連載小説
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ブラック・ハート&ブンシン・クノイチ
メンセマトと佐羽都街を戦争状態にさせない為に俺は行動を開始した。
2つの街の軍を戦わせない為に先程「策のような何か」を考えたが、それを実行するには佐羽都街の皆の協力が必須となる。

特に、アオイさんの協力が絶対だろう。
俺が考えの通りに事を進める為には、彼女の「影縫いの術」を退けた時に判明した『魔法が効きにくい体質』をフル活用しなければならない。
だからこそ『体質』とは一体どんなものなのかをより具体的に理解する必要がある。

その為には、アオイさんに協力して貰うしかない。
そう思い……アオイさんを説得する事を決めて、彼女の元へ行く事にした。

今……アオイさんが何処へ居るのかを知らない俺は、
先程「領主に関する仮説」を皆に説明した広間へと再び向かっていた。
あそこにはまだ皆が居るかもしれないと思ったからだ。

木造の広い館とはいえ、俺の部屋と広間はそんなに遠くは無い。
それ故に誰かと出会う事など無いと思っていたのだが。

しかし、歩いている途中で。

俺は、ハリーさんの妻である筈の白蛇さんに出くわしたのである。
しかも、彼女の夫であるハリーさんがそこには居なかった。

「また会ったわね、マモルさん」

「ええ、奇遇ですね」

一度、会話がそこで止まってしまう。

口ではそう言いながらも、なんとなく今の出会いが奇遇では無い気がしていた。
というか、白蛇さんが俺を待っていたとしか思えない。
偶然にしては確率が低すぎる。

「私は、私の旦那様の事で貴方に話があって来たのよ。
旦那様のことではあるけれど、彼に聞かせたくない話を貴方にしておきたいの」

「ハリーさんの事で、ですか……?」

成程、ハリーさんの為の話でも「彼に聞かせたくないような内容の話」では、
ハリーさんの居ない所でせざるを得ない……か。
……って事は白蛇さんがこの辺で俺を待っていたのかな?

そう考えれば、彼女が一人で此処に居るのも不自然では無いが。
だとしたら、なぜ俺に?

「ええ、そうよ。
貴方、彼が貴方の話を聞いている途中で様子が変になったのが分かったでしょ?」

「ああ……その事ですね」

俺が広間で「メンセマトの領主についての考察」を皆に話している途中、
ハリーさんは様子が変というか……俺の話を認めたく無いかのような様子を見せる時がちらほらとあったのだ。

そして最後に「済まない」と謝られた。
俺が彼に謝られるような事をしていないにも関わらず、だ。

「彼は……自分の祖国であるメンセマトが貴方の言うような異常な行動を沢山しているのは『自分がメンセマトを離れたせいだ』って思ってしまっているのよ」

「……!」

その発想は無かった……!!
だが、ハリーさんの優しい性格を今一度考えれば、
彼がそういう考えに至ってしまう事も理解出来る。

だからこそ、彼が俺の「仮説」を中々理解してくれなかった事も。

ここまでのレベルになると……最早優しいだとかいう次元を通り越した、
彼自身の変わらぬ性分のようなものなのだろう。

「だから、ね?
私の旦那様がコレ以上苦しまないように、手を組まない?」

「え……?」

唐突に「手を組まないか」という提案をしてきた白蛇さん。

「本音を言えば、さっきまでは貴方にこの事を告げるだけのつもりだったんだけどね」

そう言って、彼女は自分の考えの真意を話し始めた。


俺が先程、佐羽都街の皆が居る広間で「仮説」を話していた時に、
白蛇さんはハリーさんの異常に気が付いた。

この時の俺には分からなかったが、白蛇さんは一目で彼の異常の原因まで見抜いていたらしい。

しかし、彼女は同時に「ハリーさんの異常」に気が付いている者がもう一人居る事に気付く。

それが、俺の事である。
俺がメンセマトに関する事を話す時に白蛇さんやハリーさんに気を使いながら話していたのはバレていたらしい。

わざわざ自分達の為に気を使ってくれた事に対するせめてもの誠意として、
白蛇さんは俺に「ハリーさんの異常」についての詳細を説明する事に決めた。

だが、彼女は「今の俺」を見て気が変わったらしい。

メンセマトと佐羽都街が戦わざるを得ないと分かった時に、
それをどうにか出来ないかと本気で悩んでいた事。
そして、今の俺が「それをどうにか出来る何か」を思い付いているであろう事を見抜いたらしいのだ。

今……彼女が俺に協力して「メンセマトと佐羽都街の戦い」が成立しなくなれば、
愛する夫がその為に苦しまずに済む。

だからこそ白蛇さんは「手を組まないか」という提案をして来たのだ。


「――という訳よ」

白蛇さんは、自分の真意を話してくれた。

俺が「策のようなもの」を思いついているのは本当であるが、
それを他人に喋った事は無かった。

白蛇さん曰く、魔物娘は人を見るだけでその人が何を考えているかが分かる事があるらしい。
「その人間の考えている事」が誰かを想うようなものであれば、尚更……との事だ。

