読切小説
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同化する雪
 とあるドクターのカルテ@
「患者名:■■ ■■
患者ID:00■3■■
性別:女
年齢:21
4月■日来院、発赤と発熱を訴え内科へ受診。体温38.4℃、著しい発汗により軽度の脱水。風邪様症状あり、海外渡航歴なし。ペットなし。
院内セットBを採血、検査値は概ね正常。CRP3.0mg/dlのみやや高値。
解熱鎮痛剤■■■■■、抗炎症剤■■■を二週間分処方、経過観察とした」


 とあるドクターのカルテA
「患者名:■■ ■■
患者ID:00■3■■
体温38.8℃、持続する発熱、頭痛を併発。陰部のかゆみ、わずかなせん妄がみられる。約20日前に性交渉あり。STDを疑い陰部のぬぐい液をグラム染色及び培養に提出する。染色結果:真菌→カンジダ症を疑う。培養結果を待つ。
CRP2.0mg/dlと前回より低下。
『ゲートが……』『熱い』『魔……本が』など患者のうわ言が激しく正確な症状を聞き取ることができない。
前回の処方がまだ残っているので今回はかゆみ止め■■■■のみ処方とした」


 とあるドクターのカルテB
「患者名:■■ ■■
患者ID:00■3■■
診察後の夜間に緊急搬送される。体温39.5℃、発熱、疼痛、皮膚の腫脹あり。激しい陰部の痒みを訴える。意識の覚醒と鎮静を繰り返す。
陰部と皮膚の腫脹から培養検体採取。白い粉のようなものが付着していた。
翌日、培養検査室より真菌の報告が上がるも菌名の判別までは不能であった。菌名の同定を専門の検査機関■■■■■■■に依頼する。
症状が収まるまで入院とする。■F病棟10■室に入院。
抗真菌薬■■■■■■を処方」


 とあるドクターのカルテC
「患者名:■■■ ■■
患者ID:0■■75■
性別:女
年齢:■5
発赤と発熱を訴え受診。発汗により軽い脱水。また陰部の違和感を感じていると申告があったため念のため陰部のぬぐい液を培養提出。
解熱鎮痛剤■■■■■、抗炎症剤■■■を二週間分処方、経過観察とした
備考→この患者は先日緊急搬送されてきた患者の病棟勤務の看護師であった。要観察である」


 とあるドクターのカルテD
「患者名:■■ ■■
患者ID:00■3■■
体温40.1℃、中度の意識混濁、四肢の脱力を認める。皮膚の腫脹が増多、出血はなし。
心拍数45bpm、徐脈。
激しい咳を併発。肺炎を疑い喀痰採取するも乾いた粉状の喀痰しか採取できず。念のため培養提出。
発汗が止まらず激しい脱水症状を発症、輸液にて補う。
これ以上症状が激しくなるようでは専門の病院に搬送も視野に入れる。■■医療大学の恩師■■■■先生へ相談。菌名の判定と正しい抗生剤の選択を急ぐと指摘を頂く。
その後、検査室から報告が上がる。しかし専門の検査機関■■■■■■でさえも菌名の判定は不能であった。いずれの文献にも載っていない新種であり、さらに上位の国立■■■■へ依頼することを推奨された。
ひとまず患者を隔離病棟へと移動させ、看護師には衛生管理を徹底させる」


 とあるドクターのカルテE
「患者名:■■■ ■■
患者ID:0■■75■
例の患者を担当していた看護師も同様の症状を発症し始めた。しきりにうわ言を呟き始め『■■』と繰り返し呼びながら陰部を掻いている。
こちらも隔離病棟へと移動させる」


 とあるドクターのカルテF
「患者名:■■ ■■
患者ID:00■3■■
体温41.1℃。
こんなことがあっていいのだろうか。患者の腫脹部から■い■■■のようなものが発生。出血はなく、皮膚を裂くように■■している。念のため完全防備し患者と対面、切開して検体を採取するも当院ではこれ以上の検査を施す施設がない。培養の提出をしたくとも検査室の人間は皆体調不良で休暇を出している。ひとまず■■■を密閉保存し厳重に保管する。
隔離病棟の至る所には■のようなものが付着している。とても嫌な予感がするのは私だけだろうか。これ以上はどうすれば……」


