連載小説
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第七十七話・それぞれの思い
帝国にとって、それは幸運だったのだろうか。
カイバル要塞が陥落し、追撃隊が追い付く前にクスコ川を渡った帝国軍は突然の大雨に襲われた。
これがもし渡りきる前に降られていたとしたら、如何に進軍速度の遅い連合軍であろうと、彼らは帝国軍に追い付き、荒れ狂う濁流と挟み討ちにし、帝国の歴史はその瞬間を以って、人々の忘却の彼方へと消え去っていたであろう。
雨は穏やかな川を荒れ狂う龍のように変えてしまった。
その流れに一度足を踏み入れたが最後、水の顎に飲み込まれ二度と帰れぬ旅へと逝く。
雨は一週間経った今も降り続く。
撤退の際に唯一の橋を帝国軍は自ら破壊し、天然の防御壁となった大河を挟んで帝国軍と連合軍は睨み合い、動けずにいた。
帝国にとって、幸運だった。
少なくとも彼らはそう感じていた。

「……くぅっ!」
皇帝、ノエル=ルオゥムが押し殺した呻き声を上げた。
「陛下……、今しばらく…。今しばらくの辛抱です。」
皇帝は専用の幕舎の簡易ベッドの上で上着を脱いで裸になり、シーツを握り締めてその痛みに耐えていた。
要塞防衛のため、皇帝は兵卒たちと共に戦った。
自ら剣を抜き、最前線で兵を鼓舞し戦ったのだが、力及ばず皇帝は深手を負い、兵卒たちはそれでも戦おうとする皇帝のために身を挺して、彼女や最後の切り札とも言える帝国軍精鋭のために退路を作り、彼女たちが撤退する時間を稼ぎ、最後の一人になるまで彼らは戦い続けたのだった。
そして今、彼女の純白の軍服は切り裂かれ、彼女の流した血が赤黒く、軍服を染めていた。
ノエル帝の侍従で騎士見習いの少年、キリエが彼女の縫ったばかりの脇腹の傷に、傷が乾いてしまわぬようにと、油薬を丁寧に丁寧に擦り込んでいく。
怪我の影響で熱を出したノエル帝は、献身的に傷の治療をするキリエに、荒い息で感謝を述べる。
「すまない、キリエ…。余はお前がいなければ、満足に傷の治療など出来なかっただろう。」
「いえ、当たり前のことをしているのです。陛下は何があっても生き延びなければいけないのです。ですから、そのように恐れ多いことを仰らないでください…。」
「…それは違う。生き延びなければならないのは、お前たちのような若い世代なのだ。キリエ、その目を逸らすことなく余の傷を見よ。余はお前たちのおかげでこうして生きているが、余の傷と死んでいった者たちの傷。一体どれ程の違いがある。」
「そ、それは……。」
キリエは答えられない。
「……余の傷も彼らの傷にも違いはない。皇帝などという称号を持っていようと、このように傷付き、死んでいく時は兵卒たちと同じように平等なのだ。余はお前たちのおかげで命を存えた。だが……、カイバルの兵たちは…!」
「陛下……、どうか心をお静めください…。きっと私もあの方たちと同じ状況に置かれれば、例え未熟な身ではあっても同じ行動を取ったでしょう。ですから今はご自身の身体だけをお考えください。この大雨で河川が荒れ狂っている間は、教主も王国も渡れないのですから。」
ノエル帝はその言葉に素直に従い、身体をベッドに深く沈めて、深い息を吐く。
彼女は目を閉じ、幕舎に響く雨の音に耳を澄まし、油薬を擦るキリエの手の動きを感じる。
「…そういえばキリエ。」
「は、はい。」
「この光景を誰かに見られたら、誤解されてしまうかもしれないな。」
その言葉の意味がわからず、キリエはしばらく考える。
そして彼女の言葉が意味するところに辿り着くと慌てて否定した。
「へ、陛下!どうか、そのようなお戯れはおやめください!!」
「おやおや。余の侍従は一体何を勘違いしたのかな。」
傷の治療のためとはいえ、若い裸の女性とその肌を触る少年。
見る者が見れば、それは皇帝の情事に見えなくもない。
ノエル帝はそんな彼の様子を楽しそうに笑う。
戦争の合間の小休止。
雨はまだ止まない。
皇帝は、これを不運と感じていた。
タイムリミット、時計の針が僅かに左回りで動いただけ。
誰もが幸運と感じる時間を、彼女は武運尽きるのが延びただけだと感じていた。


