連載小説
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(21)ワーバット
ここに来てから、どれほどになるだろう。
闇の中、ぴちゃぴちゃと濡れた音の響く空間で、少年はそう考えた。
彼の目の前には、目を閉じているときと変わらぬ闇が広がっている。じっと目を開いていると、実は自分が目を閉じているのか、それとも失明しているのかわからなくなってくる。
だが、日の出とともに明るくなってくる空と、中天に昇った太陽が放つ光が、少年の目が正常であることと、辺りの状況を教えてくれた。
トレジャーハンター気取りだった少年がいるのは、岩山の表面に存在する亀裂の底だった。


数日前、岩山の洞窟の宝の情報を聞き、洞窟を探していた彼はこの亀裂に落ちたのだ。正確には亀裂と言うより、洞窟の天井が崩れて露出しているような構造だった。
楕円に近い洞窟の壁は、外界と繋がる亀裂に近づくにつれ傾斜がきつくなり、少年には脱出が絶望的であるように思えた。
また、洞窟の中にはほかの空洞へ続く通路も存在せず、完全に少年は閉じこめられていた。
絶望的な状況に、少年は餓死より先に狂死することを覚悟した。
しかし、必死に孤独と絶望に耐える少年に、若い女の声が掛けられた。
「大丈夫ですか・・・?」という弱々しい声に顔を上げてみれば、洞窟天井の亀裂から一体の魔物が舞い降りてきた。
細長い指の間に膜を張った翼を備え、柔らかな体毛で身体を覆う、耳の大きな魔物。
ワーバットの少女だった。
彼女は固まる少年の側に舞い降り、ごめんなさいと大丈夫を繰り返しながら、彼女自身に敵意がないことを説明した。
死はもちろん、死体さえ見つけてもらえないことを覚悟していた少年にとって、言葉の通じる相手が現れたことは、ただそれだけで嬉しかった。
彼は喜びのあまりワーバットの少女に抱きつき、号泣した。
彼女は突然の少年の行動に驚きながらも、ぎこちない様子で彼の背中を翼膜で包んでやった。
そして二人は、日が傾いて洞窟の底に闇が訪れるまでのしばしの間、抱き合っていたのだった。

「・・・・・・」
少年が目を凝らすと、亀裂から差し込む星の明かりによって、闇の中で動く何かが見えた。
彼の腰の上に跨る、ワーバットの少女の背中だ。彼女の背中のうねりに合わせて、闇の中に濡れた音が響き、少年の股間をぬめりと締め付けが刺激する。


少年が洞窟に落ちた日の夕刻、洞窟の底が闇に沈んだ頃、ワーバットの少女が変わった。
彼女はじゅるり、と唇を舌で舐めると、少年に向けてこう言った。
「なんだか身体が熱くなってきたの。冷ましてくれる?」
直後彼女は少年に覆い被さるようにして襲いかかった。魔物への恐怖が興奮となり、少年が果てるまでそう時間はかからなかった。
やがて日が完全に沈み、鼻をつままれても分からないほどの闇に洞窟が満たされても、ワーバットは少年を求め続けた。
そして興奮と疲労により少年が気を失った。少年が目を覚ましたのは、太陽が中天に昇った頃、つまりは目蓋越しの日の光のまばゆさによってだった。
ワーバットの少女は、少年の目覚めに安堵し、ごめんなさいを連呼しながら昨夜の豹変について説明した。
ワーバットという魔物は基本的には小心者であるが、闇の中では大胆になってしまい、昨夜のように自分の欲求に歯止めが利かなくなると言う。
彼女は一通り説明すると、少年のために用意したという果物を差し出した。
昨夜の行為による疲労と空腹に、少年は果物を瞬く間に平らげた。そしてワーバットが一度亀裂から飛び立って、どこからか集めてきたお代わりの果物さえも、胃袋に納めた。
満腹感に彼は腹を撫で、ワーバットに向けて感謝の言葉を告げた。
すると彼女は、軽く頭を振りながら、彼に向けて言った。
「感謝するなら、身体でね・・・」
少年が目覚めたのが遅かったのと、果物のお代わりを揃えるまでの時間によって、太陽が傾き洞窟の底に闇が満たされていた。
こうして、少年はワーバットに犯されながら、洞窟の底で暮らしていた。


