読切小説
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俺がノーパンになってるわけ。
今日こそは必ず…。

「…。」

今日こそは必ず勝つんだ、そのためにジパングから来た武芸者から必勝法も授かったんだ。
今に見てろ、あの魔物めぇ!!

ある一人の青年が洞窟の前で活きこんでいました。
中は暗い世界が広がり、地面すらも見えないほどの闇が広がっています。
そこへ青年は明かりもなしに入っていきました。
一人の魔物を求めて…。





「おらぁ、出て来い!!今日こそ決着をつけてやる!!」

洞窟の中で大声をあげた。
耳が痛てぇ、声が響きすぎだ。もっと小さく言えばよかった…。

「うるさいな〜もぅ。」

痛みに奮闘しているとパタパタと音がして奴が来た、俺の憎き相手だ。

「あんたも懲りないね〜、他にもっとやる事無いの?」
「うるせぇ、俺には重要なことなんだよ!」

逆さづりになりながらも奴は俺を挑発する。
ちくしょう、いつもいつも俺を馬鹿にしやがって!
だがそれも今のうちだ、今日はいつもとは違うぞ?

「ふふふ、今日はとっておきの秘策を用意したんだ、これでお前も終わりだ。」
「前回もそういって出したのが確か『マタタビ』だったわよね?どうせ今回も馬鹿みたいな物出すんでしょ?」
「違う!今回は物は一切使わない、この身体一つで戦ってやる!!」
「へぇ〜、今日は変に趣向が凝ってるわね、ネタ切れでもした?」
「ほざきやがれぇ!」

あいつはああ言ってるが今回の俺は一味違う、今まで何度も挑戦したが返り討ちにあってしまった。
その原因は何か…?俺は気づいてしまったのだ。
物に頼っていたからだ!
昔の拳法の達人もこう言った、「武器や火薬を使って何が拳法だ!」とな。
ならば俺は武器を捨て正々堂々と戦ってやる!

「じゃあ今日もコテンパンに…、何してるの?」
「ふふふ、これがお前の必勝法だ、恐れ戦くがいい!」

そして俺は敵を前にして目を瞑った。

「この技は目で見るのではなく心の目で見る、心眼によりお前の位置は手に取る様に分かってしまう!これぞ無我の境地!!」
「多分、それ間違ってると思うけど…?」
「やかましい!どっからでもかかって来い!!」
「じゃあお言葉に甘えて…。」

そうしてパタパタという音がして奴は飛び始めた。
俺は全ての神経を研ぎ澄ます。
水の滴る音(うるせぇ。)、外から吹く風の匂い(カレー臭い。)、肌に触れる空気(蚊が止まってる!!)
そして全ての事柄は一つに収縮される。

「!!」

見えた!
その時俺は全てを理解した。
駆け巡る脳内物質っ。

β−エンドルフィン…!チロシン…!エンケファリン…!バリン…!リジン…!ロイシン…!イソロイシン…!

俺から吹き出されるは神の息吹、迸るは今朝食べた麻婆春雨!!
生きとしいけるものの全ての頂点に立ち、もはや何もおそるるに足らず!!
そして今、俺は導き出す!
そうこの技は…!


「真っ暗で何も見えないぃ!」
「えい♪」
「あべしっ」

見事に後頭部を蹴られ俺は大の字に倒れてしまう。
その上に奴は跨り勝ち誇ったかのようにうきうきとする。

「後ろからとは卑怯だぞ!」
「どっからでも良いっていたのはあんたでしょう?責任持ちなさいよね。」
「ちくしょう、さっさと退きやがれ!お前をカブトムシにするぞ!!」
「どんな脅しよ、それ…。」

俺が必死に暴れるもまったくの効果なし。
じたばたしていると奴はズボンを脱がし始めた。

「おい、何してる!?馬鹿な真似はやめろっ!」
「ふふん、敗者は素直に犯されてね♪」
「ああん、やめて!お尻舐めないで、ひぃやっ!!」
「あんた馬鹿だけどここだけは立派なのよね〜、いただきまーす☆」
「お助けぇぇぇ!」

そうして洞窟内で青年の卑猥な叫び声が響いた。


30分経過。

「はぁ…堪んない。ご馳走様♪」
「ひっく、ひく、ぢくしょう…。」

辱めを受けた俺は泣き腫らしながら洞窟を出る。
ズボンを履いた後、洞窟を振り返り睨み付けた。
一部から見ればお楽しみかもしれないがとんでもない。
あいつは悪魔だ、奴は大変なものを盗んで行きました。
俺は泣きながら家路へと走る。
そして一言。

「パンツ返せぇぇっ!!」

こうして俺のパンツ62号は無残な最期を遂げた。
良いもん、まだ63号がいるもん。


「ぷはぁ…ちくしょう、また負けた…。」
「まったく、ロイドはほんと懲りないよな?」

行きつけの酒場で俺は酒を飲みながらやさぐれる。
いつも負けた日にはここでマスターに愚痴を聞いてもらっているが、いつも負けてるから常連になってしまったのは内緒の話。

「でもよ魔物といやぁ、とびきりの美人だって聞くじゃないか。そんな娘とヤれるなんてお前さんが羨ましいぜ?」
「そんなの暗くてわかんねぇよ、それに俺はそんな事の為に挑みに行ってるじゃねぇよ。」
「またまた〜、お前もそういうのが好きなんだろ?俺なら店たたんででも通いに行くけどな、なあそう思うだろ?」

