連載小説
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男性の保育園体験入園、待機児童問題への関心を/2月19日付
解消されない待機児童問題への関心を持ってもらおうと、都内の「魔物保育園」にて未婚の男性を10人を対象にした体験入園が2月19日に行われた。

参加した男性たちはこの日のために配布された水色のスモックと黄色の帽子を身に着けて、送迎バスに乗り込んだ。
参加者の中で最年少の17歳の少年は、「やっぱり(この格好は)恥ずかしいですね。だけど、社会に巣立つ前に育児の大変さについて学べるのは貴重な機会だと思います」と、複雑な心境ながらも社会問題への意欲的な発言をしていた。

保育園に着いた参加者たちの園児体験生活は、体育館での朝の朝礼から始まる。
園長先生のティターニア先生が「皆さ〜ん、おはよーございまーす」と優しげな口調で挨拶をすると、部活動や社会人生活を経た参加者達からは一例と共に礼儀正しい挨拶が返ってきた。
すかさずデーモンやデビルの保育士たちが参加者を一足先に教室へと案内し個別に「お遊戯」を行ったところ、保育士に抱きかかえられて体育館に戻った参加者達は「おはよーございます!」と、幼くも元気溢れる挨拶を返すようになった。
送迎バスを降りる直前までは「これでも来年で高校を卒業ですからね、挨拶くらいビシッと決めなくては」と意気込んでいた少年は、ティターニア園長先生の「お遊戯」の後は「お、おはよーございます!」と、まだ戸惑いが残りながらもビシッと園児になりきって当初の意気込み通り園児体験に取り組んだ。

午前中の活動はお絵かきから始まる。
「うまく幼児になりきれていないのではないか」というティターニア先生の提案により、年齢不相応な振る舞いをした参加者を対象に個別で 「お遊戯」を実施すると宣言され、参加者たちは子供の頃を思い出しながら一心不乱にクレヨン片手に画用紙に向かう。
うっかり漢字や数式を書いてしまったり、器用にクレヨンを持ってしまった参加者が保育士に抱え上げられながら他の部屋へと移されて「お遊戯」をされる中、参加した少年は「ここまでする必要があるのだろうか」と疑問に感じながらも「僕は学生として、他の方は社会人として人生で培ってきた経験則があり、それを無に帰すという事は意識して実行しようと思っても、中々有言実行とは行かない」と話した。
なお、その直後にティターニア先生が「そんなに難しい言葉ばっかり使ったらめっ、ですよー」と抱え上げられて、他の参加者が全員「お遊戯」中だったためその場の「お遊戯」に発展している。

お絵かきの後は、内庭に出て運動が行われる。
お絵かきと「お遊戯」を経て参加者達に早くも疲弊が見られる中、「保育士全員が鬼で参加者を捕まえたらお遊戯」という変則的な鬼ごっこが行われた。
朝礼とお絵かきと「お遊戯」を経てすっかり園児になりきった参加者達は、保育士に追いかけられると転んでしまったり疲れて走れなくなったりと、次々と捕まっては保育士の「お遊戯」を受ける。
仲には、「お遊戯」が一旦終わって教室から出たと思ったら別の保育士が扉の前で待ち構えていて即座に次の「お遊戯」が始まるという礼も見られ、参加者達は久方ぶりの全力の運動を満喫した。
少年はティターニア先生との鬼ごっこ中に転倒、膝に軽症を負ったため治療と「お遊戯」がまとめて行われた。命に別状はないという。
ティターニア先生の「お遊戯」の後には「頭がフワフワする。学校でもこんなに運動はしていないので懐かしい思」と、学校では文化部ながらも無邪気に運動を楽しんでいた。
なお、筆者が少年へのインタビューを行っている間にティターニア先生が教室から出てきて、インタビューの途中で少年を捕まえて更なる「お遊戯」へと発展している。

