読切小説
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魔王軍捕虜の話
魔王軍捕虜A「俺本当に捕まったのかな……メシうまいし部屋は快適だし」

魔王軍捕虜B「ああ。壁は鉄格子だが、個室トイレはある」

魔王軍捕虜C「なにより俺らの部屋広くないか?宿屋の一室ぐらいはあるぞ」

捕虜B「ベットもおかしい。なぜツインベットなのだ?」

魔王軍捕虜D「そりゃ、ベットでギシギシ……」

捕虜BC「お前は何も言うな」

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 魔王軍に敗れた教会の騎士達、その数名は捕虜として地下牢へと連れて行かれていた。
彼らはそこで数日過ごし、ここの生活の快適さに困惑している。
一日に2度、目をギラせた魔物娘達が捕虜達を見に来るが何もしてこない。

捕虜A「てっきり、魔物どもにいたぶられ、ゴミみたいに扱われるかと」

捕虜B「ああ、教団の話と全然違う」

捕虜C「魔物の姿もな。誰だよ、醜いモンスターって言ったの」

捕虜B「アレは仮の姿だ。油断すると食われるぞ」

捕虜D「性的な意味で?」

捕虜BC「お前は何も言うな」

捕虜A「シッ!……誰かくるみたいだ」

上の階からコツコツと階段を降りる音が聞こえる。
魔王軍捕虜達を蹴散らしたデュラハンだ。
デュラハンは捕虜Aの牢屋の前まで来て牢屋の扉を開いた。

デュラハン「捕虜A、出ろ」

捕虜A「……わかった」

デュラハンは捕虜Aの両手に枷をはめ、上の階へと連れて行った。

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 それから、数時間が経過した。

捕虜B「捕虜Aが帰って来ない。何かあったのか?」

捕虜C「やっぱり俺たちは捕虜って事さ。連中の胸先三寸で生死が決まるんだ」

捕虜D「せいし(意味深)」

捕虜BC「お前は何も言うな」

さらに数時間が経過した。
小さな小窓から見える空は真っ暗で、今が夜だと告げていた。
いつもなら夕飯が運ばれる時間だが、上から誰か来る気配はない。

捕虜B「……おかしいな、いつもは時間通りに来るはずだが」

捕虜C「………………もしかしたら、餓死させようとしてるのかもな」

捕虜B「どういうことだ?」

捕虜C「考えてみろよ。どうして捕虜のメシがうまいのか?」

捕虜B「それは……」

捕虜D「体力がないと、ヤれないからだろ?」

捕虜BC「お前は何も言うな」

捕虜Cは真剣な顔で話を続ける。

捕虜C「最後の晩餐だったのさ。俺たちがじわじわと弱っていく姿を見るつもりなんだろう」

捕虜B「……腑に落ちんな。それなら、何日もメシを出す意味がない」

捕虜C「Aも言ってただろ?『この部屋は快適だ』って」

捕虜B「…………言っていたな」

捕虜C「待ってだんだよ。俺たちがここを『快適』と感じるまで」

捕虜B「……は?」

捕虜C「だから、『快適』だと感じちまったんだ!お前たちは今、死ぬ覚悟があるか?俺には無いね!!ここに来た頃は死すらも覚悟してたが、ここを『快適』と感じちまったら覚悟ができなくなっちまった!!『嫌なことを考える余裕』ができちまったのさ!覚悟ができねぇと、不安で潰れそうになる!!そこで食料がなくなったらどうなる?俺たちは終わりだ!!泣き叫んで、喚いて、魔物どもの笑いものになるんだ!!」