マスターは近くに座っていた常連客に振ってみたが皆顔を反らしてしまった。
なんだよ?っと思いながら後ろを振り向くとこん棒を持った奥さんが仁王立ちしている。
…マスターが音を立てて凍りついた。

「な、なぁお前?そんなもんで殴ったら俺死んじm−」
「死ぬがよい。」

そうしてマスターはズルズルと奥へ連れて行かれた。
客の皆がマスターに敬礼、無茶しやがって…。

「なぁロイド?なんでお前はあの魔物に拘るんだ?」

不意に横に座っていた常連客の一人が聞いて来た。

「別にあの魔物あそこにいるだけで何もしてこないし、ほっといても大丈夫じゃないのか?」
「そりゃ…そうだけどさ。」

確かにあいつは街に攻め込んだりしないし、被害にあったといえば(一方的だが)俺だけだ。
だがどうしても俺はあいつに勝たなきゃならないんだ。
どんな手を使ってでも…。

「また作戦考えてくる!」

俺は残った酒を飲み干し、店を後にした。
常連客は呆れながらもロイドを見送った、いつもと何も変わらない日常。
だがその後ろで一部始終を聞いていた怪しい二人組み。

「おい、聞いたか?」
「聞きましたぜ兄貴、これは金の匂いがプンプンしますぜ?」

不気味に笑い、なにやらよからぬ事を考えている模様。
そして二人は店を後にした。




場所は変わって最初の洞窟。
ロイドとは違い、先程の二人組みが洞窟の前へと立っていた。
彼らはなにやら話をしているようだ。


「ここが例の洞窟ですぜ、兄貴?」
「ああそうだ、いろんな奴に聞いてやっと見つけたぜ、話によるとここに住んでるのはワーバットらしいな。」
「ワーバット?何すかそれ?」
「暗い所が好きな蝙蝠の魔物だ、普段は群れで暮らしているらしいがこの様子だと一匹だけみたいだな。」
「へ〜。で、そいつを捕まえて売れば俺達は大もうけできるんすね?」
「ワーバットってのは結構珍しくてな?市場でも高値で取引されるんだよ。少なく見積もっても当分は遊んで暮らせるぜ?」
「そいつはすげぇ!じゃあ早く捕まえに行きましょうぜ!」
「待て馬鹿!」

子分らしき男が中に入っていくのを兄貴が襟を掴んで引き戻す。
子分は恨めしそうな目で兄貴と呼ばれた男を見張った。

「何するんすか兄貴?」
「お前あのガキの話聞いてなかったのかよ?こんな暗い中でどうやって捕まえようってんだ、いいから黙って聞け。」

そして兄貴分は懐から何かを取り出した。

「兄貴、何すかそれ?食いもんですか?」
「食えるもんなら食ってみろこの間抜け!これは爆弾だ。」
「ば、爆弾!!兄貴がなんでそんなもんを?!」
「待て待てそう逃げるな、こいつはただの爆弾じゃねぇ。こいつはな、なんでか光と音しか出ねぇんだよ。」
「光と音?なんか花火みたいっすね。」
「原理はわからねぇがすごい効果を発揮するらしい、これを中に投げ入れて…。」
「そうか!奴がびっくりして出てきた所を俺達が捕まえれば…。」
「そういうこった、ワーバットは光に弱い性質を持ってるからな、楽にいけるはずだ。」
「さすが兄貴!俺っちにはできねぇことを平然とやってのける、そこに痺れる憧れるぅ!」
「はっはっは!さぁお喋りは終わりだ、危ねぇから下がってな?」

そうして兄貴分は爆弾に火を点けた。

「わ、火がついた!は、早く兄貴!」
「お前は盛りたてのガキかっ?落ち着け。…それっ!!」

爆弾は綺麗な放物線を描き中へと投げ込まれた。
二人はその場に伏せ耳を塞いだ。
そしてまもなく…。


ズドンッ!


炸裂音が鳴り響き、まばゆい光が洞窟内で弾けた。

「あ、ああ兄貴!なんか天井にパンツが吊るされているのが見えたっすよ?!すごい量だ!」
「馬鹿、目が潰されてぇのか?!早く目を閉じろ!」

子分は兄貴分に殴られ仕方なく顔を伏せた。
しばらくして振動が収まり洞窟はしんと静まり返った。
二人は顔を上げ様子を見る。

「…何もおきませんね、兄貴?」
「まぁ待て、慌てるな。」

そう言うとまるで呼ばれたかのようによれよれと飛んでくる人影が出てきた。
そして入り口に着くと力なく落っこちてしまう。

「きゅう〜。」
「すげぇ!ほんとにでてきたっすよっ!!」
「は、早く捕まえろ!」

二人は出てきた彼女を持ってきた縄で縛り、拘束してしまった。
強烈な光により、彼女は身動きできず目を回していた。

「う〜ん、…あれ?なに…これ?!」

しばらくして意識が戻り、自分が縛られていることに今更気づく。
それを意地悪そうににやける二人組み、その姿はまさに盗人。

「へっへっへ、これで俺達は大金持ちですぜ?兄貴。」
「あぁ、こんなにも簡単に金儲けが出来るんだ、もっと早く気づくべきだったぜ。」

二人は不気味にけらけらと笑った。
縛られている彼女はただただ二人を見て震える事しか出来なかった。

「わ、私を…どうする気よ、離してよ…。」
「安心しな?お前は大事な商品だ、大人しくしてりゃあ可愛がってもらえるだろうよ。」
「そんな…嫌だよぉ、離して、離してよ!」
「ねぇねぇ、兄貴。」

