連載小説
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夢だからいいよね
 「よし、と」
オギスは単身でも危険のないダインジョンの浅い階層でモンスターを狩り続ける。
「ダークネス」はパーティープレイがメインだがソロでも素材集めなどの作業はできる。
「ええと……赤い鱗……赤い鱗……」
目的の素材を持つモンスターを探し求めてオギスは彷徨う。
……別に三人が風呂から上がってから一緒にやればいいのだが、今の荻須は必死なのだ。
どうにかして気を逸らす事に必死なのだ。

チャプン……クスクス……あはは……

今、三人はお風呂に入っている。
折角だから裸のお付き合いをしよう、などの提案が巴から出され、二人も賛同したのだ。

けっこう……大き……もーう……うふふ……

なので今さっきまで荻須が使っていたお風呂では今、桃源郷のような光景が繰り広げられているという事だ……。

くすくす……あはは…ちゃぷん……

「……赤い鱗赤い鱗赤い鱗……」
荻須はひたすらにゲームに集中しようとする、風呂場からのキャッキャウフフな声も水音も聞こえないったら聞こえない。

……ガララッ

やべえ出て来たどうしよう。
いや、そのうち出てくるのはわかっていた事なんだけどどうしよう。
「はー!いいお湯だった……あっ!リーダー素材集めてくれてたんだー?」
どたどたどたっと音がして荻須の座るソファーの隣にぽすん、とるい子が座った。
「ああ……ひ、暇、だったから、ね?」
「ありがとー♪」
「お、感心じゃないかリーダー」
「レッドリザード、なかなかいませんよね」
二人も背後から声をかけた。
薄い。
何がって、三人の服装がだ。
るい子は可愛いピンク色、アリストレイは爽やかな緑色、巴はシックな青、とそれぞれの色をしているがいわゆる寝間着、パジャマである。
よって、薄い。
そんな薄着に包まれた三人の肢体はしっとりと汗ばみ、髪からは自分が使ったのと同じ石鹸の匂いがする。
見たところ……いや、どう見ても三人は寝る時に下着は付けない習慣のようだ……。
(ちくしょう……!)
荻須はもはや怒りに似た感情を抱いた。
(ちくしょう……!絶対に……絶対に帰ったら……めちゃくちゃオカズにして抜いてやる……!)
「わたしも手伝うー」
「どれどれ」
「うふふ」
いい匂いを撒き散らしながら三人の風呂上り女子達はまた荻須を囲む。
どうにかまた画面に意識を集中させる、そうでもしないと色香で酔っ払いそうだ。
「でも結構いい時間になってしまいましたね」
「にひひ、まだ全然眠くなーい」
「……徹夜しちゃう?」
「いーねー」
言いながら三人もログインし、画面の中のオギスも扇情的な格好の三人の女の子に囲まれる。
(ぐおおお……画面の中までも試練が……!でもリアルに比べればまだ……!ほんと何だこの状況)
荻須の葛藤をよそにゲームは和気あいあいと進行し、夜は深まって行く。
「オギスは聞いたことある?」
「うん?」
街に戻って物資を補給している時にアリストレイが言った。
「キャラに親愛度が設定されてるって」
荻須は思わずるい子を見る、るい子も思わずこっちを見た所だった。
慌てて互いに視線を逸らす。
「し、知らなかったな」
「特別なモーションで上がるんだって」
「へ、へー、るーもはじめてきいたー」
汗を流しながらるい子は不自然に視線を逸らす。
(駄目だこの子)
と、巴が無言でゲームオプションの「フォト」を立ち上げ、一つの画像を表示する。
(げっ)
「はぅぅっ!?」
ハートを散らして密着する二人の姿が映されていた。
「い、いつの間に……オンラインになってれば表示されるはず……」
「うふふ……たまーに二人の動向が怪しかったので別の知り合いに張ってもらってたんです」
「ひ、卑怯なり!」
「ほほう、どの口で言うのかな」
二人のジト目がるい子に向けられる、るい子は視線を逸らしてすーすーと吹けてない口笛を吹いたりしている。
「じゃ、これからは三人みんなと親密度上げるようにね、いいね?ぬけが……利益はパーティーで共有しないとね?」
「はぁ〜い」
るい子は渋々といった感じで了承する。
「ちょ、ちょっと待って」
「ん?なんだいリーダー」
「その……あのモーションで親密度が上がるって確かなのかな?そもそも親密度ってステータスがあるかどうかも本当か……」
「嫌かな?」
「嫌じゃないです」
「じゃ、いいじゃん」
「はい」
画面上でオギスの前に三人が並ぶ、何度見てもすごい格好だ。
「え、ええと、それじゃ順番に……」
「あ、順番じゃなくていいんだよ」
「え?」
三人は立っているオギスを囲むように立つと一斉にオギスに絡みついた。
ぽわわん♪
(うおおおお!?)
「んふふ、「ハーレムモーション」っていうんだってね」
両腕を抱え込むようにルビイとミステラが両側から挟み、アストレイが正面から抱きつく。
ぽわわん♪ ぽわわん♪ ぽわわん♪
いつもの倍増しのハートが飛び散る、そしてこの精密なモーションである。
ミステラとルビイはその豊かな谷間に腕を挟み込み、むにゅむにゅと変形させながら全身を擦り付ける。
アストレイは腰に手を回して胸に顔をぐりぐりと擦り付ける。
まさにハーレム状態。
「……」
「……」
「……」
「……」
やばい
ポワワン♪ポワワン♪ポワワン♪
「……」
「……」
「……」
「……」
は……
恥ずかしい!
一人だったらニヤニヤできるのだが周囲に当人達がいる状況だとどう反応していいものか。
恥ずかしくて画面外に目を向けられない。
流石に気まずいだろう、これは。
こちこちに固まりながらちら、とだけ視線を周囲にやる。
「……」
「……」
「……」
(み、見てる……画面じゃなくて、こっち見てる)
荻須は一瞬しか確認しなかったので表情まではわからなかったが、三人は一様に笑みを浮かべて荻須を見ているのだった。
「……こ、効果、あると、いいなあ」
「そうだね」
「そうですね」
「んふふー」
「あー……そ、そろそろ疲れたなあ、寝ようかなー」
「そうしましょうか」
空気に耐えかねた荻須がそう言うと巴が拾ってくれた。
そうして皆でログアウトをし、寝支度をしようかというところで荻須は物凄い問題に気付いてしまった。
寝るなんて言い出さなきゃよかったと思うくらいに深刻な問題に。
(……どうやって寝るんだろう、いや、俺はどこで寝れば)
まさかとは思うが三人と枕を並べて寝るということはないだろう……多分、恐らくそれが常識的だ。
しかし自分一人が別の部屋で寝るというのもそれはそれで不自然というか……。
と、思い悩む荻須をよそに三人はてきぱきとゲーム機や夕食の後始末を終え、リビングに布団を敷いてしまう。
……四人分である、どう見ても。
「それじゃあ寝ましょうか♪」
「あ、はい」
そこで男女が同衾するのはどうのこうのと反論するのは相手に意識している事を伝えてしまう気がして、荻須は同意する以外なかった。