――――――――――――――――――


「厄介な川の流れだな…。」
リトル=アロンダイトは激しい雨が叩き付ける中、数名の供を連れ、増水し荒れ狂う川の視察していた。
対岸には敵陣の明かり。
それもしっかりとした柵や増水して渡れないというのに、見張りたちは油断なく自分たち、教会・王国連合軍の様子をを見張っていた。
「………敵、か。」
彼は敵ではないと思っている。
だというのに、それを敵と呼ぶことに彼は自嘲気味に笑った。
帝国はこの川をただの防衛ライン、帝都目前の最後の防壁にしか見ていない。
だがリトルは気が付いたのだった。
この川は防御よりも、攻撃に適した構造をしていることを。
「……義父上に報告しなければ。雨が止み、川が治まったら間違いなくフィリップ王も大司教殿も渡河作戦を決行するだろう。兵力は間違いなく…、こちら側が有利なのだが…。もしも……、もしも帝国にこの川の利用法を気付く者がいたとしたら兵力さなど逆転されるだろう…。」
リトルは義父、ファラ=アロンダイトに進言を決意する。
沈黙の天使騎士団は、一時的に待機するべきだと。
王や大司教に睨まれ、騎士団の立場は危ういために後方に退いて様子を見ることが出来ないため、帝国の出方を伺ってでも遅くはないと彼は考える。
「さぁ、戻ろう。ここにいたら……。」
冷えてしまう、そう従者に声をかけようと振り向くと、彼らは力なく泥の上に倒れていた。
リトルが慌てて近付くと、息はあった。
どうやら眠らされているらしい。
「こ、これは…。」
「なかなか。よもや能無しの集団に、本物の錦が紛れ込んでいるとは俺も驚きだ。」
リトルはハッとして自分の背後を振り返る。
彼に背中を向けたままの少年が、リトルと同じように荒れ狂う川を眺めていた。
「見事、とでも言おうかね。帝国の布陣、兵士たちの士気、そしてあんたのようにまともに兵法を知る者に。安心しろよ。あんたとは少しだけ話がしたかったから、ちょっと眠ってもらった。」
「ハ、ハインケル……、ゼファー…。」
「そうさ。この戦を仕掛け、勇者の肩書きを最大限に利用し、この舌先だけで数多の命を弄んだ罪人さ。あんたとは面識がなかったが、俺の顔を覚えてくれていたとは嬉しい限りだぜ。」
リトルは困惑していた。
ハインケルを遠目でしか見たことがなかった彼ではあるが、その雰囲気が普段、大司教やフィリップに見せているものとは明らかに違うことにリトルは困惑した。
「俺もこの川の様子を、俺の野暮用ついでに見に来た訳なんだが、あんたも気が付いたらしいね。そうさ、この川は本来防衛のための川じゃない。この川は迫り来る敵軍を誘い込み、一掃するために作られた帝国最後の切り札。水計を最大限に活かすために特化した大河川だった。あちらさんには、どうやらすでにそのことは失われた記憶のようだが、まさか能無し集団と決め付けていたうちからそれに気付くやつがいた…、なんてな。」
「それを大司教猊下やフィリップ王にご報告しますか。」
リトルの言葉を聞いてハインケルは楽しそうに笑う。
「あっはっは、そんなに畏まる必要はねえよ。あいつらに忠誠を誓った訳じゃないんだ。俺もあんたたちもな。だったら話は簡単だ。気付かないやつが間抜けなんだ。」
「何故……、勇者と呼ばれるあなたが…、まるで教会を自滅へと走らせるのですか!」
「……何故か。なるほど、無能の取り巻きから外れた場所から見ているだけに的確に、冷静に物事を見る目を持っているらしいな。いや、あんたの義理の父親がそういう風に育てたのか…。」
リトルは動揺した。
何故、ハインケルは自分の出生の秘密まで知っているのか。
そんな様子を見て、ハインケルはすまなそうに答えた。
「悪いな。次の時代に残すべき人材はすべて調べさせてもらった。質問に答えてやるよ。勇者とは俺の仮初めの姿。世界を正すなどと捻じ曲げた思想で、世界を混乱させる者たちを、絶望のうちに滅ぼす者。魔界において人は俺を悪逆勇者と呼ぶ。改めて自己紹介しておこう。俺は魔王軍特殊部隊隊長、悪逆勇者ハインケル=ゼファーだ。」
「魔王…、軍……!?」
「別に誰かに報告しても良いぜ。もっとも、あんたはそんなことはしない。すでにこんな馬鹿げた軍に見切りを付けてるあんたに、義理の父親以外に報告する必要はないからな。それと忠告しておいてやるよ。あんたたちは渡河作戦が始まったら臆病風に吹かれた振りでもしてろ。無能の大司教と王は俺がうまく言っておく。あんたらの印象がより悪くなって、いつでもこの軍を捨てられるようにはお膳立てぐらいはしてやるさ。」
用は済んだ、そう言ってハインケルはリトルの横を擦れ違う。
「……最後にもう一つ教えてくれませんか。何故、魔王に従うあなたが僕らを助けるような真似をしてくれるのですか?」
ハインケルは少しだけ立ち止まって、フッと笑う。
「よく言うだろ。何もしてくれない神様よりも、悪魔は代償をいただくけど誰よりもやさしい弱い者の味方なんだよ。」


