連載小説
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背景画
 
〜雰囲気は大事なのよ〜

「そろそろ背景画を変えないとダメかしらねー?いつまでも不死山じゃ見飽きられちゃうわ。・・う〜ん、誰か良い人居ないか・・・あ、そういえば居たわね」





お腹空いちゃったなー。ここんとこずっと普通の食べ物しか口に入れてないから胃がキューキュー鳴ってるよー。たまにはこうガーッと口中に美味しいお肉の味が拡がっていくような・・・こってりとした・・こってりとした何か。

「そんな都合の良いのって無いよねー・・。うぅ・・・今日も御菓子生活なのね」

甘い御菓子は大好きだけど本当はもっと別のを食べたいのに。これって辛いなぁ〜。うう・・このワッフル美味しい。でもこれじゃ無いの。私が今一番欲しいのは・・。

「お腹は満たされたけど心が満たされないってなんだか切ないなあ」

もういっその事、どこかの学校に侵入しちゃおうかな。もしかしたらまだお手つきじゃない人が居るかもしれないし。うん、きっとそう。絶対に居る!侵入罪で捕まっても構わないの!もう我慢出来ないんだから。

「それじゃ行っちゃおう!とっつげきー!」



・・・やっぱり捕まっちゃいましたー。お説教受けて放り出されちゃった。テヘッ♪でも、目ぼしい人は居なかったし別にいいかなー。今日もダメだったなー。どこかに良い絵描きさん居ないのー?

「・・・ん?スンスン・・何か良い匂いがするの。凄く極上の香りが・・どこからだろ?」


・・・この金玉の湯の中から匂って来るの。もしかして誰か入ってるのね!そうと決まれば突撃って・・お金持ってなかったし。一旦ウチに戻らなきゃねー、ここの女将さんって怒らせたら怖いし。


「・・・・クッシュン!!誰か噂してるのかしら?」


200円持った?持ったー!じゃあ急いで行こうー。誰かに先に取られちゃう前にいっそげー♪こんなに良い匂いなんて凄く久しぶりなのー。

「おっかみさーん、はい200円ねー♪突撃ー♪」

「いらっしゃ・・・慌ただしい子ね〜?」

ん〜〜♪何て素晴らしい匂いなのん!こんなに充満してるなんてよほどの絵描きさんが居るのね。って、あれ〜〜?ここ女湯だよー?なんでー?ま、いいやー。


-カララララララララ・・・-


「・・・・うわぁぁ〜〜〜♥」

す、すごい〜〜♪壁一面に四十八手の絵が描かれてるー!はぁ・・・はぁ・・・しゅごい。こんなに細かく描けるなんて・・。どんな味がするのかなぁ・・・ちょ、ちょっとだけ触れて・・。

「・・!!!」

美味しいーーーー!なんでこんなに美味しい絵に今まで出逢えなかったの!急いでこの絵を描いた人を探さなきゃ。お風呂入ってる場合じゃないよ。早く探しに行かないと誰かに先越されちゃう。

「おっさきー!」

-カララララララ・・・-

「はい、捕まえた。お風呂に浸からないでどこに行くつもりかしら?」

「はーなーしーてー!未来の旦那様が待ってるのー!」

「はいはい、訳は後でいくらでも聞いてあげるから・・・1000数え終えるまでお風呂に浸かって落ち着きなさい!

みゅああああーー!いきなり投げないでよねー!アタシは羽があるからいいけど危ないじゃないの!

「いいこと?此処は御風呂屋さんなの?お客様にゆったりしてもらう為に開いてるのよ?心に安らぎを与えるのが私の御仕事なのよ?お金だけ頂いてハイ、サヨウナラじゃないのよ?」

「ぅ〜〜・・・・わかったわよぉ〜・・。ちゃんと浸かるからそんなに睨まないでよ〜・・」

女将さんの意地悪ぅ・・、1000数えてたら日が暮れて絶対に先越されちゃうなあ。抜け出したいけどこっちチラチラ見てるから出れないし・・・。い〜ち、に〜・・・。



・・・・ひぃ〜・・・ひぃ・・、998〜・・999〜・・1000!もういいでしょ!これで見つけられなかったら女将さん恨んでやるんだからね!でもその前に・・水欲しいの〜・・・。喉カラカラなの〜。


-カラララララララ・・・-

「よく我慢したわね。はい、フルーツ牛乳よ」

「・・・こ、こんなので誤魔化されないんだからね!」

んぐ!んぐっ!んぐっ!・・ぷはぁ〜〜。美味しい〜〜♪じゃなかったの!早く探しに行かないと我慢の限界が来ちゃう!あんなに美味しい絵を味わったら他の絵じゃ満足出来ないの!

「そろそろ時間かしらね〜・・・、それ飲んだら男湯に行きなさいな」

「・・・・ブッ!!ゲホッ!ゲホッ!?」

なななななんで男湯に入っていい事になったのよ!?そんなの・・そんなの・・・嬉しいじゃないの!

「あー、女将さん贔屓してるー」

「今日だけはいいのよー。どうせすぐにわかる事だからねー」

・・・、一気飲みー!んぐんぐんぐっ!はーっ!楽園に行ってきまーす♪


「あ〜ぁ、本当に行っちまったよ・・、いいのかい女将さん?」

「いいのいいの、今日は男湯は休みなんだから」

「へ?それで全然男を見かけなかったのか。でもなんで誰も居ない男湯に行かせたんだ?」

「さぁどうしてかしらねー?私わかんなーい♪」




おっじゃましまーす♪あるぇ〜?誰も居ないよー?脱衣所・・・凄く良い匂い・・じゅる・・。もしもーし、誰か居ませんかー?

「・・・奥に誰か居るのかな?」

-カララララララ・・・-

「あ、女将さんもう少しで描きあがりますんで・・・ん?誰?」

あ・・あ・・、この人からあの絵と同じ匂いが。ひゃふっ!?壁一面に向こうに描かれてた絵と同じのが!しかも寸分の狂いも無く・・。驚いてる場合じゃないの!

「あああの!突然だけど私の旦那様になってくだひゃぶ!んぴぃっ!舌噛んだ!」

「もちろんオーケーだよ」

「え・・、本当に・・本当にいいの!そんなにあっさり返事しちゃっていいの!?本気にしちゃうよ!?今更取り消しなんて無いんだからね!」

「昔から絵を描くのが好きでね・・、いつかはリャナンシーに認められるような絵師になりたいなーって思ってたからこちらこそ願ったり叶ったりだよ」

やったーーー!女将さんさっきは恨んじゃうなんて思ってごめんねー!さぁ、アタシの全身全霊の愛!体で受け止めて!

「おおっとと・・あ」

「あ」

アタシが飛び込んだせいで色が撥ねちゃった・・。大切な絵に傷が・・。

「大丈夫、キミと一緒ならこれぐらいすぐに直せる。だからそんな顔しないで。可愛らしい顔が台無しになるよ」

「・・・うん!アタシも一緒に直すよ!でも・・・ごめんね」

二人で描く絵って楽しいなー♪いつも一人だったからこんな気分初めて♪早く終わらせて愛の巣でもう一枚の絵を描こうね♥




          『でーきたっ♪』


16/07/03 20:48更新 / ぷいぷい
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あちゅいね

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