読切小説
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比翼の鳥
最初に彼の事を好きになったのはいつだっただろう。ぼんやりとした頭で考える。
そうだ、ボクがまだ幼くて世界に興味がなかった頃、そんなボクを見ていた彼が冒険に行こうと誘ってくれたのが始まりだったんだ。
彼がボクの世界を照らしてくれて色がついた世界はとても美しくて、目を輝かせて景色を見ていたボクを見る彼の笑顔がとても眩しくて。
ボクは一生彼の隣に居たいと願ったんだ。

成長する度に、ボクの知らなかった彼を知って、そのたびにまた好きになって、ボクの抱いたこの気持ちが恋だと知って。
世界が広がって、彼と一緒にいる景色を好きになっていって、大事な思い出が増えていって。
色んな人と出会って、別れもたくさん経験して、それでも誰一人にだって彼の隣というボクの特等席は譲らなかった。

ある日彼から大事な話がある呼び出されて、彼に「ありきたりだけど、一生そばにいてくれ」と言われて、その言葉を受け取ったボクは「ボクは何度も生を繰り返すんだよ、一生だけじゃなく永遠に付きまとうよ」と答えた。
彼は笑って「任せろ」と言って初めてボク達は恋人になれたんだよね。

恋人になったら何度も行った同じ所でも、まるで別の景色みたいに思えてとても嬉しかったんだ。
始めて肌を重ねた時、身も心も繋がれることがこんなにも心地よくて蕩けそうな快楽に包まれるものだと知って。
ボクが彼に甘えたり、彼がボクに甘えたり。彼がボクに好きと囁けば、ボクも好きだと囁き返して。抱きしめて、抱きしめ返して。
愛して、愛されて。そんな事を繰り返すたびにもっと彼を好きになっていって。

気が付けばボクは彼と息をするのが当たり前になって、彼も同じようにボクと肌が触れているのが当たり前になって。
お互いに好きって気持ちがあふれて、相手を求めるのが当たり前になって。
それでも好きって気持ちは尽きるどころか無限にあふれてくる。
自分の種族にこれほどまで感謝することはないだろう。だってこの気持ちは何度一生をかけたって伝えきれないのだから。

どんな景色も、こんなにも誰かを好きになれるってことも、彼にボクを見つけてもらったから出会えたものだと思うと、それだけで何もかもが愛おしく思える。
だから終わりじゃない、たとえ今までを忘れてしまっても新しく彼と思い出を作っていけるのだから。
「何度生まれ変わってもボクの居場所はキミの隣だから。お休み、また明日」
そう言ってボクは幼くなりつつある大好きな彼にキスをした。
22/10/30 02:33更新 / アンノウン

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