―――――――――――――――――――――――


サクラは学園長の椅子に深く座って目を閉じていた。
ロウガがここで何を考え、どんな未来を思っていたのだろうか、と深く瞑想する。
だが、わからない。
結局、ロウガの頭の中はロウガ自身も理解し、触れることの出来ない世界なのかもしれない、という何度目かの結論にサクラは辿り着く。
「ねぇ……、マイアさん。」
「何だい、サクラ。」
「………ごめん、何でもない。」
こんなやり取りを今日一日で何度繰り返しただろうか。
ロウガの机の上に積まれた書類の山はない。
名もなき町が学園都市セラエノになり、これまでの学園内だけの処理ではなく、これからは町全体に関わることになるので、これまでの案件は一旦廃棄されたためである。
「…………………。」
ギシッ、という音を鳴らしてマイアが机の上に足を組んで座る。
サクラと向かい合い、見下ろしているが、その目はやさしく諭すように見詰めていた。
「あ、あの……?」
「サクラ、何か聞きたいことがあるんじゃないか?私で良かったら答えるよ。私の手に余るようなら、アヌビス先生に聞いても良い。」
「……では、お聞きします。何故、魔王って人は魔物を女性に変えてしまったんでしょう。」
「ほう…。」
マイアはサクラの言葉に意外という表情を浮かべた。
「きっと失礼なことを言っているかもしれません。僕らも知らない旧世代の魔物なら、きっと…、もっと楽に生きられたと思うのです。男の精をより搾取しやすく、という理由があるとか聞いたことがあるんですが、それなら純粋にサキュバス種をもっと増やせば良いだけなんです。なのに魔王という人は、淫魔に限らずすべての魔物を女性に変えてしまった。」
サクラはマイアの目を逸らさず言葉を繋ぐ。
「……先日、ロウガさんが僕らのトップになりました。僕はその光景を兵卒の列に混ざって目に焼き付け、思ったんです。あの瞬間、僕らは世界から切り離されたんだと。反魔物も親魔物もない。魔物も人間も、誰もがあの人を王に祭り上げました。誰もがあの人に付いて行きたい、あの人のために死ぬことも厭わないと感じたはずです。きっと……、旧世代から時代が変わる瞬間…。魔王にもそんな人がいたんじゃないでしょうか。愛したい人がいたから、愛されて愛する喜びを知ってしまったから……。きっとその喜びを分かち合いたくて、魔物を作り変えた…、なんて都合が良いでしょうか…?」
マイアは机から降りると、椅子に座るサクラを引き寄せ、抱き締める。
「……旧世代がどうだった、魔王という者が何を考えているかなど、私に知る由もない。それでも私は知っている。君を愛し、君に愛される喜びを誰よりも知っている。人間や魔物という壁はあるかもしれないが、この思いだけは誰にも否定させはしない。父上はこの辺境の町で、ただそういう世界を作り上げた。君の言う通り、旧世代の魔物のままであったなら、私たちは狩り狩られるだけの関係だっただろう。もしも君の言う都合の良い思惑があったとしたら…、私たちは感謝しなければならないのだろうな。そのおかげで君と手を繋ぎ、君と笑って同じ未来を目指して歩めるのだから。」
マイアがサクラに圧し掛かり、身体を密着させてキスをする。
まるで僅かな隙間すら許せないというくらいに彼女は激しくサクラの唇を貪った。




















