読切小説
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喪女と遊ぼう
「うちは、一生喪女のままやろか」
 涼香は、長い黒髪の間から上目遣いにして聞いてきた。髪は整えておらず、辺りにもつれて広がっている。畳の上には漫画とビールの缶、つまみが散らばっている。本棚にはライトノベルがぎっしりつまり、壁にはアニメやゲームのキャラクターのポスターが貼っている。
 俺はまともに答えようがなくて、知らんがなと言っておいた。
「嫌や!このままキノコ生えたまま生きていくなんて嫌や!」
 俺は、涼香の嘆きを苦笑しながら聞いていた。

 俺は、こうして涼香の部屋に遊びに来ることが多い。俺と涼香はオタク友達であり、酒を飲みながら漫画、アニメ、ゲーム、小説の話をしている。
 涼香は単なるオタクではなく、評論家として活動している。評論と言っても頭の良さそうなものではなく、漫画やアニメを題材にして妄想を炸裂させる「評論」だ。それがウケているらしく、今年になってから事務員の仕事を辞めて、評論家として飯を食っている。
「なんであんたは、そんなに冷たいんや。彼氏いない歴=年齢の辛さが分からんのか?」
 俺は、何も言わずにビールを飲む。彼女いない歴=年齢の俺に言わないで欲しいものだ。
 床を這って黒髪が迫ってくる。たちまち俺の体にまとわりつき、引っ張り始める。俺は荒っぽく振り払おうとするが、解けそうにない。
 涼香は人間では無い。毛娼妓という魔物娘だ。こうして、長い髪を駆使して人を捕らえることが出来る。もつれているくせに滑らかな感触や甘い香りに、思わず陶然としそうになる。
「うちの周りには、変態漫画家のあんたくらいしかおらんし」
 涼香は、俺を髪の毛で締め上げながらぶつくさ言う。変態はねえだろと反論すると、涼香はジト目で俺を見る。
「あんたが描いた同人誌を見たわ。あのふたなりメス豚女はなんや?」
 俺は、思わず変な声をあげそうになる。俺は、異世界ファンタジー物のソーシャルゲームを題材とした同人誌を描いたことがある。その中で俺は、鼻フックをされたふたなり女がメス豚(本物の豚)を犯し、絶頂とともに脱糞する場面を描いた。そのふたなり女の乳首とクリトリスはピアッシングされており、胸と腹には淫紋が彫られ、全身に卑猥な落書きがされている。そして全身精液まみれだ。
 俺は、初めはオリジナルとして商業誌で描こうとした。だが、「頭大丈夫ですか」という編集者の言葉とともに却下された。それで二次創作の同人誌に同じシチュエーションを描いたわけだ。原作には無い、ふたなりという勝手な設定を付けてだ。俺は、ネットでキチガイ呼ばわりされている。
「ええんや、うちはどうせ喪女や。近寄って来るのは変態だけや」
 涼香は、ふて腐れた表情でビールをあおる。
 お前のお母さんは男にモテるのに、お前は何でダメなんだ?お前も毛娼妓だろ。そう言ってみた。たちまち髪の毛が俺を締め上げる。
「毛娼妓だからと言って、男とうまくやれるとは限らんのや。うちとお母ちゃんは違う」
 涼香の母も毛娼妓で、かつては凄腕の風俗嬢だったらしい。旦那と出会うことで風俗の世界からは足を洗ったそうだ。
「うちはリアルでは、お父ちゃん以外の男の裸なんか見たことないんや」
 そう吐き捨てると、涼香はピーナツを貪り食い、ビールで流し込む。
「うちがモテないのは、どう考えてもお前らが悪い!」
 「お前ら」とは誰のことだろうか?とうとう不特定多数をののしり始めた。俺はため息をつき、髪の毛にまとわりつかれた状態でビールを飲んだ。

 正直なところ、俺は涼香に良い感情を持っている。涼香さえ良ければ先へ進みたいと考えている。
 ただ、俺たちは友達としてやってきた。そこから先へ進めるかどうか分からない。下手なことをして涼香との関係を壊したくはない。友達止まりで良い気もする。だから、俺は今まで現状維持に努めてきた。
 だが、現状維持にも飽きてきた。俺は、先へ進むことに決めた。それに先ほどから涼香は、俺を煽っている。俺と二人きりの時に、彼氏だの裸だのと言う。しかも、髪の毛で締め上げながら俺を愛撫する。挑発に乗ってやることにしよう。
 俺は、涼香の肩をつかんだ。紫色の着物がはだけており、白い肩がむき出しになっている。その滑らかな素肌を手で押さえる。
「な、なんや急に…」
 涼香は、怪訝そうに俺を見る。その表情には緊張がある。
 だらしない格好だな。俺は、そう言って肩をつかみ続ける。涼香の肩は震えている。
「どんな格好しようと、うちの勝手やろ」
 涼香は力なく言う。
 人前で裸にならない限り、どんな格好をしようと涼香の勝手だ。だが、俺の体を髪で愛撫することは、勝手では済まされない。俺は、涼香を抱き寄せる。涼香の体からは、香の香りが漂ってくる。着物に焚き染めているのだろう。喪女のくせに、こういうところは毛娼妓らしい。俺は、彼女の背を愛撫する。
 俺は手の動きを抑える。焦りすぎないほうが良い。ゆっくりとやるんだ。俺は、声に出さずに自分に言い聞かせる。
 涼香は、俺に体をぶつけてくる。
「なんや、今さら」
 そう、俺の耳元でささやく。
 そうだ、今さらだ。俺は、涼香を畳の上に寝かせる。髪の間から彼女の顔が見えた。髪に隠れていることが多くて分かり辛いが、彼女の顔は整っている。どこか隠花植物を思わせる魅力がある。
 俺は、涼香の上にのしかかった。

