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前編

 僕が荷運びの仕事に就いて3カ月が経った。貰った給金は生活費以外全て孤児院に送っている。学のない自分の体をそのままお金に変える為には少ない賃金でも肉体労働に従事する他に手段はない。
 それで、僕は痛感していた。自分の事を丈夫だと思っていたけれど、実際は平均的だった。周りの大人は皆僕よりも体が大きくて、力持ちだった。今まで食べて来た物の違いだろうか。
 それでも、周りと同じ仕事量をこなせたのは、一重に姉さんを想っての事だった。
 姉さんと、孤児院の皆の為。僕は腰を折る事は出来ない。その一身で働き抜いたし、これからもそうしていくつもりだった。
 満足していた。
 ああ、其れは紛れもなく満足だった。
 自立出来た自分が誇らしいし、飛び立った巣の助けまでしている。自分はとことん偉い奴だと自己満足は完璧だった。
 姉さんが祝福してくれなかった事を除けば。   僕がお金を持って行くと、姉さんは決まって迷惑そうな顔をした。喜んでくれなかった。僕を邪険にしている風にも見えた。
 どうして。僕は姉さんの為に頑張ろうって決めたのに。姉さんは僕のお金を受け取るだけで、碌に目も合わせてくれない。辛そうに顔を俯ける。
 僕は、その時の姉さんの顔を2度見た。もうすぐ3度目を見る予定だ。思い出す度に、自分の奮起する拠所が失われていくのが判るのだ。それが僕の今を黒く染め上げている。


―――――


 その日が何か特別だった訳ではない。
 偶に荷運びの仕事がキャンセルになる事がある。何でも王都との交通路で山賊が現れる様になったとかで、物の流れが滞っているのだと普段から物腰柔らかい僕の雇い主が教えてくれた。
 宛がわれた寝床から起き上がる。今日は受け取った給料を姉さんに届ける予定だ。
 貨幣の入った布袋を懐に入れて、街から外れた小高い丘の道をとぼとぼと歩く。歩き慣れた道。砂利の混じった舗装。姉さんはこの道を、僕の手を引いてよく街まで買い物に出掛けた。
 そういえば、姉さんの歳は今幾つだろう。僕が物心付いた時から姉さんはもう今の姉さんだった気がする。といっても、あの時で多分今の僕と同じくらいだから、もう30歳位なのかな。
 僕の手を引いてくれた姉さんはうら若い女の子だったけれど、今は臈たけた美麗さが漂う様になっている。きっとこれから姉さんは季節を巡らせる度若返るかの様に綺麗になっていくのだろう。


 浅い樹林に差し掛かる。木と木の間から孤児院がすぐ其処に見える。此処は街から見て東側だが、北側になると王都への交通路が樹林の間に敷かれている。
 此処を抜ける為の、枯れ葉が無造作に落ちている茂みを切り開いて作った道。何時もの通り其処を通ろうとする。
 不意に、前の茂みが暴れて人が飛び出して来た。荒く息を吐くその人物は僕の肩にぶつかると、枯れ葉の上を転がった。
「きゃっ」
 余りの勢いに、僕も尻餅を着く。何事かと思いながら、突然飛び出して来た人物を見遣る。小汚いクロークに目深にフードを被って顔は判らなかったが、さっきの悲鳴からして女性である事を察した。
 僕は立ち上がり、衣服に付いた枯れ葉を払いながら掛け寄る。
「あの、大丈夫ですか?」
 彼女はハッと気付くと、透かさず僕の腰に縋り付いて来た。酷く取り乱した様子で、僕にこう言うのだ。
「助けて下さいっ。悪い人に追われてるんです!」
 ギョッとしてしまう。此処は孤児院の傍だ。そんな所で物騒な事が起きるなんて信じられない。けれど実際こうして起きている様子なのだから、慌てたものだった。
「え、と。事情は判らないけど、取り敢えず彼処まで行きましょう。匿って貰える筈ですから」
 そうして指差した先には、姉さんの居る孤児院がある。
 すると、彼女は首を振った。
「彼処はダメです。迷惑が掛ってしまいます……」
 確かに、そうか。姉さんに厄介事を持ち込む訳にはいかない。只でさえ、仕送りの時に見せる態度への真意を問い質していないのに、迷惑を掛ける度胸は今の自分にはない。姉さんにこれ以上軽蔑されたくはないのだ。
「此処に居ると貴方も危ないです。だから、彼処の茂みに少しの間だけ隠れませんか? 悪い人が来たら、貴方だけは逃がしますので……」
 自分も危ないと聞いて、彼女に引っ張られるまま茂みの奥へ。少し開けた場所に座り込み、息を殺す。
 顔を上げて、周囲を見渡してみる。静寂が漂う。鳥の囀りが呑気に聞こえる。人の気配はない様に思えた。
「ねぇ、悪い人って具体的にどんな奴なの? 追剥?」
 そう尋ねても、彼女は何も答えない。
 結局待ち構えていても、何者かが此処に来る気色はなかった。
「誰も来ないよ。別の所に行ったんじゃないかな」
 人が来ないと判り、冷静になって考えると、何より妖しいのはこの女性だ。そもそも、この茂みに隠れるのは彼女だけで十分で、無関係な僕まで襲われるのはやっぱり考え辛い。彼女が何らかの目的で嘘を吐いていたとしたら、身が危ないのは僕の方だ。
 何にせよ、早く彼女の傍から離れないと。   そう考えて立ち上がる。


