読切小説
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地下水道に蠢く
『地下水道に現れたスライムを討伐せよ』
 教団から達せられた任務に、勇者見習いのレックスはほっと胸を撫で下ろす。その様子を見た彼の仲間である女騎士と宮廷女魔導師の反応はそれぞれだった。
「レックス、これから勇者になろうとする者がそのような様子でどうする!」
「見習いは見習い。焦らせるのは良くない」
 憤りを顕に叱咤激励する女騎士の名はアナスタシアという。情熱家であり、装飾を廃した実用重視の鎧に凛とした表情が相まって女傑と思われがちだ。しかし、金糸の様な美しい長髪、鎧と赤いサーコートを押し上げる豊満な胸と尻は、それにも勝ってアナスタシアを女たらしめている。そして、アナスタシアを嗜める女魔導師の名はニナという。つば広な黒いとがり帽の下にある静かな顔立ちを人々は表情に乏しいと言うが、それは魔術師として身に付けるべき冷静さの現れと言える。厚手のローブに隠されたしなやかな肢体は、アナスタシアとは異なる女らしさを思わせる。
 その二人はレックスが勇者見習いに任命された折りに、教団から送られた腕利きであった。そして、レックスを勇者として育て上げつつ、手段を選ばず魔物娘の誘惑から彼を守るという任務を帯びていた。その任務が暗に意味する所を理解している二人は、初めこそレックスと距離を取っていた。しかし、自らの使命のために臆しながらも直向きに訓練に努める姿勢と、性の誘惑に負けない精神とにいつしか好感を抱き、少なからぬ時間を共にした今では恋慕の情さえ湧いている。
「なに、たかがスライムだ。少し脅かしてやれば逃げるだろう! 」
「地下水道のスライムは油断出来ない。慢心しがちなのは、貴女の悪い所」
「そこをカバーするのがニナの役割だな! レックス、ニナ、出発するぞ!」
 三人は、そんなやり取りをしながら準備を終えると、郊外にある地下水道の入り口へ向かった。

「あの変な臭いはしないか……。とすれば、バブルスライムではないな」
 アナスタシアは、地下水道の入り口を塞ぐ鉄格子の前で鼻をひくつかせると言った。
「まだ臭わないだけかもしれない。とにかく、まずは入らないと」
 あくまでも油断はしないというニナの声に応えるように、レックスはポーチから鍵を取り出し、鉄格子の隅に設置された扉の鍵を開けた。三人は開錠された扉から、アナスタシア、ニナ、レックスの順で地下水道へ入る。地下水道は入り口付近こそ差し込む光で明るいが、いくらも進まない内に暗闇に包まれようとした。
「フロート・ライト」
 短い詠唱の後、ニナの持つ杖の先に浮遊する光球がいくつか現れ、三人の周囲を漂いながら照らした。アナスタシアとレックスは、それぞれショートソードとスモールシールドを構え、辺りに気を配りながら深部へと前進する。しかし、光の届かない先は完全な暗闇であり、三人の緊張感を否応なしに高めた。石畳を踏む自身の足音、水道の流れが生むさざめき、明かりを嫌って逃げて行く鼠の鳴き声。普段なら気にもしないことでさえ、今の三人にとってはストレスであり、貴重な情報源でもあった。
 そして、三人が地下水道の最深部へ到達しようとした時、僅かに明かりが漏れ出ている扉を見付けた。
「この先が最深部だとすれば、スライムはこの部屋にいるのか?」
「道中では見当たらなかった。たぶん、ここ」
「何にせよ、確認しなくてはな。ニナ」
「分かってる。サーチ・マジック」
 アナスタシアと位置を代わりながらニナは詠唱を終え、杖の石突を扉に当てると魔力を流す。扉から壁面へと流れ、内部を探ろうとしたニナの魔力は、魔法的な抵抗によって侵入を阻まれた。
「……レジスト・マジックが施されてる」
「なら、中の様子は分からないのか?」
「馬鹿にしないで。……んっ」
 ニナは目を瞑って意識を集中すると、流し込む魔力の量を増やした。すると、より強力になったニナのサーチ・マジックが、ついにレジスト・マジックを透過し、部屋の中を探り始めた。
(……部屋はそれなりの広さ。動き回っている小さいのは、たぶん鼠。床、壁面、天井にくっついて動かない大小は、魔力の質からして何かしらのスライム属。……っ!? これは!!)