「あ、あ、あん・・・」
闇の中、ワーバットは喘ぎながらゆっくりと腰を上下させていた。
今は真っ暗なため見えないが、彼の背中の下には柔らかな草が積み上げられ、固い地面から背中を守っている。
時折ぽちゃんぽちゃんと少年の耳をたたくのは、滴り落ちる地下水を受け止める器の音だ。
ほかにも、交わる二人の周りには、少年の生活に必要な品物が揃えられていた。いずれもワーバットが昼間に地上から集めてきたものであった。
そして日が暮れた今、彼女はその見返りを求めるように、少年に跨るのだった。
ワーバットの胎内で、反り返った少年の肉棒が柔らかな肉の筒を刺激し、彼女に甘い喘ぎを上げさせる。
少年に背を向けるように跨る体勢が、少年に覆い被さるような姿勢や、少年を見下ろすような姿勢とは違う場所を刺激し、二人に新たな快感を与えていた。
「ん、んん・・・!」
意識に染み込む快感をこらえながら、ワーバットが動く。
闇の中で彼女の肢体が艶めかしくうごめき、星の光が少年を見下ろす姿勢をとったワーバットを照らした。
「ふふふ・・・ん・・・」
姿勢を変えたことで彼女の胎内を肉棒がぐるりと動き、屹立の反り返りや膨れた亀頭が、柔らかな粘膜を擦って、甘い声を出させた。
同時に、少年の肉棒の凹凸にも膣襞が絡みつき、彼も快感に身体を震わせた。
「ああ・・・」
闇の中に、少年の短い喘ぎ声が溢れだし、ワーバットの胎内で肉棒が脈動した。
直後、彼女の胎内に熱いモノが溢れた。
「ん・・・」
腹の奥を打つ熱い粘液は、ワーバットの腹の奥、肉棒の届かない場所に熱と心地よさをもたらした。
彼女は快感を素直に受け止め、全身を震わせるほどではないものの、穏やかで柔らかな絶頂に身を任せた。
甘い快感と心地よさが、彼女の内側を満たす。
「はぁはぁ・・・」
「うふふ」
荒く呼吸を重ねる少年の視界で、ワーバットが艶めかしく口の端をつり上げるのが見えた。
そして、淡い快感と静かな興奮に彼女はゆっくりと腰を揺すった。
「もう少し、がんばってね・・・」
彼女は少年に向けて、そう声を掛けた。



翌朝、まぶしさに目を開くと、いつも通りすでに日は高く昇っていた。亀裂から降り注ぐ太陽の光が、辺りを照らしている。
「お、おはよう・・・」
微かに震えた声が響き、少年は横たわったまま目を向けた。すると、昨日の妖艶さを一欠け残さず失ったワーバットが、少年の傍らに座っていた。
少年は身体に残る疲労感を堪えつつ、少年は身を起こした。
「これ、ごはん・・・」
「・・・ありがとう・・・」
ワーバットの差し出した、果物が盛られた皿を受け取り、礼を述べた。
皿から野いちごをつまみ、口に放り込む。
爽やかな酸味と、ほのかな甘みが疲れを癒すようだった。そして、念入りに洗ったためか、果実は冷えていた。
「おいしい」
「よかった・・・早すぎたんじゃないかって、心配だったの・・・」
少年の言葉に、ワーバットは胸をなで下ろした。
「それでね、果物ばっかりだといけないと思って、お魚か何か捕まえようと思ったんだけど・・・」
「ああ、その手じゃ難しいだろうねえ・・・」
翼膜の張った左右の腕を見ながら、少年はそう応じた。
「そろそろ果物も飽きてきたし、魚を捕るための網か、罠を作るよ」
「ありがとう・・・」
ワーバットの言葉に、少年は自身が外に出たいと考えていないことに気がつき、胸中で苦笑した。
だが、それも仕方ない。ワーバットの献身的な世話のおかげで、この洞窟でも十分暮らしていける環境は整っているからだ。
そして、昼と夜で異なる彼女にも、少年は惹かれていた。
もうすこし、ここで過ごそうか。
そんな気分になっていた。
12/08/24 22:07更新 / 十二屋月蝕
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■作者メッセージ
超短編の度に長編向けのアイデアが浮かぶが、容赦なく超短編に使う。

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