俺は、アオイさんの為……そして「アオイさんの事が大好きな俺自身の為に」戦いを止める。
それが出来れば、結果的にメンセマトが大きなダメージを負わず、ハリーさんは苦しまずに済み……白蛇さんも得をする。

どちらも、愛する者の為。
俺達が手を組むのは、理に叶っていると思う。

しかし俺は、この時点ではまだ頷かない事にした。

なんと言うか……なんとなくではあるが。
今回の白蛇さんの行動は「彼女らしくない」気がするのだ。

彼女が夫であるハリーさんに対して本当に大きな愛を抱いているというのは見ていて分かる。
だからこそ、ハリーさんに隠れるような形でこそこそと何かをするような女性とは思えないのだ。
今回のような事情があったにしても、だ。

今の彼女が怪しいという事を証明するような事実もある。
彼女は俺の考えがどういった物かを詳しく聞いていないにも関わらず「手を組もう」と言って来たのだ。

「……貴女の考えは分かりました」

まあなんにせよ、彼女は自分の真意を語ってくれたのだ。
次は、俺の番だ。

「じゃあ、今度は現時点での『俺の考え』を話しますね」

そう言って、俺は説明を始める。

「俺は……先程皆の前でお話した、
『領主が持つインチキのような力』を白日の元に晒して、
メンセマトと佐羽都街が戦う理由そのものを『間違い』だと証明する事を考えています」

俺の考えをものすごーく大雑把に言ってしまえば、こうだ。

あらゆる手段を使って、
メンセマトの領主が持っているであろう『悪しき目的で使用されている力』を証明した上で、
そのまま『間違い』の原因となった連中を悪の象徴として祭り上げる。
そして、そのまま佐羽都街とメンセマトの『共通の敵』に仕立て上げてしまうという事だ。

要は『2つの街が今戦おうとしているのは全部そいつらのせいだ』といった感じで、
皆が戦う理由そのものを有耶無耶にしてしまうのだ。

「そうする事で、戦いは防げると思います。
仮に戦いがそれだけでは止まらなかったとしても、
不確定要素を除けば残っているのは『いい人達』であるメンセマトの騎士さん達。
向こうの士気はガタ落ちになるでしょう。
……そうすれば、確実に勝てます」

戦いの理由が間違いだと証明出来れば、
戦意を喪失する者が続出する筈だ。
ただでさえメンセマトの騎士さん達はいい人ばかりなのだ。
人ならざる者が相手とはいえ、何の罪も無い魔物達を傷付ける事は出来ないだろう。

「成程……。
貴方の考えは分かったけど、具体的にどうするのかしら?」

「それは、この街の皆と相談して決める必要がありますね。
一応、具体的な案は幾つかありますが……細かい所を詰めるとなると皆に相談しなければ、
俺だけがハデに動いて皆の邪魔をする事になりかねませんし」

俺の言葉に、以外といった表情の白蛇さん。

「貴方が、皆の邪魔になる程の何かをするの?」

彼女は俺が策を考えただけだと思っていたようで、俺自身が動くとは考えていなかったようだ。

「内容を少しだけ言うと、
俺が、俺の世界の火薬を完成させて……ソレの製法をエサに領主を引きずり出すとか。
ヤツを煽って向こうに力を使わせて、俺がそれを『魔法が効きにくい体質』でそれを退けて……そうする事で敵がインチキを使っていると皆に証明するとかですね」

俺の中で、
俺の考えを為す為に何をどうするのか……という事がある程度固まってはいるものの、
まだ細かい所まで全て決まっている訳では無い。
佐羽都街の皆からどれだけ協力を得られるか、で詳細は変化させなければならないだろう。

白蛇さんの目が見開かれる。
俺が話したのは概要だけだが、どうやらこの時点で彼女が思っていた以上の内容だったらしい。

「き、危険では無くて?」

「ええ、それはこの考えを思いついた俺が一番良く知っています。
ですが、これは俺がやらなきゃならない事なんです」

悪しき力を白日の元に晒す、
皆で協力して悪者をやっつける……と言えば聞こえは良いが。
結局は……争いの理由を普通では無い力を持った者に押し付ける、
一部の者を悪者にして皆が団結する、といった『イジメの延長線上にあるような事』が、
俺の考えたやり方なのだ。

佐羽都街の皆にはあえて「そういった部分」は明かさない。
悪意を持って良からぬ事をやるのは、俺だけで十分だ。

「貴方が、アオイさんや私の旦那様に救われたという話は聞いているけども。
その恩に報いようとして貴方が危険な目に合うのは本末転倒では無くて?」

白蛇さんの言いたい事は分かる。
俺が危険な目に遭って「もしもの事」があれば、俺の佐羽都街の皆は悲しむだろう。
特に、アオイさんは。

それでも俺が策を為そうとしている理由は2つある。
1つはアオイさんが戦場へ出て彼女が傷付く可能性をゼロにすると共に、
アオイさんと釣り合うだけの男に成長出来たのだと……俺とアオイさんを含む皆に証明する為だ。

勿論これは、アオイさんの為ではあるけども。
それ以上に「アオイさんの事が大好きな俺自身の為」でもあるのだ。
俺が自分勝手な行動をする理由を言うのに、アオイさんをダシにするなんて論外だ。
だから、今はこれを白蛇さんに言うつもりは無い。

