読切小説
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Revers&Unbirth
一人の、2m前後の長身で、1m前後に腹の膨れたデーモンが、電車の出入り口近くのつり革を手に立っている。
ゴトンゴトン...と、電車が揺れた時、ややバランスを崩し掛けるも、つり革を引いて体重を支え、なんとか踏ん張った。
踏ん張ると同時に、色っぽい声が漏れる。

「んっ...」

それを少し離れた座席から見ていた女子高生が思わず声を掛ける。

「この席にどうぞ」
「...ありがとうね」

デーモンはお言葉に甘え、席に座った。
座ると同時に、席を譲った女子高生の友人と思われる女子高生が聞いた。

「何ヶ月ですか?」

デーモンは口もごった。
十秒近くの沈黙の末、口を開いた。

「...............9ヶ月...かな」
「わー! 来月生まれるんですね!!」
「そうね、来月...ね(本当は、中身は赤ちゃんじゃないし、ずっと出てこないんだけどね......)」

デーモンは言葉の裏で思った。

そう、腹の中身は赤ん坊ではない。
デーモンの夫が入っている。
それは、なぜか。
それは半年前まで遡る。


このようなことになったのは、半年前に、デーモンと男が出会ったことで、男がデーモンとの契約書にサインしたことで始まった。

男は孤児で、里親の下で育った。
幼年時は弱々しく、いじめられてばかりだった。
だが、成長するにつれ、努力によりマルチな才能を持つ青年となった。
その過程で、テニス・フェンシング・合気道・乗馬といった4つの運動部の部長を兼任するまでになるも、どこか満たされない日々を送っていた。

ある日、デーモンはそんな男に告白した。
満たされない欲求がありながらも、それを頭から消し去ろうと懸命に生きている姿に惚れたからだった。
男はデーモンの告白を受け入れた。

そして、契約の時がきた。
男が契約の内容として提示したのは、『自分の母親になること』だった。
さすがのデーモンも、これには唖然とした。
満たされない欲求がこれだとは、『母親になってくれ』と言ってくるとは、夢にも思わなかったからだ。

結局、デーモンは折れ、契約は履行された。
この契約を履行するにあたり、胎内回帰に詳しいリッチに協力してもらい、腹部に特製の三つの魔法を設置、人工胎盤を設置した。


最初に、三つの魔法に触れる。

一つは、『以心伝心』魔法。
母体とその中身が、テレパシーで会話が出来る魔法で、わかりやすく言うと、電車のライダーの『イメージの怪人』と『契約者のテレパシー』が近いか。

二つ目は、『情報共有』魔法。
母体であるデーモンの『今、その目・耳・鼻で感じているもの』の情報を共有する魔法で、胎内にいながら、外界の情報を得られる魔法だ。

三つ、『子宮に圧縮空間』魔法。
子宮の中は、成人男性が入っても、それほど窮屈ではない余裕を持った空間となるが、外から見ると妊娠9ヶ月ほどの膨らみとなるようになっている。

この三つの魔法を併せて、男は外界の情報を知りながら、胎内に篭っていられるのである。


次に、人工胎盤。

これはデーモンの細胞を培養して作り上げたもので、普通のヘソとつながるものとは別にもう一本、常に勃起しているインキュバスの男根に繋がっている。
その男根につながったものは『搾精器』であり、それで定期的に精を搾り取ることで、共存がなりたっている。
......臓器の一部に成り果てているとは言ってはいけない。


その三つの魔法と人工胎盤で胎内に入ったはいいが、本格的に出てこなくなってしまった。
それでもデーモンは、嫌とは言わず、気の済むまでいればいいと胎内に男を宿していた。



究極の甘えん坊だよねぇ......。

そう思いながら、腹を撫でるデーモンを、女子高生二人は、不思議そうな顔をして見ていた。
15/10/02 13:48更新 / 妖怪人間ボム

■作者メッセージ
ドーモ、妖怪人間ボムです。

就職してから、パッと魔物娘の夢を見なくなりました......。
どうも、休みボケで、SAN値が低下しているときほど、夢を見る体質のようです。

夢見たシリーズは当面どうにもならなそうですが、有り余る妄想で代用して、なんとか筆をとってみようと思っています。

それではここで失礼します。
また逢いましょう。

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