 その途端、強く引き倒された。
 柔らかい地面に背中を打ち付ける。何か水ぼったい感触が伸し掛かって来る。何事かと目を凝らすと、女が僕の身体の上に跨って口の端をいやらしく持ち上げていた。
「何を」
 声を絞り出す前に、フードが取り攫われる。その下に隠されていたのは、人にしてはピンク掛った肌色。頭には丸ぼったく折り畳まれた耳。肌蹴たクロークから覗くのは、豊満な乳房と肉々しい体に食い込む粗暴な装具。
 魔物の知識は孤児院で勉強した。豚が人に近い姿をしたオークという種類が其れかと思い到る。
「此処は危ないからじっとしてなくちゃ。例えば、こぉんな悪い魔物がうろついてるからねぇ♥」
 唾液を垂らしてじゅるじゅると舌舐め擦りをするオーク。自分がこれからどういう目に遭うのか  碌な目ではないだろうが  判らないまま、逃げようと暴れる。しかし、重量感のあるオークの体付きは僕の細い体では押し退けられない。一緒に働いている大人達と同じ体格であればと、これ程悔んだ事はない。
 オークは抵抗する僕の上に乗り直し、がっちり腰で固定する。この時点で既にどう体を捻じっても一寸も動けなくなってしまっていた。
「ああ、久々の獲物……しかも大好物の童貞っぽい男の子♥ こんな所まで一人で何しに来たのかなぁ? ついさっきまでは自分が襲われちゃうなんて思わなかったのにねぇ♥ ぷひ♥」
「止めろ……っ、離せっ」
「……そんな口叩く立場? 君、今アタシに押し倒されてるんだよ。アタシ一匹を押し退ける事すら出来やしない、弱っちい人間の癖に命令だなんて、生意気♥」
 オークは僕の頬を撫で、唇を親指で撫ぜる。舌を突き出して荒い息を吐いた時、何やら僕の腹に湿った感触が染み込んで来るのが判ったが、僕は其れがお漏らしか何かだと思って不潔感を覚えた。
 続いてオークは両手で自分の胸を揉みしだき始めた。荒く形を歪める肉の塊から、汗が雫となって胸の谷間を滑り落ちていく。オークは頻りに腰を僕に擦り付けて、まるっきり発情した獣の様だった。
 ……発情した獣?
 僕が抱いた印象を思い返すと、オークは紅潮した顔から息を大きく吐いた。
「さぁて、大人しくしてたら痛くはしないからね♥ 寧ろ、天国に連れて行ってあげちゃうから……♥」
 絡み付かせる様に体を倒してくるオーク。
「や、止めろ! ん、んぶっ」
 僕を弄ぶ気なのだという事がはっきりして声を上げると、透かさず唇を重ねて来た。
 初めての異性とのキス。その相手が、魔物だったなんて。僕は其れが悔しくて、けれど同時に思い浮かんだあの人の顔を振り解く。
「静かにしてたらすぐに終わるから♥ ね? 良い子にしておいた方が身の為だよ……♥」
 僕は考えた。此処で助けを呼んで、先ず真っ先に気付くのは誰だ? 近くの孤児院に居るであろう姉さんだ。
 今の僕に、姉さんに助けを求める勇気は持てない。例え、豚の魔物の欲望に曝されるとしても、こんな僕を姉さんに見せる訳にはいかなかったのだ。
「ふぅ♥ ふぅ♥ んふっ♥ 良い匂い♥ 若くて、汗ばんでて、すっぱい……ちゅぅ、んちゅ。ぺろぺろ♥」
 僕の首筋をぶひぶひと臭い、唇を弾かせ、舌を這わせるオーク。耳元で荒い息が聞こえる。泥臭さが鼻を突く。僕は歯を食い縛り、事が終わるのを待った。
「……声出しちゃダメだよ? 妙な真似したら乱暴にしちゃうから……♥」
 脅しめいた台詞をいいながら、オークは体に纏うベルトの類を外す。胸を抑えていた其れが取り払われ、たぷんと音を立てて溢れ出す。先端の乳首は熟れたサクランボの様に赤く色付いていて、其れを指先で弾きながら、オークは僕の股間に手を伸ばして来た。
「メインディッシュはどうなってるのかなぁ?♥ ぷひ♥」
「あぁ……、止めろぉ……っ」
 ズボンが下ろされ、逸物に指が絡み付く。筒状に形取った指の間に通し、ゆっくりと上下する。
「わぁ♥ ちゃんと剥けてるんだねぇ。偉い偉い。ちゃんとオナニーしてるんだ? 一日にどれくらいするのかな? 9回? それとも10回?」
 オークが逸物を見下げて言った。僕は何も答えてやらなかった。オークの思う壺なのかもしれないが、其れでも口にはしたくなかった。
 オークはぷひぷひと笑いながら、身体の向きを変えた。
 突然口が塞がれたと思った直後から、鼻を突く刺激臭。オークの女性器や尻穴から臭う独特の酸っぱい臭いが直接押し付けられる。
「……♥ いいよ、その態度……アタシの身体でたっぷり堕とし込んで、無視なんて出来なくしてあげる……♥ アタシの声を聞く度にちんちんおっ勃てて返事する様に躾けてあげるから♥ 生意気盛りのがきんちょがアタシに忠実な性奴隷になっていく姿を想像すると、おまんこからやらしいお汁が止まんなくなっちゃうな……♥」
 更にその直後、逸物の先が柔らかい物に包み込まれていく感触を覚える。ぬめぬめとした空間の中で、逸物の先にざらっとした物が触れた。
「ちゅぱ♥ ぷひひ……もうギンギンにしちゃってる……これって、合意って事だよね? レイプしようと思ったんだけど、これじゃあ和姦になっちゃうね♥ お互いの合意の上なら、もう、仕方ないよね?♥」
 オークは上体を持ち上げる。僕の逸物を激しく扱き立てて、じっとり湿った大陰唇を顔にぐりぐりと擦り付けて来る。
「ほら、舐めなさい。君の、新しい、ご主人様へのご挨拶だよ? ぼさっとしないで欲しいな?」
 必死に口を閉じ、呼吸を止める。こんな近くでオークの股の臭いを嗅いでいると、頭がぼんやりと痺れて来る。余りの臭いに、きっと気絶し掛けているのだ。
「……耳が聞こえないのかなぁ……? そ・れ・じゃ・あ……♥」
 オークが腰を持ち上げる。空気を得ようと口を開いた瞬間、ビラビラと露出した襞から雫が垂れ落ちた。思わず飲み込んでしまい、吐き気が込み上げる。
「彼処、襲っちゃおうかな……♥ 仲間を呼んで、君の代わりに彼処に居る人達皆玩具にしちゃおうっと」
 僕の逸物を捻じって向かせた方向には、孤児院があった。
「……っ、姉さんは関係な   うぷっ!?」
 気持ちが高ぶり喚くのを、また先程と同じ様に尻で口を塞がれる。
「なんだ♥ 聞こえてるじゃない……ぷひひ……♥ それよりも……」
 しまった、と思ったがもう遅い。
「姉さん? お姉さんがいるの? さぞかし大事なお姉さんなんだろうねぇ、ぷひひ……♥ さぁ、お姉さんがアタシ達の玩具にされたくなかったら、新しい君のご主人様に挨拶しなくちゃ。さぁ♥」
 ぐりぐりとアソコを押し付けられ、口でくちくちと水を孕んだ音がぶつかる。