……もう1つの理由は、事情があって誰にも言う事が出来ない。
少なくとも、メンセマトと佐羽都街の戦いが始まらずに完結するまでは。

「皆の為でもありますが、
それ以上に、俺個人の目的を達成する為でもあるんですよ」

だから、俺はあらかじめ考えておいた「建前」を言う事にした。
自分の本音が、かなり混じった建前を。

「貴方個人の目的って?」

「復讐ですよ。
俺を、俺の世界から無理矢理引き剥がした連中への……ね」

そう言って、俺はわざと口角を釣り上げ……ニヤリと笑う。

これは俺の考えの中の「イジメじみた部分」を隠す建前にもなるし、
「俺自身が戦う本当の理由」を隠せるメリットがある。
何より、俺はコレを言うのには「これっぽっちも嘘を付く必要が無い」のだ。

実際……俺がこの世界に来た事へいきなり召喚された事に対する暗い感情は、
いまだに腐る程に残っているのだから。

「確かに俺は、アオイさんやハリーさんに救われました。
彼等が居なければ、俺は今頃廃人になっていたかもしれない。
でも、だからと言って『俺が発狂しかけた原因』を許せるかと言えば……否です」

誰かに復讐をした所で、俺はもう俺の世界へは帰れない。
だが、俺がこの世界へ来る理由となった「佐羽都街とメンセマトの対立」と「2つの街が対立する事となった原因」を許す事は出来ない。
それらに対する憎しみは、今の俺を突き動かす大きなエネルギーの1つでもある。

「そこまで言うなら、私は止めないけど」

お前の言いたい事は分かる。
でも、憎しみを戦いの理由にするなんて気に入らない。

そんな事を言いたげな白蛇さんの表情に、俺は内心でほくそ笑む。
俺の予想通り、向こうは誤解している……と。

しかし、場に居たのは彼女だけでは無かったのだ。
……この時の俺は気が付く事が出来なかったが。

「だけど、そんな事を『貴方を一番愛している魔物』が聞いたら……きっと貴方を止めるわ」

突然、俺の身体が何者かによって身体を拘束される。

「んむっ……!?」

腕を捻られ、俺が片膝を付いたと同時に……口元と鼻に薬の臭いのする布が当てられる。
しまった、と思った時には既に薬を吸ってしまった後だった。

「そんな風に……ね」

どこか安心したような表情でそう呟いた白蛇さんの目に、かすかに移る黒い人影。
そして、意識が遠のいて行く俺を支える、覚えのある柔らかい身体。
それは、間違い無く……。

「アオイ……さん……!」

そう呟くと同時に、俺の意識は……暗転していった。





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「ん……?」

俺は意識を取り戻したが、身体に痛みは無い。
しかし……風邪を引いているかのように、全身に力が入らない。
先程の、薬の影響だろうか。

白蛇さんの喋り方と話の内容、アオイさんの手際の良さからして。
何らかの形で、アオイさんと白蛇さんは事前に手を組んでいたんだろう。

目的は、俺の真意を聞き出す事だったのだろうか?
まあ、俺は『運良く』建前しか喋っていないのだけれども。

寝起きで未だにぼんやりとする頭ではこれ位しか、思い浮かばない。

術が効きにくいなら薬で……か。
俺に傷を与える事もしないが、逃がしもしない。
そんな、アオイさんの意思による絶妙な眠り薬の加減がもたらした結果なのだろう。

身体を起こすと、そこには……襖越しの夕焼けに照らされたアオイさんが俺を見つめていた。
美しき、最愛の女性を見て一気に目が覚める。

彼女が着ていたのは、初めて出会った時と同じような戦小束。

俺が寝ている布団は、大きい。
枕の数は、2つ。

アオイさんがこれから何をしようとしているのかが分からぬ程、俺は鈍感じゃない。

「私が、これから何をしようとしているのかはご存知ですね?」

「……ええ」

これから始まるであろう事は、夜伽でもあるだろうが、
アオイさんにとっては「クノイチ流の暗殺」である。
そして、俺が彼女に「暗殺」されて、完全に彼女の虜となってしまえば……俺が自分で決めた行動指針を何一つ実行できないままの可能性が高い。

正直、俺がアオイさんに圧倒されるのは予想している。
俺は、彼女に勝てる要素など何一つ無い。

「今の私を目の前にして、余裕なのですね」

おっと……追い詰められたと思っていない、ってのがそのまま顔に出ちゃったか。

「まさか。
勝てる要素が何一つ無いって分かってるだけですよ」

だが、勝てずとも負けなければ突破口は有る。
彼女は、優し過ぎるのだ。

「勝てずとも、負けなければ問題は無い……と?」

「ええ」

「何故?」

「アオイさんに、俺を『倒す』事は出来ても『壊す』事は出来ないと思いますから」

此方の本音まで掴まれてしまっては、俺はきっとアオイさんに懐柔されてしまうだろう。
だが、俺は白蛇さんと話していた時点で「そうならないように」建前を仕込んでいたのだ。
まさか、それをアオイさんが聞いているとは思わなかったが……此処ではそれを存分に利用させて貰おうか。

