃないが。

「いくらでもほざけ! 俺は堕ちた者の言葉などに耳を傾けるつもりはない!」
「……他人の言葉を聞けず、自分の信念を貫く、か……5百年前の勇者と言えばもっと立派な方だったのだが、今の時代はやはり質より量みたいだな……」
「う、うるさい! 馬鹿にするなあああああっ!!」

聖剣を前方に向け、無鉄砲に俺に向かって突っ込んできた勇者。
自分が言えたものではないが、あまりにも動きが単調過ぎて避けるのに大きく動く必要も無い。

「はあっ!!」
「なっ……ぐああっ!!」

剣先が当たるギリギリの所で左足を90度動かして正面から横向きになりかわし、目の前を通り過ぎていく勇者の額を左手で勢い良く撃ち抜く。
利き手でないとは言え急所を狙ったのでそれだけでもそこそこ痛いが、前方に勢いついてたところに正反対の力が加わったので、それこそ金属棒で普通に殴られたぐらいの威力にはなっているだろうし、力の流れに逆らえず仰向けに倒れた。

「ぐぅ……ちっくしょう……!!」

聖剣を手放し、額を両手で押さえ、痛みで涙目になりながらもこちらを強く睨んでくる勇者。
戦意は失われていないようだが……如何せん弱過ぎる。
まだ一昨日のメイのほうが歯ごたえがあったぐらいだ。この程度で勇者を名乗れるとは、いつまでたっても今の魔王を倒せないはずだ。

「俺相手に手も足も出ないのならバフォメットなんて到底相手に出来ないぞ? もう諦めて帰ったらどうだ?」
「くっそぉ……このまま終わると思うな!!」

そう言って、地面に掌を叩きつけた勇者。
その手を中心に光が円形に広がる……どうやら魔術の類も使えるようだ。
一応勇者として最低限のものは備わっているらしい。

「燃えろ!!」

魔術が発動し、地面からいくつもの火炎弾が俺に向かって飛んできた。
その数はざっと数えて8つ程……大きさは顔より一回り大きい程度だ。
多少強度や魔術耐性があるとはいえ、俺が着ているのは勇者が身に着けている鎧と比べるとあまりにも貧弱なもので、当たれば大火傷ぐらいは負うだろう。
まあ、当たればだが。

「こんなもんか? あそこにいるバフォメットはもっとヤバいものを使ってくるぞ?」
「な……いとも簡単にかわされただと……」

こんなもの、ティマが過去俺に落としてきた隕石とも言える炎の塊数十発と比べると可愛い物だ。
あの時は炎と炎の間をギリギリで掻い潜り、それでも負った火傷は妹が持つ薬で痛みを即抑えながら戦ったものだ……あの時と比べれは、火傷を負う必要がないぐらいかわすのは楽であった。

「どうした? もうおしまいか?」
「こ、この野郎!」

分散する光の玉をばら撒き、空に展開した魔法陣から光線を降らし、雷の剣で斬りかかってきたりと半ばやけくそに俺に猛攻を仕掛ける勇者。
だが、その全ての魔術はティマのそれと比べたらかわいそうな程威力不足だ。
光の玉は全て蹴り返し、光線も発動から降ってくるまで時間が数秒あるので軽くステップを踏むだけでかわせたし、雷の剣も使用者の腕前がたいしたものじゃないので余裕でいなせる。

「これで終わりだ」
「ぐえっ……!!」

大きく振り下ろしてきた勇者に合わせて回り込み、首筋に重い一撃を入れる。
まともに喰らった勇者は、加護のおかげか気絶まではしなかったものの、足下が覚束なくふらふらとしている。

「く、くそ……次はもっと鍛えて、お前達を全員殺してやる!」
「次の機会があればな。このまま逃すと思うか?」
「いくぞ皆! あの勇者を捕まえるんだ!!」
「ちっ……もしもの為に用意しておいてよかったぜ……」

ようやく敵わないと悟った勇者は、どうやら逃げるつもりらしい。
だが、たとえ現段階では弱いと言えども将来的には相当強くなるのが勇者というものだ……今の安全な魔物達を思考停止で殺すこの者を逃すつもりなど始めからないので、隠れていた者達で一斉に抑えにかかる。

「じゃあな! 次は必ずお前もバフォメットも倒して、人々に平穏な暮らしを取り戻してみせる!!」
「なっ!? しまっ……きゃっ!」

あとちょっとで身体に掴みかかれると言うところで、勇者が懐から何かを取り出した。
それは小さな紙だった……その表面に、何かしらの魔法陣が書かれた紙を取り出し、発動させた。
その瞬間、勇者の身体は徐々に透明になっていき……一番速く動いていたヒーナが掴みかかるよりも速く姿を消してしまった。

「転移魔法で自分の国まで帰ったか」
「どうやらティマ様に万が一敵わなかった時の為に用意しておいたみたいですね。まあ実際はティマ様を倒せる確率は万に一つもなかったわけですが」
「って事はあれは転移系の魔法陣だったのか」
「そういう事だ」

