読切小説
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茹慾篭絡
皆さん、『カイマ』という街をご存知ですか?
大陸の北側に位置する、海より程近い、親魔物領の街です。

この街の自慢といえば、商売が非常に盛んなことです。
食料品は元より、衣類、武具、家具、魔法具、宝石、雑貨…。
最近では、エレキテル商品やペット用の珍獣も出回っています。

一昼にして巨万の富が動き、一夜にして財を築ける街『カイマ』。

この街には、夢見る多くの人々が足を運びます。
商売をしてお金を儲けようと考える人が大半ですが、
愛する者といつまでも安泰に暮らせることを願う家族、
果て無き冒険の拠点として身を置く旅人等もいます。
『カイマ』という街は、それら全ての望みを叶える街でもありました。

僕もこの街に住む人間の一人で、名をソラといいます。
姓はトォン。趣味はエンブレム収集、特技は縄跳びです。

僕はお父さんの仕事の都合で、一年前にこの『カイマ』へと引っ越してきました。
それまで僕達家族は、教団管轄の街に住んでいたのですが、税金が厳しく、
とても貧しい生活を送っていました。ご飯は毎日、野菜くずのスープです。

しかし、この街に引っ越してから、生活は激変しました。
まず、『カイマ』には税金がありません。徴税がないのです。
おまけに、引越しの際に、住居や職等の全てを街が補助してくれました。
それどころか、『人間の男』というだけで奨励金まで貰えてしまうのです。

まさに夢のようなお話でしょう。僕自身、今でも信じられません。
ですが、これは何も『カイマ』に限ったお話ではないというから驚きです。
親魔物領では、ほとんどの街がこの制度を採用しているらしいのです。
どういった仕組みかは分かりませんが、さすが魔物と言うべきでしょうか。

しかし、代わりに危険もいっぱいです。
いえ、命に関わることではないのですが…。

「ソラくぅ〜んっ♪」

不意に、考え事をしている僕の元へ。
背中からドーンッと、何かがぶつかってきました。

「ねーねー、この後ヒマ? 一緒に遊びにいこうよ〜♪」

危うく手から落としそうになった、商品の壷を抱えながら。
僕はほっと溜め息を一つ、元気な声の聞こえる背後に振り返りました。

そこにいたのは、満面の笑みを浮かべた妖狐の女の子でした。
短なふたつの尻尾が可愛らしい、よくお店に足を運んでくれる子です。
僕が商品を棚に並べていると、背中から突撃してくる危ない子でもあります。

壷を棚に置き、僕は苦笑と共に女の子の頭を撫でました。
彼女はそれがよほど嬉しいのか、耳をピコピコ動かして喜びます。

「んぅ〜…♥」

…危険というのは、ずばりこのことです。
いえ、壷を落としてしまう危険ではなく…。

この街には、人間の男性がごく僅かしかいないのです。
更に未婚の男性となれば、子供を含め、ほんの数十人しかいません。
つまりは、街に住む大多数の魔物娘にとって、僕は格好の獲物なのです。
比率で言えば、5000:1ほどでしょうか。凄まじい競争率です。

こうなるともう、僕を含めた未婚の男性陣はたまったものではありません。
昼夜を問わず、彼女達はアピールのために僕達の元へと訪ねてきます。
ベッドやお風呂での待ち伏せは当たり前。裸での訪問も日常茶飯事。
セクハラは当然のスキンシップで、もてなしの食事には媚薬がどっぷり。
一分一秒たりとも油断できません。気を抜けば、即貞操を奪われてしまいます。

「えへへ…。もっとなでなでして〜♪」

恐ろしいことに、一見無邪気に見える彼女もまた、ハンターの一人です。
若輩な僕ではありますが、彼女に至ってはまだ6歳です。人間ならば犯罪です。
こんなに幼くとも、隙あらば、その小さな手は僕の股間に忍び寄るのです。
本人に自覚はないと思いますが、魔物の本能がそうさせるのでしょう。
なんともスリリングに満ちた毎日です。いつまで理性が保つことでしょう…。