「成程、我慢比べという訳ですか」

「そうです」

「そういう勝負なら、勝てるとでも?」

「此処で貴方を説得出来なかったのなら、俺はその程度の人間だという事です」

俺が自ら危険な事に首を突っ込むのが気に食わぬと言うのなら、せめて証明して欲しい。
アオイさんなら……今の俺のように、魔物娘の優しさを逆手に取って良からぬ事をしようとしている者など、どうにでも出来るという事を。

「……良いでしょう」

アオイさんの瞳が初めて出会った時のように変わる。
彼女は今の俺を完全に「標的」とみなしたようだ。

「では、行きます」

アオイさんは、俺に抱き着き、あっという間に服を脱がしてしまう。
元々薬の影響で力が入らぬ以上、抵抗する気は無かったが、
されるがまま美女に服を脱がされるという普段ではあり得ない体験に……俺の意識が段々と男のそれへと変わってゆく。

胸や尻などの、女性らしさを強調する淫らな戦小束。
そして、それに負けないような……女神の如き素晴らしいプロポーション。

普段はそういった事を考える暇も無かったが。
今、目の前に居る魔物は、極上のオンナでもあるのだ。

「……ふふ」

「!」

アオイさんは、そのまま彼女自身の柔らかい身体を密着させてそのまま愛撫を開始した。

彼女の柔らかい手が、健康的な足が、艶かしい身体が、俺の全てを弄り出す。

「……!?」

だが、その中でも一番驚いたのは彼女自身の女性器から既に愛液が垂れていた事だ。
アオイさんの身体による愛撫もそうだが、アオイさん程の女性が性的興奮をしているという事実に、俺の身体もどんどん昂ぶってゆく。

すっかりアオイさんの色香に呑まれた愚息が硬くなり、彼女の身体に当たる。

「どんどん固く、元気に……!」

「うっ、く……!?」

アオイさんは、勃起した一物を太ももと女性器の間にはさみ込み、擦る。

初めて彼女と出会った時のように、
そのままセックスへ移行するものだと思っていた俺は呆気にとられてしまった。

予想していなかった形で襲いかかる快楽により、俺の力はみるみる抜けてゆく。
彼女の愛液がローション代わりとなり、一物を通じて俺の全身がゾクゾクとした快感が駆け巡る。

「ココ、お好きなのでしょう?」

「…………」

図らずとも、焦った表情のまま無言となってしまった俺の態度を彼女は肯定とみなした。
実際、その通りであるのだから文句の言いようが無い。

じわり、と俺の一物から染み出した我慢汁がアオイさんの愛液と混ざって溶けてゆく。

時には、扱くように。
時には、揉み解すように。
にちゃにちゃと、淫らな音を立てながら。

程よく鍛えられた張りのある太ももは、
毎回違うリズムで動き続けて俺に快感への慣れを与えてくれない。

何よりも……普段のアオイさんからは想像も出来ないような、
彼女自身の色気により俺の理性は殆ど無くなっていた。
熱に浮かされたような表情で腰を振り、
濃厚なオンナの香りを漂わせるその姿は、普段の彼女とは正反対。

そのギャップに、男としての我慢が崩壊してしまう。

「ああっ、ううっ……!!」

「まずは、一度目……❤」

そのまま、どうする事も出来ずに俺は絶頂を迎えた。
ビクビクと震えながら白濁液を吐き出す一物を、アオイさんは自らの服へと押し付けた。

「ふふ……どうですか……?」

彼女の黒を基調とした戦小束の股間辺りが、俺の放った大量の精液で白く汚れていた。

俺の目の前にあるのは唯のザーメンが付いた黒い服の筈なのに、
アオイさんがそれを着ているだけで、どうしてこうも淫らに見えるのだろうか?

背徳的な光景に、俺の一物は再び固くなってゆく。

「次は、ココで……!」

「……あっ!?」

アオイさんは、再び固くなった俺の一物を彼女自身の胸で挟んだ。

「んっ……❤」

アオイさんが自分の胸に唾液を垂らし、そのまま、ソコに挟んだ物を擦り上げる。

「う、あ……!」

快楽により、勝手に声が出る。

アオイさんの双丘に挟まれた一物からは、
先程の太ももとは異なるよりもしっとりとした柔らかい感触が伝わって来る。

彼女の大きな胸による愛撫は、すぐにでも俺をイカせるようなものでは無いものの。
じわじわと俺の性感を高めると共に、俺自身の戦う意思が削がれてゆく。

先程の素股、戦小束への射精、そして今回のパイズリ。
彼女には、俺が無意識の内にアオイさんの身体に対して抱いていたフェティシズムな欲望を全て見抜かれていたようだ。

「もっと、気持ち良くして差し上げます……!」

「う、あ、あ……!?」

胸で俺の一物を扱き続けるアオイさんの、慈愛に満ちた表情。
彼女のパイズリにより、俺の一物だけでは無く、俺の心まで呑み込んでしまうような錯覚を覚えさせられた。

「マモル様。貴方はもう十分頑張ったんです」

「う、ん……!?」

「私は、貴方が生きているだけで十分なのです。
貴方は生きているだけで、私から何時でも極上の快楽を受け取れるのですよ?」

「そん、な……!」

「だから、何も心配は要りません」

「ち、ちが……!?」

「貴方が我々の為に、何かを為そうとして下さっているのは十分承知の上です。
ですが、貴方を危険に晒す可能性を分かっていながら見逃す訳にはいかない」

「うあ、ああ……!?」

「だから、どうか此処は私に『暗殺』されて下さいませ。
貴方を、私に守らせて……!!」

違う、そんなんじゃない。
俺が一方的に守られるとかじゃ無くて。
俺は、貴方と、対等に……!!

