連載小説
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第十記 -サキュバス-
…ソラ。あのコの名前。

あのコと出会ってから…もう2ヶ月経つか、経たないか。
人間は成長が早いと、いつも思う。あんな小さな子供でも。
建物から香る3つの牝の匂いと、1つの牡の匂いが、そう感じさせる。

…20年以上も前に、あそこに居た牡は、どんな牡だったかしら。
体格がよかったのは覚えているわ。それと、ペニスも大きかった。
でも、確か…5ヶ月程経った頃。いえ…6ヶ月?
訪れた魔女の使い魔になったわ。あっさりと。幼女趣味だったのね。

でも、その6ヶ月の間…元々それなりのテクはあったけれど、
それが更に磨かれていって…魅力的になっていったのを覚えている。
短命ゆえ、かしら。魔物は人間のそんなところに惹かれると言っても、過言じゃない。
才能があるなら、特に。

…あのコに、才能があるかと言えば…正直、私は無いと思う。
だって、そうでしょう、優しすぎるもの。もう少し、強引な方がいい。
誰だって、激しく愛されたい時がある。あのコはそれができない。
相手を、相手が思っている程の…理想としては、思う以上の、
快楽に溺れさせるということができない。そんな、臆病なコ。

ただ…逆に、愛されることは、とても上手。
裏を返せば…ということもあるでしょうけれど。母性をくすぐる。
がんばりやなところも、誠実なところも、よく笑うところも。
言い換えるなら…染めたい、という気持ちが湧くわ。自分色に、どっぷり。
あんなコを、好きに調教できたらと思うと…ゾクゾクする。

…でも、それがあっても、今の仕事があのコに向いていないのは間違いない。
それでも…才能は無くとも、成長する。2ヶ月間のあのコを見てそう思う。

………私は、あのコの不思議な身体が気になっている。
調べて、生まれ故郷を訪れたけれど…有益な情報は、ゼロ。
両親は既に死んでいたわ。どちらも事故死。ここに来る3ヶ月前に。
…僅かに、後悔している。もう少し、優しくしてあげればよかったって。

あのコを派遣した教団にも、有益とまで言える情報はなかった。
魔物ではないとか、精を宿しているとか、知っていることばかり。
それと…あのコを村から追い出すべきって、村人達の訴え状の束があったわ。
読んで、気持ちの良いものじゃなかったから、全部燃やしたけれど。

…そういえば、教団に忍び込んでいた10日間、あのコの名前を呼ぶ人間がいたわね。
村でも見た人間。どんな関係なのかしら。毎日来ていたわ。
ソラはどこに行ったのか。元気なのか。そればかり、毎日、毎日。
教団はうまく誤魔化していたけれど…薄々、察してはいたんでしょうね。
隠れて、教団の資料を漁ったりと、色々していたわ。
本当に、どんな関係なのかしら。姉ではないのは確かね。

…考えが逸れたわ。そう、あのコの身体について。
情報がまったく無いから、1から10まで予想での組み立てになるけれど…。

まずは…そうね、ベース。
魔女も調べていたけれど…ベースは、牝ね。これは間違いないわ。
でも、精は牡の………いえ、違うわね。牡『以上』。牡じゃない。
インキュバスに近い…。ここ、すごく引っ掛かるわね。確信に近い点なのかしら。
一旦、ここは置き。

次は…あのコは、偶然なのか、作られた身体なのか。
生まれた時からあの身体だったみたいだけれど…どっちかしら。
偶然だとするなら、どんな原因から生まれた偶然なのか。
まだ、誰かに、何らかの目的で作られたっていう方が、納得できるわ。
魔物化もせず、精を宿していて、牝の身体を持つ…。
どの種族にとっても、メリットがある存在。なんて都合の良い。
これは後者かしらね…恐らく。

そうと仮定して…誰が作ったのか。
今の情報だけだと、人間が作ったっていう方がしっくりくる。
魔物にならない性質、魔術師としての魔力、子供を増やせる牝の身体。
人間にとっては、今分かる全部の特徴がメリットになっている。
もし、魔物化しないって性質が無ければ、逆に全て魔物のメリットになるけれど。
条件次第でどの魔物にもなれる、精を生産できる、子供を増やせる…。
なんて素敵な存在。完成された種。魔王の椅子さえ揺らぐわ。

あぁ…そう考えると、精の強さも納得いくわね。
余った分の精を、他のコ達に分け与えることができるもの。
そう、あくまで『魔物になれたら』のお話だけれども。
現実はうまくいかないものね。

………ん、良い匂い…。ふふっ…、相変わらず早いのね、あのコ。
私もお腹が空いたわ。そろそろ帰って、ご飯を探しましょう。
今日は…そうね、久しぶりに、若い牝にしようかしら。

ねぇ、ソラ。またいつか、貴女を襲いに行くわ。
次は優しくしてあげる。そして、もう一度サインを書くの。
今度は貴女の身体に。私のものっていう、証。

「…綺麗な月…」

夜は、これから。

……………

………

12/03/10 00:03更新 / コジコジ
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