読切小説
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アリス日記
――私はアリス。

1ページ目

きょういっしょにまちにいったの。
まっしろなえほんかってもらったの、にっきっていうんだって。
おにいちゃんたら、だいじなことをわすれないようにまいにちかきなさいっていうの。
たしかにアリスはものわすれがおおいけど、だいじなことまでわすれないのに……。



2ページ目

きょうはおにいちゃんにあたらしいもじをおしえてもらったよ。
おにいちゃんのマネしていっしょうけんめいがんばったらおにいちゃんがほめてくれたの。
えへへ、お兄ちゃんってかけるようになったよ。




3ページ目

今日はいつもよりたくさんおべんきょうしたよ。
おにいちゃんがアリスがもっとがんばればまちの子みたいにがっこうに行けるかもっていってくれたの。がっこうにもいきたいけど、お兄ちゃんがよろこんでくれるから、もっとおべんきょうするね。



4ページ目

今日はお兄ちゃんといっしょにクッキーを作った。
はじめてのおりょうりだったけど、アリスはじょうずだねってほめてくれた。
こんどはこっそり作ってお兄ちゃんにあげるんだ。



5ページ目

きょうはあさからお兄ちゃんとおべんきょうしました。
ちょっともじをどわすれちゃってたみたい、かけないもじがあったよ〜うっかり。



6ページ目

今日ももじをわすれちゃってたみたい。
お兄ちゃんがおべんきょうのじかんをふやすっていってた。
おべんきょうもいいけどアリスはお兄ちゃんとあそびたいなぁ〜。



7ページ目

今日はお兄ちゃんがまちにお出かけ、アリスはお家でおるすばんでした。
一人でおするばんはちょっとさびしかったけど、くまのぬいぐるみをかってきてくれました。
ありがとう、お兄ちゃん。



8ページ目

今日はお兄ちゃんがくらくなってからお出かけしていきました。
今日はかえってこないって言ってた。
ちょっとさみしい。
いい子にしてたらおみやげかってきてくれるってやくそくしたの。
おみやげがたのしみだな〜。
ちゃんとくまさんとおるすばんしたよ。



9ページ目

あさにお兄ちゃんがかえってきた。
それでね、アリスがいい子にしてたから赤い石がついたくびかざりをもらっちゃった。
すっごいたいせつなものみたい、なくさないようにずっともってなさいっていってたよ。
今日はお兄ちゃんといっしょにすごせたの。
それがいちばんうれしかったよ。



10ページ目

今日はじめて、にっきを見なくてもきのうのこと思い出したんだよ。
っていったら、お兄ちゃんがいきなり、ないちゃった。
アリスへんなこと言ったかな?



11ページ目

今日お兄ちゃんにえほんを読んであげた。
いつもよりスラスラ読めてほめられちゃった。
おべんきょうもいつもよりいっぱいおぼえれたし、なんだがうれしいな。



12ページ目

今日、おしろのへいたいさんがお家にきたの。
お兄ちゃんはおしろのえらい人とお話をしにおしろまでお出かけ。
せっかくもらったくびかざりももって行っちゃった。
いやだって言ったけど、お兄ちゃんにめいわくかけれないもんね。
それからずっとまってたけどお兄ちゃんかえってこなかったよ。
そうだ、お兄ちゃんのためにりょうりを作ってまっててあげよう。



13ページ目

お兄ちゃんごはんをおいてお出かけしちゃったようです。
また、おしろまでいったのかな?
今日もかえりがおそくなりそう。



14ページ目

今日はごはんがありませんでした。
お兄ちゃんわすれちゃったのかな?
たべるものがなかったからお兄ちゃんにおしえてもらったクッキーをつくってたべたよ。
とってもおいしかったから、すこしお兄ちゃんにのこしておきます。
はやくかえってきてね。



15ページ目

お兄ちゃんがクッキーをおいていってくれた。
あまくておいしかったよ。
アリスもこれくらいじょうずにつくれたらなぁ〜。



16ページ目

きょうもお兄ちゃんとあえなかったね。
さみしいよ。



17ページ目

きょう、お兄ちゃんのかおをわすれそうになりました。
お兄ちゃんにあいたいよ。
わすれないようにお兄ちゃんのかおをえでかいておきます。
(クマのぬいぐるみの絵が描かれ、クマの隣に横長の黒丸。少し離れた場所に小さい黒丸が描かれていっる)



18ページ目

きょう、おにわからお兄ちゃんのこえがきこえました。
けどおにいちゃんはいませんでした。



19ページ目

きょうはおにいちゃんがきてくれた。
アリスをぎゅっとしてくれた。
もうはなさないね



20ページ目

おにいちゃんえほんよんでくれない。
だからいっしょにそとであそんだ。
ずっといっしょ。



21ページ目

おにちゃんあそんでいたらおめめとれた。
ほうたいぐるぐる てあげた。
おにいちゃんありすはいいこ。



22ページ目

おに ちゃとれた
かお だけみてる



23ページ目

おに ちゃん
く き お しよ



24ページ目

だれ いない



25ページ目

いない



26ページ目

い十よいよ



27ページ目

レ1十よレ1よ



28ページ目

鉛筆で1ページを黒く塗りつぶされ、所々血のような黒ずんだ液体の跡が残されている。
既に文字として認識出来る執筆はもう残されていなかった。





それ以降白紙の紙が続く。
そして最後のページにはこう記されている。




アリス。
サキュバス種 悪魔型。
幼い少女の姿をしたサキュバスの一種で彼女は性行為の記憶を抹消する。
(以下アリスに関する特性などが書かれている)

僕のアリスは、生まれつき自分でも制御出来ない程の魔力を持っていました。
肉体を維持するためにアリスは記憶を消すことで自分の魔力を消費することを覚えてしまったようです。
アリスは昨日の記憶すらまともに覚えていられません。
僕はアリスを救うために、たくさんの知識を教えてきました。
しかし、日が経つにつれ忘却の量が増えてきています。
アリスの記憶量ではもう間に合わないません。
そこで僕は王都に魔力を抑えるというオルデガンの魔石の存在を知りました。
僕は今日オルデガンの魔石を盗みに行きます。
たぶん僕は無事では済まないでしょう。
もし、この日記を目にした方はどうか僕の代わりにアリスを救って下さい。




17ページ目のクマの横に書かれた黒丸は日記に登場する兄の死を予期したのではないだろうかと我々は推定している。
連行された日から考えると、処刑された日と絵が描かれた日が同じということが分かる。
我々はこの日記から、アリスに何かしらの予知能力があるのではないかと研究を進めている。
様々なサンプルで実験をしたのだが、どれも結果が出せないでいる。
個体的な能力という説も挙がったが残念なことに、この日記を発見した時にはすでに彼女アリスの姿はどこにもなかった。







――私はアリス。





――忘却のアリス。


10/01/11 21:47更新 / nagisa82_s

■作者メッセージ
アリス日記を読んで頂きありがとうございます。
初投稿でドキドキしています。
元ネタはバイオハザードの研究員の日記です。
バイオウイルスによって人間の理性を失っていく研究員と、記憶を失っていくアリスを被せてる感じです。
今度はちゃんとした小説っぽいを載せたいと思っています。

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