連載小説
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エルンデルストの山にて
大陸の南北に横たわり、東部とそれ以外を隔てるダッハラト山脈。
折り重なる山の一つに、彼女は住んでいた。
彼女は山に古くからある巨木の一本に頭を下げ、そのウロを住処にしていた。
そしてその巨木の家の前に、彼女は立っていた。
山と山の間に小さな村があり、朝日が村を照らしている。
だが、彼女の視線は村ではなく、村を囲む山の一つに向けられていた。
「・・・・・・」
無言で山の稜線を見詰める彼女の双眸が、木々の間を移動する何者かの姿を捉える。
それは山間の村に住む者でも、彼女のように山に住む者でもなかった。
「ティリアさーん!」
高い呼び声と羽ばたきの音と共に、彼女の傍らに一つの影が舞い降りた。
身軽そうな服装に、カバンを背負った幼いハーピィだ。
「おはよう、ツバサちゃん。早かったわね」
「はい、おはようございます!」
彼女の言葉に、ハーピィの少女は元気良く答えた。
「早速だけど、コレを届けてくれるかしら?」
そう言いながら、彼女は手にしていた紙を三枚差し出した。
「この二枚はアヤとシェーザのところに。コレはヨーガンのところに。先にアヤとシェーザのところに届けてね」
「はい!分かりました!」
彼女は大きく頷くと、背中のカバンに受け取った紙を大事に納めた。
「じゃあ行ってきます!」
大きな挨拶と共に彼女は数歩走り、空へと羽ばたいていった。
「・・・・・・」
徐々に小さくなっていくハーピィの少女を見送る彼女に、ひんやりとした朝の風がそよいだ。
背中に届く金色の髪とその間からのぞく長い耳が、風に揺れた。







山の中を十人の男たちが移動していた。
いずれも薄汚れた衣服や毛皮に身を包み、武器や荷物を背負い、携えている。
筋骨隆々、とまでは行かなくてもそれなりに立派な体格から察するに、彼らは盗賊か山賊といったところだろう。
彼らの目的は、このダッハラト山脈に存在する、エルンデルストという村だった。
この近辺に存在するファレンゲーヘという町は、近年成長を続けており、やがては大陸東部との交易の要になるといわれている。
そのため彼らは、ファレンゲーヘを出入りする商人や旅人を襲うための拠点として、この小さな村を手中に収めることにしたのだった。
人数こそ少ないが、彼らにはそれだけの自身と力があった。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
声を潜め、辺りに注意を配りながら、彼らは黙々と森の中を進んでいた。








所変わって、村を見下ろす山の一つの中腹に、沼が一つあった。
水面には青空が映りこみ、辺りを囲む木々と相まって、ある種清浄な景色を形作っている。
しかしそこに川は流れ込みも流れ出もせず、ただ水が溜まっているだけの沼であった。
そして、その沼のほとりの岩の一つに、何者かが腰を下ろしていた。
「それでね、セーナちゃんたら酷いのよ。『お前には二度と会わせん』って、木刀で私を追い払うのよ」
眉間に皺を寄せながら愚痴をこぼすのは、東洋系の顔立ちの美女であった。
長い黒髪を結い、着物と呼ばれる東の民族衣装に身を包んでいた。
着物の胸元は大きな乳房によって押し上げられており、白いうなじが魅力を放っていた。
だが、彼女の腰から下は巨大な蜘蛛になっており、岩の上に黄色と黒の縞に彩られた巨大な腹を乗せるようにして腰掛けていた。
「それ・・・自業、自得・・・」
「でももう一月も前のことよ?」
いずこからか聞こえてきたおっとりとした声に、彼女は応じた。
「もうそろそろ許してくれてもいいじゃない。私もアル君と仲直りしたいし」
「仲直り・・・の、意味による・・・」
「それは勿論・・・」
「アヤさーん!シェーザさーん!」
何者かと会話をしていた東洋のアラクネの元に、高い声が届いた。
彼女が顔を上げると、沼の上部に広がる青空から、小さなハーピィが舞い降りてきているところだった。
「おはようございまーす!」
「あら、おはよう」
「おは、よう・・・」
高度を落としながらハーピィの少女が放った挨拶に、二人が応える。
「ティリアさんから、お二人にお手紙です!」
カバンから取り出した二枚の紙を、彼女は岩に腰を下ろすアラクネ、アヤに向けて差し出した。
「お二人が一緒でよかったですー」
「ありがと・・・ほら、シェーザ」
アヤは受け取った手紙の宛名を確認すると、一枚を沼の水面へ落とした。
「あり・・・がとう・・・」
何者かの声があたりに響き、水面に浮かぶ紙が水中へと消えていった。
「ええと、何かしら・・・ふぅん・・・なるほどね」
アヤは手紙を一通り黙読すると、顔を上げた。
「ツバサちゃん、返事を書きたいんだけど・・・」
「はい、ありますよ」
ツバサはカバンを探ると木の板と紙、ペンとインクの入った瓶を取り出し、アヤに差し出した。
「どーぞ!」
「ありがと」
彼女は受け取り、木の板を支えに紙に文字を連ねていく。
「シェーザ、あなたの分も代筆する?」
「お願い・・・」
声の主、シェーザに確認するとアヤは二枚の手紙をしたためた。
「じゃあツバサちゃん、ヨーガンさんにお願いね?」
「はい!」
ハーピィの少女は元気に頷くと、受け取った手紙をカバンに仕舞う。
「それじゃあ、失礼します」
一礼と共に、彼女は空へ羽ばたいていった。
「さて、と・・・」
徐々に小さくなっていくツバサの姿を見送りながら、アヤは呟いた。
「そろそろ私達も動きましょうか」
「う、ん・・・」
返答の後、沼の水面に気泡が浮かび、小さな音を立ててはじけた。