日が暮れて人の少なくなった学園は静寂に包まれる。
学園長室の扉は鍵をかけられ、硬く閉ざされてた。
学園長室に残るサクラとマイアは、どちらからともなく何度も口付けを交わす。
熱い吐息が荒くなり、絡める舌も段々と熱を帯び、目を閉じたまま二人は互いの舌を、粘るような唾液で求め合い犯し合う。
学園長の椅子の上。
サクラに跨るようにマイアが上に乗り、ただ抑えられない情熱だけで唇を奪い続ける。
「………ん……ちゅ…………はぁ……。」
呼吸すら煩わしい。
唇を奪い合いながら、サクラのロウガ譲りの着物の襟からマイアは手を忍ばせる。
サクラの胸を彼女が指で引っ掻くと、彼は呼吸を乱す。
サクラの胸にはマイアの爪痕。
余程強かったのか、細い傷痕から血が流れていた。
「………サクラ、これで……、君は私のものだ。」
「……とっくに……、僕はあなたのものでしたよ…。」
「ふふ……、嬉しい…。でも、まだ信じられないな。ほんの1年で君とこんな関係になって……、私にとって弟分だった君がこんなにも私の心の中に居座って……。」
おや、と言ってマイアは自分が座るサクラの腰あたりを手探りで触ってみる。
「…いけない人。せっかく恋人として語らっているのに、こんなに大きくして。」
「マイアさんが……、いけないんですよ…。あんなにいやらしくキスするから…。」
「それは聞き捨てならないな。いやらしく…、とはどういうことか教えてくれないか?」
こういうことですよ、とサクラはまたマイアを引き寄せて唇を奪う。
唾液がピチャリ、ピチャリと無音の世界に響く。