「…お客様」

ふと、甘える女の子に対し。
カウンター内にて腰掛けた女性が、強い口調で言葉を放ちました。

「店内では静かにして頂けませんか? 摘み出しますよ?」

あまりに鋭い言葉に、女の子の尻尾がブワリと膨れ上がります。
見れば、目尻には涙。よほど怖かったのか、今にも泣き出しそうです。

僕は慌てて女の子の背中を撫で、なだめようとしました。
お店の面子もある以上、子供を泣かせたとあっては大変です。

「………」

しかし、当の本人はまったく気にしていないようです。
愛用の片眼鏡を掛け、再び骨董品の鑑定を始めてしまいました。

彼女こそ、骨董店『たこつぼや』の店長、スキュラのキュラさんです。

類稀な鑑定眼と辛口な評価で有名な彼女は、呆れるほどに無愛想です。
話す言葉は最小限。誰かと世間話をしている姿など見たこともありません。
たまに話したと思えば、今し方のような、ナイフのように鋭い言葉がほとんどです。

その格好も、魔物にしては珍しく、肌をほとんど晒していません。
だぼったい上着に、地面に擦れるほどの長いスカート。完全防備です。
まだこの女の子の着ているチャイナ服の方が、露出的というものです。

つまり、店長は変わり者なのです。魔物的に見て。
それは僕という人間の男性を前に、襲おうとしないという点でも同じでした。
彼女は独身ですので、普通であれば、我先にと襲い掛かってくる筈なのです。

「………」

ですが、それは僕にとって嬉しいことでもありました。
店長があの性格だからこそ、僕はここで働くことが出来るのです。
他のお店を面接した際には、それはもう、こちらから引き下がるほどで…。

ともかく、彼女は無愛想ですが、僕にとっては心のオアシスです。
それに、決して悪い人ではないのです。むしろ、根は優しいと思います。
当店は主に、冒険者が遺跡から発掘してきた骨董品を買い取っているのですが、
店長は評価こそ辛口であっても、それらに支払う値段は相場以上のものです。
危険手当、必要経費、釣銭の小銭不足等々、それらしい理由を付けて…。

僕は、そんな店長のことが大好きです。
手本にするべき大人だと、尊敬の念を抱いています。

「ソラくん…」

不意に、僕の服の裾を弱々しく引っ張る、半べそをかいた女の子。
すっかり竦み上がっています。無理もないことではありますが…。

僕は彼女に目線を合わせ、もう一度、めいっぱい慰めました。
そして、こっそりポケットに忍ばせておいたキャンディをプレゼントしました。
それを見た瞬間、幼い妖狐は、たちまち眩しい笑顔を取り戻してくれました。
こうして見れば、彼女も無垢な子供です。僕も一緒になって、笑顔を浮かべました。

「またね、ソラくんっ!」

手を引き、女の子を出口まで送ってあげると。
彼女は大きく手を振って、駆け足で大通りへと飛び出しました。

腕をぶんぶん、尻尾をふりふり。
僕は彼女が人波の中へと消えるまで、ずっと見送りました。

「…ソラ」

そんな僕の背中に、再び店長の鋭い声が。

「子供は甘やかすと、ためにならないわよ」

…さすがです。一片たりとも容赦ありません。
僕は苦笑いを浮かべながら、お店の扉を閉めました。

さて、これでまた店内は、僕と店長だけです。
今日は肌寒いせいか、お客さんも少なく、良い掃除日和です。
今のうちに棚の掃除や在庫の整理を行おうと、僕は腕を捲りました。