「ほら? どうしたのかな。お姉さんがどうなってもいいの? 大事なお姉さんなんだよね? このままじゃ君の大事なお姉さんの大事な部分が大変な事されちゃうよ? いいのかなぁ……?♥ 一杯犯しちゃうよ……? ……君の目の前で、たぁっぷりと♥♥」
 姉さんの事を想えば、僕に判断する余地なんてなかった。
 強引に押し付けられるオークのアソコに舌先を付けた。口の中に蒸れた空気が逆流する。恐る恐る湿った表面をなぞる。苦みが舌の上をなぞり垂れて来る。
「ぷひひ……♥ 強情な子を無理矢理言う事利かせるのってやっぱり気分が良いなぁ。ほら、ちゃんとご主人様のをキレイキレイしなさい。きちんと、心を込めて……ねぇ!♥」
 声を張り上げ、一層股を強く押し付ける。
 歯向かえば姉さんの身が危ない。僕は必死に舌を躍らせた。矢鱈にジューシーな舌触りなのを意識しない様にして、何処をどうすればこの仕打ちから逃れられるのか、最良の選択を見出せないまま、一心不乱にオークの下半身に奉仕した。
「あ……♥ んふ、立場が判って来たみたいだね……その調子で、ちゃんと膣内(なか)まで綺麗にしてくれる?」
 僕は舌先からオークのアソコまで引く糸を見て、何とも言えない気分になった。まるで崖から飛び降りる様な覚悟を決め、舌を窄め、肉の割れ目に潜り込んだ。
「ぷひぃ♥ ほら、ちゃんとキレイにしなさい。……しっかり……奥までね」
 それからはもう記憶も曖昧だったが、必死に舌を突き出して顎が痛かった。オークの中は生温かく、酷い臭いを放ち、入り込んだ舌をぎゅうぎゅうと締め付けて来た。次第に流れて来る汁の量が増えて来て、何時しか僕はその止め処ない汁に溺れそうになっていた。
「ぷふぅ。それじゃあ……次、いこっか?」
 尻が持ち上げられ、舌が解放された時、口周りには粘液が澱んでゼリーの様に盛り上がっていた。体の向きを変え、僕の顔の両脇に腕が突き立てられる。弾ける様に躍動した乳房が腕に挟まれ、目の前で形を歪めていた。
 オークは僕を見降ろして、じゅるるると舌舐めずりする。ぼたぼたと、汗と唾液が顔に降り注いで来る。品性の欠片も見受けられない振る舞いだった。重厚感夥しい圧迫感で心を張り付けにされた気がした。
「……ぷひひ♥ 怯えちゃって……可愛いなぁ……♥」
 唐突に、唇にむしゃぶりつかれる。強引に舌を捻じ込まれ、口の周りに吸い付かれ、抵抗も許されないまま染み出す唾液を、下品な音を立てて飲み干される。代わりに、人間の物とは思えない粘っこいオークの唾を流し込まれる。これが、喉に絡み付いて仕方がなかった。
 オークはうっとりとした表情で、僕の鼻先を舐め、眉間に軽くキスをした。首筋の臭いをふごふごと嗅いで、甘噛みする。僕の猛り喚く逸物を乱暴に掴んで、先端をべちょべちょに濡れた股間に擦り付ける。
「……入れるよ? 入れちゃうよ? 君の童貞、今から奪っちゃうよ? ……ぷひひ♥ 嬉しい? 嬉しいでしょ? だったらご主人様にお礼を言わなくちゃ……♥」
 この時、既に僕自身の息遣いには異常が見られていた。頭の中はどうにでもなれという意識が殆んどを占めていた。
 今だけ認めてしまえばいい。このオークの望むままにさせておけばいい。其れで僕自身は解放される。現時点で最良の選択は何か判らないが、抵抗する事は無駄だとは充分思い知らされていたから、藁にも縋る想いでそう考えるしかなかったのだと、後から思う。
「ほら。「僕の童貞を奪って下さるなんて光栄ですご主人様」って言って御覧? あ、「大好きですご主人様」もいいなぁ……♥ 「僕を一生貴方の搾精奴隷にして下さい」っていうのも興奮しちゃうし……迷っちゃうな♥ さ、どれでも好きなの選んでいいよ?」
 オークが期待する眼差しで囁き掛けて来る。
「……僕を……」
「僕を?」
「……貴方の、奴隷に……」
「何、奴隷かなぁ?♥」
「……搾精、奴隷に……」
    ゾクゾクゾクッ♥
 肉が震え上がる。途端、上体を持ち上げたかと思うと、そのままずどんと僕の腰に尻を打ち付けた。瞬間逸物が生熱く蠢く不思議な空間に覆われたのが判った。
 じわり、じわりと熱を帯びていく。まるで周りの熱が染み込んで行く様だった。そしてある一定の熱さを逸物が感じ取った瞬間、止め処ないもどかしさが全体に広がっていく。
 イってしまう   そう自覚した瞬間、必死で堪えた。こんな無理矢理爆ぜさせられる事だけは許せなかった。其れは、此処に来て唯一理性を保つ為のボーダーラインだった。
 一気に奥まで逸物を飲み込んだオークは、其処からずん、ずん、と重量感に任せて腰を振り始める。結合部からは貪欲に肉棒へ吸い付く秘裂が無理矢理引き剥がされる音が響く。
「ぷひぃっ♥ 気持ちいいよ……っ♥ 和姦って素敵だよね♥ お互いの合意の上のセックスするんだもんねぇ♥ ついさっき会ったばかりなのにね♥ ご主人様と奴隷の出会いを祝福するラブラブセックス、嬉しいよねぇ♥♥」
 オークは僕の手を強引に握り、自分の胸に埋めた。喋る度に吐き出される唾が僕の顔を汚す。
 この一方的な   およそ和姦ともいえない強引な繋がりは、現時点での僕を犯す物ではなく、その未来までにも汚汁を掛ける事なのだと気付いた時には、もうすでに遅かった。オークにとってこれは和姦で、愛のあるセックスだと主張した時、僕は童貞を奪われた以上に大切な物を捧げてしまった気分がした。
「ぷふぅ♥ んっ、あれ……? ちょっと、萎れて来たんだけど?」
 オークが不満げに告げる。僕は絶望感を引き換えに冷静になり、この状況が常軌を逸している事を再認識した。
「どけ……っ、僕は、お前なんかに屈したりは……っ!」
 すると、オークは「ぷひっ」と引き攣った笑みを見せると、僕の頭を地面に抑え付けた。
「ふぅん、まだ躾が足りなかったかぁ……♥ 其れは其れで楽しみが増えたかな♥」
「離せ! 大声で叫べば、誰かが番兵を呼んで、お前なんかすぐに……   ッ!」
 横を向いた顔。視線が釘付けになる。茂みの隙間から、遥か向こうから見慣れた人物が丘を下って此方に来る様子が見えたのだ。
「どうしたの? ……あぁ♥」
 オークが鋭敏に気取る。向こうに見える女性が、僕の大事な人だという事に気が付いたのが声の弾み具合で判った。
「ほら、人が来るよ? やったねぇ? 今言ってた通り大声だしたら助けが呼べるねぇ? ぷひひ♪」
 楽しげに笑いながら、暴力的に腰を振り続けるオーク。見開いた目で僕を見詰め回す。興味深げに動く瞳は、何もかも、見透かしているのだ。