そんな言葉を口にしようとして、
快楽に呑まれそうになりながらも、何とか身体を起こす。

しかし、俺の意識が股間から離れるその時をアオイさんは狙っていたのだ。

「はむ❤」

「うぉ!?」

ただでさえ一度の射精とパイズリで敏感になっていた俺の一物に対して、
アオイさんはフェラを開始したのだ。

俺の一物を咥えたアオイさんの顔が激しく上下し始める。
彼女の動きが、男をイかせる動きへと変わる。

「んっ、んっ、んっ……!」

竿全体がしっとりとした大きな胸により激しく扱かれ、
敏感な亀頭辺りをぬるりとした口内で舐り回される。

「っぐ、また出る……!!」

「!」

また為す術も無くイカされる、と思っていたが。

「駄目です」

「んなっ……!?」

アオイさんは、突然フェラチオや胸での愛撫を辞めた。
外へ出る筈だった精液が一物の中でグルグルと渦巻き、俺の劣情がさらに激しく燃え上がる。

アオイさんは蠱惑的な笑みを浮かべながらも、何もして来ない……と思ったのもつかの間。
性欲の波が引きかけた所で、アオイさんが俺の一物に再び愛撫を始めた。
胸元と口で肉棒を抱かれたまま、陰嚢をアオイさんの柔らかい手で擦られてしまう。

「ふふ……果てたいですか?」

彼女の問いに、気が付けば俺はコクコクと頷いていた。
それと同時に、俺の一物がアオイさんの愛撫により許可無くビクビクと震え出す。

「でも、駄目です」

「あっ……!?」

アオイさんは、愛撫を止めて俺の一物の根本辺りを手でキュッと抑えた。
俺が強い痛みを感じる程では無いが、精液の出口はアオイさんによって確かに封じられていた。
一度、気持ち良く射精をしているだけに余計辛い。

下半身から来る切なさで頭が埋め尽くされ、どうすれば良いかも分からず立ち尽くす。
そんな俺をアオイさんは抱き寄せて、彼女が俺の耳元で囁く。

「気持ち良くなりたいのなら、教えて下さいませ。
マモル様が策を為そうとしている本当の理由を……!」

「……!」

決して大きくは無いがハッキリと聞こえるアオイさんの言葉に、冷や汗が流れた。
彼女の声色からは俺の喋っている憎しみ云々が建前でしか無い事を確信している事が感じ取れる。

「白蛇さんは騙せたようですが、復讐云々という理由は私には通用しません。
貴方が、私をそれ程までに憎んでいない事が何よりの証拠です」

「あ……!!」

成程、そういう事か。

俺はメンセマトで「勇者として」召喚されてしまった。
しかし、本来は異世界から勇者と言えるような人間を召喚する筈だった儀式はアオイさんによって妨害され、中途半端に成功したものだった。
だからこそ「異世界人ではあるが、唯の人間である」俺……黒田マモルが此処に居るのだ。

そして、アオイさんはそうなった事を自分のせいだと思っているらしい。

だけど、俺にとっては違う。
だからこそ、彼女の言葉を否定する。

「い、嫌だね……!!」

「なっ……!?」

俺はアオイさんの言葉をはっきりと拒絶した。

「確かに、復讐したいという欲以外にも戦う理由は有ります。
だけど、俺が今更『それ』をわざわざ持ち出したのには、それなりの理由が有るからなんですよ」

「本当に愛する者以外には無口であまり感情を見せない」と言われている『クノイチ』であるアオイさんが、俺に対して「そういったもの」を見せてくれたのだ。
俺も、俺自身の弱い本音をアオイさんにぶち撒ける。

「白蛇さんやアオイさんの言う通り、俺の考えた行動指針は、俺にとっても危険だ。
なんせ、メンセマトの領主が持つ力を暴くのに、俺自身を囮にする事を考えていますからね」

アオイさんの目が、驚きと抗議の色に染まる。
まだ俺の考えは策と呼べる程に完成している訳では無いが、
俺が持つ「異世界人ならではの魔法が効きにくい体質」を使って『間違い』を白日の元へ晒す。
これが、鍵となる事は間違い無い。

「いくら魔法が効きにくい体質が有るとはいえ、
素人がいきなりそんな事をしても成功する確率は低いって分かってますし、
失敗したら相応の何かがあるって事も分かっています。
そして、それが分かっているからこそ……怖い!!」

