読切小説
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春告げ祭りの夜に
いつになく酷い寒さに襲われた春を告げるお祭りも、もうすぐ終わりを告げようとしていた。僕は外を見ながら静かに外の喧騒に耳を傾ける。
「もうすぐ……」
「ねえ、何か言った?」隣に座り祭りの余韻に浸る彼女……パメラが僕の呟きに気付き顔を向ける。
「いや、何でもない」
「フ〜ン」腑に落ちないといった面持ちで、僕を睨む。ていうか、拗ねる。「誰か他の人の事、考えてるでしょ?」
僕は僅かに眉を動かす。今、彼女に気付かれる訳にはいかない。
「まさか。パメラ以外の事なんて考える必要もないだろ」
「……そう?」上目使いに僕を見つめてくるパメラの仕草に、少し緊張させられてしまった……「なら、良いんだけど」ジッと見つめられると、見透かされそうで正直怖い。
今は、彼女に
      ばれる訳にはいかないんだ。
僕は不意打ちとばかりに彼女の唇へキスをすると、笑みを浮かべる。
「ば、馬鹿!」真っ赤になってソッポを向く。かわいいなあ。
でも、それも もうすぐお仕舞い。
僕には 間もなく 

僕等は一つの罪を犯した

今は遠くなった故郷で、僕達『3人』は幸せに暮らしていた。僕・ミレアムと二人の幼馴染、パメラとシアは、いつだって一緒だった。本当に仲良しだった。
「いつかは、みんなで魔王を倒しに行こう!」と本気で意気込んでいた僕。
「よ〜し、私も魔法使いになってミレアムと一緒に行く!」と調子を合わせたパメラ。
その後ろでいつもオドオドしながら「わ、私も」と付いてきたシア。
何も知らない子供の日々は、瞬く間に過ぎてゆく。
一人の男子が剣を振り、少女達が魔法を覚え、村の近くに跋扈する魔物を討伐に行くという話になるまでそう時間はかからなかった。
そして一人と二人の関係が異性となるにも。
「村はずれの洞窟に魔物が住み着いたんだって。で、その洞窟の前を通る旅人や商人を襲っている所為で、他の村と連絡が付かなくて困ってるんだって」
今思えば、それこそが彼女の策略だった。
村はずれの洞窟に“何が潜み”“何があるのか”そんなことすら調べずに近づくなんて、冒険者として失格な行為を僕等はしでかした。ただ一人、パメラを除いて。
当然僕等はその魔物退治に立ち上がった。無謀にも。準備を整えた僕たちは意気揚々と魔物退治に乗り出す。
「ねえ、ミレアム。これ」不意にパメラから話しかけられる。彼女から手渡されたのは小さな石の付いた幾何学模様の御守り。「念のためよ、念のため」
洞窟へ辿り着いた僕らを待っていたのは、絶望そのものだったと言っていい。
圧倒的だった。予想だにしていなかった高位の魔物に僕等の付け焼刃が到底役に立つ筈も無く、敗走を余儀なくされた。必死に逃げる。噂が確かなら、アレに捕えられたが最後身も心も欲望に支配され、永遠に飢えながら魔界を彷徨う事になる、と。
「う、あぁ……」声は後ろから上がった。体を押さえ、蹲ったシア。
「どうした、シア!」僕の声に反応するのがやっと。
「お、お願い、逃げて……」
シアの体は異常なまでに上気し、汗と臭いで、少女とは思えない程の色気を湛えていた。
目の前の魔物が絶えず発散する気に当てられている。そう理解するに、時間はかからなかった。
「馬鹿! シアを置いて逃げるなんて事できるか!!」
「二人とも急いで!」パメラの声と同時、閃光が奥へ向かって放たれる。が、ソレは事も無げに砕かれた。
「ウフフ……こんなものが、私に効くと思って? 大丈夫よ、3人とも直ぐに堕してあげる・か・ら」声に釣られて僕は視線を向けてしまう。視線の先には見るモノ全てを蠱惑するように艶めかしい魔物の姿があった。
サキュバス。現魔王直系の種族にして、最高位の魔族。冒険初心者に敵うような軟な相手ではない。そんな化け物が何故こんな所に。
などと、のたまっている場合か! 今は一刻も早くここを離れないと!! とはいえ、僕の体はあの肢体に魅了され、まともに動かすことすら出来やしない。
「あら……? おかしいわね? そろそろ彼女の様になっても良い筈なんだけど」
サキュバスは意味不明な事をほざく。その言葉の意味は、目の前の少女によってもたらされた。目の前で蹲っていた筈のシアの眼は焦点を失い、篝火に吸い寄せられる虫の様にフラフラと魔物へ歩み始めていた。
「駄目だシア!」僕の制止は意味を成さない。
「サアおいでなさい。『悦楽の世界へ連れて行ってあげる』」サキュバスは恐ろしいほど甘ったるい声で僕等を誘う。両の手を広げ僕等を迎え入れようとするその姿は、まるで天使様にすら思えてしまう。
「こんのおおおお!」突然、黄色い影がサキュバスへ突進する! パメラの放った電撃が魔物めがけ襲いかかっていた。不意を突かれる格好となったサキュバスは「キャ」と小さな悲鳴を上げ後ろへ飛び退く。
僅かな隙。パメラは僕の手を掴むと走り出す。「待って、まだシアが!」その声と同時、紐の様なものが僕等に向かって飛んで来る。「さっきのお守りを投げて!」僕は咄嗟にその御守りを投げつけていた。ドカン! と物凄い音。御守りはその小ささからは想像できない程の威力で爆発した。僕とパメラはその衝撃で吹き飛ばされる。「今しかないわ! 逃げましょう!!」「でも、シアが「あんな化け物に敵う訳ないでしょ! それに、もう遅い……」
瞬間、砂埃の向こうからシアの叫び声が響く。その声は身の毛の弥立つほどの恐ろしさと、心を溶かされそうになるほどの甘さを含みながら。
僕は恐怖の余り掌で耳を塞ぎ、その場から逃げだした……