 とあるドクターのカルテG
「かんごし、ドクター、職員が次々とたいちょうふりょうを訴え始める。みな症状が一貫して発熱と陰部の疼きであり一連の患者とすべて共通している。
恩師■■■■先生に相談するも、先生のきんむする病院も同様の患者の対応で手に負えないとのことだった。
同期が開業した病院■■■■■へ情報を共有しようとするも音信不通でれんらくがとれない」


 とあるドクターのカルテH
「患者名:■■ ■■
患者ID:00■3■■
私は視てはみてはいけなかった。アレはなんだ?アレはもう■■ではない。頭蓋は割れ、皮膚は裂け、それでもなお平然とこきゅうしうわ言をしゃべり続けているアレはなんだ。
心電図は平坦、血液採取不能、体温25℃。
わたしの知りうる範疇でどうにかできる領域を超えている。
■科医の■■■■先生が患者の容体を確認すると出て行ったまま戻ってこなかった。その後患者の元へ赴くと■■■■先生と患者が交わっているのを目撃した私は隔離病棟の鍵を閉め封をした。
わけがわからない。私はどこでマチガエタのだろうか。いや、そもそも間違える以前にコレは一体何なのだ……」


 とあるドクターのカルテI
「カルテの書き方お思い出せない。家に帰ろうとしたが車のキーのかけ方を思い出せない。お湯の沸かし方を思い出せない。
受付はいない。■■科もいない。看護師もごくわずかしかいない。その他はすべてかくり病棟に閉じ込めた。あの中が今どうなっているかなんてことは想像したくもない。
残されたわずかな医者と看護師もまた意識を保つのでせいいいっぱいで。テレビ局はすべてつながらない。
喉の奥がぱさついている。ナニか飲み物を」


 とあるドクターのカルテJ
「ふと、かんごしがとても欲情的にみえた。顔をとろけさせながら私の股間を撫でてくる彼女を見るとムクリと立ち上がりわたしを殖やしたくなった。けれどもこれはいけないことだ、不用意に殖やしてはイケないのだ。わたしも、相手のかんごしもそれは理解している。だが……しかし……
そもそも人間の生きる意味とはやせいの動物と大差ない。子孫を続けさせるとぃう生物なら持ち得てとうぜんのほんのうなのではないか?わたしの■■■から粉が噴き出そうになる。粉と■■が混ざり合った白い■■、顕微鏡で覗いてみると元気に動いているオタマジャクシのような姿がかんさつされた。
そういえば恩師の■■■■先生の大学病院は廃院になったそうだ。げんいんはしらない」


 とあるドクターのカルテK
「かんごしにわたしを植え付けてやった。いくら注いでも全然溢れてこないので腹が膨れるまでたくさん、とてもキモチが良かった。溶けそうになるほど。
いつのまにか私にも腫脹ができており、引っ掻くと中から■■■を顔を出す。芳しい香りだ。ひとつもいでもまたすぐに生えてくる。
わたしは暇さえあればかんごしと殖やしあった。いくら出しても全然足りない、無限に射出できてしまう。溶けそうなほどにきもちがよくて、本当に脚が溶けてしまったが全然痛くはなかった。
周りを見ると他の人らもおなじように殖やしあっている。院内の至る所が■と■■で覆われている」


 とあるドクターのカルテL
「ヒサシブリニテレビをつけると、まるでわたしらと同じような姿をした者が交尾をしながらテレビを中継していた。カメラのレンズに■■が飛び散っていて映りがあまりよくないが、どうやらわたしたち以外もこうなっているようだった。
赤い鉄塔は白く染まり、■■山は巨大な■■■で覆われ、船や飛行機は風化し朽ち果てている。冬でもないのに白い粉が降り注ぎ、空は一日中よぞらに覆われていた。
ああそうだ、そろそろかくり病棟を開けてあげないとナカの人たちがかわいそうである。モウかくり病棟だろうが外だろうが対して変わりはないのだから封じこめてる意味がない。
わたしは溶けたアシでトビラに向かい、そして重いトビラを開けた。
封じこめたときよりも幾分か頭数がふえているようで、よく殖やしあっているのがわかる。負けてはいられないな、と意気込み再びかんごしにわたしをうえつけるのであった」
18/09/27 12:12更新 / ゆず胡椒

■作者メッセージ
無性にマタンゴしたくなり1時間で書き殴った発作

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