俺は矢継ぎ早に本音を喋る。

「だけど、怯えているだけではすべき事が出来ずに、
皆がメンセマトとの間違った戦いに赴く事を、指を咥えて見ている事にしか出来ない。
仮に何らかの策を実行出来たとしても、
恐怖心が残っていればそれにより肝心な時にビビって失敗する可能性も高い。
それじゃダメだから……俺には必要なんです。
恐怖心に勝るだけのものが、ね……!!」

勿論、憎しみだけが俺の戦う理由では無いが。
「今こうして、アオイさんに語っている言葉は」全て本音である。

そして、俺が本音を「喋ってしまった」からこそ、アオイさんは悟ったのだろう。
生半可なやり方では……俺の心は動かせぬ、と。

「マモル様の本音、確かに聞き届けました。
ですが……貴方がどうあっても憎しみを捨てられぬというのであれば、
此方も相応の手段を用いるしか有りませんね」

突如、アオイさんの雰囲気が変わった。
それが、復讐を捨てぬ俺への怒りか、
本音を言いつつも結局は質問の応えをはぐらかした事への呆れかは分からない。

だが、今までの彼女には無かった、どこか冷たい「凄み」があったのだ。

「望月流忍術奥義……影分身の術!」

アオイさんがそう唱えると、
彼女の身体から、
左右に半透明な「アオイさんにソックリの何か」複数が現れて、アオイさんから分離する。
そして、それらはやがて彼女と同じ姿形となり、彼女の本体も含めて……この場に計7人のアオイさんが現れたのだ。

「……あ、あ……!?」

自分の中に「詰み」という単語が浮かび、
間の抜けた声を出すことしか出来なくなってしまった。

やばい。

アオイさん1人の責めに対しても意識を保つのがやっとなのに、
7人のアオイさんに本気を出されたらどうしようも無い。

そんな事をされてしまったら、俺はきっと壊れてしまうだろう。
なのに、どうしてだ?

「確かに、魔物娘は悪意を持って人間を洗脳したりはしません。
ですが……愛する物の為に、
少々強引なやり方で相手を『堕とす』事はたまにあるのですよ」

……自分の置かれた状況を理解していない俺に、アオイさんが説明をしてくれた。

俺はこの世界の魔物達が人間に対して、
そこらの人間よりも遥かに大きな愛と優しさを持っている事に気付かされた。
そういった愛をもって俺に接してくれたアオイさんによって、俺は救われたのだ。

しかし、それと同時に「彼女達の愛」を全く受け入れようとしない人間や、魔物娘の愛を逆手に取って彼女達を苦しめるような輩が居るのではないかと心配になっていた。

だからこそ、俺はアオイさんに対して「そういった人間達のやり方」を試した。
そういうやり方こそが、魔物娘に対して有効であると思い込んでいた。
心の何処かで、俺ならば「人間の悪意」をある程度理解した上で、
自分も「それ」を使ってアオイさんを守れるのではないか……、と調子に乗っていた。

しかし、俺に会うずっと前からこの世界で生きて来たアオイさん達にとって、
そういった連中の相手など大した問題では無かったのだ。

魔物娘の……、
アオイさんの大きな愛は『俺なんか』にどうこう出来るものでは無かったのだ。

……影分身の術……か。
俺の手を借りる位なら、自分の手を増やした方がマシってか。

「我々を甘く見た代償……払って頂きます」

アオイさんが冷たく言い放つと同時に、彼女の分身が一斉に俺へ飛びつく。
そして、それぞれが俺の身体に掴み動きを封じた上で、愛撫を始めた。

「な、ちょっ、ぐ……!
う゛う゛う、お……!?」

口内、脇腹、うなじ、乳首、睾丸、足の裏、耳の穴……。
あらかじめ俺の性感帯を見抜いていたアオイさん「達」が、
それら全てを刺激して、俺に饒舌し難い快感を与える。

擽るように、焦らすように。
だけども俺の性感はどこまでも上り詰めていったが、
竿に対しては一切刺激を与えられなかった事で、絶頂を迎える事は無かった。

本能的な恐怖により身体をよじって逃げようとするも、
アオイさん達に動きを封じられて動けない。

アオイさんの本体は、そんな俺をじっと見つめて何かを考えているようだった。
彼女が何を考えているのかは分からない。

しかし。

「これで……終わりです」

アオイさんの本体が俺の一物を掴み、一気に騎乗位で俺を堕としに掛かる。

「う、おアアアアアアアアアーーーー!!!!」

今まで散々焦らされていた一物が爆発したような錯覚を覚えると同時に、
アオイさんの膣内へ精液を放出する。

上の口からは涎と咆哮が、
下の口からは精液が止まらない。
そして、目からは熱い雫が零れ落ちる。

アオイさんの膣内は……以前味わった時よりも締め付けが強く、
このまま何もかも吐き出してしまえと言わんばかりに精液が絞られてゆく。

「ああ……ちょっ……やめ……!!」

「止めませんよ?
マモル様も、憎しみによる戦いを辞めようとしなかったんですから」

散々焦らされた後の射精で一物が敏感になっているが、
そんな事はアオイさんには一切関係無い。

故にアオイさんの責めは一切止まらない。

彼女の膣内のヒダが、俺の一物の弱点全てを正確に扱き上げる。
悲鳴にならぬ悲鳴を上げながら、全てが精液と共に搾り取られてゆく。

そして、俺の意識は混濁していった。

ああ、気持ち良い……。

アは、あはは……。
クノイチには勝てなかったよ、ってか?