午前の活動が終わった後はお弁当の時間となっている。
「コンビニの商品やスーパーの惣菜では園児に戻るには難しい」との園の意向で、希望者には保育士が作成したお弁当が配られ、参加者達は手を合わせてからお弁当に舌鼓を打った。
「いっぱい食べて、いっぱい飲んで欲しい」という想いの元、机に置かれたコップには常に麦茶で満たされて、いっぱいに麦茶の入ったヤカンを持った保育士はコップの中身が無くなっていくのをニコニコと眺める。
午前の活動ですっかり空腹になっていた参加者が保育士お手製のお弁当を口に運ぶ中、参加者の中で唯一母親からお弁当を作ってもらった少年は「遠足を思い出します。やっぱり母さんの味ってのは忘れる事はできませんね」と恥らいながらも母親への感謝と共に箸を動かしていた。
なお、少年がお弁当を食べ終わった後にティターニア先生が「母さん、じゃなくってー……ママ、でしょ?」と少年を優しく叱りつけ、そのまま「お遊戯」へと発展している。

お弁当の後には保育士による読み聞かせが行われ、リリム副園長先生の故郷の童話を、保育士たちは感情と嬌声を込めて読み上げた。
読み聞かせの内容と、お弁当の時に飲んだ多量の水分摂取から参加者が尿意を訴えると、保育士たちは参加者の手を引いてお手洗いへと向かう。
膀胱炎等の病気への対策の一環として、参加者の排泄は保育士が直接刺激を行って支援を行っている。
ティターニア先生は「通常の排尿だけではなく、男性には白い排尿も不可欠。保育士にはその最大限のサポートを指導している」と話し、先生自身も少年が「ママ」と呼ぶまで白い排尿の支援を熱心に行い続けた。

午後のお昼寝の時間には、この保育園ならではの試みが見られた。
通常の保育園では、いわゆる「おやつ」の時間と「お昼寝」の時間は別々に割り当てられているが、この保育園では二つを同時に行うという。
参加者達はどういう事なのか混乱しながらも、保育士の指導に従いお昼寝をする事に。
「お遊戯」を何度も行った保育士と参加者がそれぞれペアとなって、保育士に抱かれながら毛布に包まっていく。
そして保育士は衣服を手繰り上げて柔らかな胸部を露出し、先端を参加者の口元へと宛がっていく。
参加者達は「おやつ」の意向を理解し、童心に返って「おやつ」を摂取し続けた。
途中、参加者が起き上がってお昼寝から抜け出そうとした場合は、保育士の手が伸びて頭を撫で上げ、程なくして白い涎を出しながらも参加者達は眠りに付く。
少年からは「ママ……ママァ……」と寝言が聞こえたが、添い寝をしていたティターニア先生から「静かに」とのジェスチャーをされたため、筆者はインタビューを一時中断して教室外で待機した。

一日の日程が終わり、帰りの「おうたのじかん」になっても保育士と離れようとする参加者は皆無であり、参加者達は幼児が温もりある場所を必要とする事を身をもって学んだといえる。
保育士たちは慣れた手つきで子供達をあやしながら様々な書類を渡して、文面を理解できなくなった参加者達にサインや朱印を押させていた。
少年は、「またママに会えるならなんでもいい」と、ティターニア先生の胸に埋もれながら誓約書へサインを行っていた。

参加した少年の母親は、「育児の大変さや問題を、普段育児に関らない男性に理解して貰うというのは素晴らしい試み。この体験を通して、息子や他の参加者が育児について積極的に議論してくれたら女性としてこんなに心強いことはない」と語った。
その一方で、「もう息子は高校生なのに、我が家に待機児童が一人増えてしまった」と切実な悩みを打ち明けた。
なお、少年は高校卒業後はティターニア先生が勤める魔物保育園への内定が決まっているという。
17/02/19 23:33更新 / ナコタス
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■作者メッセージ
前回のリビングドールちゃんから一年以上エタってごめんなさい、物の見事に燃え尽き症候群になってました
リハビリも兼ねて、不定期月刊誌で連載していこうと思います

あと、ここで書いたネタの中で気に入ったものがあればガシガシ使っていただいて構いません、今回の話はむしろください

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