 今までにない強大な魔力を感じ取ったニナは、その場にガクリと膝を突いた。冷や汗をかき、恐怖に震えるという、普段の冷静さとは真逆の彼女の様子を見て、アナスタシアとレックスは事の重大さを痛感した。この部屋の中には、スライムどころではない存在がいると。
「逃げないと……。私達ではどうやっても敵わない……」
 それだけでも精一杯とばかりに小さく呟くニナを後目に、アナスタシアはレックスに目配りをした。
「……レックス、行くぞ」
 ショートソードを握り直したアナスタシアは、レックスにそう言い放った。レックスは緊張から唾を飲み込むと、一つ頷く。
「駄目っ!! デビルやサキュバスとは格が違う!!」
「ニナ、落ち着け! 私達は何のためにここへ来たのだ。勝てないなら、せめて情報だけでも持ち帰る必要がある」
「っ! ……ごめんなさい、私としたことが。でも、どうするつもり?」
 その問い掛けにアナスタシアはしばし俯くと、意を決したとばかりに顔を上げてニナとレックスを見詰めた。
「……私が囮になる。勝てないとしても時間稼ぎは出来るだろう。その隙に、ニナはレックスと一緒に転移魔法で逃げるのだ」
「……それで、いいのね?」
「それが最善だろう。……なに、誰かを守るのは騎士の誉れよ!臆することなど有ろうものか!」
「貴女らしい。けど、冷静さを忘れては駄目。……カーム・シンク」
 ニナが最も得意とする、冷静な思考を得る魔法だ。未知の強大な存在に対する恐れと、それに立ち向かおうとする意思によって熱せられた思考が、冷静なものに戻るのをアナスタシアとレックスは感じた。これで最善を尽くすことは出来る。そう言葉にするでもなく、互いに頷き合った三人は、扉を開け放つと部屋へ飛び込んだ。

 しかし、そんな彼らの決意は無情にも打ち砕かれる。仄かに照らされた部屋の中央、その一段高い場所にいたのは、漆黒の魔力塊に座する魔王の娘、リリムだった。
「いらっしゃい。遅かったわね」
 声に乗せられた強力な魅了はレックスの思考を蕩けさせ、圧倒的な力の差はアナスタシアとニナに身動ぎ一つさえ許さなかった。それでもアナスタシアが僅かな冷静さを保てたのは、騎士として培われた胆力とニナの魔法のなせる技だった。そして、それが明暗を分けることになる。
「ニナ、レックス! 上だ!」
 天井に張り付いた薄桃色の歪な球の群れ。それは拳程度の大きさをしたスライムの群れだった。それらが、三人に目掛けて落下して来たのだ。
 アナスタシアとレックスは、咄嗟にスモールシールドでスライムの落下を防いだ。だが、閉所での取り回しを考慮して選んだスモールシールドは、落下するスライムを完全に防げず鎧へスライムが付着した。二人はスライムたちを剥がそうともがくが、スライムは鳥もちのように付着して離れない。そして、アナスタシアに付着したスライムは彼女の鎧の下へと潜り込み、レックスに付着したスライムはその粘着性で手足の動きを封じた。ニナは頭から肩にかけて落下を受けたが、とがり帽の広いつばと厚手のローブがスライムから彼女を守った。スライムはニナに取り付くため、触手の様に伸ばした身体を彼女の顔へと向ける。
「ブラッシュ・ウィンド!」
 ニナが杖を振り上げると、つむじ風の魔法がとがり帽とローブごとスライムを巻き上げた。そして、巻き上げられたそれらは、ニナが杖を振り下ろした先、リリムへと矢の様に飛翔する。
「意外とやるのね?」
 そう言いながら、リリムは飛翔するそれらを難なく受け止めてみせた。
「くっ!」
 攻撃を当てる術も、防ぐ術も無い状況でニナに残されたのは逃げの一手だった。しかし、相手との実力に覆せない差がある以上、レックスを守りながら逃げることは不可能だ。つまりは、自分とアナスタシアを犠牲にしてでもレックスを転移魔法『トランジション』で逃がすしかない。だが、転移魔法は残された魔力の全てを消費するうえに、魔力を練り上げるために時間を必要とする。リリムがそれを見逃さないと分かっていても、ニナは転移魔法に賭けるしかない。ニナが勝ち目の無い賭けに打って出ようとしたその時、閃光が走った。
