連載小説
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バトル後…

クゥ「アタシの…エボ…うっ…えぐ…ぐす」

夜の峠に
一匹の魔物の嗚咽が響く

クゥ「ごめ…ニャ…ひっく…アタ…シが…グス…ミスったせいで…こんなぁ…うう…」

エボIXは見るも無残な状態だった
リアの左テールはガードレールに勢いよくぶつけた為
リアの三分の一は潰れ
トランクはへしゃげ
リアバンパーは割れて吹っ飛び
リアの窓ガラスとテールランプは粉々に砕け散り
サスペンションもくの字に曲がってしまっていた
おまけに茂みにフロントから突っ込んだため
フロントスボイラーやインタークーラー周辺にまで
損傷が入っていた
クゥは
自分のミスでエボがこのような事になってしまった事に
悔しさ
そして大切なものを壊してしまった
虚しさに
押しつぶされて
泣いていた

太一「だいじょぶかァ!!ク…ゥ…?」
クゥ「ごめんニャ…!えっぐ…ごめんニャ…ひっくアタシの…エボ…!」

クゥが事故った事を聞きつけた太一が駈け付け
ボコボコのエボにすがって泣いているクゥを見つけた
そして静かにクゥの傍まで行き
優しく声をかけた

太一「クゥ…」
クゥ「たい…ち?」
太一「大丈夫か…?」
クゥ「アタシの…アタシのエボが…うわあぁぁぁん!!」

クゥは太一の胸に顔を埋め
大きな声で泣きじゃくった
今まで手足のように馴染んでいたモノ
今まで一度も傷つけず愛着を持って大切に扱っていたモノが
自分の手によって
壊してしまった
そんな悲しさを理解した太一が
クゥを抱きしめて
おもむろに口を開いた

太一「走り屋は、誰だって一台は車を潰すもんさ…、どれだけ愛着を持っていても…どれだけ大切に扱っても速くなるには安全を犠牲にして、限界をあげなくちゃならない。走りの上達にはリスクが必要なんだ。完璧な人間なんて居やしないんだから…」
クゥ「グス…た…いち…ひっく」
太一「むしろ…車だけで済んで良かったじゃないか…、もし…この事故でお前に何かあったらと思うと…、俺は…!」

クゥを抱く太一の腕に力が篭る

クゥ「ありが…とう…太一…心配かけて…ごめんニャ…」

落ち着いてきたクゥは太一に感謝とお詫びの言葉を入れた
しばらくして
救急車とパトカーが到着し
エボはトラックの荷台に乗せられ
運ばれていった

そのころ
優は瞬たちの待機する場所に戻って
壊れてしまったRを診ていた

優「タービンが逝ったんだな、こりゃあ…」
エレナ「直せるのか?」
優「原因がわからないからなんとも言えないけど、多分もうタービンは寿命だな」
瞬「他にも諸々交換しないとダメだろうな」
優「だな、戻ったら一度オーバーホールしてみるよ」
セツナ「災難だったな」
優「あちらさんのエボに比べりゃあマシさ」
エレナ「あのドライバーはダイジョブだったのか?」
優「幸い、かすり傷で済んだが…、車の方がな…」
セツナ「気の毒にな」
優「まぁ…あとで謝りに行くさ」

由佳「だいじょぶかにゃ?」

相手のドライバーの事を話していると
不意に後ろから声を掛けられる

由佳「いきなり失速したってクゥには聞いたけど、やっぱりエンジントラブルかにゃ?」
優「いえ…、エンジンではなくて恐らくターボが寿命だったようです。それよりあのスフィンクスの娘は大丈夫ですか?」
匠吾「大きな外傷は無かったけど一応という事で病院に運ばれてったよ」
由佳「クゥの事なら心配ないにゃ!それと、瞬!今日はありがとにゃ!とても清々しいバトルだったにゃ!」
瞬「あ!いえ!こっちこそありがとうございます、俺も楽しかったですよ」
由佳「私はお前に負けて、もっと速くならなきゃって、改めて実感したのにゃ。だから次会う時は覚悟するのにゃ!」
瞬「楽しみにしてますよ!」
由佳「それじゃ、そろそろ帰るかにゃ?匠吾」
匠吾「そうだな、それじゃまたな」
由佳「またにゃ」

二人は車に乗り込み
自分たちの家へと帰っていった

優「そういや、渉たちは?」
エレナ「先にホテルに戻ったよ、理由は悟ってくれ」
優「あ、ああ」
セツナ「アタシ達もそろそろ戻るか?」
瞬「そだな、優、そのR、普通に走るだけなら大丈夫だろ?」
優「ああ、タービンが終わってるだけだからな」
瞬「そうか、だったら帰りますか〜」

それぞれの車に乗り込む鶯のメンバー達

そして

ホテルへと戻るためにそれぞれ

アクセルを踏み込むのだった






14/01/02 03:47更新 / 稲荷の伴侶
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■作者メッセージ
どうも、稲荷の伴侶です

なんか、事故った車の様子を書いていたら
こっちまで悲しくなってきました
やっぱりだれでも大切なものを失ったら悲しいですよね…
まだまだおかしいとこあると思いますが
大目に見て下さいm(_ _)m

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