読切小説
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初めての旅、初めての出会い
今、私は竜皇国ドラゴニアを前にしている。
魔物についてや人と共存している様子などを知ろうとする旅の最初の目的地としてこの国を訪れた。

私の故郷は教団の教える主神を崇め魔物を排斥する反魔物領ではないが、かと言って魔物と積極的に交流をしたり魔物の商人と交易をするほどでもない、何の変哲もなく山の中で細々と暮らしている村だった。
しかし少し前に一組の魔物の夫婦が移り住んできたのだ。
すぐに村の人と親しくなっていき、魔物などについて色々と教えてもらったことで関心が高まり、実際に自分の目で見て耳で聞いて見たくなったのだ。

村から最も近く新魔物国家でもあるとのことで、最初にここ竜皇国ドラゴニアを目指したのだった。


1日目


入国の手続きを終えて入ると、既にドラゴンやワイバーンを主に多くの魔物とその夫と見られる二人組が街に多く溢れている光景が広がっていた。
実際に仲の良い魔物の夫婦に会ったとはいえ、これほど沢山いるのを目にして頭を打たれたかのようだ。
魔物と夫婦に目を奪われている所から我に返ると、竜翼通りに並ぶ宿で部屋を取り身軽にしてから観光に出かけるのであった。
大通りの店を幾つか見て回っていると、竜の国だけあってドラゴンと関わりのある道具がとても多い。
魔法店では竜の爪や鱗など身体の一部を使った物や、魔力を込めて作られた物など竜と密接な関係にあることひしひしと感じた。
中でも目を惹かれたのはドラゴンを模した土台が綺麗な宝玉を抱えているオーブだったが、色が付いているのといないのとで値段が大きく変わるのが気になっていると、店員のドラゴンからやけに熱い視線を送られている気がして嫌な気配を感じてしまい商品を戻すと逃げる様に出てしまった。

空腹を覚えたので飲食店に入り食事を頼むと、並の量を頼んだはずなのだが非常に量が多い料理が出てきた。
食べ切ることが出来るのか不安であったけれど、味は格別で無我夢中にガツガツと食べて完食すると周りの竜からの眼差しに照れを感じる。
一息つくと別の席から嬌声が聞こえた。空耳かと最初は思ったものの間違いなく、恐る恐る覗くと食事を終えた二人組が激しく交わっている光景を目にしてしまった。
動転した心を落ち着けようとするが、あの声に共鳴するかの様に他の席でも交わり始めては喘ぎ声が出始めてしまい、酷くいたたまれない気持ちになってしまった。
魔物は愛する人と場所を選ばず愛し合うとは聞いていたものの、まさか人目を憚らずに始めるとは思いもよらなかった…

食事を終えてからも店を眺めたりふらふらと散策をしていると、どうも大通りから外れて路地裏に入ってしまったようだ。
不自然なまでに霧が掛かっており、いかにもといった妖しい雰囲気が漂っている。
雰囲気を裏切らず並んでいるお店も表にある品物よりぐっと怪しく出所が不明な道具から危険そうな薬や武具などがあり、触れることすら躊躇ってしまう物ばかりである。
そして何よりここでは隠すことなく公然と交わる情景が広がっていてあまりにも目に毒だ。
魔物から声を掛けられる回数もとても多くなり興味の湧くことを言われたりもしたが、頭から出される危険信号に従って相手をせずに進むのだった。

路地裏を抜けた頃には陽が沈み始めていたので急いで宿へと戻りその日を終えることにした。


2日目


朝起きて朝食を取っていると、闘技場の方で大会が催されていることを耳にする。
戦いや争いと無縁な生活だったため、闘技場で腕を競いながら互いに高め合う想像をして期待に胸を膨らませながらドラゴニア闘技場へと足を進めている。