逃げ戻った僕等を待っていたのは、村長からのキツイお説教だった。そして事の顛末を話した村長は顔色を真っ青にさせ、こう言い放った。
「ミレアム、お前は今直ぐこの村を出てゆけ」
「村長、それは幾らなんでも!」パメラが抗議の声を上げる。が、村長はそんなパメラを一喝すると、僕に向き直った。
「よいかミレアム。今の話が本当なら、暫くの後、シアは戻ってくる」
「え……」なら、シアは無事なのか? 僅かな期待が……
「魔物として、お前を捕えにな」「なっ!」声を上げたのは、パメラの方だった。
「何で……シアが」
「ミレアムよ、御主、気付いておらなんだか。シアは、あの子はお前を好いておった。あの子なりにお前についてゆくため健気に修業を積んでおったのじゃ。だが、魔物に、ましてサキュバスに魅入られた今、恐らくシアは魔族に堕とされる。そして、魔族……サキュバスに堕ちた者が先ず行うは、恋い焦がれた者と共に魔界へ下る事」
「恋い焦がれた者って……」
「そうじゃミレアム、御主を求めてな。今のシアなら、御主ら二人でかかれば何とかなるやもしれん。が、御主、シアを斬る覚悟はあるか」
言葉が出ない。シアは僕の親友で、僕の……
「分ったらここから立ち去るが良い」

僕は村を発つ事となった。シアの手から逃れるために。
「何もパメラまで……」
「私は、ミレアムと一緒に行くわ。今回の事は私にも原因があるんだし……」
そこまでで、二人の声は止まる。どこか後ろめたいものを感じながら。