盗賊たちは、黙々と木々の間を進んでいた。
辺りの木から生い茂る葉によって視界は遮られているが、距離と方角から言って村には近づきつつあるようだ。
しかし地質の関係か足元の土はぬかるんでおり、彼らの足に泥が纏わりついている。
非常に進み難いが、文句を言う者はいない。
村の近くまでたどり着けば、襲撃まで休憩できるのだ。
「・・・・・・止まれ・・・」
一団の先頭を進んでいた男が、低い声で仲間に命じる。
彼らは長の言葉に足を止めると、手にした武器を構えながら、互いに距離をとった。
剣を抜き、槌を握り、弓に矢をつがえる。
そのまま緊張と警戒に全身を張り詰めさせながら、彼らは辺りの様子を窺った。
だが、ぬかるんだ地面とそこから生える木々の他に、彼らの目に留まるものは無かった。
彼の耳には確かに、泥を踏む小さな音が聞こえたのだ。
だが、仲間たちを含めた二十に及ぶ目と耳は、その音の主どころか続く音を捉えることさえ叶わなかった。
男は構えを解くと、無言の合図と共に剣を鞘へ収めた。
「・・・・・・気のせいか・・・」
仲間たちが武器を納める音を背に、彼がそう呟いたそのときだった。
「あら?気が付かれてたみたいね」
彼らの上方から、女の声が響いた。
「っ!?」
一同が突然の声に驚きながら、葉に遮られた空を仰ぐ。
そこにあったのは、日の光を透き通らせる緑を背景に広がる、巨大な蜘蛛の巣だった。
「うぉっ!?」
「あぁ!弓が!」
彼らが蜘蛛の巣を認めた瞬間男たちの半分と、身につけていた武器が宙に吊り上げられていった。
同時に、彼らは自身の武器や体に、極細の糸が巻きついているのに気が付いた。
「待て!手を・・・!」
糸によって吊り上げられていく仲間を、武器を取り戻そうと男たちが手を伸ばす。
だが、その指が仲間の衣服や手足に掛かるより先に、彼らの体が地面に沈みこんだ。
ぬかるんだ地面に、脛の半ばまで飲み込まれたのだ。
「クソ!何だ!」
「降ろせぇ!降ろしてくれぇ!」
泥濘から足を引き抜こうと、宙に上がっていく体を止めようと、男たちはもがき、声を上げた。
だが泥は彼らを逃さず、彼らの身体は宙に張られた蜘蛛の巣に捕らえられた。
「はい、これでおしまいっと」
上方から響いた女の声が、今度は木々の間から聞こえた。
泥濘に囚われた男たちが顔を向けると、そこには黄色と黒の縞模様の腹を持ったアラクネがいた。
「ジョロウグモだと・・・?こんな、人里の近くに・・・」
彼女の正体を知っていたのか、一人が呟く。
「おい、お前!」
別な男が、腹の先端から伸びる糸の束を木の幹に結わえ付けるジョロウグモに声をかけた。
「頼むから、仲間と武器を下ろしてくれないか?今夜麓の村を襲うんだ!仲間に入れてやるから、逃がしてくれ!」
「ば、バカ!」
計画をべらべらと喋る男に、男たちは一瞬焦りを覚えた。
だが、ジョロウグモが発したのは提案に対する答えではなかった。
「やっぱり、賊だったのね」
ジョロウグモは糸を木に結わえ付け終えると、立ち上がりながら振り返った。
「あなたが喋ってくれたおかげで、一手間省けたわ。ありがと」
彼女はそう言うと、六本の蜘蛛脚を木の幹に引っ掛けながら、大きな蜘蛛の巣へと登っていった。
「クソ!クソ!」
「放せよぉ!」
上と下から、男たちの声が響いていた。
「クソ・・・降ろせ・・・!」
「降ろしてくれぇ・・・!」
「お待たせ♪」
蜘蛛の巣に囚われ、声を上げる男たちに、ジョロウグモは一声かけた。
男たちは口調こそ乱暴であったが、そこまで抵抗はしていなかった。
恐らく巣から地面の高さに、うっかり落ちたら無傷では済まないと本能的に恐れているのだろう。
「さ、巻き巻きしましょうね〜」
楽しげな様子を隠しもせず、彼女は巣の糸を伝って移動し、男の一人の上で止まった。
「な、何を・・・」
「大丈夫よ」
首を捻り必死にジョロウグモを視界に捉えようとする男に、彼女は自身の蜘蛛腹の先端を向けた。
窄まった穴の口が大きく広がり、その奥から真っ白な粘液が迸った。
「うわっ!うわぁぁぁ!」
蜘蛛の巣の網目を通り抜け、衣服や手足に絡みつき、体の前面まで垂れてくる粘液に、彼は声を上げた。
「そんなに怖がらなくていいのよ、ただの糸なんだから」
ジョロウグモの言葉に、男はようやく体に絡みつく粘液が固まっていることに気がついた。
目を凝らしてみれば、それは極細の糸が絡み合った塊であり、自身を捕える蜘蛛の巣と一体化しているのが分かった。
「コレでもう落ちないわよ」
男はとっさに腕を動かしてみるが、完全に固定されていることに気が付いた。
「さ、他の四人も落ちないように固定するわよ」
楽しげな口調で言いながら、彼女は残る四人の下へ移動し、白い粘液を吐きかけていく。
程無くして、五人の身体は巣に完全に固定された。
「これで、出来上がり・・・と」
最後の一人を固定したところで、彼女は笑みを浮かべながら続ける。
「それじゃあ、いただきます」
その一言に、男たちは自身を拘束する糸に、股間部分が無いことに気が付いた。







その頃、ぬかるんだ地面にいる男たちも懸命にもがいていた。
地面に手をつき、手近な樹木に手を伸ばし、足を引き抜こうと努力する。
だが、地面に手をつけば手が泥に沈み、木々に手を伸ばせば伸ばしたた分だけ足が沈む。
もがけばもがくほど、彼らは自由を奪われていった。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
「クソ・・・動けねえよ・・・」
やがてもがく者はいなくなり、ただ荒い息と悔しげな言葉だけが辺りに響いた。
そして、ぬかるんだ地面から液体が滲み出してきた。
「み、水!?」
一人が叫ぶ。
だが、滲み出してきた液体は水などよりも遥かに粘度が高く、弾力すら備えていた。
「違う!水じゃねえ!」
液体が手足に纏わりつきながら、体を這い登ってくるに至って、ようやくその正体を彼らは知った。
「スライムだ!」
絡み付いてくるスライムを払おうと、懸命に体を揺らす。
だが先ほどまでの抵抗によって、体を泥に拘束された彼らには、体を自由に動かす自由はなかった。
そうしている間にも、男たちの体に纏わりつく液体は量を増し、形を成していく。
やがて、男一人一人に抱きつくように、青く透き通った体を持つ少女達が出来上がった。