「………」

掃除用具入れの棚から、ホウキと雑巾、ハタキを取り出し。
頭には手ぬぐい、口にはマスク。完璧なお掃除スタイルです。

さあ、どこから片付けてしまいましょうか。
やはり、ここは整理の行き届いていない倉庫から…。

「…ソラ」

と、みたび店長が僕を呼びます。

今度はどうしたというのでしょう。
僕のお掃除スタイルに、何か不備があったのでしょうか。

「そのまま客商売する気…?」

呆れた声と共に、人差し指で僕を指す店長。
しかし、その先端はやや下側を向いています。

その先を辿り、視線を下ろすと…。

「………」

………あ…。

「…裏に行って、鎮めてきなさい」

気付いた瞬間、僕は顔がカァッと熱くなるのを感じました。
すぐさま掃除用具を置き、前屈みになって、店の裏手に駆け込みます。

…そうです。僕は、勃起してしまっていたのです。
恐らく、先程の妖狐の女の子とのスキンシップが原因でしょう。
彼女も立派な魔物ですので、その身体からは常に淫気が放たれています。
それが知らず知らずの内に僕の性欲を刺激し、この様になってしまったのでしょう。

断っておきますが、僕だって思春期の男子なのです。
魅麗な女性達に迫られて、ドキドキしない筈がありません。
ただ、僕の理性が、節操のない恋愛を必死に拒んでいるだけであって。
もしそれがなければ、僕はすぐにでも彼女達に溺れてしまうことでしょう。

「………」

扉を閉め、綺麗に磨かれた便器を前に、僕は大きく深呼吸をしました。
裏手というのは、つまりこのトイレのことなのです。ここが僕の逃げ場所です。

当店の構造は非常にシンプルでして、販売スペースとトイレしかありません。
トイレの位置は、店長が鎮座するカウンターの裏側。背中合わせです。
店内での性行為を禁止するための配置らしいですが、若干使いにくいです。

「………」

…しかし、まさか店長に指摘されてしまうとは思いませんでした。
確かに、こうなってしまったことは、今まで一度や二度ではありません。
ですが、これまではすぐに自分で気が付いて、トイレに駆け込んでいました。
それが今回は、どういうワケか、店長が先に気付いてしまったのです

ああ、恥ずかしい。死んでしまいたいほどに恥ずかしい。
きっと店長は僕のことを、卑しい奴だと思ったことでしょう、
とても弁明できません。勃起してしまったのは事実なのですから。

「………」

薄い壁の向こうから、無言の圧力を感じながら。
僕はズボンを下ろし、浅ましい自身の欲を外気に晒しました。

こうなってしまったら、もう、自慰をする以外にないのです。
魔物の催淫作用は残留しやすく、自然に鎮めるには時間が掛かります。
その間、店番を無愛想な店長一人に任せておくワケにはいきません。
ですので、恥ずかしくとも、刺激して欲を吐き出させるしかないのです。

「……っ…」

僕は瞳を閉じ、両手をアソコに添えて、自慰を始めました。

熱く膨れ上がったそれは、小さな手の中でビクビクと脈打ちます。
未だに異性を知らない僕のモノ。未知の感触を思い浮かべ、指を絡めて。
右手で亀頭を揉み、左手で竿を扱いて、激しく全体を刺激します。

幸か不幸か、僕は早漏ですので、達するのに時間は掛かりません。
すぐにカウパーが先端から溢れ出し、いやらしく指に絡み付きます。
自然と漏れる熱い吐息。掠れた咽から僅かに響く、艶を含んだ喘ぎ声。
下腹部の奥がキュンと引き締まり、精液が今にも放たれそうになります。

「………」

瞼裏の暗闇に、僕は様々な女性との情事を思い浮かべました。
先程の妖狐の女の子が、小さなアソコで僕のモノを咥えている光景を皮切りに。
向かいの宝石店のミミックさんに、咽奥まで飲み込まれるフェラチオをされ。
実家の隣に住んでいるサキュバスさんに、その大きな胸で丹念にパイズリされ。
いつも僕にイタズラするブラックハーピーさんに、足で激しく扱かれて…。

妄想の世界の僕は、現実と違い、とても節操無しです。
ですが、その淫らな様に、どうしようもなく興奮してしまいます。
それも当然でしょう。拒んでいる一方で、望みの姿でもあるのですから。