無事に到着し見てみると今まさにリザード種の魔物と人間が一対一で戦っている所だった。
武器を手に戦う姿に興奮しながら観戦をしていると、魔物の方が力も技術も人間を上回っている様でじわじわと追い詰め始めていた。
ここから人間が巻き返すのではとわずかに期待をしていたのだが、そんなことはなくそのまま押し切られて負けてしまった。
次は人間側が勝ってくれるのだろうかと物思いにふけていると急に周りから歓声が上がり目を向けると、なんと勝った魔物が敗れて動けなくなった人間をそのまま犯し始めていたのある!
戦いの熱が冷めきらないまま魔物が人間を抱いている場面に酔ったかの様な不思議な気持ちになってしまう。
内心ドキドキしていたが平静を装いつつも闘技場を離れ、気分を切り替えるために雲上地区へ行くことにした。

思った以上に時間も掛かり疲れもしたが、そこからは竜翼通りを一望出来るほどの壮大な景色が広がっていた。
ワイバーンの住んでいる家が多く見られ、良い景色を楽しみながら夢中になって歩き回ると陽が沈んでいることに気付かず、そろそろ帰ろうかと思った時には既に辺りが暗くなってしまっていた。

人間の男が魔物のいる街を一人で歩くのは襲ってくださいと触れ回る様なものだし、竜翼通りまでの道が暗くとても危険極まりないのだが、かと言ってこのまま宿まで無事に帰れるかも怪しく何とか出来ないかと悩んでいる所を一人のワイバーンが通りかかった。
先ほどの不安が現実のものになるのではと思いびくびくしつつも事情を話すと、自分が宿まで送り届けようと言う。
送る建前で連れ去られるのではと思いはしたものの、他に良い方法がないので提案に乗ることにして、ワイバーンである彼女の背に乗って竜翼通りへ降りていくことに。

到着するまでの間に彼女の名前は「リヴィア」で、ドラゴニア竜騎士団に所属していて仕事で遭難者の救助もしているためこういったことには慣れているなどの話を聞く。
星明りに照らされて見える大きく開かれた翼に腰からすらりと伸びている尻尾などの魔物の部位、綺麗な後ろ顔や滑らかで美しい背中など女性の部位の2つが組み合わさった身体が目の前にあることに思わず目を奪われてしまったのと、昨日今日と人と魔物が交わっていた光景が深く記憶に残っており、目の前に魔物の身体があるのだと思うと、ドラゴニアの夜景が全く目に入らないままだった。

何事もなく泊まっている宿屋に送り届けてもらい、深く感謝の言葉を伝えると顔を赤くしながらなんていうことは無いと言ってすぐ飛び立ってしまった。
初めて魔物の背に乗り身体に触れたことにドキドキした気持ちが止まらないままだった。


3日目


今日は朝から昨夜のワイバーンに送ってもらったことが忘れられず、特にアテもないのに雲上地区へ再び訪れていた。
ふらふらとうろついていると良い香りが鼻を通り抜け、香りに導かれて歩を進めると魔界料理店「ラブライド」に到着した。
ちょっとした空腹も感じていたので軽食を取ろうとパムムという物を持ち帰りで注文し、食べながら歩いていると、不意に上空から何かがパムムを取って食べてしまった。
何者かと見ると、その後ろ姿には見覚えがあってまさしく昨日送り届けてもらったワイバーンのリヴィアだった。
声を掛けるときまりの悪そうな顔で振り返り、取った相手が昨日背中に乗せた人だと気づくとみるみる顔が赤くなっていった。

見聞を広めるために色々な土地を見て回ろうと旅していることを言うと、パムムを取って食べてしまった罪滅ぼしにとドラゴニア領内の案内や魔物に襲われない様に護衛をしようと言った。
申し訳なさから来る提案を無下にするのも想い、私はガイドをお願いすることにした。

竜翼通りやその路地裏に闘技場、雲上地区など大体の皇国内を回ったことを伝えると、それなら領内のダンジョンに行ってみるのはどうかと言われる。
ダンジョンを探索する、そんな子供心をくすぐられる響きに快諾し、観光案内ガイドへツアーの申し込みをし、旧ドラゲイ帝国跡廃墟へ行った。