 顔を寄せて、涼香の口に俺の口を重ねる。彼女の口は少しずつ開き、俺の口を迎え入れる。俺の舌と彼女の舌が絡み合う。涼香の口からはアルコールの匂いがする。たぶん俺の口の匂いも同様だろう。
 俺は、涼香の着物をはだけていく。着物の上からも分かったが、彼女の胸は豊かだ。乳首は桃色だ。俺は胸に顔をうずめる。少し汗をかいており、しっとりとした感触がする。香の香りと彼女の体の匂いが混ざり合い、俺の鼻を甘く包む。乳首に舌を這わせると、彼女はかすれた声をあげる。
 俺の服の隙間から、涼香の髪が侵入してくる。俺の首筋を、胸を、背を、太ももを愛撫する。彼女の髪は俺の体を這いまわり、俺の服を脱がしていく。さすが毛娼妓と言いたいところだが、慣れないせいか手間取っているようだ。
 俺は、彼女の右腋をなめてやる。その途端に、ひゃうっとかわいらしい声を出す。
「ど、どこをなめているのや、この変態!」
 狼狽を露わにして、涼香は口走る。
 俺はそれには答えず、彼女の腋をなめまわす。彼女は身をよじりだす。俺は、その反応を楽しみながら、腋の甘酸っぱさを口と鼻で感じる。
 俺の腋腹を衝撃が走った。くすぐったさに俺は身をよじる。涼香の髪が、仕返しとばかりに俺の腋と腋腹をくすぐっているのだ。俺は、身をよじりながら彼女の腋と腋腹をなめてやる。俺たちは、悶えながら笑いあう。
 俺は、悶えながら彼女の腹へと顔を移していく。滑らかな腹に頬ずりしながら、くすぐるように舌を這わせる。香の香りにチーズのような匂いが混ざり始める。彼女の下腹部の茂みを見ると、すでに濡れそぼっている。
 濡れ光る逆三角地帯に顔をうずめた。涼香の茂みは濃いが、きちんと処理されている。舌で茂みをかき分け、肉の泉を愛撫する。涼香の体が震え始める。俺は、緩急を付けながら舌で攻める。俺にまとわりつく髪の動きが不規則になっていく。
 俺は体を起こした。涼香は、期待を込めて俺を見つめる。俺はつい、意地が悪くなってしまう。ヴァギナを放置して、彼女の胸の上にのしかかる。驚く彼女の胸をペニスでなぶり、パイズリをせがむ。
「うちは、あんたのおもちゃと違うよ」
 そう言いながらも、涼香は俺のペニスを胸で挟んでくれる。柔らかい感触が俺のペニスを包む。俺は我慢できずに、彼女の体の上でペニスを前後に動かす。つい、彼女の顔をペニスで突いてしまう。彼女は頬を膨らますと、俺のペニスを噛む。甘噛みするつもりだったかもしれないが、刺激が強すぎた。出そうだと、俺はうめく。
 俺は、涼香の胸に精液をぶちまけた。止めることは出来ない。胸にペニスを押し付けて顔にはかけないようにしたが、勢い余ってかかってしまう。彼女は精液で汚れていき、たちまち辺りに刺激臭が漂い始める。
「やっぱり、あんたは変態や。リアルで顔射は無いわ」
 涼香は、不機嫌そうに顔をそむける。俺は謝るが、彼女の顔を見つめてしまう。整った顔が俺の精液で汚れており、俺を興奮させる。そして彼女が嫌がってないことも分かる。彼女の鼻はうごめいて、精液の臭いを嗅いでいる。唇についた白濁液をなめている。
 俺の陰嚢がくすぐられた。涼香の髪が忍び寄り、愛撫しているのだ。くすぐったさに身をよじるが、同時に快楽が叩きつけられる。俺のペニスは回復してくる。
 俺は、腰を彼女の腰へと移す。ペニスを濡れそぼった茂みへ埋め、泉の中へと沈めていく。俺はゆっくりと進めていく。涼香は眉間にしわを寄せ、唇をかみしめている。俺のペニスは、完全に彼女の中へ埋まる。彼女は、畳を引っ掻いている。
 なるべく負担をかけないように、ゆっくりと腰を動かす。涼香は苦しげにうめきながら、俺の動きに合わせようとする。彼女の髪は落ち着きなく動き回り、俺の体の上で踊るように跳ねる。
 俺は涼香に覆いかぶさり、彼女を抱きしめた。首に口をつけ、髪へ顔をうずめる。彼女の香りに包まれる。彼女は、あえぐように口を開ける。桃色の舌がうごめく。俺は、彼女の口を吸う。彼女の口の中は、精液の臭いと味が残っている。だが、かまわずに舌を絡ませる。
 俺のペニスは、再び弾けそうになってきた。ペニスから腰へ、背中へと快楽が走る。俺は、中に出さないように抜こうとする。だが、涼香は俺の腰を足で締め付ける。髪の毛が俺を逃がさないように締め付ける。
 俺は、涼香の中で果てた。子種の詰まった液体が、彼女の奥へと放出される。俺は止めることが出来ずに、痙攣とともに放ち続ける。耳には、彼女の喘ぎ声と荒い息が浴びせられる。
 それから、どれだけ過ぎただろうか?俺たちは、小刻みに震えながら抱き合っていた。俺たちは汗で濡れた体を重ねあい、お互いの感触と匂いを感じあう。時間の経過が把握できない。
 俺たちは、手負いの獣のように震えながら抱き合っていた。