 見ていると、姉さんは街に向かう道から逸れて、茂みの中に入って行った。僅かに開けた場所に来ると、すとんと座り込んだ。その場所というのも、この茂みの隙間から見る事が出来る。オークの姿は木に隠れて、姉さんからは見えていない様だ。
「あれあれ? アソコの中、大きくなってるよぉ? どうしてかなぁ? ぷひひ……若しかして、大事な人に見られると思ったら興奮しちゃった?」
「ッ、ふざけ……!」
 怒鳴ろうとした口を咄嗟に塞ぐ。姉さんが不自然な程驚いて、周囲を見回す。
「誰か居るの?」
 オークは自分の口を自分で塞ぎ息を殺しながらも腰は小刻みに振り続けていた。ぱちゅぱちゅと小さな水音が弾け続ける音は、どうやら木々を通る風の音で向こうまでは届いていない様子。
 姉さんは、手に持った何か布の様なものに顔を埋めて深呼吸する。芳し気にほうっと息を吐いたかと思うと、いそいそとスカートを手繰り始めた。白くて艶やかな足が露わになる。姉さんの身体は傷一つなかった。一体何をしているのだろうと思うと、その足の付け根に思い掛けないものを目にした。
    黒いショーツ。生地は必要最低限、といった風にしか使用されておらず、装飾細やかで煽情的なフォルムを湛えている。
 そんな物をあの姉さんが履いているだなんて。意外であったけれど、其れより何よりこんな所で一体何を始めようとしているのか、てんで予想が付かなかった。
「清純そうなお姉さんなのに、あんなエロい下着着けて……♥ はぁ、はぁ♥ 何のつもりなんだろうねぇ?」
 オークは含みのある笑みを浮かべ、僕を挑発した。けれど、僕はオークに構わず、姉さんの行動を具に観察する事に精神を尖らせていた。
 そんな僕の目に飛び込んで来た現実を疑った。姉さんは布に鼻を押し付けたまま息を弾ませると、指を下腹部へと伸ばす。そして、今オークが僕を咥えているのと同じ部分に恐る恐る沿わせたのだ。
「嘘だ……」
 小さく呟く。姉さんの甘く媚びる様な声が、指の動きに合わせ、遠くから響いている。
「何かおかしい? 女だって男と同じ。君は勝手な理想を持ってるみたいだけど、結局女だって皆性欲を持て余している豚ちゃんなんだよ? 野外オナニーの一つくらい♥ ……あっ♥」
 オークは自分の指を甘噛みしながら、所々で声を漏らす。
 確かにオークの言う通りかもしれない。女だって性欲はあるんだろう。僕が勝手な理想を抱いていたのも事実だろう。けれど、姉さんに限って。そんな風に思う時点で、僕は姉さんに対して勝手な理想を押し付けている事に他ならなかった。
 けれど   そんな事はもうどうでも良かった。
 僕は姉さんの自慰を覗き見ながら、罪悪感を募らせていく。けれど、まるで秤に乗せたかの様に、対極で何かが鎌首を擡げるのを感じた。
 僕は、或いは望んでいた節があった。憧れの姉さんの身体を妄想して自分を慰める事は一回や二回ではなかった。孤児院を出ていく寸前まで、姉さんに執着した自分が居た事は否めない。
 悔しい。今、姉さんの頭の中で、姉さんを抱いているのは、きっと見ず知らずの男なのだ。姉さんをああ駆り立てる男の存在が憎くて   羨ましかった。
「そんなに食い入る様に見詰められたらバレちゃうよ♥ 何なら、今から手伝いに行ってあげちゃう?」
「止めろ……」
 僕は静かに目を閉じた。無防備な姉さん。いやらしい姉さん。そんな姉さんの一人の時間を、僕は守らなければいけない。
「まだそんな口利いてるの。すっかり大きくしちゃってる癖に♥ 大事な人のオナニー盗み見るのがそんなに興奮する? しかも、別の女におちんぽ突っ込んだままで♥ ……いけない子♥ ちゃんとマトモな子に躾てあげないと♥」
 オークが大振りに腰を前後し始める。怒張した逸物が大まかに挿抜され、秘裂の中に強く擦り付けられる。中にある襞が舐める様に動き回り、逸物をどうしようもなく甘い刺激に沈めていく。
「あ……くぁ……♥」
 不意に声を漏らす。姉さんを見る。気付かれた様子はなく、ショーツの中に指を差し入れて一心不乱に自分を慰めているのが見えた。
 オークはだらしない笑みを浮かべて、勝ち誇ったかの様に囁き掛けて来る。
「ぷひひ……声、漏れちゃったね♥ もっと大きな声で聞かせなさい♥ ご主人様の命令だよ♥」
 誰が言う通りにするものか、と舌を噛んで漏れる声を抑える。けれどオークの先程とは打って変った動きは的確に逸物を絡め取り刺激を与え続ける。
 ゆさゆさ、ぶちゅぶちゅ。下品な音が、自棄に音が大きく聞こえてくる。
「ぷひひぃ♥ 涙浮かべて必死に声が出るの我慢しちゃって……♥ そんな表情見せられたら堪らない……っ♥ 君みたいな弱虫の子供孕みたくて子宮がきゅんきゅん鳴いちゃう……♥」
 姉さん、姉さん……っ。
 僕は、挫けそうな心を姉さんに向ける。姉さんは今迄にない開放的な笑みを浮かべ、只一点、自分のショーツに広がる染みを見詰めていた。
「んんぅ   っ♥」
 くぐもった声を上げ、姉さんの身体が数度痙攣した。心地よい疲労感にでも身を任せるかの様に、姉さんは身を投げ出す。
    達したのだ。目の前で、姉さんが。何時も肩まで下げた巻髪を揺らして、朗らかに微笑んでくれた姉さんが、誰にも見せる事はないであろう、飛び切りいやらしい顔をして達した。
 ……いや、きっと姉さんの頭の中では、知らない男の前でその顔を曝しているに違いない。
 それでも、優越感があった。今、この瞬間、姉さんのあの表情は僕だけのものだ。それを目に焼き付けるだけでも、僕は妄想の中で姉さんの身体を好き放題出来た。
 そう、僕の前であの顔を曝す姉さんのみっともない姿を、鮮烈にイメージしてみせる   
 僕の中で、何かが弾けた気がした。
 爆ぜる。どくん、どくんと、強く拍子打ちながら。逸物を包み込む空間は、放たれた精液に歓喜する様に蠕動し、其れも待ち侘びたかの様に、搾り取ろうと蠢き回る。
「あ……あああぁ……っ♥」
 豚が鼻息を荒くして、涙目になりながら腰を震わせる。
「これ、本気の奴だぁ……♥ 本気で……孕ませようと、してきてる……♥ ぷひぁ……♥ びくんびくんって、膣内で……♥ 本気子種汁出てる……♥ あへぇ……♥ まだ、出てりゅ……♥」
 自身の内で尤も長い時間、射精を続けた。最後の方は、オークの腹を掴んで引き寄せ、逸物を奥に突き入れて注ぎ込んだ。
 終わってからの疲労感は半端ではなかった。自分で慰めた時とはまた違う惨めさが胸の内に広がった。みすみす射精してしまい、男としての自尊心すら、打ち砕かれてしまった。