それから幾月か後、村が魔界に沈んだと伝え聞いた。そして、そこには二匹のサキュバスが微笑んでいた と


あれから、既に3年の月日が経った。
立ち寄った町では、春を告げる祭りが盛大に行われていた。
「久しぶり、お祭りなんて」パメラが呟く。
旅立ちから殆どの時を旅と戦闘に費やした僕達は、町の生活というものからすっかり隔絶していた。こんな心躍る雰囲気は本当に久しぶりだ。
「少し滞在してゆくか……」「ウン」僕にしな垂れかかるパメラ。
あれから僕等が男女の関係になるまでそう時間はかからなかった。でもそれはどこか後ろめたい気持ちを紛らわせるための行為だった。そしてその行為の後だけ、僕は深く眠る事が出来た。あの忌まわしい声から解放されて。
宿で一晩を明かした僕等は、休暇を楽しむべく祭りへ繰り出した。
町は刻一刻と喧騒を強めてゆく。
世界が熱気に包まれた
その時
「フフ」耳元に聞こえた笑い声。
身の毛が弥立つ。そして筋肉の全てが溶かされてしまう感覚に襲われる。
「み〜つけた」
僕は瞬時に神経を尖らせ、声の主を睨み付け
「な、何、どうしたの?」そこにはパメラと、泣き出しそうなガキンチョの姿しかなかった。
「い、いや……何でもない」何でもない訳無い
「ゴメンな」ボーズの頭を撫でると、少しぎこちなく笑いかけた。逃げるように駆けだす子供を見て、僕は少しだけ寂しく感じていた。
でも 今のは
聞き間違えるものか。
「なあ、パメラ。一時間位、自由行動にしないか」
「何? いきなり」少し訝しむパメラ。ここで悟られる訳にはいかない。
「此処は温泉があるって聞いたからさ、チョット浸かってこようかと」
「なんだ、それならそうと」
「じゃあ、ちょっと行って来る」
「ちょ、ちょっと」パメラの制止を振り切り、僕は喧騒の中に紛れ込む。今、彼女をアレに遭わせる訳にはいかない。
雑踏をかき分けるように僕は進む。刻一刻と喧騒は遠くなる。僕の記憶があの場所へ誘う。そして徐々に強まる
          甘い香り

「久しぶり、元気だった?」
まるで空間が切り取られたような道の真ん中。人々が意識を逸らされるように、そこを自然と避けて行く。その空間の中心に彼女は立っていた。
「シア……」
あの時と全く変わらない姿でそこにいる少女の名を呼ぶ。
「覚えててくれたんだ」少女は微笑む。あの頃と全く同じ顔で。
「忘れた事なんてなかった。いや……忘れられなかった」
「そう……少し嬉しいな」
僕は無意識に剣の柄を握る。この3年で身に付いた生きる糧。
「……いいよ」その行動を目にしたシアの態度は意外なものだった。クルリと後ろを向き両腕を下に広げ無防備な体制を作り出す。自ら斬られるのを良しとした? そんな……だって、彼女はもう……
「私ね、覚悟してきたの……ミレアムになら殺されてもイイって。このままオカシクなる位なら、好きな人に……愛してる人に、止めを、刺された、、方が……」
彼女の声が涙に震える。彼女はまだ人としての心を失ってない!
目の前にいるのは 間違いなく人としてのシア だ
意識がそう理解した瞬間、僕はもう止まる事が出来なかった。
思いきり彼女を
       初恋の人を抱きしめていた
「どう……して……」シアの困惑した声が上がる。
「ずっと、ずっと好きだった。あの時、シアを救えなかった事をずっと後悔していたんだ」止マレナイ
「そんな……」彼女からすすり泣きにも似た声が零れる。
「僕はずっと怖かった、君に恨まれているんじゃないかって。本当なら殺されるべきは僕だ。シアを見捨て、村からも逃げだした……」モウ止マルコトナンテデキナイ
「大丈夫……恨んでなんかない」
彼女は僕の腕の中で向きを替え
そして 僕を抱きしめた
だから
    〜あまいかおり〜
             イッショニ堕チヨ