「………」

めくるめく桃源郷。数多の女性と肌を重ね、愛を囁き。
昂ぶりは次第に思考を鈍らせ、視界を霞ませ、聴覚を奪い。

僕は自分の世界へと没頭し、ただただ、快楽を貪って…。

「…んっ……」

…その刹那、突然。

「ん…、ぅ…」

痺れた脳に、焦げ付くほどの衝撃が翔け巡りました。

「……ぁ…」

自らへの気付きに、どくりと心臓が跳ね上がります。
それはまさに、僕が達さんとする瞬間のことでした。

最後の時、僕の瞼裏にて抱かれていた女性…。

「…ソラ……、ん…っ」

それは…あられもない姿で絶頂する、店長の姿でした。
僕の精液を膣内で受け入れ、恍惚の表情を浮かべています。

あまりの驚きに、僕はよろよろと後ずさり、扉に背を付きました。

「っ!?」

僕は、店長のことを性的に見ていた…。

あまりにもショックな…自分自身でも知らないことでした。
抱いた女性の中で、現実にて僕に好意を示していない、唯一の人。
何故その人を、僕は抱き…そして、最後の時を共に迎えたのでしょう。

いえ、もしかすれば、今までも…?
思い出せません。しかし、そうであったような気がします。
これはどういうことでしょう。どうして、僕は店長のことを…。

「………」

手の中で跳ねるペニスの熱さに、僕はひとつの結論が思い浮かびました。

もしかして、僕は店長のことが………好き…?

「………」

確かに、尊敬はしています。見本にすべき大人です。
ですが、異性として好きかと問われれば…。

いえ、いえ。店長に女性の魅力がないワケではありません。
あのように服を着込んではいますが、スタイルは抜群です。
性格も、表向きこそ辛疎ではありますが、根は慈愛に満ちています。

そうですとも、非常に魅力的です。店長は魅力的。
もし店長が他の女性のように、僕に迫ってきてくれたら…。

僕は…。

「………」

…きっと、僕は………。

「………」

……………。

「………」

…分かりません。僕には、分かりません。
恋愛をしたことがない僕には、この気持ちが『恋』なのか…。

分からないのです…。

「………」

…ですが。でも。

今、僕の中でふつふつと湧き上がる想いがあります。
それはきっと、達す直前で止められた性欲にも押されて。
拒む理性が、じわり、じわりと、妄想の自分に飲み込まれていくのを感じます。

「………」

僕は…。

そう、僕は…。

「………」

店長と、エッチがしたい…。

「…っ!」

溶け堕ちた脳に、身体を突き動かされ。
僕はズボンを上げぬまま、トイレの扉を開けました。

瞬間、こちらに背を向けた店長の肩が、びくりと持ち上がりました。
音に驚いたのでしょうか。冷静な彼女ですが、珍しいこともあるものです。

「…お、遅いわよ。それくらい、手早く済ませなさい」

…ああ。

店長のうなじ、こうしてまじまじと見ると。
なんてそそるんでしょう。しゃぶりつきたいほどに綺麗。

「…?」

僕はズボンから足を引き抜きながら、ゆっくりと店長に近付きます。

もし、今ここでお客さんが入ってきたら、惨事も惨事、大惨事でしょう。
ですが、狂った僕にはそれが分かりません。目の前のことが最優先です。
知らぬうちに胸の内へ溜まっていた、彼女への想い。純情も、劣情も。
それを全てぶつけようと、僕はゾンビの如く、彼女の元へ歩み寄ります。

「ソラ…?」

異変を感じたのか、こちらへ振り返ろうとする彼女。

それよりも早く、僕は彼女の背へと身を預け、身体を密着させました。

「っ!!?!?」

体温を感じると共に、ロデオのように跳ねる身体。
まるで、店長の身体が内側から破裂でもしたかのよう。

「なっ、なっ、なっ、なぁっ…!?」

そして一変。
彼女はわなわなと震えながら、こちらに振り返ります。

恐らく、怒っているのでしょう。
いえ、恐らくではありません。確実に。

「何してるの、ソラ!? は、早く離れなさいッ!!」

陳列棚に並んだ壷が、ビリビリと震えるほどの怒声。
おっかないです。これほど店長が怒った姿を見るのは、僕も初めてです。

ですが、僕は離れません。頑なとして離れません。
自分の気持ちに正直に、彼女に対し、断りの意思を告げます。

「い、嫌だって…」

意外な回答だったのか、一瞬、怒気を緩める店長。

僕はその隙に、自分の身体を更に店長へと密着させました。
勃起したペニスを背中に押し付け、腰を動かして擦り付けます。
両手は胸に、がっしりと鷲掴み。さながら強姦の如しです。