「一時はどうなるかと思ったが、くっつくだけのスライムなぞ恐れるに足りず! ニナ、今しかないぞ! 急げ!!」
 閃光の正体はアナスタシアだった。繰り出される斬撃と刺突の猛攻は、ことごとくリリムの座す魔力塊の触手によって防がれるが、ニナにとって充分な時間を作った。
「カーム・シンク!」
 思考は冷静に、それでいて深く。
「コンプレッスド・タイム!」
 魔力を練り上げる時間が足りないなら、時間その物を圧縮する。
 そして、ニナは起死回生の魔法を発動させるべく、詠唱に入った。
「信仰深き彼の者を救いたまえ。主たる神の護りある彼の地へ導きたまえ。……トランジ――」
「サイレンス」
 だが、リリムがアナスタシアの相手をしながら片手間に唱えた阻害魔法がトランジションを失敗に終わらせた。
「そんな、そんな事って……」
 万策が尽きたニナは、その場に呆然と立ち尽くした。最早、逃れる術さえ無いという絶望が彼女の顔を歪ませる。
「あぁ、そんな顔をしないで……。私は全ての人と魔物を愛しているのよ。それこそ、昔の様に人を殺すことなんて絶対にしないわ」
「う、嘘だ……」
「嘘じゃないわ。私達は、ただお互いに愛し合い、淫らに交わり合いたいだけなの。世界が魔物とインキュバスで満ちれば、争いなんて無くなるわ。残るのは愛と快楽だけ。素敵な世界よね?」
「戯れ言を!」
 未だ闘志を滾らせるアナスタシアはそう叫ぶと、せめて一矢報いようと再びリリムへ飛び掛かろうとした。
「傷付けるのは嫌いだけれど、おイタが過ぎる娘にはオシオキが必要、ね?」
 リリムの赤い瞳が妖しげな光を放つと、突如、アナスタシアがその場に倒れた。首筋から頬にかけて真っ赤に染まったアナスタシアは、何かに耐えるように体を丸めたかと思うと、プルプルと震え――
「あっはははははは!」
 大声で笑い出したのだ。

「アナスタシア!何が可笑しいの!!」
「ち、ちがっひひひ! 違う! スライムがぁ!私の体を、く、くすぐるぅうっははは! くすぐったいぃぃいい! この、鎧が邪魔だっははははは!」
 アナスタシアは笑い悶えながらなんとか鎧の留め具を外すと、それらをかなぐり捨てた。鎧という戒めから解放された胸が跳ね、尻が震える。そして、その胸と尻を隠すインナーの下には、あのスライムたちが蠢いていた。スライムは細かく振動しながら伸縮を繰り返し、アナスタシアのわき腹や背中を這い回りながらインナーを溶かしていく。
「このぉおほほほほ! スライムごとき、にっひひひひひはは!!」
「まだオシオキが足りないのかしら? 欲しがりさんね。それじゃあ、これなんてどうかしら?」
「うひゃああ!!」
 背中に回って来たスライムをリリムが手のひらで押し付けると、アナスタシアの体が弾ける様に跳ねた。押さえ付けられたスライムが、拘束から逃れようと暴れたのだ。
「この寄生スライムは、私が生み出したちょっとかわった娘なの。気持ちイイことだけじゃなく、くすぐりで調教するのが好きなのよね」
 その言葉を証明するかように寄生スライムたちの動きがより活発なものになった。そして、拳程だった大きさのスライムたちは、アナスタシアの精を吸収しながら合体を繰り返して巨大化する。巨大化した寄生スライムの触手は、アナスタシアの上半身だけではなく下半身へと伸びる。
「くひひひひひ! あ、脚はやめてぇへへへはは! お尻ぃ、お尻もダメ!! あっはははははは! この! このぉおっひひきひひひ!」
 人の指程に細いスライム触手たちが内腿を揉むようにくすぐり、尻に薄く粘着したスライムは細かく振動することで全体をくすぐった。アナスタシアは何とか寄生スライムを払おうとするが、剥がしたそばから新しいスライム触手が伸び、尻を覆う。