くすくすくす


スライムの少女達が、全く同時に笑う。
「クソっ!くそぉっ!」
「離れろ!離れろ!」
人の形をした、人ならざるものの笑みに彼らは本能的な恐怖を覚え、逃れようとした。
だが、彼女らは男たちの背に覆い被さり、その腕に自身の腕を絡め、正面から抱き寄せている。
彼らに逃れられる隙は無かった。
「いた」「だきま」「す」
スライム達が、口々に途切れ途切れの語を紡ぐと、纏わりつく男の股間に触れた。
ある者は手を伸ばし、ある者は顔を寄せ、ある者は下腹部を押し付けた。
彼女らの体を成す粘液が、衣服に染み入ってペニスにたどり着く。
「ひぃっ!?」
ひんやりとした粘液が触れ、彼らの間から声が上がった。
宴は、始まったばかりだ。



男はうつぶせに地面に倒れていた。
くるぶしより下は勿論、起き上がろうと地面についた手も泥濘に囚われている。
ただ、顔をとっさに横に向けたおかげで、呼吸は滞りなく出来ていた。
「あは、あはは」
地面から滲み出した粘液は彼の体を這い登り、その背中で塊を作っていた。
彼の姿勢からは見えないが、腰に掛かる重量感や感触から察するに、彼に馬乗りになっているのだろう。
「あはは、できた」
自らの背中から、途切れ途切れの笑い声に混ざった声が響くと、彼の背中に柔らかなものが押し付けられた。
遅れて、ひんやりとした粘液の質感と重みが彼を襲う。
スライムが上体を倒し、形作った乳房を背中に押し当ててきたのだ。
「うわぁっ!?」
自身の背中に乳房が押し当てられる、という夢のような状況であったが、魔物に対する恐怖と粘液の冷たさが、彼の興奮を退ける。
「あははは、あは、あは」
スライムは自身の乳房を押し当てたまま、その形を彼の体に覚え込ませるかのように、軽く前後に体を揺すった。
乳房を成す粘液の表面が衣服に染み入り、彼の背中にその柔らかさと弾力を伝える。
「うわぁ・・・あぁ・・・」
時折漏れていた男の小さな悲鳴に、次第に熱が宿り始めた。
スライムが跨ってから時間が経過し、彼の体温がスライムを温めているのだ。
その結果、彼女の身体は人並みの体温を持った、極上の心地よさをもたらす豊満な肉体と化している。
そして背中を擦る豊かな乳房は、彼の意識から少しずつ恐怖を削っていた。
「あぁ・・・・・・あぁ・・・」
衣服に染み入った粘液が、スライムの肢体の弾力と柔らかさを伝え、彼の興奮を高めていく。
そして、ぬかるんだ地面と自身の下腹に挟まれた彼の肉棒が、その興奮に応え始めた。
「かたくなった」
「っ・・・!?」
体を揺すりながら、スライムが呟く。
肉体の変化を言い当てられ、男は驚きを覚える。
だが直後に、勃起を察知されるのも当然のことだと彼は悟った。
なぜなら、彼が横たわる泥濘はスライムが作り出した物だからだ。
「しごく」
スライムは短く言うと、体を揺すりつつ右手を傍らの地面に伸ばした。
指先が泥濘に埋まり、深々と沈んでいく。
同時に男の股間付近の地面から土が掻き出され、スライムの粘液だけが取り残される。
そして、彼の肉棒を覆う粘液が、手を形作った。
「うぉ・・・!」
肉棒への地面の圧迫が消えた直後、不意にペニスを握られ男は驚く。
だが、スライムはためらいも無く肉棒を扱き始めた。
粘液によって形作られた掌が、ペニスの表面を擦る。
「うあ・・・あっ・・・!」
人間のものを再現した指の凹凸と、その表面を包むぬるぬるの粘液、そして人間では絶対に再現し得ない弾力が、彼の意識を包み込んでいく。
「かんじてる、あははは」
スライムは握力を微妙に変えながら、地中の手を上下に動かしていた。
強く握れば、弾力のある指が肉棒を締め付ける。
握りを弱めれば、ぬめる粘液が肉棒に絡みつく。
自在に感触を変えるスライムの掌に、彼は追い詰められつつあった。
そして、彼は容易く限界に達した。
「あ・・・あぁっ・・・!」
体ががくがくと痙攣させ、自身の股間を包むスライムの掌に、彼は射精した。
彼女は手の動きを止めて、熱い白濁を受け止める。
「あはは、でてるでてる」
地中の自身の一部を白く染め上げる精液を受け止めながら、彼女は笑った。
やがて、柔らかな粘液の塊の中に注がれる白濁が、その勢いを減じ、ついには止まった。
「はぁはぁはぁ・・・」
「でたでた、たくさんでた」
射精の余韻に浸りながら荒く息をつく彼に、スライムは笑いながら続けた。
「もういっかい」






