読切小説
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厚着なセルキーさん
 俺はスコッドと言う者だ。ちなみに旅人

 俺の恋人は魔物娘の例外かも知れない
 今までに二度俺はこいつに命を救われた
 普通の魔物娘ならそこで営みをして夫婦になるだろう
 実際俺だって『あぁ、俺はコイツと結ばれるのか・・・」と思ったさ
 見た感じ美人だし悪い気はしないと考えた
 何で上半身も毛皮を着ているのか不思議に思ったりはしたが・・・
 だが、実際は

「それじゃあ、お兄さんまた会えたらここより温かいところでね〜」

 等と言いながら手を振って泳いでいくのだ
 そりゃもう唖然としたね
 シー・ビショップじゃあるまいし目の前のエサをそのまま逃した様なものだからな
 そして俺は興味を持った、男を襲わないセルキーを

 でもって次に再会するのはまた俺が溺れた時だと思うだろ?
 違うんだよ

「・・・おまえこんなとこで何してんの?」

 旅費を稼ぐため、あいつにまた会えるかもしれないという淡い期待を持って俺は漁師の手伝いをしていた
 手伝いを始めて3日目、あいつと遭遇した
 漁の収穫としてな

 そりゃ、海の魔物娘が網にかかるのは稀によくある事だ(断じて間違いでは無い)

「あぁ・・・いつぞやのお兄さん・・・」

 顔色が悪く何か病気にかかったのかと思った

「おい、大丈夫か?顔色悪いぞ」

「お・・・」

「お?腹が痛いのか?」

 ぐきゅるるるるるる...

「お腹すいた・・・」

 その場に居た漁師全員と俺は見事にズッコけた



−港近くの宿屋−
  



 俺がこのセルキーと知り合いということで他の人はものの見事に俺に押し付けた
 ちゃっかりコイツの分も宿代を取ってな!バイト代が減る!

「いやぁ助かったよぉ、お兄さんありがとうねお魚くれて」

 もちろん俺の財布からしょっぴかれたけど

「それにしてもセルキーが空腹で網にかかるってどういうことなんだ?魚取り放題なイメージがあるんだが」

「あー、渦潮に飲み込まれた時に銛無くしちゃったぁ」

 なんじゃそりゃと思ったが一々突っ込んでいては疲れてしまうので放っておく

「そういえば自己紹介していなかったな、俺はスコッド」

「そうだったねぇ、あたしティナ。セルキーだよ」


 ベットに座るティナを改めて観察する
 背で言えば170の俺と同じくらいだろうか
 スタイルは・・・下半身はともかく上半身もアザラシの毛皮を着ているため分からない
 端から見たら本当にアザラシにしか見えないだろうな

 キラーン☆

 ・・・なぜか頭にかぶっているアザラシの目が動いた気がするが気のせいだろう、うん気のせい

「ティナは何でそんなに着込んでいるんだよ、他のセルキーは・・・その・・・む、胸以外出してるじゃん」

「スコッドって童貞?」

 質問をスルーしての心臓への鋭い一撃を喰らってしまった
 何の前触れもなく確信を付いた繊細な答えをだ

 当の本人はそんなことをお構いなしに続ける

「あ、この格好だったね。私って他のセルキーと比べて寒がりだからこんな格好と暖かい地方目指してるの〜」

「ふーん、あともう一つ聞くけどなんで今まで俺を助けた時に襲わなかったんだ?セルキーってそれ脱げば・・・」

 そこまで言ってティナの様子が変わった

「あわわわわわ・・・・」

ブルブルと震えだして終いには泣きだしてしまった

「おい、俺何かしたか!?」

「や、やだよ〜脱ぎたくないよ〜寒いよ〜皆何で毛皮から出れるのー!」

 どうやらティナの中では 性欲<<<寒さ らしい


「わかった!わかったから!脱がなくていい・・・と言うかそういう話じゃなくて!」

「でもエッチはしたいー!」

 したいんかい

「でもするのはシー・ビショップさんの前でー!」

 あぁ、確か男が海の中で暮らせるようになるだっけ?

「優しい人がいいー!」

 なんだか個人的結婚願望の暴露になってきた
 面白いので黙っていよう

「というかお兄さんがなってぇ〜!」

 へー・・・・はい?

「ぐすん」

「俺が何になるって?」

「旦那様に、初めてあった時から気になってたの」

「旅人だけどいいのか?山の中や森の中だってすすむぞ?」

「頑張って跳ねるもん」

「ど、童貞だぞ?」

「あたしだって男の人と経験無いもん〜」

「・・・」

「・・・」

 沈黙が続く
 い、いいのだろうか?田舎の母さん父さん、俺嫁が出来るかどうかの瀬戸際にいます


「お」

「お?」

「おっぱい無いけど勘弁して下さい〜!」

 またも涙を流しながら暴露された
 頭のアザラシも泣いている、生きてるんじゃないかそれ?

「あー分かった分かった、結婚はともかくまず一緒に旅をしよう」

 お互いのこともそんなにわかっていないし

「ぐすん、いいの?」

「ああいいとも、よろしくティナ」

「スコッド・・・大好きー!」



−1週間後−


「なぁ」

「んー?」

「降りてくれない?」

「やだ〜スコッドの側が良い〜」

「側っておまえな・・・」

 俺におんぶされてんじゃないよ!!!
 重いんだよ!明らかにティナの体重以上に!
 何入ってんだよその毛皮の中!

「もぐもぐ・・・」

「ん?」

 何かを粗食する音がするのでティナの方を向く
 干し魚を頭ごとバリバリと食べていた

「!?」

「どーかした〜?」

「それドコからだした?」

「帽子の中〜こんなのもあるよ〜」

 そう言うと彼女は毛皮の中に腕をつっこんで
 にゅるんという擬音と共にクロスボウの弓部分をなくした形をした銛を取り出した

「!?」

「でぇ〜」

おもむろに茂みの中に銛を向ける

「えい♪」

 ばしゅんと銛が打ち出される!
 鈍い音が聞こえた後、銛についた紐をたぐり寄せると大きな鳥が貫かれていた

「銛、無くしたって言ってなかったか?」

「あの町のバフォメットさんに血をあげたらくれたの〜すっごい便利〜」


 ・・・拝啓、母さん父さん。俺の将来の嫁は狩りの天才かもしれないです


 そんなこんなで俺の旅は南に向かって、シー・ビショップを探す旅へと変わった


(おしまい)
13/02/28 21:43更新 / ホシニク

■作者メッセージ
エロなくてゴメンナサイ
セルキーさんいいですよね、毛皮に入るだけじゃなくて抱きまくらみたいにしてお昼寝したいです。
ひなたぼっこしながら・・・zzZ

あ、もしかしたら続くかもしれないのです

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