「っ!? そこは本当にダメっへへへへ! い、今触られたら、おかし、おかしくなるぅうっひゃひゃひゃひゃ!」
 アナスタシアの内腿に取り付いていたスライム触手が、彼女の内腿をくすぐりながら這い上がったのだ。そして、アナスタシアの子宮に入り込もうとしてか、暴れる腰の動きに合わせてゆらゆらと揺れ動いている。振り払うのは無理だと分かっていたアナスタシアは、せめてもの抵抗とばかりに両手で股間を隠した。しかし、宿主にしようとする相手の抵抗を受けた寄生スライムは、無情にもくすぐりの激しさを増した。ぶるぶると震えるスライム触手の群れがわき腹を揉み、尻から膝裏、足の裏へと達したスライムの膜が蠕動によって末端から腰へとむずむずとした感覚を送り続ける。
「あははははは! ダメダメダメぇへへへへへへ!! お願いだああっはははは! コ、コチョコチョ止めてぇえ! あひぃいい!!」
 それでもなお手を退かさないアナスタシアの背中を、一本の触手が撫で上げた。今までのくすぐりとは異なるビリビリとした感覚が背中を駆け、アナスタシアは守りを緩めてしまった。殺到するスライム触手が膣口からアナスタシアのヴァギナに入り込み、肉ひだの一つ一つを愛撫しながら奥へと進む。
「あはぁ! 入って、入って来るうっはははは! くすぐったい! くすぐったいのにぃい、気持ちいいひひひ! くふぅうっ……」
 アナルに侵入するスライムのどろりとした感触に、アナスタシアは熱い息を吐いた。流動するスライムが腸壁を擦り、アナスタシアに未知の快楽を味あわせる。前後の穴に与えられる快楽と絶え間なく続くくすぐりに、アナスタシアは敗北を喫しようとしていた。
「ニナ! ニナぁあ! あひひひ、ひぅん!! た、助けてくれ! くすぐったい! くすぐったいのが気持ちよくてっへへへ! おかしくなるぅ、あぁああん!」
 しかし、ニナの魔力は既に底を尽いており魔法が使えず、寄生スライムを取り除くことが出来ない。仮に体表の寄生スライムを取り除いたとしても、既に胎内に入り込んだスライムを除去する方法をニナは知らなかった。その方法を知っている者がいるとすれば、あの寄生スライムを生み出したリリムだろう。
 敵であるリリムに助けを乞うことに、ニナは戸惑を覚えた。しかし、こうして戸惑っている間にもアナスタシアはくすぐりと愛撫に悶え、その身を内と外から犯されている。
「お友達を助けたいけど、その方法が分からないって顔かしら? 私なら、助けてあげられるかもしれないわよ?」
「……くっ!」
 殊更に優しげな声を出すリリムに不安を覚えるニナだったが、もはや打つ手は無く、リリムの言うことに従うしかなかった。
「どうすれば、いいの?」
「難しいことではないわ。これを飲むだけよ」
 リリムは大きく開かれた胸元、その谷間へ手を差し込むと、コルクで栓がされた小瓶を取り出した。無色透明のそれは、一目見ただけでは水のようでもある。だが、ニナはそれが全くの無害だと思えなかった。そして、それを肯定するかのようにリリムは妖しく微笑んだ。
「スライム・リムーバーの素になるものよ。体内で精と混ざり、汗や唾液として体から出ることで、初めてスライム・リムーバーになるわ。ただ、問題もあるのよね」
「……それは、なに?」
「副作用として、肌や粘膜がとっても敏感になるわ。汗や唾液として体から出るってことは、どういうことか分かるわよね?」
 それが意味するところを理解したニナは身震いをした。舌と寄生スライムが這い回る感覚は、想像するだけでニナの身体をむず痒くさせる。
「それで、どうするのかしら?」
「……飲むわ」
「そうこなくっちゃね。……さぁ、どうぞ?」
 リリムの座す魔力塊の触手が、小瓶をニナのもとへ運ぶ。ニナは引ったくるようにして取ると、一息でそれを飲み干した。