 予想通り、涼香は初めてだった。涼香のヴァギナからは、白濁液とともに赤い血が流れている。彼女は混ざり合った液をぬぐい取り、薬を塗っている。涼香の年齢からすれば、一般よりも初体験は遅いほうだろう。
「初めてで悪い?」
 涼香は、ジト目で俺を見る。
 別に悪くは無い。無理して早く体験する必要は無いだろう。俺は、初体験の早さや相手した人数を競うことに意味があるとは考えない。
「あんたは初めてじゃ無いんやね。うちは魔物娘だから分かるよ。風俗に行ったの?」
 呪いのこもっているようなジト目で見ながら言う。
 俺は、ソープに行ったことがあると胸を張って言った。北方○三先生に人生相談をしたら「小僧、ソープに行け。そうすれば悩みは解決する」と言われたのだ。俺は素直にソープに行き、その当時の悩みを解決することが出来た。
 涼香の髪が俺を締め上げる。俺は、つぶれたヒキガエルのような声をあげてしまう。
「何を威張ってるのや、この淫獣!」
 なぜ、俺は締め上げられるんだ!北方先生の教えに従っただけではないか!
「これからは、うちだけとセックスすること。浮気は許さんよ」
 涼香の髪は、俺のペニスを締め上げる。これでは拷問だ。もだえる俺を見下ろしながら、彼女はぼそぼそと話し始める。
「なあ、あんたの望むことなら、うちは出来る限りやるよ。鼻フックしてもいいし、服を着たら見えない所なら落書きしても構わんよ。アヘ顔も練習するし、『んほおぉぉおお!』と吠えてもええんよ。好きな所に精液をぶっかけていいし、ウ、ウンチも見たければ見せるよ。で、でも…」
 涼香は顔をゆがめる。
「痛いのは堪忍して。ピアッシングは無理や。あと獣姦は出来んよ。豚や犬は堪忍してや」
 彼女は泣きそうな顔で言う。
 俺はため息をつく。あれは俺の妄想だ。リアルでやるつもりは無い。やったらまずいだろ。こいつは、そんなことも分からないのか。
 ただ、俺は笑みがこぼれそうになる。鼻フックやぶっかけは、やれたらやりたいな。さっきの顔射は興奮してしまった。俺は、ついそう思ってしまう。
 俺は自分の欲望を抑え、無茶なことはしないと涼香に約束する。無茶なことは、漫画に描けばいいのだ。
 涼香は髪の毛を緩め、俺に体を寄せる。俺は、彼女を抱き寄せる。涼香の体の柔らかい感触と滑らかな髪の感触が心地よい。彼女の髪に顔を寄せ、その香りをかぐ。以前から気が付いていたが、彼女の髪はいい香りがする。喪女でも毛娼妓なのだ。
 うまくいったなと、俺は声に出さずにつぶやく。うまく関係を進めることが出来なかったが、やっと前に進んだ。涼香は前のめりになっているようだが、焦らずに進めて行けば良いだろう。
 ただ、今までの友達としての関係も取って置きたい。俺にとっては快適な関係だったのだ。俺は、彼女を抱きながらそう思う。
 俺たちは、畳の上に横たわった。今日は、これくらいで良いだろう。あとは明日からだ。そう思いながら、俺は、彼女の髪を愛撫した。

16/09/07 20:52更新 / 鬼畜軍曹

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