あまりにも甘いキス。僕の唇にシアの唇が重なると同時、シアの舌が僕の口腔に入り込む。噎せ返りそうに甘く濃厚な蜜が彼女の舌からもたらされる。入り込んだ舌が僕の舌に絡み付く。舌を舐め取られそうになるだけで、僕の意識に火花が飛び散る。
「ふぇ?」一瞬の意識の混濁から戻った僕は目の前の状況に困惑した。
シアはまるで別人のように色艶を増し、大人の体を見せ付けていた。
再びのキス。今度は手加減無しと言わんばかりに、舌を絡めて来る。人とは違うそのモノは、舌に幾周も絡み付きヤワヤワと締め付ける。まるで舌がペニスになったかのようにビクビクと震える。更に流し込まれる彼女の唾液。痺れた舌を伝い喉へと滑りこむ蜜は、やがて僕を内側から犯してゆく。意識が溶かされシア以外の何もかもが失われていく。溶かされた意識を徐々に上ってくる快感。僕はもうソレに逆らうことが出来なかった。
「カワイイ」気付けば、シアは僕から唇を離し、僕を抱えながら微笑んでいた。軽い脱力感に襲われる。
僕は 射精していた
今の彼女にはソレが分るのだろう。静かに僕の服の中へ手を入れると、精液をすくい取る。そして、とても愛おしそうに精液を舐め取った。
「凄い。本当に強くなったのね、ミレアム」ちょっと驚いたように、彼女が僕を見る。
「そんな事、分るのか?」
「ええ。精液にはその雄の情報が全て含まれているんだから、特に生殖体としての雄の能力は一番分り易いのよ」彼女は満足そうにそう言って、僕に微笑みかける。
「じゃあ……」
僕から離れたシアはもう既に一糸纏わぬ姿になっていた。とはいっても、そこかしこに獣の毛の様なものが生え揃い、若い獣を彷彿とさせた。だが、その色艶は人のモノとは段違いで、見ているだけで本能を盛らせる危うさを備えていた。
飲まされた彼女の体液と本能が混じり合い、燃え上がる! 抑えの利かなくなった欲望が体を焦がしていた。たった今射精したばかりだというのに、肉茎が先程以上に膨れ上がり女体を求めて暴れ始めてる。溶かされた意識に欲望を止める力は既に無く、僕は彼女へと襲いかかった。
が、彼女はここへ来て、僕からスルリと逃げ遂せてしまう。
倒れこんだ僕は四つん這いになり、彼女を見上げる。
「何で……」泣きそうになりながら、僕は彼女の瞳を見詰める。完全に攻守逆転だ。
「ミレアム、後悔しているなら、罰を与えてあげる」シアは高圧的に僕を見下ろす。そんな仕草さえ、僕は愛おしく感じてしまう。
罰? 何を、何を
僕の中で意識が混乱する。成り立たなくなった意識が悲鳴を上げている。
「ねぇ、ミレアム〜」僕の顎を手で掴み、唇に軽いキスをする。それだけで僕は、射精しそうになる。
「ミレアムが『私のモノになる』って宣言してくれたら」
『悦楽の世界へ連れて行ってあげる』
一瞬のフラッシュバック。僕の中に眠っていた恐怖が叩き起される。あのサキュバスと同じ事をシアは口にした。恐怖で体が硬直する。
駄目だダメダ駄目だダメダ駄目だダメダ駄目だダメダ駄目だダメダ駄目だダメダ
急速に形を取り戻した理性が、恐怖を訴える!
「うわあああああああ!」子供の様に逃げ惑う。周りで歩いていた人にぶち当たる。が、人は僕を認識してはいなかった。何で!
「そう……怖いのね。あの時の恐怖が……そっか、だから強くなったんだ。この恐怖から逃げるために」
僕は少しでもシアから逃げようと人ごみに飛び込む。必死に逃げる逃げる。
少しの隙間を見つけ、僕はそこに駆け込む。
何で
僕を捕まえたのは、シアだった。
「そう……本当に怖かったのね。でも、もう大丈夫よ。貴方の恐れは、私が全部取り除いてあげる」シアから言の葉が落ち、彼女は僕の瞳を覗き込んだ。
僕の瞳を見詰めるシアの瞳は、深く深く澄んでいた。淀みの無い純粋な欲望。
僕の意識はその欲望に吸い込まれた。それまで暴れていた意識が僕の中から消されていく。ポッカリと空いた心の隙間に、彼女の欲望が、そして……残された欲望が流れ込む。
「さあ、『私のモノになる』って宣言してくれたら」
『悦楽の世界へ連れて行ってあげる』
もう 逆らう事なんて出来なかった
「ハイ シア様 僕ハ シア様ノモノニ ナリマス」
「ア、ハハ アハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」
彼女の勝ち誇った声が木霊する。四つん這いになった僕を踏み付け
「ざまあみなさいパメラ! 遂に貴方からミレアムを奪い取ってあげたわ!!」黒く変色を始めた羽を悠然と広げながら、彼女は勝利宣言をした。
「ねえ、ミレアム。貴方の後悔を完全に消し去るために、一つ罰を与えてあげる」
罰?
「そう、罰。今から夜まで性行為禁止。辛いわよ〜」
そ、そんな……僕はシアのモノになったのに何で!? 僕の書き換えられた意識が抗議を上げる。一刻も早くSEXがしたいと、僕を駆り立てる。
「まして、パメラなんかとしちゃ駄目よ」
そう言うと、シアはフワリと浮かび上がり
「じゃ、がんばってね!」と飛び去ってしまう。
「ウウ……」残された僕はその場に立ち尽くした。
人の流れは、いつしか元に戻ってゆく。