なんとか縄を解こうと手足をばたつかせるがまったく意味がなく、体力だけが減っていく。
そんな彼女を見て、子分は兄貴分に耳打ちする。

「よく見たらこいつ、結構美人だと思いませんか?」
「ふむ…確かになかなかの上玉だな、人間の女でもここまではいねぇ。」
「でしょでしょ?スタイルも良いし、姿なんか殆ど裸ですぜ?どこの馬の骨とも知らねぇ奴に味合わせるのは少し勿体無くありやせんか?」
「馬鹿、それだからこその値段だろうが!…だがまあ、お前の意見にしちゃあ上出来だな。」
「じゃあ兄貴…。」
「久しぶりの極上だ…。」

そして二人はいやらしく彼女を見た、二人に見られた彼女はビクッと身体を震わせ怯えた表情をする。

「なによ…来ないでよ。」

じりじりと彼女に詰め寄る二人。
彼女の目から涙が滲み出す。

「へへ、たっぷり可愛がってやるよ。」
「どこにも逃げられねぇぞ?」

そうして二人は彼女の身体に触れる。

「い、嫌ぁぁぁっ!!!」

彼女が堪らず悲鳴を上げたとき、奇跡は起きた!


「南斗人間砲弾!!」

「ぐへぇ!!」

横にいた子分の顔にケツが飛んできた。
子分は首が不自然に曲がり、前のめりに吹っ飛ぶ。
兄貴分も彼女も何がおきたか分からず目を丸くしている。
そして綺麗に着地し、青年は高らかに宣言する。

「情け無用の男、ロイドーマ!!」

妙な効果音が聞こえてきそうなポーズをして現れた青年。
訂正するが彼こそが先程、パンツ62号を取られてやさぐれていた青年ロイドである。
吹っ飛ばされた子分は首が横に90度曲がった状態で立ち上がりふらふらと兄貴分の元へといく。

「兄貴、あいつ何なんすか?!なんで地面に“横向き”で立ってるんすか?!」
「それはお前の首が曲がってるからだ、間抜け!」
「あいてっ!あ、戻った!」

そんな漫才を繰り広げながら青年のほうへと振り向く。
いつの間にかロイドの後ろには先程捕まえたはずの彼女が怯えたようにしがみ付いていた。

「あ、てめぇ!それは俺達が捕まえたんだぞ?!」
「へっ、お前らみたいな奴に渡して堪るかよ、こいつは俺の獲物だ!」
「そいつからは金の匂いがするほどの上玉だ、大人しく渡せ!」
「お前らからはゲロ以下の匂いがプンプンするがな!」
「な、なんだとぉ!?」
「まぁ待てよ、ここは任せろ。」

闇雲に取ってかかろうとする子分をなだめる兄貴分。
恨めしそうに見る中、兄貴は一歩前へ出てロイドに語りかける。

「ようガキ、聞いたがお前はそいつに恨みがあるかして退治しようと頑張ってるそうじゃねぇか?」
「それがどうしたってんだ?」
「俺達はお前の代わりに退治してやったんだぜ?感謝こそすれ恨まれる筋合いはないと思うがな。」
「はんっ、余計なお世話だ!」
「じゃあこうしよう、俺達といっしょにそいつを憲兵に突き出そう、あそこなら公平に裁いてくれるはずだからな。」
「え、兄貴、そんなことしたら金がごふぇっ!」
「てめぇは黙ってろ!」

横槍を入れる子分に兄貴分は肘打ちを食らわせた。
倒れた子分を起こしながら兄貴分が耳打ちする。

(お前馬鹿か、俺がみすみす金を手放すような事をすると思うか?)
(でも、憲兵なんかに突き出したら…。)
(ありゃでまかせだ、あの野郎が信じて近づいた所を袋にするんだよ。)
(な、なるほど、さすが兄貴、下種な考えが浮かぶっすねぇ。)
(下種は余計だ、殴るぞ?)

「一体何話してやがるんだ?」

相談する二人を見てロイドは痺れを切らして声を上げた。
言われた二人は何事も無かったかの様に立ち振る舞い、話を続けた。

「どうだ?お前としても悪くない話だろう?さぁそいつをこっちに渡しな!」

兄貴分にそう言われロイドはしがみ付く彼女を見た。
彼女は不安そうに彼を見上げている、目は良く見えないが恐らく泣いているのだろう。
そしてロイドは決心したかのように二人に向き直った。

「なるほど、悪くない条件だ。」
「そうだろう?なら−」
「だが断る。」

ロイドはさも当たり前のように言い放った。
彼らの中で沈黙が出来る。
先に破ったのはロイドだった。

「お前らは分かっていないようだから教えてやるぜ、俺がなぜこいつに勝負を挑んでいるのか、別にこいつに恨みとか何とかなんて持ってねぇよ、ただ俺はこいつに勝ちてぇんだ。
それが…。」