捕虜Cが叫んだ後、上の階からバタバタと階段を駆け下りる音がする。
いつも料理を持ってくるキキーモラだ。

キキーモラ「す、すみませ〜ん。上の階の料理を作るのが大変で、遅れました〜」

捕虜C「////」

捕虜Cは顔を赤くしながら固まっている。
それを見たキキーモラは少し慌てながら心配そうに聞いてきた。

キキーモラ「ど、どうしたんですか?顔が真っ赤ですよ!」

捕虜B「気にしないでくれ、メシが運ばれなかったので不安だったらしい」

キキーモラ「まぁ!そんなに私の料理を楽しみに待っててくれたのですか?」

捕虜C「う、うるせぇ!」

捕虜Cは顔を赤くしながらキキーモラから料理の乗ったトレイを受け取る。

キキーモラ「ふふ、今日はたくさん作りすぎました。おかわりもありますよ?」

捕虜C「いっ、いらねぇよ!こんだけで十分だ!」

照れた捕虜Cはキキーモラに背中を向けたまま食事を始めた。
空腹と恥ずかしさのせいでいつもよりガツガツと食べている。
半分食べたところで、捕虜Cはポツリと言った。

捕虜C「……てか、あんたが作ってたんだな。このメシ」

キキーモラ「はい!……あの、お口に合いませんでした?」

捕虜Cが慌ててキキーモラに向き直る。
退屈な捕虜生活で唯一の楽しみである食事を否定したくなかったからだ。
あと、自分の分だけ他の捕虜達よりも料理が一品多いことも大きかった。

捕虜C「そんなことねぇって!いつもこんなうまいメシを食えて、ありがたいとすら思ってるよ!」

キキーモラ「え?」

ありがたいという言葉を聞いて、キキーモラはキョトンとした顔になった。
自分が調理した料理を喜んでもらいたいと思い一切の妥協をせず作っていたが、教団である捕虜から聞ける言葉だとは思っていなかったからだ。

捕虜C「だ、だからよ。これからも、うまいメシ作って、持ってきてくれよな」

キキーモラ「は、はい!……はいっ!」

それを聞けたキキーモラは涙を流しながら笑顔で喜んだ。

捕虜D「今日は赤飯だな」

捕虜B「お前は何も言うな」

 キキーモラは捕虜Cが食べ終わるのをニコニコしながら待ち、食べ終わった食器とトレイを鼻歌を歌いながら集めていく。
今日の料理はいつもより豪華だった。なにか良いことがあったのだろうか?

捕虜B「……今日の料理はいつもと違っていたが、何か祝い事でもあったのか?」

キキーモラ「はい!切り込み隊長さんの結婚式でしたので。その、料理を作るのに時間がかかってしまって」

捕虜B「そうか。あと、今日の昼に連れて行かれた捕虜はどうなった?」

キキーモラ「申し訳ございません。ここにいる方には話せないのです。規則ですので」

そう言って、キキーモラは上の階へ行ってしまう。
捕虜Bの隣を通り過ぎた時、小さな声で「お迎えの準備をしなくちゃ」と聞こえたが空耳だろう。

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 朝起きると、捕虜Cがいなくなっていた。
その日の朝は昨日と同じ、いやそれ以上の豪華な朝食だった。
それに、いつも料理を運んできてくれるキキーモラではなく、ゲイザーだった。

ゲイザー「ほぉ〜ら、ごはんだよ〜。さっさと食べなー」

捕虜B「朝起きたら捕虜Cがいなくなっていた。何かしらないか?」

ゲイザー「知らない知らな〜い。私はな〜んにも知らな〜い」

捕虜B「あと、昨日連れて行かれた捕虜Aはどうなった。せめて、生きてるか死んでるかぐらいは教えてほしい」

ゲイザー「え〜、わかんな〜い。そんな人いたんだ〜」

捕虜B「教えてくれ!我らは今後、どうなるかはお前ら次第だ。私はそれに従うし、抵抗しない。だが、仲間のことだげは教えて欲しい。頼む!」

ゲイザー「う〜ん、どうしよっかな〜」

ゲイザーはニヤニヤしている。どうやら、捕虜Bが困っているのを面白がっているようだ。
捕虜Bは何度も訪ねたが、収穫はなかった。


 午後になるとダークエルフが降りてきた。
扉に背を向けながらゴソゴソしている捕虜Dの牢屋の扉を開く。

ダークエルフ「尋問よ、さっさと出なさい」

捕虜D「ソロプレイで忙しいので、あと5分待ってくだ……」

ダークエルフ「さっさと来る!」

牢屋にズカズカと入っていったダークエルフは無理やり捕虜Dを牢屋から出し、両手に枷をはめた。そしてそのまま、ダークエルフはニヤニヤとしながら捕虜Dを上の階へと連れて行ってしまった。

昼になり、ゲイザーが一人分の食事を運んできた。
捕虜Dは今だ帰ってこない。他の捕虜のことを聞いてみたが、やはり収穫はなかった。
夕方になり、服がボロボロになった捕虜Dが牢屋へ帰ってきた。
尋問していたダークエルフが牢屋まで連れてきた。なぜかとても疲れているようだ。
上の階へと戻ったダークエルフの足音が聞こえなくなったところで捕虜Bが口を開く。

