読切小説
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スーさんといっしょ
1999年7の月、恐怖の大王がやってきて世界が滅びる。
そんな大昔のおっさんがのたまった戯言を信じていた人間はそう多くはなかった。
だから「それら」がやってきた時、誰もが何も出来なかった。

そんなこんなで、それから何十年かくらい経った。









かしゃん、かしゃん、かしゃん、かしゃん。

台所で朝食の準備をしていると、背後から何かを擦り合わせるような規則的な音が近づいてくる。
その音は自分の後ろで止まり、今度は服の裾を軽く引っ張られるような感覚がした。

くいくい、ぐいぐい、ぐいー。

引っ張る力は段々と強くなり、僕はやれやれと苦笑するとフライパンを置き、
火を消してから振り返る。
するとそこには、だぶだぶのパジャマを着た、半面を頭蓋骨で覆った少女がいた。
その髪は真っ白で、その肌は病的を通り越して死体のようなレベルで青白かった。
厳密に言うなら、死体のような、ではなく、死体なのだが。
彼女はスーさん。何十年か前にこの世界に現れた、魔物と総称される者達の1人。
でもまあ、そんなことは割とどうでもいい。彼女はスーさん。自分の同居人で、恋人。
自分にとっては、それだけでいい。

「おなか、すいた」

「はいはい、ちょっと待ってねスーさん。僕も朝ごはん食べたいから」

「んー」

掴んでいた裾を離し、かしゃかしゃと音を立てながら居間へと戻っていくスーさん。
その小さな背中を見つめながら、なんとなしに自分が生まれるずっと昔のことを考えていた。
僕が生まれる前、1999年にやってきたのは恐怖の大王ではなく、
なんと別世界からやってきた『魔王』だった。
大分昔にいわゆる『剣と魔法のファンタジー』な世界を支配した魔王様は、
次の標的としてこの現代世界を選んだ……訳ではなく、
何かの拍子に偶然世界が繋がってしまったらしい、と何かの本に書いてあった。
その際に向こう側の住人、つまるところ魔王様の治める魔界の住人がこちらに溢れ、
当時の世界は大混乱に陥ったらしい。

その魔界の住人達が、スーさんたち『魔物』なのだそうだ。
しかしその後彼女達と戦争が起こったかと言えばそうではなく、
多少のイザコザはあったものの、彼女達は速やかに世界に受け入れられていった。
その当時の状況は、この一つの言葉に集約されている。

――――人間、痛みや苦しみには耐えられても、
    気持ちいいことや楽しい事にはそうそう耐えられるもんじゃないよね。

彼女達は獣耳がついてたり、羽が生えてたり、腰から下が虫や魚だったりしたけれど、
例外なく美女や美少女であり、男性に対して好意的な人たちが多かった。
そんな彼女達に擦り寄られて骨抜きにされてしまう男達はとても多かったんだそうだ。
そんなこんなで魔界に戻る(もしくは魔界に移住する)人や、
こっちの世界に定住する人、様々な人の流れが起こり、
何十年か経った現代、彼女達魔物はその辺に割といる、レベルに落ち着いた。

道を歩けば空をハーピーが飛んだり、ワーラビットが郵便配達をしたり。
TVをつければワーキャットやアリス、セイレーンがタレントをやっていたり。
スーさんのように、人間と恋仲になる人たちだって沢山いる。
いい時代になったなあ。割と真剣にそう思う。

居間に戻って定位置に座ると、当然のようにスーさんが膝の上に乗ってくる。
ちょっと骨がごつごつするけど、体重は軽いしもう慣れた。
スーさんは、スケルトンと呼ばれる種類の魔物だ。
人間の骨に魔力が宿って、それが魔物に変化するという、アンデッドと呼ばれる類の魔物。
ゴーレムの一種でもあるらしいけど、詳しくは知らない。スーさんはスーさんだし。
スーさんを膝に乗せたまま朝食を摂る。たまにスーさんが欲しがるので与えたり、
口まで持って行ってスーさんが食べようとした所に自分で食べたりし、しばし穏やかな時が流れる。