男は太腿の半ばまでが泥に浸かっていた。
両腕は泥からは自由であったが、彼の傍らに身を寄せるように座るスライムによって、万歳するように掲げさせられている。
スライムの左手は男の両腕を縛り、右手は彼の股間に被せられていた。
そしてその姿勢のまま、スライムと男は唇を重ねている。
「ん・・・ちゅ・・・」
すぐ側にある青く透き通った彼女の顔は、彼の目から見ても非常に整ったものだった。
粘液に濡れ、独特の柔らかさと弾力を備えた唇が、男の唇を濡らし緊張を解いていく。
スライムとのキスは、彼女に対する恐怖を和らげるのに十分すぎるものだった。
魔物とはいえ美女とのキスに興奮してきたのか、男の顔に次第に赤みが差す。
「ちゅ・・・んん・・・」
スライムは男の小さな変化を敏感に察知していた。
興奮による心拍と体温の上昇と、硬直した筋肉の弛緩。そして、彼女の右手に覆われた肉棒の勃起。
「ん・・・む・・・」
彼女は男と唇を重ねたまま、粘液を用いて構成した指で、ズボン越しに彼のペニスを弄った。
硬くなりつつある肉棒を軽く握り、上下に優しく擦り、指を緩めて撫でる。
精神的な興奮に呼応しつつあった肉体が、与えられた刺激に反応して彼の肉棒を屹立させていく。
そして数秒と経たぬうちに、彼のペニスは剛直と化していた。
「ん・・・んん・・・!」
スライムの口技を受ける男が、くぐもった声を漏らし、体を小さく揺らした。
肉棒への刺激をねだるような小さな動き。
彼女にはそう思えた。
「ん・・・ちゅ・・・」
粘液で構成された下を男の口中へ深く挿し込みながら、彼女は男の動きに応えた。
彼の股間を包む右手を、ズボンの内側へ浸透させ、直接その粘液でペニスを包み込んだのだ。
そして、指を模して作られた粘液の凹凸を、軽く波打たせた。
「っ・・・!」
粘液に舌をからめ取られた男が、声にならぬ声を上げる。
スライムは彼の反応を確かめるように、二度三度と粘液の指を波打たせた。
竿を握り締めるたび、男が声を漏らす。
裏筋を圧迫するたび、男が身を震わせる。
カリ首を擦るたび、男の脈動が強くなる。
数度の愛撫によって、彼女は男が喜んでいると確信した。
「んん・・・」
男と舌を絡めあい、その表面の粒々一つ一つを確認しながら彼女は本格的に指を蠢かせ始めた。
先程の確認のための愛撫よりも強く、大きく、早く。
本気の愛撫を男に施した。
「ん・・・っ・・・!」
男の全身が硬直する。
彼女は右手を蠢動させながら舌を解くと、男の歯茎を優しく舌先で撫でた。
口中に生じたくすぐったさに、彼の全身が震える。
「・・・・・・」
二度三度、と男の口内粘膜を舐りながら、スライムは右手の動きを更に大きくした。
ペニスへの刺激が増大し、男の全身がびくんと跳ね、痙攣するように小さく震え出した。
彼女の右手を成す粘液は、もはや振動といってもいいほどの勢いで蠢いていた。
指を模して作られていた粘液の凹凸は、振動によって粘液の波と化し、ペニスを包み込んでいる。
竿が粘液のさざなみに包まれ、裏筋が粘液の波にさらされ、亀頭が粘液の波紋にくすぐられる。
細かく振動する、弾力と柔軟さを兼ね揃えた粘液の愛撫に、男の精神は瞬く間に追い詰められていった。
「っ・・・!ぐ・・・!」
スライムと唇を重ねたまま、彼は小さく声を漏らし、身を震わせた。
脈動と共に、彼の股間を覆う粘液の内に白濁が弾ける。
「・・・っ!・・・っ!」
「ん・・・!んむ・・・」
射精しながら全身を痙攣させる彼と唇を重ねたまま、彼女は右手で精液を受け止めていった。
自身を成す粘液に、熱を持った異質な粘液が混ざる。
異物が胎内に溶けていく感覚に、スライムは興奮を覚えていた。
「・・・ん・・・む・・・」
やがて、男の射精の勢いが弱まり、絶頂の終わりを告げるようにその全身が弛緩する。
彼女はようやく男から唇を離すと、拘束していた左手を解いて彼の体を抱きかかえた。
「いっぱい、でた」
荒く息をつく男に、彼女は幼子に微笑む母のように続けた。
「もっと、ね?」







