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第十四話「雷電」



雷電の一撃をかわすと、遮那は距離をとりつつ破邪光弾を放つ。



だが、雷電は軽い調子で外套を翻しながら攻撃をかわすと、ある程度の距離を保ち、拳銃を構えた。



「東京ブギウギ〜」


なにやらノリノリのエデに見向きもせずに、雷電は遮那めがけて発砲する。



「っ!」


どうやら弾丸そのものに属性を含ませているようだ。


高速で撃ち出された弾丸は風をまとい、すさまじい回転をしながらこちらにせまる。



これをなんとかかわすと、遮那は近づきながら破邪光弾を放つ。



連続で放ったため、見切りにくいはずだが、雷電はこれをかわすと、不思議な管を取り出した。



「召喚・・・」


短くつぶやくと、雷電の手にした管から光の玉が現れ、一瞬のちにそれは翼の生えた可愛らしい魔物の女の子に変わった。



「きゃはっ、やっちゃうよ〜」


魔物は雷電の周りをくるくる回りながら、遮那の破邪光弾を弾く。



「戻れ」



管に魔物少女を戻すと、雷電はまた軍刀を構えて遮那に斬りかかる。



「くっ!、強い・・・」



雷電の実力は高い、修羅人となった遮那と互角に渡り合えるとは、ミカエルにも通用する実力ではないか。



モンスサマナー如月雷電、一筋縄ではいけないような使い手のようだ。



「あったりまえ、雷電さんは皇都の守護者だもんね〜」



エデが何か言っているが、遮那はそれどころではない。



踏み込みとともに、無駄な動作を一切せずに斬りかかる、早く鋭い雷電の剣をなんとか受け止めるので精一杯だからだ。



「雷電さん、出し惜しみはなしだよ〜」



なんとか攻撃をかわしながら、遮那は外套の下で雷電が素早く管を掴んだのを見た。



「・・・来るっ!」



「・・・召喚」



一瞬のうちに雷電は管から巨大な蜘蛛の魔物娘を召喚した。



「くっ!」


なんとか蜘蛛の足から放つ攻撃に対処していたが、魔物の後ろに騎乗していた雷電がいきなり飛び上がった。




「戻れ」



そのまま魔物娘を管に戻すと、上段からすさまじい仙気が込められた斬撃を放つ。



「ぐあっ!」



遮那はその一撃をまともにくらい、後ろに跳ね飛ばされた。


静かに雷電は蜘蛛の魔物娘を管に戻し、スタイリッシュに着地すると、ゆらゆらと立ち上がった遮那を無言で見つめた。



「・・・やってくれる」



こちらの攻撃はほぼかわされているのに、相手は正確に攻撃を当てられるように魔物娘を手足のように自在に召喚してくる。



恐ろしい使い手である、『モンスサマナー』の名前は伊達ではないということか、否そればかりではない。



ただ召喚するだけでなく、状況に合わせて最善の一手を講じてくる、まさに最強のサマナーと言えるだろう。



魔物娘と相互の理解を深め、何度も修羅場をくぐり抜けなければ、これほどの使い手にはなれないだろう。



「皇都の守護者だもん、これくらいは軽いよ〜」


楽しそうにエデはふわふわと天井付近を飛び回っている。



万策尽きたか?、近づけばその卓越した剣術に阻まれ、距離をとれば魔物娘を利用した一撃を受ける。



「・・・いや、まだだ」



遮那は拳を構えると、またしても破邪光弾を雷電めがけて放つ。



軽くこれをかわす雷電だが、遮那はサマナーが回避しながら管を掴んだのを見逃さなかった。



召喚には一瞬だけタイムラグがある、そこをつく他ない。


「はあっ!」



遮那は雷電が管を掴んだ手、左手を狙い破邪光弾を放った。



「っ!」



これまで顔色一つ変えなかった雷電の顔に、微かながら動揺の色が見えた。



素早く管を直すと、雷電は外套を翻し、軍刀で防御姿勢をとった。



「・・・(よし、なんとか召喚は阻止出来たか)」



遮那は雷電が防御をしている一瞬の隙を利用して近づくと、至近距離から蹴りを食らわせる。



「雷電さんっ!」


だが雷電は落ち着いて蹴りをかわすと、軍刀の柄頭で遮那を突き飛ばした。


「ぐあっ!」


またしても跳ね飛ばされ、遮那は壁に激突する。



「あっぶな〜、ねね雷電さんっ、そろそろ本気出さないと負けるんじゃない?」



「・・・なっ?!」



どういうことだ、これほどの実力でありながらまだ本気ではなかったというのか。


静かに頷くと、雷電は一本だけだった管を二本に増やした。



「・・・これまでだ、修羅人」


二本の管が同時に作動し、魔物が召喚される。


「・・・召喚」



「承知っ!」



まず一人目、右手に杖を手にした白蛇が現れ、遮那を突き飛ばすとともに、杖から電撃を放った。


「ぐあっ!」



電撃は空間を走り、遮那の背中に命中、ちょうど突き飛ばされた遮那が、雷電側にもどる形だ。



「・・・はあっ!」


雷電は軍刀を引き抜き、修羅人を攻撃すると、背中を向け、もう一つの管を発動させる。



「応さっ!」