 僕はボロ雑巾になるまで凌辱され尽した。
 あの後オークは汗塗れの身体で猶も僕の身体にむしゃぶりつき、猶も汚らしい欲望をぶつけ続けた。魔物の性欲は人間の其れとは次元が違うと知った。
 姉さんの姿は何時の間にか消えていた。
 僕等の存在に気付いて逃げ出したのかは知らないけれど、其れはもうどうでも良い。
 孤児院に届ける筈だった僕の稼ぎも、なくなっていた。
 僕にはこれから先好きな人が出来たとしても、このオークに言われるまま奉仕し、その中で絶頂を迎えた事実は消えない。こうして言葉で甚振られ、性器で嬲られた事実は消えない。其れが、これからずっと。僕の人生全てにとっての負い目になるだろう。
 僕は   穢されてしまったのだ   身も、心も。
 何もかも。




―――――


 ……それでも僕は我武者羅に働き、昨日の一件を忘れようとした。
 水浴びしても、まだオークの臭いが体に染み付いている気がして気分が悪かった。汗が運び荷に張り付く度、あの粘っこい汗を思い出させる。何をしている時でさえ、むちっとした肉感を肌が憶えていた。
 そんな僕は、周りから見れば奇妙だったかも知れない。ずっと、自分の身体を擦っているのだ。肌がぼろぼろと剥がれるのも気にしなかった。心配して声を掛けてくれる同輩に簡単な言い訳を述べて、僕は静かに距離を取った。臭いを気取られたくなかった。