男は地面に四つんばいになっていた。
両手両脚は、肘と膝まで泥濘に浸かっており、彼が逃れようともがいて倒れてしまったことを物語っていた。
そしてその傍らには、膝から上を地上に形作ったスライムが、笑みを浮かべながら寄り添っていた。
青く透き通った美女は軽く身を屈め、地面に跪く男の両脚の間に手を伸ばし、ズボンから露出した彼の男根を握っている。
「うふ、うふふふ」
「くそ・・・はなせぇ・・・」
スライムの穏やかな微笑みに混ざって、途切れ途切れの声が響く。
男の声は大分弱っており、その内容は命令や恫喝ではなく、もはや懇願と言ってもいいほどになっていた。
無論、彼女は男の言葉に従うわけも無く、ニコニコと笑みを浮かべながら手を上下させていた。
地面に向けて屹立した男根には、すでにスライムの体を成す粘液がねっとりと絡み付いており、手との滑りを良くしていた。
粘液からなる彼女の掌が、持ち前の弾力で男のペニスの凹凸を刺激する。
「はな・・・ぐ、うぅ・・・」
彼女の手が上下するたびに、男の声が弱まり、言葉以外のものが混じっていく。
その顔は苦痛を堪えるように歪んでいたが、実際のところ彼が堪えているのは快感だった。
それに加え、獣のように四つんばいにされ、性器を弄られているという屈辱。
彼はその二つを堪えていた。
「や・・・くふっ・・・う・・・!」
しかし上下する彼女の手とその柔らかさや弾力は、彼の意識を少しずつ少しずつ削っていた。
男の口から漏れる声は、既に言葉よりも噛み潰し損ねた嬌声の方が多くなっている。
地面に向けられた亀頭の先端では、絡みつく粘液に異質なものが混ざりつつあった。
薄く青みがかった粘液に混ざる、透明な粘液。
鈴口から滲み出す先走りは、彼の限界が近いことを物語っていた。
「やめ・・・う・・・ぅ・・・!」
「がまん、だめ」
拒絶の言葉を搾り出そうとする男に、スライムが笑みを浮かべながら語りかける。
「らくにする、もっときもちいい」
「な・・・に、を・・・うぐっ・・・!」
スライムの言葉に気を抜きかけた彼の意識に、快感が忍び入る。
「がまん、だめ」
歯を食いしばって快感を堪える彼に、彼女は繰り返し語りかけた。
「らくにする、もっときもちいい」
快感に極限まで削られた意識に、彼女の言葉が染み入ってくる。
(地面に四つんばいだなんて屈辱的な姿勢だが、誰が見ている?)
男の意識の内に、自身の声が響く。
(周りを見てみろ、誰が他人を気にする?)
男の心中に響く自身の言葉は、彼の意識を内側から削り始めた。
「がまん、だめ」
(必死に堪えて何になる?どうせイくまで続けるだけだ)
「らくにする、もっときもちいい」
(ほら、楽になれよ・・・)
内と外から響く二つの言葉に、彼の意識が崩れ落ちた。
「も・・・くっ・・・!きもち・・・い、ぃ・・・!」
「もっと、きもちいい」
快感を堪えながら紡いだ彼の言葉を、スライムは繰り返した。
その一言に、彼の全身が一気に弛緩した。
全身の筋肉を張り詰めさせ、必死に目を逸らしていた快感が、一気に彼の背筋を駆け上る。
粘液、弾力、生温かさ、柔らかい、擦れ、ぬるぬる。
自身のペニスを包む幾つもの感触が、一息に彼を襲った。
「っ!!」
刺激と快感が弾け、全身が震える。
必死に堪えていた快感が、興奮を伴って弾けた。
粘液に包まれた男のペニスから、精液が迸った。
「うふふ、うふ、ふ」
自身の手の中に注ぎ込まれる熱い粘液の感触に、彼女は心地よさを覚えながら笑みを浮かべていた。
だがその心地よさも、射精の勢いが収まるのにあわせ次第に萎んでいった。
「はぁはぁはぁ・・・」
必死に堪えていた快感に身を任せ、射精を迎えた男は疲労していた。
そしてよほど大量に精液を出してしまったのか、彼の肉棒は硬さを失っていた。
スライムは二度三度と、手中のペニスを軽く揉んでみた。
だが、肉棒は独特の弾力を返すだけで、勃起する様子は無かった。
「・・・うふ、ふ・・・」
彼女は低く笑うと、男の肉棒から手を離し、立ち上がった。
「はぁ、はぁ・・・え・・・?」
不意に生殖器を解放された男が、息も荒いままスライムの方を向いた。
彼の視界に、立った姿のままずぶずぶと地中へ沈みこんでいく、青く透き通った美女の姿が映っていた。
満足したのか。
一瞬彼の心中に浮かんだ考えは、彼女の頭髪を成す粘液が地中に消えた直後打ち砕かれた。
「はぁ・・はぁ・・・うぐぅっ!?」
荒い息に、低いうめき声が混ざる。
男が最初に感じたのは、自身のペニスを不意に包んだ柔らかな感触だった。
その直後、彼の尻に冷たいものが触れ、肛門に液状の何かが浸入してきたのだ。
肛門を襲った異物感に彼は首を捻り、尻の方へ顔を向けた、
地面から伸びた、青く透き通った腕が彼の尻を抱え込み、その指を尻の間へ伸ばしているのが見える。
「こ、こいつ・・・ぐっ・・・!」
胎内で膨らみ続ける異物感を堪えながら、彼は両腕の間から股を覗き込んだ。
すると、地面から肩より上を露出させたスライムが、彼の股間を覆っていた。
丁度、四つんばいになった男の下半身を抱きかかえながら、その肉棒を咥えているような姿勢である。
「ま、待て・・・もう・・・うぉっ・・・!」
直腸内に浸入していた粘液が、弾力を増して形を取り始める。
数秒後、違和感を感じぬ程度に肛門を窄ませたまま、彼の腸内に指が現れていた。
「んん・・・ん・・・」
舌や唇を模した粘液でペニスを愛撫しながら、スライムは指を動かした。
柔らかな腸壁を傷つけぬよう注意を払いながら、その向こうに隠れる何かを探るように。
「や、止め・・・おぉ・・・」
自身の柔らかな肉棒を包む粘液と、腸内を這い回る異様な感覚に身悶えしながら、彼は言葉を漏らす。
だが彼女は彼の言葉を聞き入れることなく腸内を探り、ある一点でその指を止めた。
そして、そのまま指をぐいと押し込んだ。
「あがっ!?」
男の腰から頭へ、軽い衝撃が走る。
同時に、ペニスを包む粘液がもぞりと動くのを彼は感じていた。
いや、動いたのはスライムの粘液ではなく、彼の肉棒のほうだった。
先程の我慢の果ての射精によって力を失っていたはずのそれは、スライムの頭を貫かんばかりに屹立していたのだ。
「ん、ん・・・」
スライムは屹立したペニスを咥えたまま、小さく声を漏らすと東部を成す粘液を蠢動させた。
ペニスを包みこむ彼女の体が、舌や頬肉など、口内を模したつくりになっていく。
「うぉ・・・おぉぉ・・・!」
もぞもぞと形を変え、蠢動し始めた粘液の感触に、男は声を上げる。
強制的に勃起させられたペニスに快感が注ぎ込まれ、一度陥落した彼の精神が再び高まっていく。
「ま、待て・・・まだ・・・あぁ・・・!」
スライムの舌がカリ首に絡みつき、男の言葉を断ち切った。
舌の表面に浮かんだ小さな粒々が、舌の動きに合わせカリ首を擦る。
左右から押し付けられる頬肉が、竿を圧迫する。
「あぁ・・・ああ・・・!」
与えられる刺激に快感が膨れ上がり、彼は背筋を反らせながら絶頂に達した。
スライムの青く透き通った頭部に、白濁が混ざっていく。
「ん・・・!んん・・・」
スライムは小さく声を漏らしながら二度目の射精を受け止めると、ペニスへの愛撫を優しいものに切り替えた。
柔らかな快感に浸ったまま、男が精液を注いでいく。
「あぁ・・・ああ・・・あ、あ・・・」
男の声が弱まっていくのにあわせ、射精の勢いも弱まっていく。
そして、最後の一滴まで搾り出すと、ペニスは再び力を失った。
「っ、はぁ、はぁ・・・」
反らせていた背筋から力を抜き、男が吐息を漏らす。
我慢の果ての射精と、無理矢理勃起させられての射精。
この二つにより、男はかなり疲労していた。
だが――
「はぁ、はぁ・・・あぐっ!?」
彼の腸内で再び指が動いた。
「ま、待ってくれ、もう・・・」
硬さを取り戻しつつあるペニスに反するように、男が弁解する。
だが、股間に顔を埋めるスライムから返ってきたのは、短い言葉だった。
「もっと、きもちいい」