日が落ちるまでの僅か6時間、僕は地獄の苦しみと闘っていた。体は火照り、雌を見ては異常なほどの興奮に襲われる。増して今は祭りの真っ最中、露出の多い衣装を身に纏った雌を見ていると、思わずむしゃぶりつきたくなってしまう。このままではいかん、シアとの約束を果たせなくなると思った僕は、宿へ踵を返すや、ベッドへと潜り込んだ。
とにかく寝てしまおう。そうすれば、時間なんてあっという間だ……
当然寝つける筈なんて無かったのだが…………

漸く薄れてきた意識を叩き起したのはパメラだった。
「もう、探しちゃったじゃない!」結構ご立腹だ。
「すまない。何だか、調子が悪くて……」嘘は言ってない、ウン。
「そう……それじゃしょうがないわね。じゃあ、ご飯、いらない?」
「アア」
「じゃ、私少し食べてくるから」部屋を出るパメラ。
取敢えず、バレてはいないようだ。助かった。
……そう言えば、全然腹が空かないな? 寧ろ食べたいもの……は……シアが食べたい。ウン、正常ダ。

夜は更ける。さっきまで五月蠅く僕の周りを飛んでいた雌は、漸く眠りに就いた。
こうして寝顔を見ていると、すぐにでも犯してやりたくなる。が、今はシアとの約束が絶対だ。
僕は纏っていた衣服を脱ぎ棄てると、部屋を後にする。
不思議と、涙が出た。何故だろう?
僕は匂いを頼りに、町の中心へ歩みを進める。
祭りの終わった町は、深い深い眠りに付いているようだった。
辿り着いたのは、町のシンボルとなっているらしい教会だった。
重々しい扉を開けると、そこにはシアが待っていた。
「シア……」跳び付きたい欲望を抑え、シアに近付く。
「ねえ、ミレアム。私には、一つの夢があったの」
「夢?」
「そう、夢。ミレアムのお嫁さんになるって夢が。その夢、叶えてもらえるかな」
「ああ、喜んで」寧ろ願ったり叶ったり。
「でも、今の私は人間じゃないわ、人の世界の結婚になんて、もう興味は無い」
「じゃあ……」もう無理だと?
「私がしたいのはね、サキュバスとしての結婚」
「サキュバスの結婚?」
「そう。貴方を、ミレアムを私のツガイ・インキュバスにするの」
インキュバス。聞いた事がある。サキュバスに飼われ永遠に精を与え続けるもの。僕にソレになれと。
「駄目かな……」誤魔化す事無く、僕を見詰めるシア。僕は面白くなって笑ってしまった。
「何よ、笑う事ないじゃない!」
「ゴメンゴメン。そういう意味じゃないんだ。積極的になっても、シアは昔のままなんだなぁ、て思ったら、何だか面白くなっちゃって」
「もう……」そういうところは、以前は見せてくれなかったけど。
「シア、僕からお願いしたい。僕を君のツガイにしてくれ」
溢れ出す涙。幼少の頃から抱いてきた思いが叶う。
「し、仕方、ないわね……私のツガイにしてあげる」
そう言うと、シアは、僕に跳び付いた。