ロイドは息を吸い大声で言い放った。

「それこそが俺の生きがいだからだぁぁーっ!!!」

近くで鳥達がパタパタと飛び立つ。
ロイドの言葉にその場にいた者達が衝撃を受ける。
そして二人はわなわなと震え始めた。

「てめぇ、何を訳わからねぇ事を言−」
「感動したっ!!!!!」

兄貴分が怒りで震えてるのに対し子分は涙を流し、ロイドの言葉に感動していた。

「おま、何言って…。」
「兄貴、もういいっすよ!あいつマジで漢っすよ!!俺、涙が止まらねぇ…。」
「馬鹿野郎、あいつは俺達の生活が掛かってんだよ!情に流されて騙しうちが出来るか!!」
「…やっぱり騙すつもりだったな?!」
「あ?!くそっお前が変な事言いやがるからばれちまっただろうがっ!」

兄貴分は子分を思い切り殴った後、ロイドを睨み付ける。

「このガキ…下手に出てりゃいい気になりやがって、こうなりゃ力付くでも渡して貰おうか。」
「へっ、お前らなんかに俺が負けるかよ!とおりゃぁーっ!!」

木の棒を振り回し奇声を上げ二人に突進するロイド。
二人組みは特に構えもせず涼しい顔をしている。
ロイドが棒を振り落とすと同時に兄貴分が足払いを食らわせる。

「ほげぇっ!」

前のめりに転び顔面からズザザーッと滑る。
そこに二人組みが近づいてくる。

「悪いなぁ、いい奴だろうけど…俺も生活があるんだ。」
「俺達はガキだろうと容赦はしねぇ、手始めにてめぇを餌に魔物どもをおびき寄せるか。」

そして兄貴分がロイドの胸倉を掴み上げ、顔に一発入れようとしたときだった。

「かかったな、アホめ!」

ロイドは袋から粉のようなものを握り締め兄貴分の顔に振り掛けた。

「ぶわっ!なんだこりゃ?!」
「あ、兄貴!顔が真っ白でっせ?!」

堪らず兄貴分は腕を放し顔に掛かった粉を振り払おうとしたが、それに追い討ちをかけるようにしてロイドは粉を二人に掛け続ける。

「そらっ食らえ食らえ!!」
「ゴホッゴホッ!くそっ、やめろ!!」
「ゲホッゲホッ!兄貴ぃ、何なんすかこれ?!」

二人は全身白色になり咳き込みながらもロイドに掴みかかろうとしたが、彼はひらりと避けすぐさま彼女の方へと戻った。

「はっはっは!お前たちはもうお終いだぁ!!」

二人を指差しながら高々と宣言する。
その口にはいつの間にか布が当てられていた。

「てめぇ、何を…。」
「その粉はな、さっき俺が森で集めたマタンゴの胞子だ!」
「な、何?マタンゴだとぉ?!」

ロイドの言葉に驚いているのは兄貴だけで子分は分かっていないようで首をかしげながら兄貴に聞いた。

「あ、兄貴?マタンゴって何すか?」
「何悠長にしてるんだよ?!マタンゴはきのこの形をした魔物だ、こいつらの胞子を吸っちまうと身体の中できのこが生えてくるんだよ!…早くしないと身体を乗っ取られるぞ?!」
「き、きのこ?!俺のきのこは一本で間に合ってるっすよっ?!」
「阿呆なギャグかましてる場合か!川だ、川に向かえっ!」
「ちょっと兄貴!待って下せぇっ!!」

二人は真っ白な姿で一目散に川へと走っていった。
その場に二人が残される。

ロイドは二人が離れたのを確認すると、口に当ててていた布をとり意地悪そうに笑った。

「バーカ、こいつはただの小麦粉だよ。こんな辺鄙な所にマタンゴなんているわけねぇだろ、折角いい作戦が思いついたと持ってきたのに…全部無くなっちまった。」

そのままロイドは彼女の所へ行き縄を解いてあげた。
彼女はまだぺたんと座り込んだままだ。

「大丈夫か?どこも怪我してないか?」
「…うん。」
「そっか、無事で良かった。」
「…。」

彼女は押し黙って顔を伏せたままだった。
ロイドは彼女に気に掛ける言葉を投げかけようとしたが、彼女の姿を改めて見て固まった。

「…?」

(うわぁ、暗くてわかんなかったけどこいつこんな格好してたのか…。)

「…ねぇ。」

(というか殆ど裸じゃねぇか?!胸をベルトで巻いただけとか卑猥すぎだろ常考。)

「ねぇって…。」

(こんな綺麗な身体に包まれたら…いや待て、俺は何回もこいつに犯されてるから俺の暴
れん棒が既に彼女のあそこに…。)

「ねぇってばっ!!」
「うわぁっ何だ?!いきなり大声を出すなよ。」
「何回も呼んでるのに聞いてくれないからでしょ?」
「そ、そうだったのか…悪い、ちょっと考え事を…。」
「私の身体を見て興奮してたんでしょ?」
「だだだ、誰がお前なんかに興奮す、するかよ?!」
「そんなもの立たせてたら誰だって分かるわよ。」
「げっ?!あ、いやこれは…。」

何とか弁解しようとあたふたし始めるロイド。
その姿に彼女は微笑ましく思いクスッと笑った。

「まぁいいわ、それよりお願いがあるんだけど…。」
「な、なんだ?」
「私は明るすぎると飛べないの…、だから洞窟まで運んで欲しいんだけど。」
「あ、あぁ、お安い御用だ。」