男は脚を膝まで泥に沈み込ませ、地面に座り込んでいた。
両腕は体を支えるように後ろについていたが、手首まで泥に飲まれており、身動きは完全に取れなかった。
加えて、彼の膝にはスライムが覆いかぶさり、ズボンから取り出したペニスを口に含んでいる。
「ん・・・んん・・・ん・・・」
彼女は時折小さく声を漏らしながら、口中の肉棒に吸い付き、舌を絡めていた。
男の腰から蕩けるような快感が這い登り、彼の意識へ染み込んでいく。
男は一団の中でも一際若く、性経験の乏しさからか快感に抗うことが出来なかった。
「うぁぁぁ・・・あぁぁぁ・・・」
ペニスを包み込み、舐め、挟み、擦ってくる粘液の感触に、ただただ彼は震えながら声を漏らしていた。
裏筋を滑らかな粘液の舌がなぞり、表面に絡みつく粘液がにちゃにちゃと蠢く。
屹立しきった彼のペニスに加えられる刺激が、彼の意識に快感を注ぎ込んでいた。
「あぁぁ・・・あぁぁ・・・も、もう・・・!」
男の意識が限界に近づき、彼の四肢に次第に力が篭っていく。
そして、スライムの舌が膨れ上がった祈祷をひと撫でした直後、彼は絶頂に達した。
「あぁっ・・・!あぁ・・・!」
空を仰ぎ、ぱくぱくと口を開閉しながら、スライムの口中へ精液を注いでいく。
青く透き通った彼女の頭部に、白い濁りが加わった。
「ん・・・!ん、む・・・」
スライムは吐き出された精液を体内でしばしの間味わうと、自身を成す粘液の間に散らしていった。
ペニスの付近で漂っていた白濁が、青く透き通った粘液の中に溶けていく。
やがて男はスライムの頭部に何度目かの精液を注ぎ終えると、全身を脱力させた。
「はぁ、はぁ・・・」
口を大きく開け荒く息をつきながらも、彼のペニスはその若さゆえか僅かしか硬さを失っていなかった。
だが、彼の精神は既に疲労困憊していた。
「お、お願い・・・もう・・・」
肉棒を咥えたままのスライムに向け、彼は必死に懇願していた。
最初は咥えられて数度舐められたぐらいで絶頂を迎えた。
次は舐められ、吸われ、しばらく口技を受けてから絶頂を迎えた。
射精のたびに、彼が絶頂に至るまでの時間が延びていることに、彼は気が付いていたのだ。
同時に、彼が射精するまでに受ける快感が、彼の意識を蕩かしていることにも思いが至っていた。
このままでは、射精するまでに受ける快感で狂ってしまう。
彼は本能的に悟っていた。
「・・・・・・」
男の言葉に、スライムは口中にペニスを含んだまま彼を見上げる。
そしてその言葉を理解したかのように、彼女はニコリと笑みを浮かべた。
直後、彼の膝に覆いかぶさりペニスを咥えていた少女の姿が、溶け崩れた。
「あぁ・・・」
懇願が通じた、と男が胸を撫で下ろす。
だが、溶け崩れたスライムは地面へ流れて行くどころか、地面から更に粘液を吸い上げると、男の膝の上で大きさを増していった。
膨れ上がった粘液の塊から二本の大きな枝が伸び、彼の肩に回される。
やがて粘液の塊が次第に形を成し、その姿を作り上げていった。
出来上がったのは、彼の膝の上に跨り、真正面から抱きつく少女の姿であった。
男の胸には衣服越しに大きな乳房が押し当てられ、彼女の下腹部には屹立したペニスが埋まっている。
そして彼女の両脚は膝までが形作られており、そこから先は地面に没していた。
すると、スライムの太腿に力が篭り、僅かながらその体が浮く。
「・・・!ま、待って・・・!」
彼女の意図を察知し、男が制止の声を上げようとした。
だが、スライムは構うことなく、少しだけ浮かせた腰を小さく回した。
筒状に形成されたスライムの胎内で、ペニスが踊る。
彼女が腰を動かすことでその感触が変化し、刺激を生んだ。
ある方向から弾力のある粘体が肉棒に押し当てられ、反対側ではぬるぬるの粘液が肉棒を擦る。
「あぁ・・・!」
ペニスを包むのは、何の凹凸も無いただの筒だったが、彼女の腰が動くたびに密着間が変化し、人間相手では味わえない異質な快感が生じる。
「えへへへ・・・」
快感に声を漏らした男に向けて、スライムは小さく笑うと、彼の体を抱きしめながら腰を揺すった。
粘液に塗れた弾力のあるスライムの胴が押し付けられ、腰を揺するのにあわせて乳房が彼の胸板を擦る。
弾力と柔らかさの織り成す、単純でありながら新鮮な快感は、彼を次第に押し上げていった。
「ああ・・・ああ・・・!」
意識をじわじわと侵していく、スライムの粘体による刺激。
スライムの口技によって幾度と無く果てた彼が、人外のもたらす快感によって、絶頂に近づいていく。
「えへ、えへ・・・」
膝に跨り、ペニスを胎内に収め、男を抱きしめながらスライムが体を小さく捻った。
彼女の胎内のペニスを包む筒がねじれ、ペニスに絡みつく。
柔らかな快感に混ざった小さな刺激が、彼の意識を限界へと押し上げた。
「あぁっ・・・あぁ・・・!」
全身を震わせながら、彼は射精した。
彼女は男の絶頂を、揺らしていた腰を止めて、彼を抱きしめながら受け止めた。
スライムの胎内に形作られた粘液の筒に白濁が注ぎ込まれ、奥へ奥へと吸い上げられていく。
「うぁぁぁ・・・あぁ・・・」
「えへへへ」
ペニスから精液を啜り上げられながら男は声を漏らし、スライムは笑いながら腰を使っていた。
やがて、射精の勢いが弱まり、男の絶頂が終わる。
いつの間にか緊張した彼の体が弛緩するが、スライムの胎内のペニスは、いまだ屹立したままだった。
「はぁはぁ・・・」
流石に疲労の色が濃くなった男だったが、スライムは止めていた腰を再びゆっくりと動かしながら、小さく笑った。
「えへへ・・・」








