連載小説
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フレンドリィラブ(サキュ&リリム)−1
第一話:久しぶりの再会



なぜか校長が出てこない入学式を終え、俺たち新入生は中央本校舎の玄関前に集合していた。そこには、巨大な掲示板がデデンと建っていて、今回の新入生全員の出席番号が書いてある。このフェンリル高校では、大学と同じ出席確認を行っており、俺たちの出席番号は卒業まで変わることはない。

さて、俺の番号はBI323……お、あった……西校舎3Fの……1−12か。さすがに教室数が多いから1−Bとかじゃないのね。

俺の名前は惣流 竜也。フェンリル高校第三十四期生一年の男子生徒その一だ。何がその一かは自分でもわからんけど。両親の都合で小学生のころから何回か転校を繰り返し、決まった友人ができずにいたが……このフェンリル高校には寮が存在している。つまり、そこに入ることができたということはもはや転校による友人と疎遠になる可能性もないわけだ。まあ、唯一の不安は男子寮ではなく、男女混合寮しか空きがなかったことだろうか。魔物娘もいる学校だから、下手に貞操の危機にはさらされたくはなかったんだけど……かくなるうえはと考えた次第だ。

「竜也、君はどこの教室になったんだ?」
「ん?1−12」
「そうか。僕は1−11だ。隣だな。縁があってよかったよ」
「俺のほうこそだ。改めてよろしくだぜ、一志」
「あぁ、よろしく。竜也」

まるで親友のように固い握手を交わすこいつは釧枝 一志。驚くことに受験票を受け取りに行った時の電車でも、受験会場でも、そして合格発表の時にも同時にその場に到着し、同時に同じリアクションを取ったという、不思議な現象を起こして意気投合。入学式よりも前にできたフェンリル高校での俺の友達第一号だ。ちなみに俺の部屋の隣に住むことになった。

「どんな奴が同じクラスになるんだろうな?」
「さてね。まあ、大きな学校だ。クラスメイトの特徴なんて覚えられないぐらいあるだろうさ。楽しみじゃないか。何が入っているかわからないおもちゃ箱を開けるみたいな感覚がさ」
「ははは。言えてる…っと。それじゃ、俺はこっちだから」
「あぁ。放課後に入学記念にコロッケでも買い食いして帰ろう」
「いいねぇ。絶対だぜ」
「あぁ、約束だ」

そうして俺は一志と別れて、教室に足を踏み入れた。

すげえな。やっぱ。

これが最初の感想。教室に入ってすぐに目に飛び込んできたのは人間も魔物も入り混じってがやがやと賑やかな教室だ。
既に俺と同じように友達ができているやつがいるのか、はたまた同じ中学校から一緒に上がってきたやつもいるのか、割とかたまって話しているやつが多い。
やべぇ。もしかすると乗り遅れたのかもしれん。

とりあえず、まずは自分の席を探さないと……机の左上に出席番号が書かれた紙が貼ってあるようだ。えっと、BI323……あったあった。姦しい三人組の女子が座っている前か……うん。話しかけられそうにないな。俺ヘタレだし。

左隣は窓の外をぼーっと眺めている……サキュバスかな?大きな角と羽が生えてるし……少なくとも魔物であることは間違いないんだが……どっかで見た覚えがあるような?

右隣は……うわ……ヤンキー……としか思えないようなド金髪でゴツイ体格のやつが座っていた。かなり進学校の部類に入るようなこの高校でもこんな奴っているんだな……腕を組んで居眠りをしているようだ。目を閉じてゆっくりと息をしている。うわぁ……怖ぇ……

前は……まだ来てないみたいだな。空席だ。ちなみに俺がいるのは窓側から二番目の後ろから三番目。まあ、教師からやや見づらく、そこそこ風通しもいい席だ。俺みたいな中途半端にサボりたいやつとかにとってはいい環境かもしれない。ラッキーだ…周囲にいる人間以外。

「ってかさー、魔物超多くね?」
「言えてるー。どーしよ、卒業まで人間でいられるかな?」
「さあ?一応何人かは魔物になるッポイよ?」
「マジ?どーしよ、あたしもっとかわいくなっちゃうかもぉ」
「ウケるwwwww」
「魔物になってもぜってーそのままだってwww」
「はぁ!?それどういう意味よぉ!」