「………あまり、見ないでくれ。」
お互いに服を脱ぎ、僕らは生まれたままの姿になる。
マイアさんは真っ赤になって、その控えめな胸と大事なところを隠して、ロウガさんもベッド代わりに使っているソファーに寝そべった。。
僕は何も言わずにマイアさんに近付き、胸を隠す腕をのけて彼女の胸に顔を埋める。
いつも、夜寝る時にしてもらうように、彼女に甘えるように抱き付く。
マイアさんが、そんな僕をやさしく包むように抱き締める。
「き……、綺麗です…。」
マイアさんの匂いに包まれて、搾り出すような声で僕は言う。
「でも…、良いんでしょうか…。こんなことをしてて…。みんな、この町を守るために一生懸命になって戦っているのに…。」
「……これも戦いだよ。万が一、父上も母上も死んでしまっても、私たちがここに残っている。やつらが認定する神敵の娘は、君という良人を得て、子供を作り続け、その血を絶やすことなく戦い続ける。これは剣士としてじゃない。私の女としての意地を賭けた戦いでもあるんだ。」
だから気にすることはない、と言ってマイアさんは僕の頭を撫でる。
そうやって甘やかされるのが気持ち良くて、いつも以上に深く彼女の胸に顔を埋める。
「………それにしても、だ。」
「はい?」
「相変わらず、凶悪な……、ち………、ちん…だな。」
マイアさんが恥ずかしそうに僕の大きくなった分身のことを言う。
彼女に密着していて、痛いくらい隆起した分身は彼女のやわらかいお腹を突き上げるように押し付けている。
スベスベした肌が気持ち良くて、それだけでぬるりとした粘液が先から出ている。
「……色といい、大きさといい、太さも反り返り具合もエグい。サクラ、君は本当に童貞か?もしかして私の知らない間に誰かと関係を持ったりしていないか?そもそも、こんな大きなものが入るのか?」
「あの…、僕も初めてだからよくわからないんですけど…。初めてだとやっぱり痛いらしいです。男も女もすっごく痛いって言ってました。サイガとコルトが。」
サイガの話だと、初めてした時にお互いあまり濡れてなくてすごく痛かったとか。
だからサイガはいつも僕に愛撫だけは念入りにやっとけって言ってたけど、童貞で女の人の裸なんてマイアさん以外知らないようなもんだから、愛撫だってどうやったら良いのかもわからない。
…やっぱりあの時ロウガさんに娼館に連れて行ってもらっておけば良かったかな?
「待ってろ、確か父上の机の中に……。」
そう言ってマイアさんは尻尾を揺らして、ロウガさんの机の引き出しを漁る。
「えっと…、どこかな…?」
お尻を向けて彼女は何かを探している。
でもそんなことより、僕はマイアさんの揺れる尻尾とお尻に誘われるようにフラフラとソファーから立ち、マイアさんに近付くとそのまま跪くように、マイアさんのお尻と尻尾に顔を埋める。
「…っ!?サ、サクラ!?」
マイアさんがビックリした声を上げるけど、そんなのお構いなしに彼女のやわらかなお尻を鷲掴みに揉み、太股からお尻の穴まで丹念に嘗め回す。
「だ、駄目だって!そんなとこ…、まだシャワーだって浴びてないんだから汚いよ!」
「汚いとこなんて…。マイアさんの身体で、汚い場所なんてありません。」
マイアさんの匂いに混ざる、ほんの少しの汗の臭い。
それらをすべて嘗め取るつもりで、僕は夢中になってマイアさんのお尻を貪り続けた。
「…ん!だ、駄目だってばぁ…。」
机を支えにマイアさんは辛うじて立っていたけど、膝はガクガクと震えて今にも倒れてしまいそう。
「ふぁ!?」
その時、突然マイアさんの身体が強張り、全身に震えが走った。
何事かと思って、嘗めるのをやめると内股に僕の唾液以外の粘液が垂れていることに気が付いた。
「あ………、もしかして…。」
「………あぁ、初めてだというのに、イカされてしまった…。目的の物も見付けたというのに、私がイクまでお尻の穴を嘗め続けるなんて…。君はとんだ変態さんだったみたいだね。」
そう言ってマイアさんは尻尾を僕の首に軽く巻き付ける。
その尻尾に軽くキスをすると、ピクリと震えた。
気持ち良いらしい。
「ふふ、父上と母上があの歳になっても交わり続ける気持ちがわかったよ。身体だけじゃなくて、愛する人に愛されるというのは心まで気持ちが良いものなんだね。サクラ、次は……。」
学園長の机の上に再び座ると、マイアさんは机の引き出しから取り出した瓶から何かどろりとした液体を自分の胸元から秘所にかけて垂れ流す。
「ルゥおば様のお店特製潤滑油だよ。父上と母上がここで子作りしているを盗み見た時に使っていたのを思い出してね。これなら……、多少はスルリと入ってくれるんじゃないかと思うんだ。サクラ、さっきから君は私のお尻ばかり責めているけど、肝心のココは手付かずのまま。」
マイアさんが跪く僕に見えるように、秘所を指で抉じ開ける。
独特の熱気と淫香に、僕は理性を保つのに必死になる。
「この潤滑油を私の奥まで擦り込んでくれないかな。手も指も使わずに、君の熱い舌で何度も何度も、私が良しと言うまで、犬のように。」
「……はい。」
「サクラ、返事が違うんじゃないかな?」
「……わん。」
マイアさんの言葉通り、僕は犬に成りきる。
ただ犬のように彼女を悦ばせたくて、舌をマイアさんの秘所の周り、プックリとした豆を甘噛みしたり、甘い潤滑油を舌ですくい、彼女の奥へ奥へと塗り込んでいく。
マイアさんは快楽に打ち震えながら、指を噛んで声を洩らすまいと必死に耐えている。
そんな彼女を見て、僕は甘い喘ぎ声が聞きたくて一生懸命になって、もう一度彼女がイクまで犬に成りきって、とろとろの秘所を嘗め続けた。


「サクラ、ソファーに連れて行ってくれないかな?」
「喜んで。」
サクラにお姫様抱っこをされて、私はグッタリとした身体を彼に預けた。
本当のことを言えば、彼の舌で何度イカされたのかわからない。
気が付いたら身体が言うことを聞かない。
それにしても、この1年で随分と逞しくなった。
今でもいくらか細い身体だけど、彼がちゃんとした男だと認識出来るようになった。
サクラなら受け入れてくれる。
きっと父上の残す道も、これから歩む二人の道も。
きっと彼と一緒なら怖くはないと思う。
フカフカのソファーにやさしく下ろされる。
目の前にさっき以上に硬くなった彼のち………んが、存在をアピールしている。
ピクピク脈打つように、早く私の中に入りたいと自己主張をしている。
やっぱりおば様のお店特製のだったから、何かしら媚薬でも入っていたのかな?
「サクラ……。」
ぬるりとした手の平で、太くて熱い彼のち……、分身を擦る。
火傷、しちゃいそう…。
「…………やさしく、してね?」
「はい!」
ソファーに押し倒されて、普段見せないような力強さでサクラは私の唇を奪う。
何度も何度も、私の口の中を愛撫し、お互いに離れてしまわないように指を絡めて、お互いの体温を感じ合う。
「入れて……、良いですか…?」
「聞かなくても良いよ。お互いに気持ちは一つなんだから…。」
彼の耳元まで口を持っていき、私は囁く。
「ね。あ・な・た♪」