湿った粘膜同士の擦れ合う音が、教会の中に響く。どの位深くキスをしていたのだろう。僕もシアの意識も完全に蕩けきり、互いの体液を交換する度脳幹が爆発を起こす。いつしか僕の手はシアの陰唇を掻き乱し、そして、彼女の細く長く伸びた爪は僕の肉棒の上を這っていた。互いの秘部を弄り合いながら、僕達は上り詰めていく。その間にもシアの長い舌が、舌はおろか僕の口蓋垂にまで絡み付きしごく。口の中全てを犯される感覚に僕は気が狂いそう。彼女もイキそうになりながら、僕を責め立てる。
「ウグウウウ!」一度目の絶頂。シアは潮を吹き、僕は派手に射精する。僕の少し萎えたペニスにシアの指が伸びる。
「そろそろ良いわね……」そう言うと彼女は、僕を抱きしめる。
「何を「イイ事」僕の言葉を遮るように彼女は指を立てる。その瞬間だった。
「カハ …… ・・・・・・
僕のアヌスに何か大きなものが入ってくる! イタ くは無い。物凄い快感に、僕は全身をビクビクと震わす。僅かにそらした視線の先には、シアの尻尾があった。彼女も恍惚としながら僕の中へ尻尾を更に突き入れる。が、奥に行っている感覚は無い。寧ろ前に……
「イマ、ハ……ハアッ、ハッ、ミレアムの、おちんちんを、ホウッ! お願い、イマ、オシリ、閉めない で……作り変えて、いるの いつで、も勃起、している、ように」
息も絶え絶え、快感にアヘ顔を晒しながら、僕に説明してくるシア、健気。と、感心している僕も、正直意識が持ちそうにない。勃起したペニスからは、ゆっくりとだが着実にカウパー液が溢れ出す。
「ハア……ハア……美味しそう」彼女の眼が血走る。餌を見つけた肉食動物の様に食い付きそうになりながら、僕の勃起ペニスを見詰める。
僕も限界だった。
「シア……一つに、なりた
それ以上は言えなかった。言葉が終わる前に、僕はシアに押し倒されていた。無理もない、彼女はサキュバスなんだ、ひょっとしたら、この数時間は僕より辛かったんじゃないのか?
「ハア、ハア、ミレアムの堕チンポ、ずっと……ずっと欲しかったの!」
言葉が早いか、そのまま、僕は彼女に飲み込まれた。そして、射精。耐えられなかった。ドクドクとシアの膣に精液を放つ。これまで経験した事無い程の射精感。たった一回だというのに、僕のペニスからは絶え間無く射精が続く。酒瓶一本分は出ているだろう。それを全てシアの子宮は飲み込んでいた。震えるシア。「ああ……美味しいよう」
シアが恍惚と感想を漏らした瞬間、彼女の体に変化が起こり始める。秘部やお腹の辺りを覆っていた体毛が抜け落ち、性の権化と成長した肢体を顕にする。頭の小さかった角が見る間に壮麗な姿へ変わり、そして灰色で小さかった背中の羽は美しい漆黒のそれへと成長した。そして、正に蛹が蝶へと変わってゆくように、シアは一匹の完成されたサキュバスへと変貌したのだった。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ……」
美しい。心の底からそう思った。そして、彼女を完成に導いた事を、僕は誇りにすら感じていた。
「ありがとう、ミレアム」僅かなキス。それだけで、僕は再び射精する。快感の威力が今までとは段違いに凄い。このままじゃ僕、干乾びちゃうかも。
「次は、ミレアム、貴方の番よ。さあ、全て射精しちゃいなさい。大丈夫よ、干乾びるなんて事無いから。ミレアムが射精した分だけ、私から魔力が注入されるわ。そして、全てが入れ替わった時、貴方は私のインキュバスとして生まれ変わるの」
そこまで言うと、彼女は腰を浮かせ、僕のペニスをしごきだした。
「うわッ!」ソレだけで射精しそうになる。シアの膣壁が僕のペニスにピッタリと張り付き、思い切り舐め上げる。襞がカリを擦り上げ射精を促す。
「出ちゃう! 出ちゃうよ、シア!!」もっとシアの膣を味わっていたかった僕は、射精を我慢してしまう。
「駄目よ、アッ……ミレアム。射精しないと、アアッ!」僕の行為を叱ると、シアは更に膣圧を上げてくる。とても耐えられない!
再びの射精。さっきよりもさらに大量の精子がシアの膣へと放たれる。遂に収まりきれなくなった精子が、シアの陰唇から零れ落ちた。「ああ、もったいない」
これだけ出せば、もう……
異変に気付いたのは、この時だった。僕のペニスが萎えない?
「言った、でしょ。もう、ミレアムの堕チンポは、決して萎えないの、幾らでもザーメンを出せるようになったのよ」
嬉しかった! これで、僕も彼女を満足させてあげる事が出来る!!
「さあ、楽しみましょ」
シアが、微笑む。今までなら、恐怖の対象だったその笑みは、今や天使の頬笑みにすら見えていた……