捕虜B「戻って来れたのか、よく無事だったな」

捕虜D「ああ、自分でも不思議さ。あんな凄まじいSMプレイに耐えれるとは」

捕虜B「……上の階はどうなってる?捕虜A、Cは見かけなかったか?」

捕虜D「わからない。目隠しをされ、息子を掴まれながらの移動だったからな。今思えばあそこからプレイが始まってたのかもしれない」

捕虜B「…………魔物から何か情報は得られたか?」

捕虜D「ダメだ、はじめから聞く耳なしさ。口を聞くときは豚の鳴き声で返事しろと言われたさ。余りに腹が立ったから思わず言っちまったぜ。仲間から何も言ううなと言われている!どうしても吐かせたいなら俺の息子に乱暴することだな、エロ同人みたいに!!」

捕虜B「もういい、やっぱりお前は何も言うな」

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 あれから数日経った。
あれから毎日捕虜Dは尋問を受けていた。
毎回違う魔物娘があの手この手で尋問してたらしいが、最後は魔物娘が根負けして捕虜Dは牢屋に戻されていた。
頭はアレだが、凄まじい精神力だ。
しかし、その捕虜Dも昨日の拷問から帰ってこない。
捕虜Bは何度も帰ってこない捕虜達のことをゲイザーにを聞いた。

捕虜B「教えてくれ、頼む」

ゲイザー「やだねー」

捕虜B「頼む!」

ゲイザー「やだ〜」

捕虜B「頼む!!」

必死な捕虜Bはゲイザーの目玉のついた触手を掴む。

ゲイザー「ちょ、ちょと!離しなさいよ!」

捕虜B「お前から話を聞くまで離さん!」

ゲイザー「やめろよ!触手だぞ、先端に目があるんだぞ!気持ち悪くないのか?」

捕虜B「気にせん!だから、仲間たちのことを教えてくれ!!」

ゲイザー「き、気にしないって。なら私の顔はどうだ?単眼だぞ。怖いだろ?気持ち悪いだろ??」

捕虜B「怖くはない!気持ち悪くない!!だから、仲間のことを……」

ゲイザー「うっ」

捕虜Bは熱心にゲイザーの目を見つめながら頼む。

ゲイザー「……本当に知りたいんだね?」

捕虜B「ああ」

ゲイザー「引き返せなくなるよ」

捕虜B「構わない」

ゲイザー「故郷に戻れなくなる」

捕虜B「覚悟はできてる」

ゲイザー「なら、ずっと私のそばにいてくれるか?」

捕虜B「(逃げないように)離れるなと言いたいのか?もちろん離れはしない」

ゲイザー「……そうか。じゃあ、ついて来てきな」


 ゲイザーの後を捕虜Bがついていく。
上の階に上がり、大きな扉の前まで連れてこられた。ここに答えがあるのだろうか?
ここまでの道中、目隠しなどはされなかったのは本当に後戻りはできないことは確かだろう。
扉の向こうから騒がしい声や音が聞こえる。

ゲイザー「ここに入る前に、これにサインして」

捕虜Bは紙とペンを渡された。
逃げられないようにする契約か何かだろうと思い、よく読まずサインをする。
死を覚悟している捕虜Bにとっては契約の内容などどうでもよかったのだ。
ゲイザーがサインを確認すると、満足したのか、笑顔で部屋の中に入れてくれた。
すると、

「ケーキ、入刀です!」

部屋の中は広い会場で、背の高いケーキをウェディングドレスを着たバイコーンと共に切っている捕虜Dがいた。
部屋の端にはマイクらしきものを持っているサキュバスが何か言っている。
どうやら捕虜Dとバイコーンの結婚式が行われていたようだ。
よく見ると捕虜Dの花嫁のバイコーンは昨日捕虜Dを連れて行った魔物ではないか!
さらに来客席には捕虜Aとデュラハン、捕虜Cとキキーモラがいた。皆捕虜D達を祝っているようだ。
どうゆうことだ?そんな顔をゲイザーに向けた。
ゲイザーはほんのり赤い顔をさきほどの紙で顔を隠す
紙にはこう書かれてあった。


『婚姻届け』
13/12/05 00:14更新 / バスタイム

■作者メッセージ
初投稿です。
この話はG13さんと夜蛇さんのチャットでのネタをお借りして作ったSSです。
間違いだらけのSSかと思いますが、ここまで読んでくださった方々とネタ提供のG13さんと夜蛇さんに感謝します。

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