「ふぁっ…♥ や…やめなさい、ソラ…。やめてっ…」

それに怯んだのか、店長の抵抗はたちまち弱いものになりました。
少々申し訳ない思いもありましたが、これは絶好のチャンスです。

すぐさま僕は、彼女の身体を持ち上げ、椅子から立たせました。
持ち上げるといっても、身長は彼女の方がずっと高いです。
僕は爪先をあげて、ペニスの位置を彼女のお尻に合わせ、再び擦り始めました。

「あっ…♥ やっ…、ダメ…♥ ソラの硬いの…が…っ♥」

店長の口から漏れる、普段は聞くことのない甘い声。
感じてくれているのでしょうか。僕の乱暴な愛撫に。
十中八九、彼女は僕へと好意を抱いていないでしょう。
そう考えると、この反応は、魔物故の敏感さから…でしょうか。

「ひぅっ♥ きゃ…、ぁっ♥ 胸…そんな強くっ…♥」

だぼったい服越しに感じる、彼女の柔らかな胸。
下着は着けていないらしく、感触がとてもリアルです。
こんなに柔らかで心地よいものを、女性は皆持っているなんて…。

僕はすっかり、店長の身体に夢中になっていました。
上着を脱ぎ捨て、肌という肌で、店長の温もりを愉しみます。
滾りに滾ったペニスは、もういつ達してもおかしくありません。
しかし僕は、それをぐっと堪え、なお彼女との触れ合いを求めました。

「はっ…ん…♥ ソラ…♥」

店長…。

「…あっ!?」

不意に、店長の驚いた叫び声と共に。

僕の身体は、強い力の何かに引っ張られました。

「キューちゃん、まいどおおきにーっ!」

聞き慣れた声と共に、僕の視界が暗転します。
しかし、完全な闇ではありません。うっすらと周りが見えます。

「ぽ、ポコさん…。いらっしゃい…」

僕の周囲には、うねうねと蠢く何かがありました。
目を凝らして見ると、それは複数あるようで、赤い色をしています。
吸盤のようなものも付いており、おまけにヌメヌメと粘っこくて…。

「掘り出しモンめっけてな、キューちゃんに分けたろー思ってん」

…いえ、まさか。しかし、間違いありません。

これは…スキュラの、店長の足です。
僕はどうやら、店長のスカートの中にいるようなのです。

「そ…そうですか、それはどうも…」

お客さんの来訪に、店長が咄嗟に僕を隠したのでしょうか。
ですが、その隠し場所がスカートの中というのは…。

「…ん? なんやキューちゃん、風邪? 顔真っ赤やで?」

…しかし、僕はここで、とんでもないものを見つけてしまいました。

8本の触手の根元…全てが繋がる場所である、その部分。
とろりと愛液を垂らし、濃ゆい雌の匂いを放つ、薄桃色の細い筋…。

店長の…おまんこ…。

「いえ、別に風邪は引いてな…ひゃううぅぅぅっ♥♥♥」

吹き飛ぶ理性。暴走する自我。破裂する肉欲。

僕は店長のお尻に掴みかかり、齧り付くように秘所を咥えました。

「おわっ!? き、キューちゃん、どうしたん!?」

瞬間、口の中いっぱいに広がる、僅かな塩味と苦味、そして芳醇な甘味。
夢中になって舌を這わせ、愛液を掬い、飲み込んで、その味を覚えようとします。

店長の秘所。店長の一番恥ずかしい部分。それを今、僕が自由にしている…。
それは僕の肉欲を満たし、征服欲を満たし、淡く濁った恋心を満たし。
陶酔する思考に、僕はただ飲み込まれ、飢えた犬のように舌を動かし続けました。