 「……寝てる?」
「寝てる……ね」
「寝ちゃいました、ね……」
三人の顔が覗き込む先で荻須は安らかな寝息を立てている。
本当のところは三人全員が荻須に密着できる形に配置したかった布団だが。流石に警戒されるであろうとして三人が川の字に並び、荻須はその頭上に横になるという配置にした。
布団入ってしばらくの間こそこそ雑談した後、約一時間後に荻須は寝息をたて始めた。
本人もこんな状況で寝付けるわけがないと思っていたが慣れない異性の家で予想以上に緊張していたらしく、わりとすんなりと眠りに入った。
三人は顔を見合わせる。
理想を言うならば皆が寝静まった後に荻須がこっそり誰かに悪戯でもすれば完璧だったのだが、それはまあないだろうという皆の予想通り至極紳士かつ童貞な荻須はこうしてスヤスヤと安らかな顔を晒している。
「……ちょっと、だけ……」
やはり口火を切ったのは三人の中で最も欲望に忠実なるい子だった。
「ちょっとだけ……気づかれないくらいになら……ね……よくないかな……」
頭部から角を生やしながら興奮で微かに震える声でるい子は言う。
「……そう、だね……夢って……思い込むだろうし、ね……」
濡れた真紅の瞳を揺らしながらアリストレイも言う。
「……♪♪」
巴は尻尾を揺らしながら淫猥な笑みを浮かべた。
我慢していた。
三人も当然ながら今までずっと我慢していたのだ。