それから先はあまり覚えていない。
なかなか入れられなくて、
サクラは入れる前に精を吐き出してしまったり、
何とか入ったけど、やっぱり痛くて思わず泣き出してしまったり、
憂さ晴らしにサクラの肩に思いっ切り噛み付いたり。
それでも何度も気長に続けていたら気持ち良くなり出して……。
「一緒に…、一緒にイって!」
「僕…、また出ちゃいます!!」
これで何度目だろう。
一突きするたびにサクラの精子が膣から溢れ出す。
どろりとした愛が、部屋中を独特の熱気と淫気で満たしている。
「「〜〜〜〜〜〜〜!!!!」」
同時に達してしまうのも何度目だろうか。
お互いに汗だくになって、それでもシャワーを浴びる時間も惜しんで、繋がったままどれくらいの時間が経ったのだろう。
荒い息でサクラが力なく私の胸に身体を預けた。
そんな彼が愛しくて、髪を撫で、頬にキスをする。
そのまましばらく繋がったままイチャイチャしていたけど、さすがに疲れ切ってしまったのか、撫でられて気持ち良さそうに目を細めるとサクラはそのまま眠ってしまった。
父上が泊まりの時に使っている毛布を引き寄せて、私は繋がったままサクラと一緒に毛布に包まって丸くなる。
「……子供、出来ると良いな。」
私はサクラの分身が詰まったままのお腹を擦る。
一体どれ程注がれたのかわからないけれど、彼に心と身体を満たされて、まだ見ぬ未来に私は思いを馳せていた。
「最初に生まれるのは、あいつなのかな。」
ロウガと名乗る男の子。
きっとあれが私の未来。
世界の法則を捻じ曲げて生まれてくる、異端の継承者。
「愛する者に愛されたくて…、か。本当に、旧世代のままだったら…、私たちリザードマンはもっと楽な一生を終えていたのかもしれないね。」
サクラの言葉が頭を過ぎって、自嘲気味に答える。
でも、それは本当に?
本当に愛することを知らないままで、今の私は幸せだと言えるのだろうか。
「……ごめん、嘘。」
言える訳がない。
私は知ってしまった。
その他の多くの種族も知ってしまった。
愛する喜び。
愛される喜び。
きっと、私たちはもう戻れない。
それらを捨てて、野性に戻れたらという考えすら出来ないだろう。
「…罪作りな男。もう、私は剣士じゃない。君はまだ私を剣士と思って、幸せそうに眠っているけど、もう私はただのリザードマンじゃない。君なしじゃ生きられない、か弱い一人の女になってしまった。責任、取ってもらうからな♪」
返事はない。
それでもきっと、サクラは私を守ってくれるだろう。
これからの人生を、
これから生まれる子供たちを、
これから彼を支える人々を。
そういう男だからこそ、私は彼に惹かれ、父上も彼に希望を託したのだから。














ソファーに眠る男女。
毛布の下は裸で抱き合い、精液と愛液がドロドロに混ざり合い、淫靡な香りに包まれた室内で見る夢は、一体どんな幸せな夢だろうか。
ギシリ、と床が鳴る。
ソファーの背に足を組んで腰掛けるように、黒い翼の貴婦人はやさしい眼差しでそんな二人を見下ろしえ、微笑んでいた。
寝返りで肌蹴た毛布をやさしく直してやると、彼女はマイアとサクラの頬を撫でる。
「祝福するよ。私と私の欠片、そしてその命を代償に次元を越えし娘の子よ…。どうかその名の通り、幸と実りの多い未来であることを祈っている。」
そう言って、彼女は床に降りる瞬間に霧のように消えていく。
そこには最初から誰もいなかったかのように。
学園長室には、ただ安らかな二人の寝息だけが微かに聞こえている。


11/02/10 00:45更新 / 宿利京祐
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■作者メッセージ
お久し振りです。
温泉に浸かってリフレッシュしてきました宿利です。
ついでに喧嘩番長5をPVに釣られて買いました。
主人公をカスタマイズしすぎて
原形が残っていませんw

さて今回はそれぞれの事情でお楽しみ……いただけたのかな?
楽しんでいただけたら嬉しいです^^。
では最後になりましたが
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
更新が遅くなってごめんなさい。


2月10日、加筆修正しました!

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