ロイドは彼女を抱きかかえて洞窟中へと向かった。
それはまるで王子様とお姫様のようだった。


洞窟に入るとあたりは光が遮られ真っ暗だった。

「ほら、着いたぞ、っておい!」
「あはっ♪やっぱり暗いほうが落ち着く〜。」

彼女はロイドの手を離れてパタパタと暗闇へ飛んでいってしまった。
ロイドは暗闇の中、彼女に語りかけた。

「まったく、じゃあ今回はこれで帰るけどな、明日また挑みに来るからな!それまでまた捕まったりすんなよっ。」
「あ、ちょっとまって!」

ロイドが帰ろうとするとどこからともなく彼女に呼び止められた。

「なんだ?まだなんかあr」
「てやっ♪」
「オウフッ!」

ロイドが振り返った途端、彼女は彼の身体にのしかかった。

「ぷはっ、お前なにしやがる?!」
「この洞窟に入ったら最後、あんたは私に犯されるの、それがきまりでしょ?」
「そんなきまりいつ作ったんだよ!?」
「今。」
「この悪魔!」

ロイドがじたばたしていると彼女はロイドの上の服を脱がし始めた。

「ちょ、なんで上も脱がしてるんだ!!いつもは下だけだったろう?!」
「ちょっとしたお礼よ、たまには全裸でするのもいいと思わない?あ、大丈夫、私も脱ぐから。」
「そういう問題じゃ…ぶわっ!」

顔になにかが被さり少し息苦しくなった。
少し温かみがある布で、それが彼女が着けていたベルトと下着と分かった瞬間、ロイドは顔を真っ赤にした。
続いてズボンも脱がされる。

「馬鹿!やめろ!やめないと俺がカブトムシになるぞ!?」
「あんた混乱しすぎて言ってる事無茶苦茶よ…?ほら、触って?」
「ふ、ふわぁ…。」

彼女はロイドの手を自分の胸へと当てた。
巨乳とは言わないものの、程よい形をしていて見えていればまさに美乳だと評価していただろう。
彼女のすべすべした肌と胸を触るたびに彼女は暗闇の中、濡れた声を漏らした。

「どう?相手が見えないって言うのも興奮するでしょ?ま、私は見えてるんだけどね♪…私、今何も着けてないんだよ?さっきの姿から私の裸妄想したら…ほら、こんなに固くなった♪♪」

そういって彼女は俺の肉棒を掴んだ、俺は情けなくも「ひっ、」と悲鳴を上げてしまい身体を捩ってしまう。

「じゃあ…挿入♪」
「あ、あぁぁっ!」

そうして俺の肉棒は彼女の中へと入り淫らに腰を動かしていた。
その時だけは俺は泣かなかった。
いつもとは違う、安心できるほど心地よかった。

快楽に意識が飛びそうになった時、彼女の声が聞こえた気がした。

「ありがとう…ロイド。」




次の日の朝、俺は約束通り洞窟の前へと来た。
普段と違う事と言えば後ろにギャラリーがいることぐらいだ。
あの後、俺は盗人二人から女の子(?)を救ったとして街の皆から賞賛された。
それで今度は酒場の皆が俺の勇士を見にここまで来てくれたという訳だ。
(包帯男となった)マスターを初め、マスターの奥さん、常連客の皆といった面子が揃っている。
…ちなみに昨日、パンツ63号は犠牲になった。
今穿いているのが最後の希望、パンツ64号だ。
これが無くなると俺は今日からノーパンスタイリストになってしまう、ノーコメもありや。
だから泣いても笑ってもこれがラストチャンスである。
負ければ俺は笑い者にされ裏世界でひっそりと幕を閉じる羽目になってしまう。
それだけはなんとしても阻止しなければ!!

「で、ロイド?今回はどんな手で行くんだ?」
「ふふふ、よくぞ聞いてくれた!」

マスターが洞窟を見ながら聞いてきたので、俺は待ってましたと言わんばかりに袋からあるものを取り出し、皆に見えるように広げた。

「俺はこいつで決着をつける!」
「それって…網だよな?」

そう、俺が持ってきたのは漁業などで使う丈夫な網だ。
今朝、地元の漁師さんに事情を話し借りてきたのだ。

「お前この前、物は使わないって言ってなかったか?」
「それを言った奴の兄貴が言っていたのだ、『勝てばいいんだ、何を使おうが!』てな!」
「それ絶対悪役だろ…、で、それでどうするんだ?」
「知れたこと、これで奴を捕まえて文字通り一網打尽にするのだ!」
「それは分かるが…見えないのにどうやって捕まえるんだ?」
「ふっ、話はまだ終わってないよワトソン君。」
「お前段々おかしくなってきてないか?誰だよワトソンて…。」

マスターの突っ込みを華麗にスルーし、俺は洞窟の境界線へと立つ。

「奴の翼はパタパタと音を立てて飛ぶ、俺が奴をここまでおびき寄せて音が聞こえた瞬間網を投げれば必ず捕まるはずだ!」
「そんなんで本当に捕まるのか?」
「大丈夫だ、問題ない。」
「えらく爽やかだな…。」

そうして網を投げる体勢に入ろうとしたとき、俺は聞いたことのある音を耳にし、ぴたりと身体を止めた。

「この音は…。」
「なんだ?音がどうかしたか?」
「しっ、静かに。」

マスターは俺の言葉を聞き、口を閉じた。
雰囲気を感じ取ったのか、皆々も黙り状況を見守っている。
俺は静かに目を閉じた。

聞こえる、聞こえるぞ…奴の音が…どこからだ?