「ごちそうさまでした」

「さまー」

そして揃って手を合わせ、朝食を終える。食器片付けようとしてスーさんを退けようとすると、
彼女はそれを拒否してぐいぐいと身体を押し付けてきた。ちょっと痛い。

「ごはんー、わたしもごはんー」

「片付けしてからにしたいんだけど……今すぐ?」

「すぐー」

身体を反転させ、スーさんが僕にしがみ付いてがくがくと身体を揺さぶってくる。
彼女は素直で単純だけど、それだけに自分に正直だ。
だからこうなるとてこでも動かないだろう。僕は観念すると、スーさんのパジャマに手をかけた。
ボタンを外していくと、スーさんの青白い肌があらわになる。
スケルトンは基本的に服を着ないためか、スーさんもあまり服を着たがらない。
しかし現代社会において常に全裸と言うのも問題があるので、家ではパジャマ、
外では外用の服を着て貰う事にしている。

「じっとしててね、脱がせ辛いから」

言い含めて、そのまま上着を脱がせる。青白い肌に続いて、肩から先、
つまりスーさんの両腕も露になった。顔や胴体と違い、肩から先は種族名通りの骨の腕だ。
関節からは僅かに鬼火のような、温度の無い火が漏れている。
続いてスーさんを立たせ、下も脱がす。下腹部までは青白い肌だが、
足の付け根から先が腕同様剥き出しの人骨。これがスーさんの全てだ。
一糸纏わぬ身体を見つめていると、スーさんがじい、とこっちを見ている。
脱がしたのにじっと眺めるだけなのでご不満なのだろう。

何故食事なのにこんな事をしているかと言えば、これがスーさんにとっての食事だから。
スーさんのようなアンデッドやサキュバスのような魔物たちは、異性との性交渉、
つまりセックスを行うことで精気を吸い取って活動する。
他の魔物たちも、必ずしもしなくてはならないわけではないけど、
いわゆる「そういうこと」がとても好きな種族が多い。
これは魔物の王である今の魔王様が、高位のサキュバスであることが原因らしい。
なんでも大昔は大半がもっとおどろおどろしいものであったそうだが、想像もできない。


「ごめんねスーさん。相変わらず綺麗だから見とれてた」

「なら、いいー」

ほっぺたをつついて鎖骨に口付け、そのまますべすべの肌を鼻先でなぞる。
スーさんは体温がないので肌がひんやりして気持ちいい。
もっとも、スケルトンの身体は魔力で作り出した仮初の代物に過ぎないらしい。
本体と呼べる部分は骨しかなく、こひんやりしたすべすべのの肌も、
少しぱさぱさの髪も、感情の変化があまりないかわいらしい顔も、偽者なんだと偉い人は言う。

自分が好きになったのはスーさんの上っ面の部分に過ぎないのではないかと、たまに怖くなる。
もしスーさんが最初から骨しかない魔物だったら、化け物と恐れ逃げ出していたかもしれない。
スーさんがここにいるのは、僕のことが好きなんではなく、ただ楽に精を貰えるからかもしれない。
ほんのちょっとの疑問が、恐れが、自分の中でむくむくと大きくなっていく。
僕はスーさんのことが好きだ。スーさんがいるから今の僕がいると言ってもいい。
だから、スーさんがいなくなってしまったら、僕は死ぬしかないだろう。
スーさんのいない世界になんて、いてもしょうがないから。

「……スーさん」

「んー?」

思わず、愛撫する手を止めてぎゅっと抱きしめてしまう。
そんな訳はないのに、そんな筈は無いのに、
スーさんがどこかに行ってしまいそうな気がして。
僕はもう、スーさんなしでは生きてはいけないから。

「僕はスーさんのことが大好きだよ。愛してる。スーさんが望むなら、なんだってする。
 だから、お願い。どこにもいかないで……ずっと、一緒にいて欲しいよ……」

体が震える。こんな事を言って、嫌われてしまいやしないかと。
スーさんの表情には変化は無い。というか、出会ってからこの方、
スーさんの表情が変化した所を見た記憶が無い。
スケルトンなのだからしょうがない事では有るのだが。
目を瞑り、スーさんにしがみついてしばらくそうしていると、ふと頭に硬いものが触れた。
それは頭に触れると左右に動き、僕の髪をわさわさと乱す。
顔を上げると、スーさんが僕の頭を撫でていた。表情は相変わらずよく分からないけど、
よく見ればどことなく眉根を寄せているようにも見える。

