読切小説
[TOP]
三箇日の終わりに
「・・・・・・・・」

ただ何も言わず玄関の戸を閉める。
周りに付いた雪をほろいダウンを脱ぐ。
今日は1月3日。三箇日の終わりの日。

・・・年末から年始にかけて僕は仕事で埋め尽くされていた。
 
思えばあの忌まわしい性夜の日から仕事で埋まっていた。
同僚のためにシフトを変わり、年末帰省する人の為にも変わり・・・・・・
お人好しの性格が災いして今に至るわけだ。
 
ダウンをハンガーに掛けて部屋の暖房のスイッチを居れる。

   ピッ
 
スイッチを入れた時に、ふと声が聞こえた気がした。 

―おかえりなさい。お仕事ご苦労様でした。   と。

「・・・・・・・・」
ああ、そうか。最近はすっかりだったけど、居てくれたんだな。
そう独りで納得して、キッチンへ向い晩御飯の準備をする。













―あ、私もういっかいあの簡単にできるきつねうどん食べてみたいです。
「・・・・・(あれは非常食だから駄目。今日は普通に焼きうどん。)」 
―そんなぁ・・・
「・・・・・(仕方ないな。刻み揚げを入れてやろう)」
―うーん・・・まぁそれで我慢してあげます。
「・・・・(我慢ってなんだ我慢って・・・・)」
 
 









よし。そこそこ上手く出来た。適当に作った割にはなかなかいいじゃないか。
皿に盛り付けて、いつものパソコンの前の定位置へ行く。
 
――ぐぬぬ・・・No Hope阿呆みたいな難易度でナニコレ無理ゲー・・・・・
  ひと振りで2.5メモリ減るとかほんっっっと鬼畜!
「・・・・(お前でも無理なものってあるんだな)」
――無理・・・ですって・・・・?この私がゾンビごときに負けると思うの!?
  その愚弄・・・私が鏡面世界の女王と知ってのk
「・・・・(はいはい。はいはい。)」
 
 
  
・・・うどんおいちぃ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
―お皿は洗っておきますね。
「・・・・(そういえばお前、旦那のところにはいなくていいのか?)」
―いえ、そっちには母と娘がいますから。それに・・・たまには貴方の所にも戻らないと。
 一番怖いのは忘れられてしまうことですからね・・・・・
「・・・・・(そうか・・・・)」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
御飯を食べ終わったらいつもどおりネトゲしながらネットサーフィン。
気になるゲームのサイトを巡ったりゲハ板を見たり・・・ 
 
―――はぁぁぁぁ・・・・いったいいつになれば次作の情報が出るのじゃろうか・・・・・・・
   配下の物に調べさせても一向に分からぬままじゃ・・・・・
   ああああ!早く憎き神どもをこの手で葬りたくてわしの両腕が疼くのじゃぁぁぁぁ・・・・・・!
「・・・・・(わかる。すっごいわかる。新ハードは手に入れたからあとは発売を待つだけ・・・・)」
 
 
 

――あ、きのちゃんいるじゃないー♫きのちゃーーん♫
ネトゲで仲がいいフレンドを見つけるとすぐさま凸するのは日常茶飯事。
というか、誰だってするだろ?
「・・・・・(きのちゃんかわいいよきのちゃんちゅっちゅ)」
 
 
 
 
 
 
 
そろそろいい時間か。明日も仕事なので就寝準備をする。
次の休みまであと一息。ここいらでへばってしまうことがない様にしなければ。

 
 
 
 
 
 
 
「・・・・・・」
布団の中にもぐる。・・・・冷たい。
いくら裏地にフリース生地を使った羽毛布団を使っても冷たいものは冷たい。
ごそごそと身震いをして布団の中を温める。
 
ようやく温まって寝返りをうつとお腹辺りに不自然なふくらみがある。
それは僕の存在に気づくと、もぞもぞと動き布団から顔を出す。
でてきた顔は、僕がよく見知った顔だった。
 
 
 
 
 
 
 
 
――――おにぃちゃん、おかえり。
    ずっと独りでお仕事がんばって大変だったね。
    お仕事に追われて、帰ってきてもだぁれも居なくて。
    でもね、それはわたしもおんなじだったんだ。
    わたしもずっと独りにでおしごとがんばってたよ。
    おにいちゃんが独りだと、わたしもひとりだもん。
    でもね、今日ぐらいは独りじゃなくてもいいと思うの。
    だからね、だからね・・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
    「今日だけは、ミファとふたりでいようね。」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ああ…そうだった………僕のなかには彼女がいるじゃないか…
この「場所」を訪れてからずっと一緒に居た……彼女が……彼女が………
 
 
 
 
 
 
  
 
 
 
 
 
13/01/04 00:00更新 / riorain

■作者メッセージ
―ふふふ…なんだか幸せそうな寝顔ですねミファちゃん。
 
―――こやつも色々あったからのぅ…(主にわしが困る方向に)
   たまにはいいじゃろうこういうのも。
 
――まぁ…嫌いじゃないけどね…(私もたまには甘えてみようかな…)
 
 
「それじゃ、彼女の邪魔をしたらいけないから私達も帰りましょう。」
 
―そうですね。私もそろそろ戻らないと。どうせあの人はいませんでしょうが…
 
―――まぁそう気を落とすでない。合えないのはわしもおなじじゃ…
 
――大変なのねぇ…私みたいに監禁しておけばいいのに。
 
「あなたのは監禁というより、貴女が彼に依存してるのだと思いますけど…」


――ち、ちがうわよっ!そんなんじゃないわっ!
  魔王になったからっていい気にならないでよっ!
  面倒見てあげた恩を忘れたの!?
 
「それはそれ、これはこれです♪」
 
――ぐぬぬ…したたかだこと……
 
―さぁさぁ、いい加減帰らないとミファちゃんに怒られますよ。
 
―――うむ。乙女のひと時を邪魔する奴は魔王の怒りに触れると言うしな。
 
「ええそうです。愛し合う者たちを邪魔する人は私が許しません♪」 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「それではみなさんも、幸せなひと時を。あけましておめでとうございます。」
 
 
 
 

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33