しんと静まり返る中、無限とも思える時が流れた。

「…。」
「…。」


パタパタッ

「…!そこだっ!!!」

俺は猛烈の勢いで網を投げた!
網は天高く舞い上がり、空中でその形を変え…。

「うわぁ!」

常連客に覆いかぶさった。

「てめぇロイド!何しやがるんだっ!」
「ば、馬鹿なっ!確かにそこから音が…。」
「さっき酒をこぼしちまったから服を乾かしてたんだよ!」
「なんだとっ、こんなときに紛らわしい事をするなっ!」
「洞窟を前にして後ろに投げる馬鹿がいるか?!さっさと取ってくれ。」
「くそぉ〜、出鼻を挫かれてしまった。」
「お前…ほんとに大丈夫か?」

何とか網の回収に成功し、また洞窟に向き合う。
この時点で誰もが俺の失敗を確信しているのは言うまでもない。
だが俺は諦めず、洞窟に向かって叫ぶ。

「おいっ、約束どおりに来たぞ!俺と勝負しろっ!」

そう言って俺は網を投げる体勢に入る。
失敗すると分かってても緊迫した状況に変わりはなく、皆黙って行く末を見守った。
そして俺は目を閉じた。

「…。」
「…。」


パタパタパタッ

「…!でやぁっ!」

暗闇の中へ網を勢い良く投げた!
網は四方に大きく広がり暗闇へと消えていった。
中は見えないためどうなったかは分からず、ただただ見守るしかない。
そして永遠とも思える時が流れた。




「…。」
「…。」
「何も、起きないな…。」

半ば諦めたようにマスターが言った。
それを聞いた皆は緊張の糸が切れ、がっくりとうなだれる。
当の本人はまだ洞窟を見たまま固まっていた。

「ロイド…そうがっかりするな、お前さんは良く頑張ったさ。またうちの店で…。」

とマスターがロイドに近寄ろうとした瞬間、彼は手で制した。

「…ロイド?」
「しっ、何か聞こえねぇか?」

ロイドに言われマスターは耳を澄ませた。
すると、洞窟の中から確かにパタパタと音がする。
それも途切れ途切れに、まるでもがいている様に。

「こ、こいつは…。」

マスターが言い切る前にロイドは暗闇へと飛び込んでいった。
皆が息を呑んで見守る中、ロイドは網を引きずるようにして出てくる。
その中には…。

「見ろ、あれっ!」
「ほ、ほんとに捕まえやがった!」
「間違いない…魔物だ!」

彼女、ワーバットが掛かっていた。




「で?この子、どうするんだ?」

ひと段落終わった後、残ったマスターが俺に聞いてきた。
俺はその問いかけに少し困ってしまう。
答えなんか決まってたのにいざするとなると緊張する。

「憲兵にでも突き出すか?」
「…いや。」
「そうか…ならどうする?」
「…俺に任せてくんねぇかな?」
「そう言うと思ったよ。」

マスターは全てを理解したかのように白い歯を覗かせてニカッ、と笑った。

「お前、少し変わったな?」
「何が…変わったんだ?」
「そうだな…少し大人になったんじゃないか?」
「なっ、俺は元から大人だ!」
「はっはっは、そうだったかな、じゃあ俺ももう帰るぜ。」
「なんだよ…ったく。」

俺はふてくされながらもマスターを見送ってやった。帰る途中、マスターは振り向きざまにこう言ってきた。

「街の皆には上手い事言っておいてやるから、がんばれよっ?」
「うるせぇっ!」

笑いながら、マスターは帰っていった。
ちくしょう、覚えてろよ。

俺は彼女の近くに座り込んだ。
相変わらず顔は伏せているので表情は分からなかったが、俺はずっと疑問に思っていた事をぶつけて見た。

「何でお前、わざと捕まったんだよ?」
「…。」

俺も最初は驚いたがよくよく考えてみればおかしい事だ、あんな簡単に捕まえられるんならもっと早くに出来ていたはず。
それに俺が呼んだ途端、こいつは真っ直ぐに飛んできた。
今までの事を考えればありえないことだ、それぐらい頭がいい。
だから俺は薄々感じてた、わざと捕まったんじゃないかって。

俺の問いにこいつは黙ったままだ、俺はそのまま話続ける。

「昨日の礼だとか、同情だったら余計なお世話だってんだ、俺は自分の実力でお前に勝ちたかったんだぞ?なんでこんな事を…。」
「…。」
「おい、何とか言−」
「…嬉しかったから。」
「…え?」

顔を伏せたまま俺にそう言った。
俺は訳も分からず聞き返すと、呟くようにして話し始めた。

「最初は私を退治しに来たんだろうと思って、嫌がらせとか犯したりして追い払おうとしてたんだけど…何度やっても向かってきて、いつの間にかこんなにも私を求めてくれているって思っちゃって…。」
「…。」
「それに助けてくれた事もあるけど…あの時、私に勝つ事が生きがいだって大声で叫んでくれたじゃない?あれ、すごく嬉しかったの。だから決心して最後にあんたに抱いてもらった後、捕まろうと思った…。」
「お前…。」
「可笑しいよね…、自分を殺そうとしてる奴に嬉しく思うなんて。…でももういいの、私はもう寂しくないから。…さぁ、貴方の気の済むようにして。」