後ろの三人は人間の女子らしい。聞こえてくる会話から察するに、魔物に忌避感を感じているタイプではないらしい。まあ、今の世の中それが普通か。

「…………」ボーッ

窓の外を見ているサキュバスのほうを見てみる。しっかしこのサキュバス、どっかで見たことあるような……無いような…

「……?」

そんな俺の視線に気づいたのか、こっちに振り返ってきた。そして、その顔が「?」から「!」へと変わる。まるで、思いがけない人と出会ったように。

「も、もしかしてたっくん?」
「?……たっくん?いや、まあ、俺の名前は竜也だけど……」さゆろ
「やだ、嘘……ホントに会えた……嬉しい……ねえ!覚えてない?小学校の時!小学四年生まで隣に住んでた!わたし!彩有里だよ!古命寺 彩有里!……ホントに覚えてない?」

はて、彩有里?古命寺……あ

「もしかして、さっちゃん?」
「そうだよ!さっちゃん!うわぁ!やばい!感動で泣きそうだよ!」

古命寺彩有里。思い出した。一番最初に通っていた小学校で、所謂幼馴染になりえたポジションにいた女の子だ。

「マジか!同じ高校受験してたのかよ!」
「うん!だって……あ、いやうん。なんでもない。それよりも、久しぶり!!元気だった?」
「あ、おう!元気だったぞ。さっちゃんのほうは?」
「わたしは、いろいろあってサキュバスになっちゃったけどこの通り!元気でござい!」
「おぉ。そういえば、人間だったっけ?」
「えぇ〜そこ忘れてたの〜?」

正直、存在ごと忘れてました。そういや、いたな〜ってレベルになってた。
まあ、面と向かってそんなこと言えないけど。

「なんでサキュバスになったんだ?」
「ん〜。秘密。明かせない乙女の花園だよ」
「さいで。いや〜、初めて話しかけられた女の子が知り合いでよかった。これでマジで知らない相手だったらテンパってただろうからさ」
「そっか。うん。昔は女の子だろうがガンガン遊びに誘ってたたっくんも思春期男子になってますな〜」
「あのころには戻れねえよ」

いろんな意味でな。と、さりげなく足を組む。話してたら気づいたけど、彩有里、立派に実ってるな……嬉しそうに体揺らしたりしてるからキングマシュマロセットがおいしそうに揺れてるんだよ……

「そういえば、彼女とかできた?たっくん、見た感じかっこよくなってるし、一人ぐらいいたんじゃない?」
「いねーよ。あの後も何度も転校して彼女どころか禄に友達も保ててねえよ」
「あらま。そうなんだ」

第一、俺がカッコいいって……自分で言うのもなんだが、サキュバスになっても男を見る目ってのは養われないようだな。

「よかった。たっくん、まだ誰のものにもなってないんだ……無理やりは嫌だし、頑張って両思いにならないと」

吹き出しそうになった。なんだこのラブコメ。え?それよりちょっと待って。もしかして、もしかするとこいつ、俺のこと好きなの?今の聞き間違いじゃないよな?勘違いじゃないよな。はっきりと両想いって言ったよなこいつ……
びっくりした。何に対してかというと、俺の聴覚に対してだ。ふつう、ラブコメでこういうこと言われる奴って耳悪いんじゃないの?めちゃくちゃはっきり聞こえちまったんだけど俺。
それよりも、こいつ聞こえてないと思ってまだ独り言続けてるよ。俺が突っ込んでないからって自分で変だと思わねえのかよ……やめろよ恥ずかしいよ。どんだけ俺が好きかわかったからやめてくれ。いい加減ポーカーフェイス保てない。

「お〜い。帰ってこ〜い。何をぶつぶつ言ってんだ〜?」
「んひゅいっ⁉あ、いやなんでもないよ〜アハハハハハ……」

はぁ……いきなりのラブコメでびっくりしたけど、これは……俺ってもうこの段階で恋人がいないって悩む必要、無くなった感じか?これからさっちゃんがアプローチかけてくるだろうし、それを受け止めて俺がもしこの子を好きになったらそれを受けたらいいってことだよな……うはwwwおkwww俺のハイスクールラブコメライフ、ベリーイージーモードwwww

……ま、そんなうまくいくはずがないわけで……俺はこの段階ではこの先に起こる、全く新しいラブコメの気配に気づいてなかった……
13/11/25 08:44更新 / しんぷとむ
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■作者メッセージ
新ジャンル:最初っから主人公が気付いてる系ラブコメ

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