「わたしは、どこにも、いかないよ」

スーさんがぽつりと呟く。同時に、スーさんが僕の頭を軽く抱き、あやすように頭を撫でる。

「だって、あなたはこんなにこわがり。ほっとけない」

「スーさん……」

熱くなっていた頭を、スーさんの体がゆっくりと冷やしていく。
それに従って、どうしてだかぽろぽろと涙が溢れてくる。

「わたし、だれでもいいわけじゃ、ないよ?」

身体をぎゅっと押し付けて、耳元に囁くように。

「あなただからいい。あなたじゃなきゃ、や。
 おくびょうで、なきむしで、さみしがりやで、からだおっきいのにきがよわくて……」

そして身体を離して、視線を合わせて。

「とってもやさしー、あなただからすき」

その時一瞬だけ、スーさんが笑ったような気がした。
思わず瞬きしたらもういつものスーさんで、
呆気に取られている隙に、スーさんは僕の腕を解いてかがみこんだ。
普段はトロくて不器用な手はこんな時に限っててきぱきと動き、
手早く僕の陰茎を取り出してしまう。

「めそめそしてるくせに、もうこんなに……」

さっきまで嫌われるかも、などと考えていたのに、自分は現金だ。
スーさんが触れたとたん、半分縮こまっていたそれはむくむくと鎌首をもたげ、
スーさんの手を押しのけるように屹立した。ちょっと、正直すぎる自分が恥ずかしい。

「だって、好きな人に触られたら、普通こうなるよ」

「それでいー。それだけでいー。わたしはあなたがすき、あなたはわたしがすき。
 いっしょにいるりゆうなんて、それだけでいーの」

自分の心中を言い当てられた気がして、どきりとした。
スーさんはふだんぼんやりしている癖に、僕が何か悩んでいるとすぐにそれを察する。
そして今のように、僕の心を見透かしたように元気付けてくれる。
そういう時には、決まって今のように饒舌になる。
どっちが素なのかはよく分からない。多分どっちもなのだろう。
ああ、そうか。と、僕はなんとなく気付く。そんなスーさんだから、僕は好きになったのだと。

「だから、こーゆーことするりゆーも、それだけでいーの」

ぱくり、と、陰茎をスーさんがくわえ込む。スーさんの顔面は半分が骨むき出しなので、
奥の方で舌が動きながら、常に甘噛みされているような感覚が僕の触覚を襲う。
視覚的にも、小さなスーさんが口を一杯に開いて奉仕する様はとても来るものがある。
好きな人にされている快感、安心感と、いけないことをしているような背徳感。
気がつけば僕はスーさんの頭を押さえ、自分から腰を揺すっていた。

「ぁむ、ん、ちゅ、んゅ、んぐ……」

ひんやりとした狭い口の中を往復し、その感触を存分に味わう。
先走りの漏れる先端を、スーさんの口内のあらゆるところに擦り付ける。
口蓋に、下の裏に、喉に、その更に奥に。
もはや気遣う余裕すらなくなって、猿の様にがくがくと腰を揺さぶる。

「ごめん、スーさん、優しくできそうにない……っ!」

「いひほ、ほっほ、はふほーひ、ひへほいーほ?
(いいよ、もっと、らんぼーに、してもいーよ?)」

咥えさせられた状態で喋られて、僕のものはますますもっていきり立つ。
同時にどんどんと切羽詰って、動きにスパートをかける。
あと少し、あと少し。がんがんと、膣にするように腰を打ちつけ、
僕のものは容赦なくスーさんの喉を蹂躙した。そして、終わりは唐突に訪れる。

「んぐ、んむ……んっ」

「くぁ……っ!?」

不意に、スーさんが空いている手で僕の袋をむんずと掴み、玉をころころと転がす。
この刺激には流石にたまらず、僕は溜めに溜めた欲望をスーさんへと放出した。

びゅ、びゅる、びゅぅ……

喉から直で、スーさんの体内に精液を流し込む。喉の奥はどうなっているのか、
流し込んで漏れないのか、そんなことを考慮してる余裕は無かった。
さっきからずっと、スーさんが手の中で玉を転がし続けてたのだ。
僕は痙攣のように大きく震えながら、スーさんの新たな手技に翻弄されていた。
そのまま3回ほどスーさんの為すがままに搾り取られてから、
ひとまずは満足したのかようやく口を離してくれた。

「もうちょと、がんば」

訂正、まだ搾り取る気みたいです。
スーさんは膝立ちになり、口で搾り取っている間に準備完了していた秘所を指で開くと、
いまだ萎える気配の無い陰茎をめがけ腰を落とした。