そう言って後、覚悟を決め身を固めた、その身体は恐怖からか少し震えている。
聞いた後、俺は言ってやった。

「何一人で勘違いしてやがるんだ?」
「へ…?」

予想外な事を言われ、俺の顔を見た。
その時初めてこいつの目を見た気がした。
…すごく綺麗な目をしていやがる。

「なんで俺がお前を殺さなきゃならねえんだよ?だったら昨日助けたりなんかしないだろうが。」
「だ、だって…あんたいつも私を退治しに…。」
「あれは、お前に勝つために挑みに行ってただけだ、退治するなんか一言も言ってない!」
「…どうして、私にそんなに勝ちたいの?私そんなに強くないよ?!」
「強いとかじゃねぇんだ、俺はお前に、勝って…。」

くそ、もうどうにでもなれっ!

「お前の傍にいてやろうと思ったんだよっ!」
「…え?」

信じられないといった顔で俺を見つめてきた。
こうなったらもう止まらねぇ!当たって砕けろっ!

「だって、お前ら魔物は戦って勝った相手には何でも言う事聞くんだろ?!だから、ずっとお前の傍に無理やりでもいてやろうと思って…。」

言ってる事が無茶苦茶で何言ってるか分かんなくなってきた。
相手は…駄目だ、ポカンとしてやがる。

「でも…どうして?」
「だってお前、いつもいつも…寂しそうにしてたじゃねぇか!」
「!!」

それは俺がこいつに挑む前の話だ。
夜遅く、気晴らしに散歩してた時。
気味悪がって誰も近づかない洞窟の前に一人、誰かが座り込んでた。
最初俺は街の人かと思って話しかけようとしたが、容姿を見て魔物だと気づいた。
気づかれないようにと逃げようとしてそいつの顔が目に入った時、俺の足は止まった。
そいつは夜空の星を見ながら…泣いてたんだ、たった一人で。

「それだけの為に…?」
「あ、あぁ!悪いか?!好きな人にそこまでしたら悪いのかよっ!」
「え!?…好きって…。」
「あぁ…う。」

突然のカミングアウトに俺が赤面する。
くそ、ここでどもったら同情になっちまう、全部言っちまえ!

「そうだ、お前が…好きだっ!…ずっと好きだったんだ。」
「?!」

顔に手を当てて目を見開く彼女。
もう…自分をごまかさねぇ。

「俺は…馬鹿だからよ、告白の言葉とか…そんなの思いつかなくてよ、こうするしかなかったんだ、勝負に勝って思いを伝えりゃ、何とかなると思ったんだよ…。」
「ほ…ほんと?」
「こんな嘘なんかつくかよ?!…蹴られてでも、犯されてでも、諦めたくなかったんだ。あの寂しそうな顔を見ていたら…絶対に勝たなきゃ、て。そうしたら、好きになっちまったんだよ…。」
「わ…私…。」

徐々に彼女の目が潤っていく。

「だから、もう寂しくて泣くんじゃねぇぞ?勝負に勝ったんだから、これからはずっと一緒にいてやるんだからな!」

そういって俺は後ろを振り向く。
もう全部言った、何も出てこない。
これで無理なら意地でも住み込んでやる。
そして…。

「ふっ、ふえぇぇぇんっ!!」
「うおっ!」

彼女は大声で泣き出した!
な、なんで?!

「ば、馬鹿!泣くなって言ったろう?!」
「だって、だって…ひっく。」

泣きながらもぽつりポツリと言い始めた。

「だって…私、生まれたときから、いつも一人で…友達もいないし、魔物だから誰も寄り付かなくて…それでも貴方は毎日来てくれて、助けてくれて、こんな私を…好きって言ってくれて…。」
「あぁっわかったわかった、もう泣くなって…。」

俺は堪らず抱きしめ延々と泣く彼女を慰めた。
顔を埋めながら彼女はわんわんと泣き続けた。
今までの悲しさを吹き飛ばすように。




「でも、いいの?」
「あん?なにが?」

少し落ち着いたところで顔を上げ俺を見てきた。
目はまだ赤いがもう大丈夫だろ。

「私は魔物なんだよ?貴方は人間だし…。」
「だからどうした?俺はお前じゃなきゃ駄目だ、魔物であるお前じゃなきゃな。」
「でも、私は明るい所は…。」
「なら俺がここに住めばいいだろう?」
「でも…」
「でもでもうるせぇ!お前は俺に負けたんだからガタガタ言うなっ!俺が、そう決めたんだ…。」
「…うん♪」

彼女は嬉しそうに俺に顔を埋めてきた。
獣耳がコヨコヨと動いてくすぐったい。
普段は意地悪そうな口調だったのに今となっては驚くほど素直だ。
こいつこんなに可愛かったのか…。

「…ねぇ。」
「ん?」

不意に彼女が顔を上げ俺を見上げた。
その頬は少し赤みがかっていた。

「キス…して?」
「え”?」

い、いきなり何言ってんだこの子は?!
い、嫌じゃないけどまだ心の準備が…。

「…だめ?」

彼女は上目遣いしながら首を傾げて誘ってくる。
くそっ、そんな事されたら嫌って言えなくなるだろ!
ちくしょう!可愛いな、俺が骨抜きにされてやがる!!