 僕は、暫く誰にも遭いたくなかった。そっとしておいて欲しかった。取り返しのつかない位に汚されてしまった実感は、僕の魂を暗い牢獄へ閉じ込めた。静かに生きていく道を迷いなく選び取りたかった。
 その、僕の帰り道。
 暗い、夜道だった。
 誰とも口を利きたくないからと休みなく働いた所為で、僕はへとへとだった。
 明日は休日を貰った。忙しい時期ではあったが、何とか雇い主にお願いして貰った休みだ。僕はこの貴重な一日を以て、心の傷を癒さなければいけなかった。
 僕は人も居ない街道を歩く。がらんとして人一人居ない此処は、何となく今の僕の心境に合っていた。侘しい気分が僕を多少楽にしてくれる様だった。
 そんな風に思っていた時、僕は差し掛かった路地から荒い呼吸が響いている事に気付いた。
 首を向ける   瞬間、暗闇から腕が伸びてくる。
 口を塞がれ、腕を掴まれ。強い力で体勢を崩され、倒れ込む様に路地の奥へと引き摺り込まれた。
 砂埃が目に入る。視界が鮮明になった時、僕は目を疑った。
   ぷひひ……♥ きちゃった♥」
「え……んぶっ」
 オークが居た。昨日と同じ様に、僕の事をギラギラした瞳で見詰めている。何かを口にしようと思う前に、壁に押し付けられ、唇を塞がれた。
「ぺちゃ、ぺちゃ……♥ ん、じゅぷ♥ 昨日は良かったよ……♥ だから、また会いたくなっちゃった。アタシの愛しいおちんぽ奴隷君♥」
「い、いやだ……」
 昨日の記憶が蘇る。僕はまた、このオークに犯されるんだ。ぐちゃぐちゃになるまで。そして、みすぼらしくヤリ捨てられる。
 オークは鼻を鳴らして、僕の股間を鷲掴みにした。顎を持ち上げ、手の中で陰嚢をこりこりと擂り潰し始める。
「いや? まだそんな事言ってるの? ……ぷひひ、昨日はあんなにアタシと楽しんだ癖に♥ 物判りの悪いガキだね、君も……♥」
「お金……お金なら、お渡ししますから……」
 僕は、震える手で銅貨を掴む。けれど、それは指の隙間から抜け出て、地面に乾いた音を響かせた。
 所がオークはお金に一瞥もせず、僕の事だけをじっと見詰めていた。面白くもないものを観察する様に、その口元はへの字を描いていた。
「……バカにしてるのかな? アタシが、そんなモンで引き下がると思ってるの?」
 オークは、腰から短刀を抜き出した。僕の衣服をゆっくりと引き裂いていく。
「ぷひひ、ムカついちゃった♥ 君の事気に入ったからちょっとお話しようと思っただけなんだけどなー……そんな態度できちゃうんなら、君の事、本気でアタシの下僕にしてあげちゃう♥」
 オークは、露わになった僕の乳首に舌を這わせた。僕は其れを何も出来ないまま只見降ろしていた。次第にオークの手の中で逸物が鎌首を擡げて来る。オークは手で筒を作り、勃起した逸物を柔らかく扱き始める。
「酸っぱい。今日も沢山汗掻いたんだね♥ 判るよぉ……君の身体はたぁっぷり味わったからねぇ……♥ ぷひひぃ♥」
「あ、うあ……」
 オークの身体から湧き上がる悪臭が、僕の鼻を突き上げて、おかしくしていく。オークの掌で熱を帯びて来た逸物が勝手にビクビクと跳ね上がって来たかと思うと、盛大に精液を吐き出した。
 オークは勝ち誇った顔で、手に塗れた精液を一舐めした。しかしそれでも満足せず、まるで皿に付いたパン屑を舐め浚う様にいやしく舌を這わせる。
 指先を吸う。オークは丁寧に僕の逸物に付いた精液を舐めると、強引に股を開かせ、陰嚢まで口に含んで来た。
 けれどその所為で、僕の逸物は再び首を持ち上げて来る。
 オークは僕を中腰にさせると、その上に跨って来た。そして、立ったまま逸物を秘裂へと誘った。先端から吸い込む様に肉の割れ目が広がっていく。奥まで咥え込む頃には襞が隙間もなく陰茎の表面に絡み付いていた。
「ほら、昨日あれだけ可愛がってあげた豚まんこだよぉ……♥ 君のご主人様のおまんこ♥ これに忠誠を誓ったんだよね、君って……♥ だったら、ちゃんとずぅっとお傍で勃起おちんぽ剥き出しにさせてないと、ダメじゃない……♥」
「あ、うあぁ……」
 言葉も、まともに発せられなかった。その中は余りにも気持ちが良かった。僕は昨日、この中で散々弄ばれたのか。ああ、確かにこんな感じだった気がする。意識をこのまま手放してしまいそうな感触だった。
 僕はオークが動き出す前に達してしまった。ぬめり気に富んだ女性器の奥がぎゅうぎゅうと蠢き回る。
「あらあら、もうイっちゃったのかなぁ?♥ ぷひひ……早過ぎ……♥ 情けない子♥」
 オークが僕の頭を撫でる。絶頂に腰が砕け、壁に背を擦りながら地面に倒れる。挿入したまま、オークは騎上位へと移った。
「まさか、もう終わると思った? ぷひひひ、終わらせてあげる訳ないじゃない♥    ほら、昨日、搾精奴隷の分剤でご主人様を孕ませようとした責任は取らなくちゃ……♥」


―――

―――――――

―――――――――――


 昨日以上に激しい凌辱を受けた僕は自我を失い、身を投げ出していた。
 オークはぶふぅと息を吐いて、腰を浮かせる。秘裂からは排泄物の様に精液が漏れ出した。此処で改めて射精量の異常性に気付いたが、解放の時が来た事に感極まってそんな事はもうどうでも良かった。
「もう朝か……朝までしちゃうなんて、もうこれ恋人がする事だよ……♥ アタシは飽くまで君のご主人様なんだけどな……ぷひ♥」
 けれど、続けてオークが口にした台詞に僕は再び絶望の底に叩き落とされる事になる。