本当に、気持ち良い。
もう、アオイさんが居れば何もかもどうでも良いや……!

思考がピンク色に染まっていく。
俺の中の何かが少しずつ変わってゆく。

「今はそれで良いのです、マモル様」

力強く、しかし何処か悲しそうなアオイさんの声に、
混濁していた意識が少しだけ戻る。

死に掛けていた思考が、少しだけ再起動する。
これで良かったのか、と。

しかし、全身からの……脳が焼き切れるかのような快感に全てが押し流され、
全ての思考が闇へ沈み始める。

「貴方がいずれ、我々と同じ魔物に……『いんきゅばす』になれば、
復讐などどうでも良く――」

「!!!!」

突如、
どん、という鈍く低い音が響く。

アオイさんが発した何気ない単語。
インキュバス。
それに対して俺は『反射』で動いていたのだろう。

「「……え?」」

俺とアオイさんは、同時に言葉を発した。
お互い、今起きた事を理解出来ていないのだ。

気が付けば、
俺は身体を起こし、左手を広げてまっすぐ前に突き出していて。
何が起こったのか分からない……といった感じの表情を浮かべたアオイさんが、
俺の前に尻もちをついて固まっていた。

段々と頭が回って来て。
ようやく、俺は自分が何をしたのかを理解した。

自分でも気が付かぬ内にアオイさん達を力づくで振り払い、
気が付けば、アオイさんの本体を……突き飛ばしていた。

彼女に初めて会った時、アオイさんの「影縫いの術」を退けた時と同じように。

寝惚けていた痛覚が、ようやく目を覚ます。
上半身に吊ったような痛みが激しく駆け巡り、俺はそのまま転げまわってしまう。

「いだだ!
いでででででででで!!」

無理も無い。
元々俺が動けぬように、アオイさん達によって身体を抑えられていたのだ。
無意識とはいえ、無理矢理それを振り払ったのだ。
身体に相応のダメージが来るのは当然だろう。

だけども、彼女達は俺をもう一度拘束しようとはして来ない。
アオイさん達は今、何を……?

そう思い、彼女達の方を見ると。
能面のような表情をしたアオイさんの分身達が現れた時と同じような半透明となり、
そして消えていった。

そして、一人残ったアオイさんの方を見ると……。
彼女は、がっくりと項垂れていた。

彼女の髪が垂れ下がり、アオイさんの目を見る事は出来ないが。
畳から聞こえるぽたぽたという音が、俺が「やらかした」のだと教えてくれた。

アオイさんは、泣いていた。
俺が、泣かせた。
「それ」によって、ようやく俺は正気に戻る。

俺が何を思ってアオイさんを突き飛ばしたのか。
アオイさんが、俺の行動をどう受け取るか。
それら全てを、今になって理解した。

この世界の魔物娘について佐羽都街の皆に色々聞いていた時に、
魔物娘と人間の男が交わり続ければ、人間の男はいずれ……男版の魔物とも言える「インキュバス」というものに身体が変化するとは聞いていた。

だけども、俺がアオイさん達と同じ魔物になって……結果的に「異世界の人間」では無くなってしまえば。質量保存の法則以外の何かが俺の身体に入り込めば。
きっと俺の『魔法が効きにくい体質』も無くなる。
そうなれば『ソレ』を使い、
領主の秘密を暴く事が出来なくなり、自分が考えていた作戦を実行出来なくなる。

その事が、嫌だったのだ。
その為なら、無意識に何かを拒絶してしまう程に。

だが、しかし。

それをアオイさんがどう受け取るかという事を考えれば、
悪い結果にしかならない事が容易に想像出来る。

いかなる理由であれ、彼女は俺に愛を持って接してくれたのだ。
それを『反射』で拒絶したとなれば……俺がアオイさんを心底嫌っているという誤解を受けても可怪しくは無い。

「アオイさん……?」

「……申し訳ございません、マモル様」

いつもと同じような声色の、アオイさんの声。
だが、それはどこか機械的で感情を読み取る事が出来ない。

「元居た世界からこの世界へ召喚された事に対してあれだけ大きな絶望を抱いていた貴方に、
『そうなる原因』となってしまった私を受け入れようなど、出来る筈も無いでしょうね」

「……!!!!」

アオイさんが、俺が与えた誤解により苦しんでいる。

俺が不甲斐ないばかりに彼女を悲しませただとか、そんな事でウジウジするのは後だ。
今俺が最優先にすべき事はアオイさんの誤解を解く事である。

「ごめんなさい、貴方の人生を壊してしまって……!」

とうとう感情が抑えきれず、声を震わせてしまうアオイさん。

言葉でどうこうと語っても、今のアオイさんには『俺が彼女に気を遣っているだけ』だと受け取られかねない。
そこで、俺は自らの身体で自分の心を証明する事に決めた。

項垂れるアオイさんの手を取り、自分の愚息に押し当てる。
言葉では何と言えようとも、生理現象は偽れない。
相手の事を嫌っていないと伝えるには適しているだろう。

「……え!?
さっきよりも、大きく……!」

……そう、俺は勃起していたのだ。
アオイさんの性技では無く、自分自身の意思で。

よりによって、
泣いているアオイさんを「オカズ」にして……だ。

自分の為に涙を流してくれるアオイさんが愛おしいという思いもある。
しかし……だからといってこの状況で。
自分で最愛の女性を泣かせて、なおかつその姿に強い性的興奮を覚えるなど尋常では無い。
まさに『鬼畜』の所業としか言いようが無い。