「ふあぁ……っ!」

僅かに上擦った声をあげ、スーさんがびくんと体を震わせる。
口の中同様ひんやりとした膣内に包まれ、襞が僕自身をやわやわと撫でる。
スーさんはそのまま腰を下ろし、奥の奥まで押し込むと、左右に軽く腰を捻る。

「スー、さん、今日は、随分積極的……ぃっ」

「きょーはかわいーとこ、みれたから。ごほーび」

ぎゅ、きゅ、ず、ぐちゅっ。

ほとんど変化の無い表情の分を身体で補おうというのか、
スーさんは僕が動く間も与えないくらい矢継ぎ早に攻め立ててくる。
捻りを入れて腰を上下させていたかと思えば、
奥まで飲み込んで、やわやわと撫でるように中を動かす。
やられっぱなしも何なのでスーさんのお腹や胸を揉み解せば、
今度は首筋をべろりと舐めながら小刻みに腰を揺すって陰茎を扱き上げた。
その拍子ににスーさんを触る手が緩むと今度は床に押し倒され、腕を押さえつけられる。

「おいたしちゃ、め」

今度はそのまま騎乗位で攻め立ててきた。振りほどくのは簡単だったが、
いつになく積極的なスーさんもいいな、と、そういう趣向と割り切って抵抗をやめる。

「こゆのも、すき?」

はい、大好きです。スーさんがしてくれるならなんでも。
素直にそう答えると、スーさんはゆっくりと見せ付けるように抜き差しを始めた。
スーさんのちっちゃいそこを押し広げて出入りするものが、
スーさんの粘液に塗れてぬらりと照り返す。物が脈動し、一回り太くなった。
それを文字通り肌で感じ取ったスーさんは、腕をさらにぐっと強く握り、
少しづつ、抜き差しの速度を上げて行った。卑猥な水音が、部屋に満ちる。
抜き、挿し、締め、捻り、撫で。
騎上位と言うスーさんの好きに動ける体勢で興が乗ったのか、
スーさんは少しだけ息を荒げ、更に勢いを増す。
繋がっているところからはじゅぷじゅぷと激しい水音が漏れ、
スーさんの粘液が僕の身体や床に飛び散った。

「ちょーだい、ごかいめっ」

スーさんは切羽詰ったようにそう言うと、一際激しく腰を打ち付けてくる。
その攻撃にさっきまで散々攻め立てられた僕が耐えられるはずも無く、
スーさんが腰を下ろすのにあわせて腰を突き上げ、思う様スーさんの中にぶちまけた。





それから暫く後。散々搾り取られた疲労で居眠りを始めた恋人の青年から離れ、
スーは洗面所でうがいをしていた。4回も口で搾り取ったので、匂いが気になるのだ。
さっきまでの行為中、唇を許さなかったのもそのあたりに起因する。
がらがらとひとしきり口の中をゆすいだ後、スーは鏡を見つめる。
真っ白な頭髪、右半分の頭骨がむき出しになった顔面、青白い顔。
身体を見下ろせば、骨格むき出しの四肢に、起伏に乏しい、これまた青白い肌の胴体。
正直、気にしていないわけではないが、それでも恋人が愛してくれるからいい。
スーはそう割り切って日々をすごしている。

鏡の中の己を見つめながら、先程までの行為を振り返る。
正確には、さっきまでの行為にいたる直前の、恋人の顔を。

――――まだ、さみしーのかな。

スーと恋人が出会ったのは、数年前に遡る。
出会った場所は、富士の樹海。自殺の名所として知られる所である。
スーもそのさらに10年ほど前に色々あってそこで自殺し、スケルトンとなった身で、
そのままぼんやりとしながら樹海の中で日々をすごしていた。
恋人と出会ったのはそのときである。

――――あのときは、ほんと、したいみたいなかおしてたな。

人の気配がしたので、男ならば精を頂こうと近づけば、そこに青年が居た。
死体であるスーが思わず後ずさるほど、青年の顔には生気がなかった。
そのままおもむろに首を吊ろうとする青年を何とか押しとどめ、スーは青年と会話した。
よくある話で、親が事業に失敗し、莫大な借金を背負った上で一家心中を図ったらしい。
だが青年だけは死に損ね、借金自体は遺産や諸々の全てを売り払った金で完済。
はれて自由の身となった青年だったが、後に残ったのは空っぽな我が身だった。
家族も家も全て失い、身一つで放り出されたのだから無理も無い。
そんな彼に、スーは共感を覚えた。
生前のスーもまた、経緯は違えど孤独に耐え切れず死を選んだからだ。