 「……?」
スースーする……。
荻須は思った。
下半身がスースーする……。
もそ、とみじろぎをしようとした所でそれを誰かに阻まれた。
(……え……?)
「んん……?」
(だいじょうぶ……)
意識が現実に浮かび上がろうとする寸前、脳の中に直に響くような声が響いた。
(大丈夫……夢ですよ……)
優しく、甘く、聞いていてひどく安心する声。
(みんな……夢ですから……)
(……そうか……ゆめ……か……)
覚醒しかけていた意識が再びまどろみに引き戻される。
完全に意識を無くすのではなく、半覚醒状態になる。
自分を見下ろすたおやかな美貌が寝ぼけ眼に映る。
(……天使……?女神……?)
にちゃ……
きもちいい。
性器がきもちいい
ぼんやりした目で自分の下半身を見てみると剥き出しにされた自分の陰茎が見えた。
見慣れたその幹に指が絡みついている。
自分のではない。
あんなに白くないし細くない、それに自分に手は四本はない。
二人の女性が自分の性器に触れているところだ。
赤い瞳の恐ろしく美しい少女と、角の生えた快活そうな少女。
(こっちも……二人の天使……いや……悪魔……?まあ……夢だからなんでもありか……)
二人の美しい悪魔は手でゆるゆると自分の陰茎をしごいてくる。
すべすべした感触、何より自分以外の手に触れられるという感覚がたまらなくきもちいい。
にちゅ……にちゅ……
(ああ……きもちいい……)
そう思ううちにそっと二人の手が離れ、先程頭上で見た女神のような女性が陰茎に顔を寄せてきた。
その女性は陰茎に軽くキスをするとそっと自分の豊かな房に手を添える。
大きい、すごく大きな乳房だ。
その乳房の谷間が割り開かれ……。
むにゅうううん
自分の陰茎を挟みあげた。
「ぁぁぁぁぁ……」
声にならない声が喉から漏れる。
たっぷ……たっぷ……たっぷ……
擦り上げられるたびに腰が溶けそうになる。
柔らかい、温かい、きもちいい、先程からそれしか感じない、きもちいい。
出る
もう、でる
谷間に溺れる自分の亀頭が膨らむのが見える。
我慢しようという考えが浮かばない、欲望に正直に荻須は射精しようとしていた。
と、射精の直前その胸の谷間から覗く亀頭に先ほどの赤い瞳の美少女が口を付けた。
ゆるやかな快感とは違う。鋭く、強い快感が陰茎を貫く。
でる
でる

………







 「……」
荻須は目を覚まし、ここが自分の部屋ではないことを認識し、昨日までの記憶を取り戻した。
先程見た夢の事も。
「……っっっっ!!!!」
がばっと身を起こし、下半身を確認する。
……大丈夫だ。
胸を撫で下ろした、余りにリアルな快楽だったので夢精しているかと思ったのだ。
「起きました、か……」
「おはよお……」
隣を見てみるとパジャマ姿の三人が布団の上に座り込んでいた。
寝乱れた姿が艶かしい……。
というか、少し乱れすぎではないだろうか。
パジャマは着崩れ、全身が火照ったように朱に染まり、肌がしっとり汗ばんでいる。
全身から甘い香りが立ち上っているようだ。
ごく、と無意識に荻須は唾を飲んだ。
「お……おはよう、ございま、す……」
「はい……おはようございます」
「はぁい……」
寝ぼけているのかとろん、とした顔で二人は言う。
エロい。
「……」
と、そこで荻須はようやくアリストレイの様子がおかしい事に気付く。
さっきから俯いて口元を抑えてじっと動かずに座っている。
顔は真っ赤だ。
体調が悪いのだろうか。
「あ、あの……アリストレイ……?」
「……こきゅ……ごっきゅン……」
そのアリストレイの喉が動いた。
唾を飲んだとかではなく、明らかに何かを飲み込む動きだった。
何を?
周囲にはコップもジュースも見当たらない。
「くは……はぁ……はぁ……おは、よう……」
二人と同様、とろりとした表情でアリストレイも挨拶を返した。
エロい。
「お、おは、よう……」
何故かその顔を直視することができずに視線を下げるとパジャマを押し上げる二つの膨らみ、その先端の突起……。
どう考えても昨晩はなかった、つまり、乳首が勃起して……。
「そ、それじゃあ、俺は、その、帰る、帰ります、はい」
たどたどしく言うと三人はもそもそと寝具の片付けを始める。何故か非常に頼りない足取りで。
心配した荻須が風邪かと聞いても大丈夫、と紅潮した顔で言うばかりだった。
15/12/20 21:17更新 / 雑兵
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