連載小説
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不吉の腕輪
太陽の光を妨げるように伸びた木々の通路。その通路を俺、コモン・アルブは歩いている。

「噂通りの通りだな、昼なのに夕闇のような暗さ。これじゃあ町の奴等も乗り込むにも乗り込めん訳だ」

なぜ俺がこんな所を歩いているのか、事の発端を簡潔に伝えようと思う。


「こりゃコモン。酒ばっかり飲んどらんで回収に行ってこんかい」

「うっさいなぁ。これ飲んだら行くって言ってるだろ」

「その台詞、今ので12回目じゃ。あとなん本飲んだら行くんじゃ馬鹿者。・・・・のぉ、コモンよ。今の姿を蒼達に見せるって言ったらどうする?」

「!?・・ずりぃぞ。嫁さんを使うなんて、 行ってくれば良いんだろ」


とまぁ、上司との口論の末に結局行くはめになった訳だ。・・・決して、仕事を早く終えて嫁と酒を飲みたいからではないんだ。

そんなことを考えているうちに目の前には大きな館が現れた。今回はこの館が仕事場である。外装は至るところが剥がれ落ち、壁は蔓状の植物が這い巡ってて見た目お化け屋敷である。しかし、そんなのを気にしていたら仕事にならん。塀門を抜け館内に入り込んだ。


「案外、中は綺麗なものだな。これなら速く終われるな」

館内は、先程の木々の通路とは正反対と言える位の明るさに満ちていた。窓から太陽の日差しが入っており館内通路は所々照らされている。

「さてと、・・・・あ、もしもし。所長? コモンです。目標地点に到着しました。どぞ」

「・・そうか、それで何か解ったかい」

「いや、禁具に関しては何も、それよりも面白い話が聞けましたよ」

そうして俺は、この館の経緯を話すことにした。
この館には元々、前領主と奥さん。そして1人の娘が居たそうな。領主は部類の収集癖で、いつも莫大なお金を物に使い込んだ。 それに呆れた妻は娘を連れてこの館を飛び出そうとするも、怒り狂った領主に娘共々殺されてしまう。
それからというもの、この館には不可解な事が起こりだした。 誰もいない所からの絶叫に似た声が発せられたり、夜中誰かが廊下を歩くような音が聞こえるようになったのである。恐れた領主は収集した品をいくつかこの館に隠して、この場所を後にしたらしい。
それからというもの、この館には宝目当てでの浮浪者が後を絶たなかった。が、皆何かに返り討ちを受けてなにもしないで帰ってくる。そして先月、1人の男性がこの館に行ってから戻ってこない状態へとなった。

「これが俺の聞いた話です。・・・・それよりも所長、本当に禁具がこの館があるんですか?」

「あぁ、わしの情報のツテに間違いないからな。それじゃあ御主は禁具の捜索を、こっちは未帰還の人間を調べておこう」






通信を終えてから数時間が経過した頃、窓の向こうには赤みをおびた景色が広がっていた。あれからずっと部屋という部屋を調べたが何もない。これから更に探すにも時間が時間。仕方なくこの場所で宿泊することにした。

「・・・という訳で、今日はこのままここにいます。蒼達には明日帰ると言っといて下さい。はい、それでは。・・・・・さてそれでは、こっちも楽しむといたしますか」

目の前には多種類の酒のボトルが並べられており、というか禁具を探していたときにキッチンで見つけたのを持ってきたのだ。別にいいだろ、人がいないらしいし。
それから酒盛りをしてしばらくして眠気を帯びていた頃、どこからか声が聴こえてくる。このまま寝るのも仕方がないので眠気を殺して探すことにした。

「・・・声はだいたいこの辺からだな。ここは領主の部屋か。1回探したんだが何も無かったよな」

扉を開くと昼とは違く物という物が散乱していた。因みに俺はちゃんと片付けしながら探しているのでこんなことにはならない。他に変化がないか探していると一角のスペースが異様にスッキリしている。近付いて触れるとカチッと音っがして鈍い音が響いて蓋が開いた。それはまるで何かの叫び声の様だった。

蓋の下には地下へと続く階段が続いていた。多分、避難用の隠れ部屋になっているのだろう。これなら誰にも気付かれ難い。

「この先はまだ行ったこと無いな。・・・行くとしますか」

ということでゆっくりと降りる事にした。勿論、警戒しながらだ。
降りてから辺りを見回すと、壁にはライトが所々で点いており周辺には木箱が何個か積み上げられていた。目を凝らすと奥の方で更に光が見える。近づくと扉になっておりその隙間から漏れているようだった。俺は直ぐさま聞き耳をたてる 。いきなり突っ込むなんて野暮なことはしない。

聴こえてきたのは、・・・・お楽しみ中の声だった。
声からして男は1人、女は2人だ。 何故こんな所でやっているのか疑問に思うが問題は無さそうである。そう確認すると扉をゆっくりと開いた。

「良いよぉ、デック。もっと突いて、壊れるくらい突き上げてぇ」

「デック、キス好きぃ。もっと私といっぱいキスするの」

俺が入ってきたにも関わらず3人は楽しそうに体を合わせている。見てるこっちが場違いのように思えてくる位だ。・・場違いではあるのは確かだがな

「コホン、悪いが話を聞かせて貰っても良いかな?」

いきなり発せられた自分達以外の声に驚いたのか、2人は顔をこちらに向かせる。残りの1人は絶頂を迎えだらけてしまっていた。


「・・・で、君が未帰還者のデック君。こっちのゾンビが領主に殺された妻と娘のアリスとさんとマリアさん。・・・あんた等顔見知りだったの?」

「いやぁ、顔見知りって程では、僕がここに来た時に徘徊していたマリアと出会ってエッチして、それからアリスを生き返らせて2人を妻にしたって感じです」

これまでの経緯の確認も兼ねてデックに質問をする。催眠とか掛かってないので本当の事なのだろう。その間嫁達はお互いを慰めあっている。

「そうだ、悪いがこんなやつ知らない?腕輪なんだけど翠系の宝石が埋め込まれているんだが」

「うーん、見たこと無いですね。この館には結構いますが・・」
「それ、知ってるよ」

2人が声の方を見ると、1人のゾンビが部屋の隅にある木箱からお目当ての物を手にして来た。

「これね、凄い魔力あったの。で、死んでからこの体になったのとデックに会うまでの魔力はこれで補ってました」

そう言って俺の手に腕輪が置かれる。

「貴方が欲しいならあげるわ。私たちが持っていても使い道無いし」

そう言いながら彼女は微笑む。普通なら気持ち良く受け取るのだが俺は、受け取ったその腕輪を彼女にはめる。

「いや、これはあんたが着けるべきなんだ。今は解らなくても後々解ってくるさ」

好意でやった腕輪をつけられて理解できない彼女に俺は、断言するかのように言い放った。それを見て彼らはポカンとした表情をしていた。






夜が明け、太陽が登りだした頃。俺は来た道を歩いている。背中には酒のボトルが大量に入っているリュックを担いで。館から出るときにお願いしたら快くくれたので貰ったまでである。

「・・そういうことで今回の禁具回収は無しにしました。確か"不吉の腕輪"でしたっけ?
未来の不幸が見えるとかでその名が付いたんですよね。で、魔物の魔力を受けた禁具は効果が反対になると、良いじゃないすか明るい未来が見えて。それじゃあ、野暮用済んだら帰りますから」

そう言いながら俺は町にあるデックの家と向かった。
15/07/12 00:39更新 / kirisaki
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■作者メッセージ
お疲れ様です。
前回のリメイクを書かせていただきました。
続けていけるように頑張っていきます

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