 強烈な甘味を持ったそれは、ニナの胃へ落ちると微熱を発しながら彼女の身体に浸透した。微熱はむず痒さを伴う熱になり、甘い臭いの汗を噴き出させる。さらに、口内は性器そのものになったかの様に疼き、ヴァギナは触らずとも愛液を溢れさせた。汗が流れる度に、ニナは肌をくすぐられたかの様に身をくねらせた。そして、くねりが生む摩擦はニナの肌をくすぐり、乳首とクリトリスを愛撫した。
「くひぃ、んくくくっ! いやぁあっ、服が、あうぅ……」
 ニナは今すぐにでも服を脱ぎ去りたいという衝動に駆られたが、何とかその衝動を押さえていた。アナスタシアやリリムではなく、レックスという想い人に、不本意な形で素肌を晒したくないという羞恥心がニナに一線を越えさせずにいる。そして、そんなニナが横目に見たレックスは見るに耐えない状況だった。アナスタシアとニナがくすぐりと快楽に悶える様をまじまじと見せ付けられてズボンの股間を先走りでを濡らし、固く勃起したペニスが布地を押し上げている。普段ならば嫌悪したであろう光景だったが、ニナの胸中には僅かに喜びが沸き上がっていた。
 こんな姿を見られて喜ぶはずがない。きっと、これはあの薬のせい。くすぐりと快楽に犯されつつある状況でニナはそう結論を出した。しかし、次の瞬間、頭の中が弾ける様な感覚がニナを襲った。
「んひゃぁああ! アナスタシアっ!! やめてぇっへへへ! いやぁあははは!」
「んぅ、れろぉ……。ニナ、許してくれ……」
 レックスに気を取られていたニナの首筋を、アナスタシアが舐めたのだ。ざらざらとした舌の感触が首筋や鎖骨周りを刺激する度に、ニナの足腰から力が抜けていく。
「くひひひひひぃ! ダメ、鎖骨、舐めるのダメぇえ! くはははは! あはぁあん!!」
 薬の副作用と舌のくすぐりで過敏になったニナの鎖骨に、アナスタシアが吸い付く。吸い付かれた鎖骨と肌に与えられた快楽はついにニナの膝の折らせた。そして、アナスタシアはニナを押し倒して馬乗りになると、ニナの上着を裂いた。
 服の下に籠っていた熱が汗の臭いと共に放たれ、辺りにむせる様な臭いを漂わせた。玉の汗が滴る度にニナの身体はピクピクと震え、慎ましやかな胸の頂きは快楽を得ようとしてつんと立ち上がっている。
「もっと、もっと一緒に気持ち良くなろう、ニナ」
「はぁ、はぁ……くっ、あうっ! ……アナスタシア? ねぇ、どうしたの……っ!?」
 惚けた表情のまま呟くアナスタシアを見たニナは驚きを隠せなかった。くすぐりと快楽に蕩けたアナスタシアの唇の端から薄桃色の唾液が糸を引いて垂れたのだ。さらに、アナスタシアに寄生していたスライムは人を二人乗せても充分な大きさに巨大化し、彼女の周りを蠢きながら触手での愛撫を続けていた。
「寄生スライム!? どうして!!」
 ニナはそう叫びながらリリムを睨むが、リリムはそれを物ともせずに言った。
「あら、完全に寄生されると効果が無いようね。ごめんなさい?」
「こ、このぉ! っ! んっくくく、あっあっ、ダメぇ……」
 悪びれずに言うリリムに、ニナは罵声を浴びせようとした。だが、アナスタシアの口からニナの胸に垂れた寄生スライムが、胸を這うむず痒い快楽を与えて言葉にさせなかった。
 寄生スライムは緩やかな双丘を麓から頂きへと円を描くように這い進む。時には震え、時には揉むように動き、緩急ある動きでむず痒い快楽を与えながら乳首へと迫る寄生スライムだったが、ぷっくりと膨れた乳輪に触れるかどうかというところで来た道を引き返していった。もし触れられていたなら正気ではいられなかったと安堵する一方、達するには弱い快楽はニナの劣情を募らせるだけだった。そして、寄生スライムによる焦らしは何度も続くが、どれだけニナが心の内で望もうとも満足できる快楽を得ることはなかった。
「あぅうう、お願い、イかせてぇ……。ぃひひっ! くすぐったいのも、気持ちイイのも、あっ! 足りないのぉ……」