「んくぅっ…♥ い…いえ、あっ♥ アルラウネ花粉症に…ふぁっ、あんっ♥」

舐めても、飲んでも、乾くことのない彼女の蜜壷。
ますます濡れそぼり、蜂蜜のような愛液を滴らせて。
まるで雄の来訪を待ち望んでいるように。誘っているように。

まるで…、まるで………。

「なんや、そっちかー。この時期はねぇ、よく飛ぶみたいやから…」

まるで…僕を求めているかのように…。

「ほな、取引はまた後日のがよさそやな。キューちゃん、おだいじにな〜」

…っ!

「あ…、ありがとうございました………きゃっ!?」

お客さんが帰ったのを見計らい。
僕はスカートの中から飛び出して、再び彼女の背を取りました。

「そ、ソラッ! 貴方、スカートの中で何を…!」

怒り心頭に、こちらへと振り返る店長。

「あっ…!」

しかし、僕は彼女の手をとり、カウンターに押し倒しました。

そして、彼女の怒声よりも、ずっと大きな声で…。

「………ぇ…」

…彼女へと、告白しました…。

「………」

…後に思えば、滅茶苦茶な告白だったと感じています。
僕の口からは、『好き』という言葉しか出てきませんでした。
壊れた蓄音機のように、ただただ、その言葉を繰り返しました。

そして、自分自身に言い聞かせているようでもありました。
これが『好き』ということなんだと。この想いこそが『好き』だと。
尊敬する相手としてでなく、性の対象としてでなく、ただひとつの…。

恋人として、彼女を『好き』だと…。

「…ぁ…♥」

そんな僕の頬を、そっと、温かな何かが包みました。

手…。彼女の優しい手です。
彼女はその手を、導くように自らの元へと引き寄せて…。

「…ソラ」

唇が触れ合う、その刹那。

「私も…♥」

片欠けの想いは、ひとつに…。

「………んっ♥」

…キュラさん…。

「ん…♥ ちゅ…ぅ…♥」

…初めての口付けを、最愛の人と交わし。
僕は今、自分の想いに確信を持つことができました。

彼女を愛しているという、この想いに…。

「…はっ♥」

たくさんの想いを送り込み、離れる唇。
対して、縮まる距離と距離。身体と身体。心と心。

「…私になんて、興味ないのかと想っていたのに…♥」

瞳潤ませ、頬染めながら、キュラさんは僕に微笑みかけました。

その瞬間、僕は初めて彼女の想いを知りました。
彼女もずっと、僕のことを愛してくれていたんだと。
でも、きっと、僕が多くの女性に狙われていたから…。
だから自分は駄目だと思って、諦めようとしていたのです。

だけど…そうできなかった。諦め切れなかった。
彼女はそれでも、僕のことをずっと想っていたのです。
それはきっと、僕が彼女に恋する、ずっと前からなのでしょう。
あの気丈な彼女が、こうして涙を流すほどなのですから…。

「…よかった。ソラがこうして、私だけを見てくれて…」

不意に、僕の足に、腰に、ペニスに、彼女の足が絡み付きます。
意のままに動かされる下半身は、そのままある一点を目指し…。

「私だけを選んでくれて…」

先端が、触れて………。

「私だけを…愛してくれて…♥」

………ぁ…。

「くぅぅ…っ♥ ん…♥」

…淫靡な水音を響かせ、僕の欲望はいともたやすく飲み込まれました。
熱く、きつく、ひどくぬめりを帯びた彼女の膣内。迸る快楽。

その甘美な感触に、ぷつりと、僕の中の何かが…。

「…♥ 我慢、できなかったのね…♥」

…気付けば、僕は全身を震わせて…彼女の膣内へ射精していました。
ぎゅうっとお尻を押し、なお奥で注がせようとする彼女の触手。
根元まで突き入れられたペニスを、襞が愛おしく包み込み、締め上げてきます。