――――だから、いっしょにいたくなったんだっけ。

寂しがり屋の男と、似たもの同士のスケルトン。
なんとなく、で始まった共同生活だったが、すぐにお互い惹かれあうようになった。
とりあえず手に職をつけよう、と色々学び、どうにか食っていける程度には収入も得た。
スケルトンという都合上スーの表情は察しづらく、よく青年を弱気にさせるが、
スーはスーでこんな自分でも受け入れてくれた青年の事を心から愛している。
だから、これでいいのだ。それでいいのだ。そう思う。
スーは濡れタオルで軽く身体を拭くと、新しい濡れタオルを用意して居間へと向かう。
とりあえずは、青年の身体を綺麗にしてあげる為に。






「相変わらずお前気が小さいなー。折角スーさんいんだから、
 もう少し自信持てよ。少しは図体に釣り合うくらいの肝を持て」

「仕方ないじゃないか……スーさんを信用してないわけじゃないけど、
 僕なんてまだまだだし、スーさんに釣り合う男になれてるのかなって思っちゃうんだよ」

アレから数日後。僕は友人達と桜の下で花見をしていた。
友人達の隣には、それぞれ個性的な外見をした魔物達が。
彼らは青年のアパートに住む隣人達で、魔物を恋人に持つ繋がりで交流が芽生えたのだ。
ちなみに内訳はサハギン・マンティス・サイクロプスの3人。
スーさんを含めると、見事に無口・無表情系が揃っている。

「まあ、気持ちは分からないでもないですが。
 無口だったり無表情だったりする相手を恋人に持つと、たまにそう思うこともありますよね。
 相手が自分を好きでいてくれてる、っていうのが分かってても」

僕を含めた4人の中では一番若いであろう少年が、お茶を飲みながら一人ごちる。
すぐにその隣に居たサイクロプスさんが少年の腕を抱き、じい、と見つめ始めた。
大丈夫ですから、そんな見なくても大丈夫ですから。
汗を一筋たらしながら賢明にサイクロプスさんを説得する少年を見ながら、
僕は膝の上のスーさんを見つめる。

「まだちょっと自信はないけど……それでも、僕はずっとスーさんと一緒に居るから。
 それだけは、信じてて」

「んー」

いつもどおりのぼんやりした顔でスーさんは頷く。
その頭に顎を乗せ、そのままぎゅっと抱きしめる。
春の陽気に、ひんやりしたスーさんの身体は大変心地いい。ずっとこうしていたい。
ちらりと友人達に視線をやれば、僕が抱きしめたのを見て羨ましくなったのか、
さっき僕に自信を持てといった友人が膝にサハギンちゃんを乗せていた。
さらにそれに当てられたのか、残った1人にその恋人のマンティスさんが抱きついていた。
サイクロプスさんは先程にもましてじい、と見ていた。仲が良くて大変よろしい。
僕はスーさんを抱きしめたまま、その様子を微笑ましく見ながらスーさんに話しかけた。

「皆仲良いねー」

「ねー」

「僕らも負けてらんないね」

「んー」

「ずっと、こんな日々が続くと良いね」

「ん」

「……スーさん、大好きだよ」

「……わたしも」

最後の返事に僕は嬉しくなり、思わずスーさんを強く抱きしめる。
なんかもう、そうしなければどうにかなってしまいそうだったからだ。
しかしあまりに強かったからか、あまりすわりの良くないスーさんの首が、ぽろっと落ちた。

――――どっとはらい。
11/04/20 16:18更新 / 与太郎

■作者メッセージ
お目汚し失礼します。
皆さんのSSを読んでいたら、何かこうこみ上げてくるものがあったので思わず1本。
第1号は図鑑を見ている内に何か愛着が沸いてしまったスケルトンさんで。
可愛いですよね、彼女。ぎゅってしたくなる。
一応色々とネタはあるので今後とも投下を続けていこうかと思ってます。
良ければ宜しくお付き合いの程を。
なにぶんここでは初めてなので、誤字や問題などありましたらご連絡下さい。

それでは、また。ここまで辛抱強く読んでいただき有難うございました。

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