一団を率いていた男は、仰向けに倒れていた。
彼の両脚は脛から先が泥中に消え、両腕も手首から先が泥に拘束されている。
だが頭部は自由で、左右に振ることで辺りの様子を見ることは出来た。
だが、右に向けても左に向けても、見えるのは地面から現れたスライムに犯される仲間の姿だけ。
上に向ければ、木々の間に張られた蜘蛛の巣に仲間が掛かっており、アラクネが一人ずつ相手をしている姿が目に入る。
「あぁ・・・あぁ・・・」
「も・・・もう・・・」
「ぐぁ・・・ぁ・・・・・・」
嬌声、懇願、うめき声。
辺りから響く彼の部下達の声も、次第に弱々しいものになっていた。
そして、彼自身についてもそれは例外ではない。
「ぐぁ・・・あ・・・!」
仰向けに横たわる彼の上にはスライムが跨り、体を上下に揺すって胎内の肉棒を刺激している。
ペニスを包み込んでいるのは、スライムが人のそれを模して作り上げた膣だった。
だが、その内部は人の物より起伏に富んだ襞に覆われており、粘液によって柔らかさや弾力、ぬめりが彼に極上の快楽をもたらしていた。
その快感は数度の絶頂を経てなお、彼を屹立させている。
しかし、射精を繰り返し疲弊した肉棒は、鈍い痛みを訴えていた。
「うぐぁぁ・・・あぁ・・・」
「・・・でない」
快感と鈍痛にうめく彼の上で、スライムが不満げに漏らした。
確かに彼のペニスは勃起こそしているが、既に精液は底をついている。
そのため、スライムがいかに刺激を与えて絶頂に導こうとも、肉棒は小さく脈打つばかりで、精を放つことは無かった。
「も、もう・・・むりだ・・・」
美しく整った、青く透き通った顔を曇らせるスライムに向け、男は言葉を懸命に紡いだ。
「もう、何もでない・・・あいつらもそうだ・・・だから、たのむ・・・」
口から出たのは、切れ切れの言葉の断片。
だが、そこに篭っているのは仲間を助けようとする彼の意思だった。
「もう、でない?」
男に跨るスライムの少女が、そう聞き返した。
「あ、あぁ・・・」
自分の言葉を聞き入れたことに驚きを抱きつつも、彼は頷いた。
「もう、でない・・・」
彼女は確認するように繰り返すと、口を閉ざし、しばしの間動きを止めた。
何か、考えているのだろうか?
ペニスへの刺激が止んだまま、しばしの間が開く。
「もう、でない」
納得がいったかのように再び彼女は繰り返した。
見えてきた解放の可能性に男に希望が芽生えるが、直後それは打ち砕かれた。
「なら、ださせる」
有無を言わさず、反論も許さない、断固たる決心を含んだ彼女の言葉。
それが彼の耳を打った。
同時に、ペニスを包み込んでいた膣の感触が溶け崩れ、ねっとりとした粘液の感触だけになる。
ペニスを苛んでいた襞の凹凸が消えたことで、ペニスへの刺激が消滅した。
ださせる、という彼女の言葉に反する粘液の動きに、男は疑問符を浮かべた。
だが直後、ペニスを包む念体が動き始めたのだ。
ペニスを中心軸として、渦を巻き始めたのだ。
「おぉ・・・!?」
つかめそうなほどねっとりとした粘液が、ペニスに絡みつく感触に男は声を漏らした。
ペニスを包むスライムの身体は、膣の感触こそ失われていたが、粘液自体はかなりの粘度と弾力を保っている。
それが渦を描くことによって歪にゆがみ、形を持った液流となってペニスに絡み付いてきたのだ。
粘液が取り付き、絡み、纏わりつく。
「うぉぉ・・・おぉ・・・!」
少女の形を成したスライムの下腹部で、ペニスが粘液の渦に嫐られ、細かく揺れていた。
男もスライム自身もほとんど動いてはいないが、半透明の粘液は既に熾烈なまでの責めを男に与えている。
そして粘液の渦は、次第にその速度を増しつつあった。
粘液のうねりはペニスに絡みつくというより、ペニスを絞り上げるほどになっていた。
肉棒の根元から先端までを、凹凸一つ逃さず弾力のある粘体が包み込み、強烈な勢いで擦っていく。
「ぐぁぁ・・・あぁ・・・!」
襞を形作った粘液によって嫐られた亀頭が、竿が、裏筋が、血管が、カリ首が、鈴口が、渦巻く粘液に晒され快感の悲鳴を上げている。
既に男は、ペニスのどこにどのような刺激が咥えられているのか分からないほどの快感を覚えていた。
スライムの体を透かして肉棒が見えなければ、それが溶けてしまったと錯覚するほどだ。
「あぁ・・・も、う・・・あ・・・!」
地面に拘束されながらも、彼の全身に力が篭り、小さな痙攣が始まる。
幾度もの射精を経ていなければ、一瞬で絶頂に至るほどの刺激が、疲弊した彼の精神を導いているのだ。
粘液の渦がペニスを包み、扱き、纏わりつき、搾り、絡みつく。
やがて彼の意識が限界を迎え、腹の奥から煮えた興奮が迸っていった。
「っ・・・うっ・・・!」
小さなうめき声と共に、ペニスの先端から白濁が迸る。
精液はペニスを嫐る粘液と共に、渦を描きながらスライムの胎内を踊っていく。
「っ・・・!すわれ・・・て・・・!」
精液を手繰り寄せるための粘液の渦が、ペニスを吸い上げられているような錯覚を男に与えた。
加えられる快感に射精の勢いが増し、より多くの白濁が迸っていく。
「でたでた」
胎内で渦を作りながら、嬉しげにスライムが声を上げる。
だが、数度に及ぶ絶頂を迎えているせいだろうか、一度は増した射精の勢いも急速に衰えていく。
それにあわせるように粘液の渦も徐々に勢いを落とし、ペニスから数滴の精液を吸い上げると、止まった。
文字通り搾り出すような射精を終え、男の意識に疲労感がどっと流れ込む。
だが、ペニスを包み込むスライムは、不意に渦を描き始めた。
「っ!?がぁぁ・・・!」
硬さを失いつつあったペニスを突然蹂躙され、男が声を上げる。
「や、やめて・・・あぁぁぁ・・・!」
絶頂直後の肉棒に加えられる熾烈な刺激は、もはや苦痛と言っても良いほどの快感を生み出していた。
悲鳴めいた嬌声を上げながら、彼は必死に懇願する。
だが、スライムは男に跨って笑みを浮かべたまま、胎内の渦をとめようとはしなかった。
「やめない」
言葉を紡ぐ彼女の股間、男の逸物を咥えこんだ下腹部から、粘液が静かに流れ出す。
「もっともっと、だす」
流れ出した粘液は、彼の下腹部や太腿を伝って彼の下半身を包み込んでいく。
「こうすると、でる」
静かに男の下半身を包み込んでいた粘液が、不意に硬さを持って男の陰嚢を揉みしだき、太腿や下腹を撫でた。
「っ・・・!」
肉棒以外に加えられた新たな刺激に、一瞬男の声が詰まる。
「どんどんひろげる、どんどんでる」
じわじわと男の体を粘液で包み、愛撫しながら彼女が言う。
限界が訪れても、刺激の範囲を広げれば精液は搾り取れる。
そう言いたいのだろう。
「そ、そんな・・・ぐぁっ・・・!」
彼女の主張を否定しようとした瞬間、粘液に包まれた睾丸が軽く締められ、会陰部をぐいと圧迫された。
軽い衝撃と妙な感覚に、ペニスの先端から僅かばかりの精液が滲み出る。
「でた」
自分が正しかった、と言わんばかりに彼女は笑みを浮かべた。
「ち、ちが・・・あぁっ!」
陰嚢を揉まれ、太腿をなでられ、肛門を穿られ、腹をくすぐられ、足を撫ぜられ、男の声が断ち切られる。
ペニスを包み込む粘液の奔流の感触に、全身に加えられる新たな刺激が手を貸して、男をごく小さな絶頂へと立て続けに押し上げていく。
絶頂のたびに滲み出る精液はその量を減じ、漏精のたびにスライムは男の全身を少しずつ包んでいった。
そして、男の全身が粘液に包まれる頃には、もはやペニスは痙攣するだけで何も吐き出さなくなっていた。
「でない・・・」
男の全身をまさぐり、ペニスを渦で刺激して数度絶頂に導くと、彼女は不満げにそう漏らした。
「も・・・もう・・・む・・・り・・・」
地面から盛り上がった粘液の塊から顔だけをのぞかせた男が、かすかに残った意識でそう訴える。
辺りを見回せば、地面に転がる男たちも全員スライムの粘液に包み込まれており、顔まで粘液に浸かっている者までいた。
そして上方の蜘蛛の巣に掛かった男たちも、糸で包まれ身じろぎ一つしていない。
「たす・・・け、て・・・おね・・・がい・・・」
息も絶え絶えに彼はそう懇願した。
だが。
「だめ」
返ってきたのは拒絶の言葉だった。
絶望に突き落とされる男に向けて彼女は続けた。
「あなた、わるい。わたし、たのまれた」
地面に転がる粘液の塊に跨り、寄り添い、抱きついているほかのスライムたちの姿が溶け崩れ、地面に沈み込んでいく。
「あなた達、村狙ってた」
一つ、また一つとスライムが地面に飲まれていくにつれ、彼女の言葉が流暢になっていく。
「村を脅かす者は襲っていい」
人の姿を模したスライムが彼女だけになったとき、その言葉には人と比べても遜色の無いほどの知性がにじみ出ていた。
分裂していた意識と知能が、一つに纏め上げられたのだ。
「それが、私と三賢人の間の約定」
粘液に包み込まれた男を見下ろしながら、彼女はそう言った。
だが、男は全身を包み込む粘液のおかげで、ろくな返答も出来ないようだった。
「・・・・・・」
「ぐぁ・・・あぁ・・・!」
無言でスライムが粘液を蠢動させると、男は低いうめきと共に達した。
彼女の胎内で、ペニスが痙攣する。