一体どの位の時間がたったのだろう?
そして、僕はどの位シアとSEXをしていたのだろう?
彼女の体は、いや、僕の体も、互いの体液でコーティングされたようになっていた。触れ合うだけで粘質の厭らしい音が教会の中に響き渡った。
それでも
    タリナイ
僕のペニスはいつもの2倍近くに成長し、シアの膣を舐めるように犯していた。犯せば犯すほど体に力が漲る。射精すれば射精するほどシアを犯したくなってくる。
そして何度もアクメをキメていたシアにも変化が見えた。僕の膨らみ続けるペニスに順応するかのように広がり、でも反して締め上げがキツくなってゆく。シアの膣も成長しているようだった。
「ア、ハアァツ、イ、イク……イクウウウウウウ!!」幾度目か知れないシアのアクメ。アヘ顔を晒しながらイキまくるシアは本当に美しく、厭らしい。そして、射精。
唐突に音が増える。お尻にあった尻尾が抜け落ちた。
「シア?」気持ちよかったのに……
「ミレアム、聞いて」
急に真剣な顔をしたシアに、僕は驚かされる。「どうしたの、シア?」
「私からの魔力注入は終わったわ。あと一度、射精したら、ミレアム、貴方は私と同じ魔族になるわ」
「え……」告げられる真実に僕は少し戸惑う。
「どうする。今ならまだ間にあ
彼女の言わんとする事に気付いた僕は、彼女の口を塞ぐ。もちろんキスで。
それだけで、十分だった。魔族になってもまだ僕の幸せを考えてくれるなんて、僕はなんて幸せ者なんだろう……
「いくよ、シア」
まるではじめてのSEXだ。
かのじょの陰唇をかき分け、散々射精した膣へ到達する。そこで違和感に気付いた。射精しそうなのに出来ない。彼女が止めている様子は無いし、何故?その間にも物凄い勢いでペニスに快感が集まり、その信号が全身へと、そして脳味噌を確実に焼き尽くす。このままじゃ、おかしくなっちゃう!!
「アヒ、ア、アア、頭が」
「気持ちいいでしょ。ソレが魔族のSEX。男だろうと、女だろうと関係無い。全身を駆け巡る快感の衝撃は、人間の時の比ではないわ」再び騎乗位になったシアが、僕ののた打ち回る体を押さえつけ、思い切り僕のペニスを締め付ける。
「ヒギャアアアアアア!!」女の子の様な悲鳴を上げながら、僕は悶絶する。頭が溶けちゃうウウう!!!
「そうよ! 気持ち、アアッ!! イイデショウウ!!」シアも悶えながら僕のペニスを味わう。跳ねまわる様に勢いを付け、僕の上で腰を回転させ様々な刺激を僕のペニスへ送り込む。粘膜どうしが擦れ合うグチュグチュという卑猥な音が、僕達を祝福するかの如く鳴り響く。
でも、まだ射精できない! こんなのって、辛すぎる!!
「お願い、射精、させて!」シアに懇願する僕。「このままじゃ、ボク、コワレチャウ」
「イイノ ソレデ コワレナサイ」シアの絶え絶えの言葉が、福音の様に僕の頭に響く。
コ ワ レ ル
僕の腰が猛烈なピストンを始める。これまでのSEXがお遊びだったみたいに。上のシアを一気に追い詰める。「アッアッアッアッアッアッアッアッアッ」と彼女の口から遂に言葉が潰える。喘ぎ声に粘膜音、そして皮膚同士の打ち合う音だけが聞こえる。
「イ、イ、イ、イクッ! イクッ!! イクイクイクッ!!」
もう焦点の定まらない彼女のだらしないアヘ顔が神々しく見える。舌を出し、快楽に没頭する様は本当に綺麗だった。
追い詰められたシアの秘部が、僕のペニスを喰い締める! 
「イクウウウウウウウウウウ!!!!!」あられもない雄叫びを上げ、シアが絶頂へと駆け上った!
そして僕にも遂にその時は訪れた。
「ヒ ヒ ヒ ヒギャアアアアアアアアアアアア!!!!」
その時、僕は本当に精液を出したのだろうか?
不意に微笑みかけたシアの顔は何かを成し遂げたように嬉しそうであったけれど、それは快楽の結果ではなく、その……うまく言えないけれど、勝ち誇った笑顔に見えたんだ。
そして、僕は行き当たる。そうだ、彼女は、勝ったんだ。
熾烈な、そして残酷な愛憎劇に。