 焦らしに焦らされた身体の欲求が、ついにニナの精神を上回った。切なげな表情のニナを見詰めながら、アナスタシアはリリムに似た妖しげな笑みを浮かべる。
「それならニナも スライムキャリアに ならないとダメだなぁ。なに、この身体だって悪くないぞ?」
「でも、魔物になんてぇえっへへへ!」
「それに、今なら愛と快楽だけの世界が、くひひ! どれだけ素晴らしいか分かるんだ。ニナとレックスと私。三人で蕩けるようにぃいい、あっあんっ! 愛し合い、淫らに交わり合う……。想像しただけでっ! あんっ、くひぃ! イッ、イッくぅう!!」
 人の身体では迎えられない絶頂を味わうアナスタシアの姿に、ニナは自分を重ねた。わき腹や背中を這う触手が彼の指なら。膣をかき回し、肉ひだの一枚一枚を愛撫するモノが彼のペニスなら。おそらく、おかしくなるまでよがり狂うだろうとニナは思った。そして、そんな狂おしい快楽を受け止めるためには人を辞めなければならない。もはや、教団員としての禁忌に対する嫌悪感は邪魔な物でしかなかった。
「アナスタシア、お願い、私も魔物に……」
「ああ、勿論だ」
 アナスタシアはニナの懇願にそう答えると、じゅるりと舌舐めずりをして口を開いた。寄生スライムに覆われた口内はぬらぬらと光り、舌を動かす度にくちゅくちゅと淫猥な水音を立てた。
「……ん、んちゅ……にちゅ、えろぉ、んふふ。ちゅぷ……くちゅ……ふぅ」
「あむぅ……じゅりゅ……じゅずず! ぴちゅ、ちゅじゅぅうう! んぅ、んっんくっ……ぷはっ」
 アナスタシアは寄生スライムを唾液と共にニナの口内に移し、余す所無く塗りたくろうと舌をうねらせ、ニナは自らの舌をアナスタシアの舌に絡ませて吸い付きながら、寄生スライムを飲み込んだ。そして、寄生スライムを飲み込んだニナの理性と思考はじわじわと快楽に溶け、肌はより敏感で柔らかく、快楽に弱くなっていく。
 ニナが寄生スライムを受け入れるのを見届けたアナスタシアは、巨大化したスライムに跨がった。それによってスライムはアナスタシアの思うままに動き、触手でニナを捕まえてアナスタシアに背を預ける形で跨がらせた。
 魔物化した余韻に惚けているニナの手足に絡み付いた触手は、両手を頭の後ろに、両脚をM字に開脚させて固定することで、腋とわき腹、そしてヴァギナを晒け出させた。
「さあ、ニナ。生まれ変わったニナの姿をレックスに見てもらおうじゃないか」
 二人に跨がられた寄生スライムは触手を伸ばしてレックスを捕まえると、彼の動きを封じていたスライムを吸収した上でニナの真正面に誘導した。レックスの視線が胸、腋、ヴァギナをさ迷う度に、ニナの肌にピリピリとした快楽が走る。
「やだ……レックス、見ないでぇ……」
 ごく僅かに残った人の理性がニナに羞恥心を思い出させた。だが、腕で身体を隠すことも、脚を閉じることも出来ない状況では、頬を染めた女が悩ましげに身体をくねらせ、男を誘っているとしか見えなかった。
「ニナ、恥ずかしがらなくていい。雄と雌が求め合うのは当たり前のことだ。それに、ニナだって欲しくてたまらないのだろう?」
「ひぁあん!!」
 触手が濡れそぼるヴァギナを一撫ですると、ニナは腰をビクリと震わせた。撫でられただけとは思えない快楽によって、ニナの腰は彼女の意思とは関係なく独りでに前後する。
「ニナはもう魔物だ。教団の教えや人の倫理なんて関係ない。さあ、どうして欲しいかレックスに言ってあげるんだ」
 耳元でそう囁くアナスタシアの誘惑に、ニナの理性は完全に溶けて無くなった。
「……レックスが欲しい。ねぇレックス、私の中にレックスの精液、沢山ちょうだい」
「ほら、レックス、この身体は全部お前のものだ」
 触手がぴったりと閉じたニナの割れ目を開いた。男を知らないはずのニナのヴァギナは、スライムよって柔らかく蕩け、待ちきれないとばかりにひくひくと痙攣している。レックスは興奮に震える手で何とか鎧とインナーを脱ぎ捨てると、ペニスを晒け出した。先走りを滴らせる剛直は限界まで膨れ、軽く触れただけでも精液を迸らせそうだった。