最後の最後にしてやられた。
こっちの被害は全く無いし、しばらくの間は全く危険ではないとは言え、将来的に危険になり得る相手を逃がしてしまった事が悔やまれる。

「まあそう気を落とすな。タイトより剣の腕だけは上だったが、あんな雑魚かなり長い年月をかけなきゃオレに勝てるまで成長しないし、放っておいても勝手にどこかの魔物の夫になってるだろ」
「そう言うならいいが……なんだって?」
「そうそう。剣の腕はお兄ちゃんより上だったどあんな弱い勇者ここにいる人なら誰でも簡単に勝てるって」
「ほ、ホーラまで……」
「所詮装備が強かっただけで実力は剣の腕前以外はタイトに遠く及ばなかったな。だがそのせいでまたお前の全力を見れなかったのが悔しいな……だからこの後私と手合わせしてくれないか?」
「それは良いですけどジェニアさんまで俺の方が剣の腕前は下手と言うのですか……」
「そりゃどう考えてもタイトのほうが下だろ。まあアタイがこれからビシバシ鍛えてあの勇者どころか剣豪ぐらいまでにしてやるから安心しなって!」
「お、おう……」

まあでも、あの勇者程度では到底危険な事にはならないだろう。
皆にボロクソに言われちょっとへこんでいる中で、そう考える事によって安心したのであった……



…………



………



……







「それじゃあおやすみお兄ちゃん。明日は二人揃って休みみたいだし、いろいろ買い物行こうね」
「ああ。おやすみホーラ」

勇者など襲ってこなかったと言えるぐらい特に何事も無く迎えた夜。
あの後、言われた通り俺はジェニアさんと拳を交えたのだが……昼間の勇者との闘いの何十倍も楽しかった。
武闘家な種族である人虎なだけあって動きはしなやかであり、気付いたらこちらが打撃を喰らっていたなんて事もあった程だ。尻尾すら武器にしてくるし、鋭い爪の一撃も魔力の関係で斬り裂かれはしないと言っても痛い。
とはいえ、こちらも何発か攻撃を喰らわせる事には成功しており、彼女に膝をつかせる事も出来た。
最終的には彼女の夫が「これ以上はお互い自警団としての仕事に支障が出る」と言って止めたので引き分けという形にはなったが、あのまま続けていたら魔物と人間の体力の差で負けていたかもしれない。
それでも、強者である彼女との闘いは非常に楽しかったと言えよう。

「……」

そう、ジェニアさんとの闘いは楽しかったが……それ以外の時間は、どこか寂しく感じたし、虚しくも感じた。
それもそうだ……俺は、未だにこの現実を受け入れられないのだから。
この時代に来てこれで3日……未だにこれが夢じゃない事を中々受け入れられないでいた。

「……はぁ……」

いくらなんでもいろいろと変わり過ぎだ……
あの勇者相手にああは言ったが、俺も内心はあの勇者と同じく、魔物はいつの時代だろうと悪に変わりはないと考えているのかもしれない。

いや、そう考えたいだけだ……あの時と変わらない、そのままの形でいてほしいと思っているだけだろう。

「帰れないのかねぇ……」

自分がこの時代で満足に生きていける自信は、正直言ってあまりない。
変わり過ぎた宿敵の姿を見る度、あの頃の宿敵は消えてしまったと思えて、なんとも言えない虚無感に襲われる。
今の所は現状を受け入れようと努力しているが……難しい。
出来る事なら……巨大で人間の敵であったオスのティマがいるあの時代に帰りたい。
今の平和な時代は俺の生きる時間じゃない……あの人間と魔物の関係が殺伐としたあの時代こそ、俺の生きる時間なのだ……

「まあ、それは魔女達がなんとかしてくれると信じるしかないか……」

妹曰く時間移動が起きた原因や帰る方法は現在調べているらしいので、それに掛けるしかない。
とにかく今はこの現実を受け入れるしかない……半ば諦めながらも諦めきれない想いを抱えたまま、俺は明日に備え眠りについたのであった……
13/11/17 21:39更新 / マイクロミー
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■作者メッセージ
今回は登場人物紹介回後編。タイトとホーラの職場の人間の紹介と実はまた登場する勇者の紹介回でした。
ちなみに、簡単に言えば旅だったばかりでレベル5の勇者が王様もとい神官様から貰えた装備が最高級の物で周りより強くて調子に乗って推奨レベル55ぐらいの場所に行って見事返り討ちにされたというお話でしたw

これでこのお話に出てくる名前有りキャラは約9割登場しました。
これからの話はタイトが今回までに出てきた彼女らと共に村の住民として生きていく話になります。
基本ほのぼのですが、いくつか大きなお話もあるので楽しみにしていてください。

次回は、タイムトラベルしてから1ヶ月経過。昔の嫌な記憶を見たティマが気分転換に散歩してる時に見たタイトの様子は……の予定。

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