扉が破られる。そりゃあもう豪快に。この魔力爆撃はパメラのものだ。
「ミレアム! ……」何かを言おうとしたパメラは、瞬時に口と鼻を袖の布で覆う。中の臭気を吸わないための行動。彼女もまた、歴戦の勇士へと成長している証拠だった。
その臭気の中心、耐性の無いオコチャマなら嗅いだ瞬間に射精しそうなほどの淫気を漂わせ、一組の男女が一糸纏わぬ抱き合っていた。
「シア!!!」一目でソレが恋敵と見抜いたパメラは、ありったけの魔力で、雷撃を放つ、何時ぞやの電撃とは比べ物にならない強さで。
が、その雷撃は見事に防がれる。一人の男の手によって。
「どうして……」
「もう遅いんだよ、パメラ。僕は堕ちたんだ」男は微笑みを落としながら、彼女に切々と語りかける。色白であった筈の男の体は黒く変色し、どこか獣めいた野蛮さすら湛えていた。
「何でよ! シアはあの時死んだのよ!! それはシアの型をした化け物じゃない!!」パメラの口からは人のモノとは思えない程の罵詈雑言が発せられる。
「そうかも知れない。だとしたら、僕はあの時死ぬべきだったんだ。あの時から僕は何時だって生きている気がしなかった。そう、君と交わっている時でさえ」
残酷な言葉が僕の口から発せられる。
その言葉を聞いたパメラはその場に崩れ落ちた。
……そう、この勝負は、始める前から結果が分り切っていたんだ。三人とも。でも、その結果をどうしても受け入れられなかった少女が一人暴走をし、結果を替えようとした。けれど、結果は変わらなかったどころか、更に最悪の結末を迎える事となってしまった。何せ、相手は無限にも近い時間を手に入れ、そしてその時間の殆ど全てを、愛おしい男と愛し合う事にだけ使う事が許されてしまったのだから……
最悪のシナリオを自分の手で描いてしまった事に気付いた少女は、ペタンとその場に座り込む。「ア、アハハ」そこまで笑うと……彼女は、放心したまま全く動かなくなってしまった。
「……僕はなんて罪深いんだろう……」「ホント……」そこは合いの手を打たないでくれよう……
「でも、私達には、もう関係の無い話よ」
「ああ……」
二匹の魔物は空に溶ける。
これから、魔界のベッドに向かうために。

ああ、この話にはもう少しだけ続きがあってね。
実はシアをサキュバスにしたお方がこれまたヒデ〜捻くれ者で、数日の後、パメラを手籠めにした挙句、僕達の所へ連れて来るという快挙(?)を仕出かしてくれた訳でして……
「チョット! 何時まで待たせんの!」
「ミレアム〜〜! 早く〜〜!」
僕、確かにSEXでは死ななくなりましたけどね、このままだと僕本当の意味で壊されちゃうんじゃないかと心配で……
「アラ、ミレアム君、こんな所で油売ってないで、ご主人様’Sのお相手しなさいな。それともアタシも混ぜてくれるの?」
ぢ、ぢょ〜だんじゃ有りませんよ! 只でさえウワバミ二匹にオロチ級が加わるなんて!
「アラ、二人ともお久〜、ミレアム君が混ぜてくれるって言うから、来ちゃった!」
「「是非楽しんで下さい!!」」二人の実に嬉しそうな声が聞こえる……
おお神よ、今は裏切り者の立場ですが、どうか私めに御慈悲を……

了 なのか?
10/04/04 03:00更新 / DOBON

■作者メッセージ
思い付きから一晩で書き上げました。最後は眠気と疲労でグダグダ……
こんなんで良いのかしら? と悩みつつの報告です。
お気に召せば嬉しいのですが……
皆様の報告スゲ〜からな……

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