どくり、どくりと注がれる精液は、留まるところを知りません。
僕のどこにこれほどの精が詰まっていたのかと思うほど、底なしに溢れ出てきます。
そして、彼女もまた。放たれた精を、どこに溜め込んでいるのかと思うほどに。
一滴たりとも結合部からこぼさずに、その全てを子宮に受け止めているのです。

「…おいで、私のソラ…」

慈愛に満ちた囁きと共に、僕を胸の中へと抱き留める彼女。
未だに射精は止まりません。ですが、構わず腰が動き出します。
彼女の触手が、僕の腰を操って、セックスを強制してくるのです。

「貴方の子供を、産んであげる…」

8本の触手は、次第に僕の全身を覆い尽くします。
吸盤を胸に吸い付かせるもの、お尻の穴を弄くるもの、
睾丸を揉みしだくもの、口内を犯すもの、手を握るもの…。

その全てが、僕に快感を与えてくれます。愛してくれます。
彼女に包まれ、幸せに蕩けゆく僕。何も考えることができません。

幸せの中に、ふわふわと。
ふわふわと、漂って…。

「…ううん」

ああ、これが…。

「私に…産ませて…♥」

『愛し合う』っていうこと…。

……………

………



あれから、三ヵ月後。

「…ソラ」

今日も僕は、彼女の冷え切った言葉に背筋を震わせました。
恐る恐る振り返ると、彼女は愛用の片眼鏡を掛け直し、一言。

「お客様」

そう告げる彼女が、人差し指で差す先を見ると…。
お店の入り口に、いつもの幼狐の女の子が立っていました。

しかし、今回は彼女一人ではありません。
彼女の隣には、同じくらいの背丈の男の子がいました。

「ソラくん、遊びに来たよーっ!」

いつも通り、元気の良い突進をしてくる女の子。
ですが、今回は男の子もセットです。倍の威力です。
それを僕はつい、いつもの調子で彼女達を受け止めてしまい、
その威力に耐え切れず、思わず後ろに転がってしまいました。

ガシャンと、勢いよく棚にぶつかる身体。
僕の頭に、お給料一ヵ月分の壷がいくつも落ちてきます。

「…大丈夫?」

僕は苦笑いを浮かべながら、大丈夫と告げました。

正直に言えば、まったく大丈夫ではありません。
二個割れてしまった壷もそうですが、それ以上に…。

「…お客様」

その一言に、僕は急いで瓦礫の山から抜け出しました。
そして駆け足に、噴火直前の彼女の元まで走り寄ります。

「店内では静かにし…」

刹那。

「んむぅっ!?」

怒声を噴き出しそうになった口に、深いキス。

「んぐっ!? んっ…! ん…♥ んぅ…♥」

釣りあがっていた目が、次第にとろんと蕩けていく店長。

後ろでぽかんと口を開け、見惚れる二人に対し。
僕は後ろ手で指示し、彼女達に逃げるよう促しました。

「ふっ…ぅ…♥ …ぷはっ♥ はぁ…っ♥」

二人が逃げたことを確認し、僕はそっと唇を離します。
顔を真っ赤に、息を切らせる彼女。まるで茹でダコです。

「…うまいこと、誤魔化したつもり…?」

今だ頬を火照らせながらも、キッと僕を睨みつける彼女。

それに対し、僕は微笑みを浮かべながら、彼女を抱き締めます。

「っ…♥」

本気だよ、という言葉を添えて…。

「…いいわ。誤魔化されてあげる…」

みるみる静まっていく、彼女の怒気。
何度も繰り返しますが、根は優しいのが彼女です。

しかし、安心したのも束の間。
僕の背中に、ずるりと彼女の触手が這い登りました。
そして、腕も。僕を抱き締め返し、互いの身体を重ねます。

「その代わり…」

瞬間、僕は悟りました。
今日はもう、店を閉めなければならないな…と。

『愛し合う』って、どうやら結構大変なようです。

「満足させてくれないと、許さないから…♥」

ですが、それは幸せな悩みなのでしょう…。
12/11/30 19:30更新 / コジコジ

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