   続きは巣穴に戻って……ご飯食べてからにしようね……♥ ぷひ、ぷひひひ……♥」





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 オークの住処に連れられた僕は、あれだけ凌辱されたばかりだというのにまたすぐに寝床に押し倒された。朝食を食べてから、という言葉にさえ忠実ではなかった。
 朝靄が立ち込めひんやりとした洞窟の奥、藁で敷き詰められた簡素なベッド。燭台に灯された炎の明かりはその周囲だけを明るく照らし出すだけで、生み出す影は猶も濃い。
 その影の中で僕は、オークに腕尽くで組み伏せられていた。
「やだ……っ、もう、止めて……」
 性も根も吸い尽された僕に構わず、オークは僕の唇を塞いだ。
「女の子みたいな事言っちゃって……可愛い……♥」
 外とは違って、小さな声を耳元に囁き掛けて来る。耳たぶを、肉厚な舌でなぞられる。
「期待してる癖に。ほら、あんなにしたのにまたオチンチン勃ってきてる……♥」
 オークは僕の逸物を手で優しく撫でながら語り掛けて来る。
「オチンチン、もうバカになってるんだね……アタシがもっとバカにしてあげる♥」
 ぷひぷひと鼻を鳴らしながら、僕の身体を跨ぐ。そして、また、柔らかな膣肉で逸物を咥え込んだ。
「あ……♥ んふぅ……♥」
 弱く喘ぎながら、身体を揺すり始めるオーク。外での行為より、随分と大人しい動きだった。
 其れにも関わらず、僕の逸物にはさっきよりも強烈な感覚が走る。痛みを感じる段階はとっくに通り過ぎていて、何も感じない時さえあったにも関わらず。まるで別の生物となって息を吹き返したかと思う状態だった。
「もっと……もっと、堕とし込んであげる……♥ 君の子供孕んであげるんだから……♥ もっとアタシ好みの奴隷になってくれないと……♥」
 オークは蕩けた表情を曝しながら舌を出す。僕は無意識の内に其れを口に含んで、舌の上に溜まったカスを掃除する。
 そうすると、僕の陰茎は勝手に精をぶちまけた。オークは何度も僕にキスをして、潤んだ瞳で頬擦りする。
「……♥」
 何も言わず、オークは腰を浮かせた。指を足の付け根に持って行くと、秘裂ではなく、その向こうにある窄んだ蕾に到達した。其処に指先を埋めて、暫く出し入れすると、僅かに小さな穴を開かせた。
「……君の忠誠心を測ってあげる……♥」
 其処へ、陰茎の先を宛がう。既に焼かれる様な熱さを感じる。オークはゆっくりと腰を下ろし、堪能する様に内臓で陰茎の形を包み込む。ぐにゅぐにゅと蠕動し、腸壁が逸物をなぞる。
 オークは大きく息を吐き、尻を振り始めた。例によって体重任せで打ち付ける。腸粘膜が男性器で削られているのが伝わる。
「……んっ♥ んっ♥ どう……? ご主人様のケツ穴で犯されてる気分は……? 君はこういうのでも興奮するんだね……♥ 変態♥」
 息を弾ませ、たぽたぽと腹と胸を揺らす。僕は本来排泄に用いる部分との接合を豚と行っている背徳感と理性とのに苛まれ、やがて瓦解した。
 オークの腰を掴み、奥へ突っ込む。オークが舌を放り出して一鳴きする。その腸内へ、思いっきり、子種を噴き出した。たっぷりと時間を掛けて放った子種が腸の中を泳ぎ回って何処へ到達するのかは知らない。
 僕の手を取って、指を絡ませるオーク。荒い息で僕を見降ろし、ニタっと嗤った。
「そんなに気持ち良かったんだ♥ 君にとってはケツもまんこも一緒なんだね♥」
 オークは背を伸ばし、目を細めた。
「じゃあ……今日は一日中後ろの穴で可愛がってあげちゃうからね♥」
 そうして、僕は本当に後ろの穴で犯され続けた。
 次の日の朝になるまで。間断なく狂った欲望に曝され続けた。
 ああ、僕はこのままこのオークの奴隷になるんだ。もう姉さんには逢えない。孤児院にお金を届ける事すら出来ない。働く事も出来なくなるんだ。そんな現実を受け入れて……絶望する先すら見えなくなりながら、また、精子を作り出した傍からアヌスに射精させられた。


 だが、僕の予想は外れた。
 日が変わって、オークが僕を解放すると言い出したのだ。
 但し、其れには条件があった。
 一つ。この事を誰にも喋らない事。
 一つ。無断で姿をくらまさない事。
 一つ。何時如何なる時でもご主人様の呼び出しには必ず応じる事。
 他に、オークの事を呼ぶ時はご主人様と呼ぶか様付けで呼ぶ事など諸々の決まり事があったが、其れは意識から省く事にする。
 兎に角、此れ等を一つでも破れば、姉さんの身の保証は出来ないとの事だった。


―――――


 僕は唐突に日常へ戻って来た。
 あの事はたった一日の出来事だった筈だけれど。僕はこの平穏がとても長い間失われていた気がしていた。
 僕が姿を消していたのは心の傷を癒す為に願い出ていた休日の事で、誰も訝しげな事は口にしなかった。
 何時もの様に、荷運びの仕事をこなす。けれどあれだけの事があった後だ。体中が思う様に動かない。今まで周囲に負けぬ様働いて来たが、今日に限っては仕事を遅らせる結果となったが、次の日は気持ちを入れ替え、遅れを取り戻そうと奮闘した。


 その後一週間は、平和だった。あの一日は夢だったと思えてさえ来ていた。
 そんな時、配達屋が訪れて手紙を渡された。荷運びの途中だったので、一段落就いてから封を破った。汚い紙に適当に折り畳んだと思われる便箋。差出人の名前はない。だが、挟まっていた藁がぱらぱらと落ちるのを見て、全てを察した。