 レックスはペニスをニナの膣口にあてがうと、一息に突き入れた。抵抗を感じさせるかと思われたニナのヴァギナだったが、まるでレックスのために誂えたかのごとくペニスを根元まで咥え込み、ぴったりと吸い付いた。蠢く肉ひだとスライムの愛撫による強烈な快楽は、耐える余裕さえ与えずにレックスを絶頂へと追いやる。
「っ! あっ! はあぁああん!」
 注がれる精はスライムによってニナの全身に伝達され、身体が溶けてしまったと錯覚するような快楽が駆け巡った。そして、スライムとニナのヴァギナはさらに快楽と精を得ようと蠢く。未だに衰えないレックスのペニスはそれに応えるべく、とろとろに蕩けながらもぴったりと吸い付くニナのヴァギナを掻き回した。一突きする毎にじゅぶじゅぶと淫猥な水音が鳴り、精液と愛液とスライムの混合物が掻き出され、撒き散らされる。
「あぅう、あっあっ! そこっ、イイのぉ……もっと突いて……いひゃぁああ!?」
 快楽に蕩けたニナの身体をアナスタシアの指が襲った。晒し出された腋をカリカリと引っ掻くように動いたかと思えば、窪みをグリグリと刺激する。横に逃げることが出来ないニナの身体は、アナスタシアから距離を取ろうと反射的に背を反らした。
「くふふふ! イヤ、くすぐりは止めてへへ!ひぐぅ……あんっ! くすぐったいのが、気持ちよくなっちゃうっははははは!! ダメ! お腹はダメーっ! あはははははは!!」
 しかし、ニナは無防備に突き出してしまった腹部、特に下腹部と臍をスライムの触手にくすぐられる。下腹部の触手はちょうど子宮がある位置をやわやわと撫で、臍の触手は窪みの中でクネクネと暴れた。
 ヴァギナを掻き回され子宮口を突かれる強烈な快楽と、腋と腹部を襲う痺れるようなくすぐったさ。それらは混ざり合って一つの快楽となり、ニナの思考をさらに蕩けさせた。蕩け切った思考は、レックスのペニスから与えられる快楽を貪ることしか考えられない。そして、快楽に蕩けた思考はヴァギナの締め付けを強め、肉ひだにまとわりつくスライムの流動を激しくさせる。
「いひゃひゃひゃ! くすぐったいの、気持ちいいぃはははは!! あっ、やぁ、くすぐりでイっちゃぅう! あっあっ! あぁあーっ!! 」
 ニナの絶頂と同時にレックスは腰を強く打ち付け、彼女の子宮へ再び精を注いだ。強烈に増幅された、焼け付くような精の熱さとくすぐりの快楽に、ニナは意識を手放そうとした。だが、二人からもたらせれる強烈な快楽がそれを許さなかった。
「……んひぃいいい! アナスタシア、も、もうくすぐりは、やらぁあ! くふぅう! レックスぅ! やめ、やめて! くすぐりながら、突かないで!へへへへへ!! また、また、くすぐりでイくぅう! あはっはははは! あぁあああ!!」
 くすぐりと快楽の責めは止むことがなく、時にくすぐりの対象をアナスタシアに変えながら永遠と続く。互いに愛し合い、淫らに交わり合う幸福を知った三人は、より深い快楽を得るために寄生スライムに身を委ねた。
 寄生スライムは三人から精を吸収して巨大化と分裂を繰り返し続ける。そうして産まれた小さな寄生スライムたちは地下水道の流れに乗って拡がっていった。寄生スライムが辿り着く先の人々は、地下水道の蠢きを知らずに日々を送る。その果てに訪れる光景を想像し、リリムは笑みを深めた。
20/08/06 15:01更新 / オム族の男Ψ

■作者メッセージ
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
字面がうるさい文章になってしまいましたが、楽しんでもらえたなら幸いです。

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