「う、うん、いくぞ…。」
「…ん。」

俺は彼女と口づけをした。
互いに抱きしめあいぬくもりを感じる。

俺は幸せを感じながら思う。
生きてて良かった…。

その日、パンツ64号は戦死した。
ノーパンスタイリストの誕生である。





「それでお父さんはノーパンだったんだね…。」

私はお母さんからお父さんとの馴れ初めを聞いて真実を知った。
ずっと気に掛かっていた事がようやくわかった、危うくお父さんを変態にしてしまうところだった。
お母さんは「懐かしいわ」とか言いながら思い出にふけている。

「で、これがそのパンツ達…と?」
「そうよ♪」

私は一緒に天井にぶら下がって吊るされているパンツ達を見た。
一度数えたが話の通りちゃんと64枚ある。

「でもなんでパンツなの?しかも保存までして?」
「う〜ん、それが覚えてないのよね〜。あの時はお父さんが来てくれて嬉しかったから…。」
「なにそれ…。というか最近お母さんまでノーパンなんでしょ、なんで?」

最近知った事だがお父さんがノーパンで出かけ始めた頃、なぜかお母さんまでノーパンになってしまったのだ。
私と話してる今でもお母さんは“穿いてないのだ”。
しかもぶら下がって…。

「いやぁ、お父さんがいつもノーパンだからどんなのだろうって思って、私もやってみたらこれがすごく快感でね?お母さん癖になっちゃったの♪」
「ぶら下がってるから丸見えなんだけどね…。」
「暗いから大丈夫よ、あんたもやってみる?」
「遠慮しときます。」

私はお母さんの申し出を即答して断った。
「気持ちいいのに」とかいいながらうなだれる。
私はまだ変態になりたくないしね…。

「今日もお父さん遅いのかな?」
「そうねぇ…仕事忙しそうだし。それまでにご飯作っちゃおうか?」
「どうせまた闇鍋でしょ?この前はお父さんのパンツ入ってたからびっくりしたんだから。」
「そう?じゃあ今日はあんたのパンツを入れてみようかしら、お父さん喜ぶわよ?」
「ちょっ、それどういう意味?!あ、やめてっ!パンツ脱がさないでぇ!!」

洞窟の中はいつも賑やかで、彼女はもう寂しくありませんでした。


一方その頃…。

「はにゃして!乱暴しにゃいで!!」
「やりましたぜ兄貴!ついに捕まえた!」
「あぁ、俺達の苦労が報われたぜっ!」

いつぞやの盗人二人組みは街から少し離れた街道で今度はワーキャットを捕まえ、涙ながらにその感動を分かち合っていた。

「思い起こせばあのガキに邪魔されてからロクなことがなかったぜ…。」
「ある時はトカゲみたいな奴に決闘を挑まれ、またある時は少女と思って近づいたらこん棒でたこ殴りにされ、この前なんか2メートルは越える鬼に追い掛け回されて…。」
「何度も死に掛けたが、これでそんな過去とはおさらばだ!ちと安くはなるが、こいつも金にはなるからな…。」
「それにやっぱり魔物は美人だ…兄貴?」
「わかってりゃぁ、商品は安全かどうか“確認”しないとな…。」

そう言って二人はワーキャットへと近づいていく。

「にゃ?!やだっ!やめてっ!!」
「おら、大人しく…。」

そうして足を開かせようとした時、奇跡は起きた!

「ヒップバンアタァーック!!」

「そげっぷっ!」

またもや弟分は顔にケツが飛んできて首が不自然に曲がり吹っ飛んだ。
兄貴分もワーキャットも何がおきたか分からず目を丸くしている。
そして綺麗に着地し、彼は高らかに宣言する。

「ノーパンに命を掛ける男、ロイドーマ!」

彼は開き直っていた。

吹っ飛ばされた子分は首が後ろに90度曲がった状態で立ち上がりふらふらと兄貴分から遠ざかって行く。

「あ、兄貴!前に走ってるはずなのに遠ざかっちまう!というか天地が逆になってやがるっ!」
「馬鹿、お前の首が後ろにいってんだ!いい加減に気づけっ!」

そんな漫才を繰り広げながら彼へと振り向く。

「お前は?!あのときのガキ!」
「お前らも懲りねぇな?いっそのこと漫才でも始めたらどうだ?」
「その発想はなかった!兄貴、今からでも遅くねぇ!俺がボケで兄貴がツッコミで−」
「お前はいいから黙ってろっ!…あの時はよくも大ボラ吹きやがって…、たっぷりお返しをしてやるからな。」
「はっ、あの時と同じと思うなよ?いくぜぇ!」

そうして彼ロイドは今日も立ち向かう。

人は彼を『ノーパン紳士』と呼ぶ。

あるいは…『良き夫』だと。
11/08/13 16:46更新 / ひげ親父

■作者メッセージ
すこし長くなってしまいました…。
なんかいろいろ詰め込みすぎてやりすぎた感がすごいです。
(語呂悪いけど)マモシネの続編も書かないといけないのに先に読みきりが完成してしまうこの始末。
読者様、お許しください!
次もまた不定期になりそうです…。
気長に待っていただけると嬉しいです。

ここまで読んで頂いて、ありがとうございました!!

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