以前……爺さんに襲われた時は、
アオイさんの為なら彼を殺していたかもしれないなんて事を平然と考えていたし、
彼の死に対して暗い感情を抱く事も無く、その事を「謎解き」に使う事しかしなかった。
領主が良からぬ力を使って何かをしようとしている理由をハリーさんに聞かれた時だって、
佐羽都街の皆が考えつかぬような悪どい推測を普通に喋って、ドン引きされた。

前々から兆候はあったけど……ああ、成程。
俺はやっぱり『そういうヤツ』だったって事……か。

「俺は、何をやってたんでしょうね……?」

自分の頭で思った事が思わず口に出て、
意味が分からず困惑するアオイさんに、苦笑いする俺。

俺は人間にあって魔物娘には無い『性格の悪さ』を利用出来る事が、
彼女達に向けられる悪意に対して、同等以上の悪意を持ってやり返せる事こそが、
俺の、彼女達に対する唯一のアドバンテージだと思っていた。

しかし、それの根幹となる『アオイさんへの気持ち』を証明しなければ何も生まれない。
「唯一のアドバンテージ」を有効活用するにしても、順番が逆では意味が無いのだ。

俺は、佐羽都街の皆の優しさや強さに触れ、
救われ、憧れると同時に、今の自分との差を目の当たりにして卑屈になってしまっていた。

どうせ俺なんかじゃ、普通のやり方では皆の役には立てない。
そんな思い込みから……どうせ「正攻法」じゃあ彼女達の為に何かを成したいという自分の気持ちはアオイさんには伝えられないと決め付けていたのは、他でも無い俺自身だったのだ。

俺はもう、俺自身とアオイさんには一切の嘘を付かない。

薬の影響や連続射精で力が入らぬ筈の身体に、力が満ちてゆく。
必要以上に「スレて」しまっていた心に、再び炎が宿る。

確かに、今の俺にはどうしようも無い位にドス黒い部分がある。
その割合が1割か、3割か、9割かは分からない。
だが俺だけが持っているであろう「それ」を最大限有効活用して、
アオイさんを始めとする皆に感謝と誠意を示す。
俺がやりたかったのは、そういう事なのだ。
そして、俺はその事をまずはアオイさんに伝えねばならない。

「俺は先程、貴方を突き飛ばしてしまった。
それ以外にも、貴方の愛を拒絶していると受け取られかねない言動も沢山したと思う。
でもそれは、俺なりのやり方で貴方への愛を証明しようと思った故の行動なんだ」

俺の言葉に、信じられないといった表情を浮かべたアオイさん。

そりゃそうだ。
俺は今、何の前触れも無く「アオイさんを愛してる」事を伝えたのだから。

「俺、確かに言いましたよ?
復讐したいという欲以外にも戦う理由は有ります……って」

「あ……!?」

「そして、アオイさんも分かってましたよね?
俺の言う復讐云々は、嘘じゃ無いにしても建前でしか無い……って」

「ま、まさか……!!」

「自分にとってそんなに都合のいい話」が有る筈が無い。
アオイさんはそんな期待を不安が混じったような表情を見せてくれている。
俺の言葉にそういった表情を見せてくれる彼女が愛おしくてたまらない。

「下手な小細工は、アオイさんを却って混乱させてしまう事に気付けなかった。
だからまずは、貴方への気持ちを証明させて下さい」

動揺しているアオイさんに、言いたい事をサッサと言って畳み掛ける。
再度誤解を招くような隙など、与えない。

「改めて、言います。
俺……黒田衛は、貴方を一人の女性として愛しています」

アオイさんは、俺が何を言っているのかは理解した。

「分かり……ました」

しかし、彼女の表情にはまだ完全には信じられないという事を隠そうともしていない。

「では、証明して下さい。
マモル様なりの愛とやらを……!」

そう言ってアオイさんは布団へ寝そべり、
彼女自身の女性器をくぱぁ……と広げる。

最愛のオンナが、俺をオトコとして誘っている。
だったら、誘いに乗らない理由は無い。
愛と劣情の赴くままに、俺はアオイさんに躍り掛った。

そんな俺を、アオイさんは慈しむような笑顔で受け入れた。
14/08/10 01:04更新 / じゃむぱん
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■作者メッセージ
お待たせしました。

話の切りどころが分からず、普段よりもボリュームが多くなってしまいました。
執筆期間もそれにおおじて長くなってしまいましたが、一区切りはつけられました。

マモル君の「行動指針」や「本音」はあえて明かしていない部分も多く、
話が分かり辛いとは思いますが、この物語のどこかでハッキリさせますので。
どうか最後までお付き合い下さい。

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