「これで、おしまい・・・っと、ふぅ」
アヤ・イガシラが木々の間に張り巡らされた巨大な蜘蛛の巣で、最後の男から精液を搾り取り終えると、彼女は一つ息をついた。
時刻は昼過ぎだろうか。
彼女の張った蜘蛛の巣に囚われた男たちは、身動き一つとっていない。
荒く呼吸するばかりか、呼吸をしていない者もいた。
「さて・・・と、シェーザちゃーん!」
アヤは首を捻り、地面に向けて声を上げた。
ぬかるんだ地面の上に転がる男たちの間から、青く透き通った少女が顔を上げた。
「こっち終わったけど、そっちは?」
アヤを見上げるシェーザが、こくこくと頷く。
終わったようだ。
「だったら、私が報告書いておくから、後片付けお願いできる?」
スライムはしばし考えると、両腕を掲げて丸を作った。
「じゃあ、お願いね」
彼女の返答にアヤはそう応えると、巣を支える枝に位置を移し、糸に顔を近づけた。
枝に絡みついた糸を口に含み、たっぷりと唾液をまぶす。
すると、糸が次第に融け、解け、崩れていく。
そしてその太さが半分ほどになったところで、彼女は糸から口を離し、急いで木の幹へと退いた。
見る見るうちに糸が溶け崩れていき、とうとう千切れた。
同時に、巣を支える数本の枝がみしみしと音を立て、折れる。
五人の男を捕らえたまま、巨大な蜘蛛の巣が地面へと落下していった。
泥濘が巣ごと男たちを受け止めた。
そして、泥濘ごと蠢動しながら男たちを飲み込み始める。
地面にいた者、上から落ちてきた者。
糸に包まれた者、粘液に覆われた者。
生きている者、死んでいる者。
男たちは、皆等しく泥濘に潜んだスライムの中へ飲まれていった。
「じゃあ、私は先に帰るから。また、後でね」
木の幹を伝って地面に降り、波打つ地面に向けてそう告げると、彼女はその場を離れていった。
地面はしばしの間気泡を上げながらもぞもぞと波打つと、徐々に動きを止めていった。
そして地面に滲んでいた泥濘の水気が抜けると、辺りが静かになった。
ジョロウグモは歩み去り、スライムは消え、男たちは土の下。
森は静かだった。








巨大な古木を背に、彼女は辺りを見ていた。
日は大きく西に傾き、山肌を夕日が赤く染めていた。
山々の間の村からは、細い煙が幾筋も立ち昇っている。
木々の間に目を向ければ、森の一角ではジョロウグモとハーピィの少女が何か話をしている。
別の方角を向けば、夕日に赤く染まった沼の中央から、スライムの少女が空を見上げていた。
山と、山の住人達の様子を一通り確認すると、彼女はそこに朝に認めた男たちの姿が無いことを確かめた。
これでいい。
三賢人は、住処を追われた彼女達に居場所を与えてくれた。
だから彼らとの約定に従い、村に害をもたらす者を排除する。
それが、彼女達の仕事だった。
「・・・・・・本日も、異常なし・・・」
彼女は小さくそう呟くと、背を向けて歩き出した。
すでに夜の気配が忍び寄っているのか、彼女の金髪と長い耳を撫でる風は、かすかな冷気を孕んでいる。
巨木のウロに取り付けられたドアを開き、彼女の姿がその中に消えていった。

10/02/19 17:02更新 / 十二屋月蝕
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■作者メッセージ
と、言うわけでエルンデルストのお話です。
アルとマティが村をうろついている間に、こんなことがあったわけです。
アヤさんのエロも書きたかったんですけど、諸事情により断念しました。
だって長くなりそうだもん。
まあ、それはともかくアルとマティの話もそろそろ大きく動かそうと思います。
これから長くなるかもしれませんが、お付き合いいただけたら幸いです。
それでは。


あと、ストックがなくなってきたので来週休みます。

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