ダンジョンと言うだけあってドラゴンや他の魔物を数多く見掛けたが、リヴィアと一緒にいると襲われることもなく安全に探索をすることが出来た。
途中、金属が溶けた塊を見つけたりもした。
なんでも、竜塊と言うそうで人間はよく記念として持ち帰って加工屋に人形にしてもらうことが多いのだとか。
私もと形の良さそうな頭二回りほど小さい竜塊を持って帰り、ダンジョンを終えて早速加工をしてもらおうとお店に寄って加工を依頼する時に、竜塊をリヴィアの姿にしてもらおうと店員にこっそりとお願いをした。

何故彼女の姿にしてもらおうと頼んだのか自分で少し不思議に思った。
昨日、困っていた自分を助けてもらった時からずっと彼女の事が気に掛かっていて、今日も雲上地区をうろついていたのは初めて会えた場所に行けば再び会えるのでは…と期待していたのだろうか。
そう思うと急にリヴィアのことが魅力的に見え、愛おしくさえ思えてきた。

リヴィアにどんな形にするのかと聞かれたが、本人に言うのは気恥ずかしく完成までの秘密だと誤魔化してしまった。
加工には2,3日掛かると言われ、それまでの間はリヴィアに領内などの案内をと、相手の都合も考えていない厚かましいお願いをすると、意外にも快く引き受けてくれた。
この時の彼女の顔は、心なしか頬が染まっている様に見えた。


4日目、5日目、6日目


加工が終わるまでの間は、リヴィアと共にドラゴニア皇国内でまだ見ていない様々な店を見て回ったり、領内にある緑豊かな明緑魔界へ行って自然を楽しんだり、他のダンジョンへ行って風景を楽しみながら探索をしたりと、二人で見て回っている間は自分一人でいた時よりもずっと心地良く楽しく感じられた。
まるで付き合っているかの様に思えてきて、リヴィアにより惹かれていき、好きになっていく気持ちが強くなり抑えられなくなてきた。

この気持ちを隠さずに伝えよう。


6日目夕方


頼んでいた加工が終わっただろうと店を訪ねると、完成していると言われ美しく綺麗なの形に彫られた人形を受け取った。
どんな形にしてもらったのか聞かれたので、リヴィアの形に彫られた人形を見せると彼女は涙を流しながら感極まった様に口を手で覆い、何も言わずに私の手を取り近くの宿屋へと引っ張られてしまった。


XX日目


それからは昼も夜も分からなくなるほどに何日もずっと彼女と今まで見たこともないほど熱く情熱的に交わった。
ようやく互いの勢力も体力も尽きた日の朝、隣にいる彼女は前に私からパムムを取ってしまった時と同じばつの悪い顔をしていた。
こんな雰囲気も何もあったものではないが、改めて彼女の顔を見て言った。



「リヴィアのことが好きです。
 どうか、私と一緒に色々な世界を見せてくれませんか?」



「………はい!」



彼女は顔を真っ赤にしながらもとびっきりの笑顔で答えてくれた。





そして日は経ち、私達は平原を歩いている。
二人の首にはリヴィアの爪を使って作られた「番の首飾り」を首から掛け、様々な魔界を訪れる旅を続けている。
リヴィアはドラゴニア騎士団を退団し、私と一緒に色々な物を見てみたいと付いて来てくれている。
まさか見聞を広めるための旅で最初に着いた国で妻を娶るとは思いもよらなかったが。
数え切れないほどの沢山の思い出も作っていくだろう。
そしてこれまでも、これからもずっとリヴィアと一緒に過ごしていくだろう。
首飾りに刻まれた「二人でずっと幸せになれますように」という言葉と共に。
16/12/14 07:35更新 / 群青

■作者メッセージ
初めての魔物娘図鑑SS投稿でもあり、こういった文章を一般公開するのも初めてで、描写が足りなさすぎたり逆に多すぎでクドかったりと拙い部分があるかもしれません…
エロの描写も書こうとすると顔真っ赤になってしまうので、エロ抜きの純愛っぽさを頑張って何とか出そうとしましたが果たして

この様な作品ですが、良かったなど反応を頂けたら飛んで喜んじゃいます!

次は一番好きなバジリスクを主役に(出来れば魔物化の様子も込み)で書いてみたいなぁと。

これからモチベを上げながら少しづつですが書いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

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