鎧甲冑姿の魔物が現れ、巨大な太刀で一閃、怒涛の連続攻撃に、ついに遮那は地に倒れた。





「魔物娘とモンスサマナーの協力攻撃、君には絶対に凌げないよ?」



エデの声に、咳き込みながら、ゆっくりと遮那は立ち上がる。



「モンスサマナーは謂わば魔物娘との友情を勝ち得た信頼出来る人間、修羅人、君は何を願って魔物と戦うの?」



軍刀を鞘に納め、雷電は制帽の奥からじっと遮那を見つめる。



「修羅人、君は混沌に属する者と渡り合い、秩序をもたらそうとする天使とも戦った、二極のコトワリを他所にして、どうしたいの?」



遮那には、自分がどうしたいのか、自分自身にすら分かってはいなかった。


ただ彼は、三津島一佐の混沌を受け入れられず、大天使ミカエルの秩序も理解出来なかった。



それ故に彼は三津島一佐、大天使ミカエルと戦い、そして打ち倒すことになったのだ。




「・・・私には、こうしたいというコトワリは存在しない」



ゆらりと立ち上がりながら、遮那は口を開いた。



「秩序も混沌も、二極化した世界の果てに、本当の未来はありはしない」



「だから君は、魔物とも天使とも戦うつもりなの?、秩序も混沌も廃したら、その先には破滅しかないんじゃない?」



エデの言う通りだ、天使を斬り、魔物を斬り、敵対する全ての者を斬る。



そんな血で血を洗う応酬の果てには、ただ一人の勝者が佇むだけの荒野が広がるだけであろう。



「修羅人、お前はすでに、その正解に行き着く『コトワリ』を得ているはずだ」



雷電は一切の感情を感じさせないような、極めて抑揚の少ない不思議な調子で声を発した。



「神も魔王も斬るのではない、秩序も混沌も否定するのではない、中庸を見つけるのだ」


帽子をかぶり直した雷電の瞳は、遮那がいる場所からは見えなかったが、何やら微笑んでいるように感じた。




「修羅人、先達との戦いで、何か学ぶことは出来た?」


エデの質問に、遮那は何も答えなかったが、どうやら修羅人は修羅人で、何か思うところはあったようだ。




「・・・修羅人か、君とはまた会うような気がする」


雷電は軽く手を上げると、そのまま外套を翻し、扉の先へと進んでいった。



「・・・(如月雷電、恐ろしい使い手だったな・・・)」


明らかにあの男は修羅人と戦う際には手を抜いていた。


最低限命を奪う結果にはならないように気を配りながら立ち回っていたのだ。



「・・・出来れば敵としては出会いたくないな」


ゆっくりと立ち上がると、遮那は雷電が出て行った扉に手をかけ、先へと進んだ。











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部屋を抜けると、今度は中庭に辿り着いた。


「・・・いつになったら元の世界に戻れるのやら」



ICBMも気になるが、それよりも気にかかるのは真由のこと。


大天使ミカエルとの戦いで大怪我をしてしまったが、無事だろうか?



中庭にはたくさんの花壇があり、芳しい香りが漂っている。




「あっ、お兄ちゃんやっと来たんだ」


中庭の中央にあるベンチに、アリスが腰かけていた。



「・・・如月雷電、あれほどの使い手をどこで探してきたんだ?」


遮那の問いに、アリスはキョトンとしている。


「なんのこと?、わたしは白いお姉ちゃんにお願いして強い人を探してもらっただけだよ?」


白いお姉ちゃん?、何者だ?



「アリス、その話しもう少し詳しく・・・」


遮那がアリスに質問をしようとした瞬間、ガラスが割れるかのような音がして、空間にヒビが入った。



「・・・ようやく、見つけた、よ?」


ヒビが一瞬にして広がり、空間に何者かが侵入してきた。



「お、お姉様方・・・」


ひきつったアリスの表情、現れたのは歓迎できる相手ではないのか。



遮那は緊張の面持ちで、じっとヒビを見つめた。







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analyzer
人間 如月雷電
種族 人間
使用技 『京都ブギウギ』『幼鳥ガーディアン』、『ムシャ召喚』、『シロヘビ電撃』、『ジライヤ突撃』
風属性、水属性に強い

大正時代の魔物娘使い『モンスサマナー』であり、皇都守護の役目を帯びた弓月四天王の一角如月雷電を名乗る青年。
如月雷電は代々受け継がれる名前であり、この如月雷電は十四代目。
とある妖精女王とその姉とは、不思議な縁で結ばれている。
17/04/25 21:46更新 / 水無月花鏡
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■作者メッセージ
みなさまこんばんは〜、水無月であります。

いよいよ今回は雷電と戦いますが、修羅人相手に互角以上に立ち回るなんて、雷電さんも案外ラスボス前の状態で呼び出されたりしたんですかね。

ではでは今回はこの辺りで。

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