『モリニ コイ』

 其れだけが書き記されていた。日時などはなかった。
 僕はちらりと見ない事にしようかと考えたけれど、必至で首を振った。
 恐らく、今すぐ来いという意味なのではないか。そうすれば、今こうしてぐずぐずしている間に、姉さんは奴に   そう思うと生きた心地がしない。
 慌てて職場に断りを入れて駆け出した。雇い主は露骨に嫌な顔をしていた。もし次同じ事をすればクビを切られるだろう。そういった恐怖も湧き出したが、じゃあ僕はどうすれば良かったのかと誰でも無い誰かを責めたい気分になった。


    逢ってすぐ、押し倒され、挿入させられた。
「あぁんっ♥ これ、この感覚……っ♥ 一週間ぶりぃ……♥♥」
 オークは相変わらず鼻をふごふご言わせて興奮していた。
「今日の為に一週間もオナ禁してたんだよ?♥ だから、一週間分の精液、頂戴ね♥ じゃないと、君の大切なお姉さんは……♥」
 オークの其処は既にとろとろだった。その癖に、僕が入ると引き締まり、淫らにうねり出す。オークは僕に抱き付き、一心不乱に腰を振った。
「はっ、はっ、はぁっ♥ ぷひひっ、遠慮しなくていいんだよぉ? 一週間溜めに溜めた子種、膣内に出しても。だ・け・ど♥ その時はちゃんとご主人様に許可を求めないと♥ 奴隷の礼義だよ♥」
 自分から欲しいとねだっておきながら、許可制を設けるというのは随分矛盾している気がしたが、今の僕は間違いなく、このオークの奴隷だった。
 呼び出しに応じて、都合のいい時に逸物を曝す。獣欲の捌け口そのものが、僕。だから、矛盾しているという訳ではなく、オークの一存が全て是であっただけだった。
「じゅるっ、じゅびびっ♥ べろぉ、ちゅうちゅっちゅっ♥」
 意地汚いキスをされながら、僕は頭が痺れていくのを感じた。
「ご、主人様……出、ちゃい……ます……」
「ふぅん?♥ 何が?♥」
 乱暴な腰遣いを緩める事は無い。
「……せーえき……」
 オークは不機嫌そうに、僕の乳首を締め上げた。
「違うでしょ♥ 其処は、オチンポミルクでしょ♥ ほら、ちゃんと言って御覧……? 僕のオチンポミルクでご主人様を孕ませたいです、て」
 僕がその言葉をなぞると、オークは途端に機嫌良く舌舐めずりする。
「……いいよ♥ イきなさい♥ アタシだけに見せるみっともない顔曝してイきなさい!♥」
 爆ぜる。爆ぜる。
 まるで失禁でもしたかの様だった。一週間、間が空いただけで、こんなにも精液が溜め込まれる物なのかと疑った。一度の射精の間に、三度の絶頂を味わったのに気付き、更に驚きが増した。
「来た来た♥ ピチピチの子種♥ 一週間前の精子も、ついさっき出来たばかりの精子も全部出て来ちゃったんだね♥♥ どの子も皆、アタシの卵子を輪姦しようと必死に泳いで来てるよ♥♥」
 オークは下腹部を撫でながら、息を整える。
「ほら、君の赤ちゃんの素が奥でたぷたぷいってるの、判るでしょ♥」
 僕の手を掴んで、触れさせる。
 けれども、態々呼び出しておいて、一度で終わる筈がない。オークは興が醒めるまで僕の上で踊り、肌を舐めしゃぶって行った。
 そして去り際、満身創痍の僕の耳元で囁く。
「今日も良かったよ……また宜しく♥」
 頬に軽く、吸い付く様にキスをされる。
 僕の意識は白く濁り、静かに沈んで行った。


 其れからは、毎日呼ばれる様になった。
 行為が終わってから、明日の何刻にまた森に来いと言われる。仕事で行けないと言うと、もう一度凌辱されて、また同じ事を言われる。僕が其処で頷かないと、解放してくれない。僕の物判りが良くなるまで凌辱は繰り返される。
 仕事で遅れた時も、言い訳は許されなかった。僕に首輪を付け、両手を縛り、其れこそ凌辱の限りを尽くす。まるで家畜の様な扱いのまま、狂った交尾を強いられるのだ。
 僕の心は既にドス黒く変色してしまっていた。もう、自分の身体は自分の物ではなくなっていた。


 仕事の途中、ロープが切れて使い物にならなくなったから、新しく丈夫なロープを買いに行くように言われた。
 けれど、僕は判っていた。近頃頻繁に仕事を休んだり早退したりする僕を見て、皆が愛想を尽かせている事を。激しく行為に及んだ翌日、僕の身体は重労働にはとても耐えられなかったから、居ても邪魔になるばかりだった。
 体よく追い払われたと恨みがましい事は言わない。寧ろ仕事を与えてくれるだけマシだ。稼ぎは半分以下になったけれど、明日のパンは辛うじて買える。
 道を歩いている時、不意に誰かが僕の後ろにぴたりとくっ付いて来た。なんだろうと思っていると、突然口を塞がれ、股間を鷲掴みにされる。
 そして、耳たぶにそっと息が吹き掛けられる。嗅ぎ慣れた甘い香り。この手が誰のものか合点がいった時、僕はお漏らし同然に下着の中に射精してしまっていた。
「ぷふぅ……♥ 我慢出来なくなったから、今日は此方から来てあげたよ……♥」
「……ご主人、様……♥」
 そして、僕は今日も路地裏に引き摺り込まれた……。

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人間がそうすべきだと思っていながら行動しないで満足するのは
シュレディンガーの猫箱に期待論的な結果を投影するみたいなものだと思うんよね。






























































_人人 人人_
> 意味不明 <
 ̄Y^Y^Y^ ̄


13/01/06 14:21 Vutur

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