読切小説
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ゆえに二人は懺悔する
 ある街の外れにある小さな教会。私はそこでシスターをやっています。
 と言っても、空いていた教会を借りて細々とやっているので、神父様もおらず修道士も私だけなので、教会という言い方をしていいのか、微妙なところです。
 それに、この街の中心部に大聖堂がありほとんどそちらに流れてしまっています。なので、こちらに人が来る事は滅多にありません。
 ただ、一人を除いて。

 朝、教会の中に入ると、まだ起きたばかりの太陽がステンドグラスを通って堂内を照らします。
 静かな雰囲気もあってか、まるで神が直々に祝福してくれているような神々しささえ感じてしまいます。
 そんな中、祭壇の前に立ち、女神がこちらを見下ろすように描かれたステンドグラスに、祈りを捧げる小さな後姿がありました。
 足音を立てないように注意しながら歩み寄り、その子の後ろに立ちます。
 その後ろに立つと、彼の身体に刻まれた傷がよく見えてしまいます。
 服の首袖に半分だけ隠れていますが、彼の首と肩の間に、水ぶくれのようなものが出来ていました。きっと服の中にも、傷がたくさんあるのでしょう。
 やがて、彼は組んでいた手を外し、こちらに振り返ります。

「うわぁ! セレネさん!?」

 どうやらすぐ後ろに私がいるとは思わなかったようで、ひっくり返りそうになるほど驚いてくれました。
 私は気持ちを隠して、笑みを見せました。

「おはようございます。相変わらず早いですね、エル」
「お、おどかさないでください」

 彼はそう言いながら、後ずさるように私から距離を置きました。
 焦りと照れを混ぜ合わせたような、何とも複雑な表情をしています。

「お祈りの最中だったようですから、邪魔をしてはいけないと思ったんです」
「だからってそんな近くにいなくても……び、びっくりするじゃないですか」
「ふふっ、ごめんなさい」

 彼自身、あの傷を隠し通せていると思っているのかもしれません。
 私は、あなたが物事つく前から知っているんですよ。
 隠し通せるはず、ないじゃありませんか。

「……新しいお家ではうまくやっていますか?」
「あ、はい。よくしてもらってます」

 敢えてこの話題を振ったとき、答える直前にエルの表情がわずかに沈んだのを私は見逃しません。

 エルは家が放火に遭い、その時に両親を失ってしまいました。
 そうして一人になってしまった彼に、私が面倒を見ると話をしたのですが、彼の父親とお知り合いだと言う方が引き取ると言いだしたのです。
 衣食住を提供する代わり、その家の使用人として働くという条件付けで。
 まだ幼いエルを働かせる事に反対した私ですが、最終的には彼自身が望んで使用人になることを選んでしまいました。
 その決断に、私は未だ納得していません。はっきり言ってしまうと、今からでも引き取りたいくらいです。
 彼は隠し通しているつもりでしょうけども、その家で彼が受けている扱いが使用人以下の物であることは、身体中の傷を見れば分かることです。
 その家が彼に虐待を行っていることを公に示せれば、エルを私の元へと引き取ることもできるでしょう。
 それでも、そうすることが出来ないのは、エル自身がそれを拒んでしまっているからでした。


「……セレネさん?」

 気付けば、エルが心配そうな顔で私を見上げていました。
 私は何でもない事を笑顔で示しながら、その小さな頭を撫でました。
 恥ずかしがって私の手から逃げようとしましたが、すぐに甘んじて受け入れてくれました。顔を赤くして、でもくすぐったそうな表情に、思わず頬が緩んでしまいます。

「な、なんですか……子供あつかいなら、しないでください」
「何を言ってるんです。あなたはまだ年端もいかない子供ではありませんか。もう少し甘えてもいいはずです」
「……っ」

 私の事をおねえちゃんと慕い、無邪気に笑う彼を知っている私としては、その頃の彼と接したい。
 未だ、私の顔一つ分低い背丈の彼は、まだ幼い子供にしか見えません。
 むしろ年齢で言えば、誰かを支えるのではなく、誰かに支えられて生きる年齢です。
 そんなこの子が誰の手も借りようとしない姿は、見ていて痛々しいだけです。

「せめて私の前だけでも、素直になってください」
「そんなことできません。お母さんやお父さんの分まで生きなきゃいけないから」

 ――だから、誰にも甘えちゃいけないんです。
 その先の言葉は、私の手から離れることで、何も言わずに示してきました。

「エル……」

 私が呼ぶと、エルは首を横に振りながら、口の端を上げるだけの笑みで返してきました。
 何だか、とても遠い存在です。

 エルは、変わってしまいました。
 必要以上に無理をするようになってしまったのです。
 甘える事を辞め、頼る事を辞め、全てを自分一人で背負い込んで。
 その無理を続ければ、彼の心が崩壊してしまうような無理をし始めました。
 亡くなってしまった両親の分まで生きる為に、まるで自分自身を抑え込んでいるようです。
 笑顔の仮面を付けて、自分の本心を隠す事を覚えてしまったのです。
 それが私に対しても同じだということが、どうしようもなく寂しいです。
 彼の心の底からの笑顔を、もう見ることは叶わないのでしょうか。

「そろそろ行かないとおこられますから……行ってきます」

 エルが、頭を下げて教会の外へと歩き出します。
 その後ろ姿に、有無を言わせない彼の拒絶が見えてしまいました。

「え、えぇ……あなたに神のご加護が、ありますように……」

 そう答えるしかありませんでした。こんな事を言ってはシスター失格でしょうけども、今の彼に必要なのは神の加護なんかではなく、もっと他にたくさんあります。
 年相応にはしゃぎ回っていたあの子の姿が、とてもとても遠い出来事のようでした。
 でも、それを望むのは、私の傲慢でしかないのかもしれません。
 彼は両親を失い、家も失い、それでも新たに引き取ってくれる家があった。
 その中に、彼は幸福を見つけたではありませんか。私がとやかく言うべきことではないのです。
 無理やり自分を納得させてみても――エルの離れる背中と、そこに隠された傷を思うと、腑に落ちないばかりが、胸騒ぎまでしてしまいます。


 その日の夕方、私は誰もいない聖堂で静かに祈りを捧げました。
 いえ、それは祈りと言うよりも、神への問いかけでした。
 なぜ、なぜあの子があんな目に合わなければならないのでしょうか。
 あの子が何かあなた方の意に反する事をしたのでしょうか。
 神は答えてくれません。
 そもそも、私は神の声を一度も聞いた事がありません。一介のシスターに過ぎないのです。
 それでも、手を組み目を閉じ、神に問いかけます。
 笑顔を、幸福を、人生を。
 その全てを狂わせてしまうほどの業が、あの子のどこにあったのでしょうか。
 それが彼の宿命だと言われれば、私はそんな宿命は信じません。信じたくありません。
 あの子は幸せになるべきです。あの子は笑顔でいるべきです。
 私がそれを――望んでいるのだから。

 どのくらいの時間、そうしていたでしょうか。
 気付けば外から差し込む光が消え去り、聖堂は暗くなっていました。
 やはり神の意思を感じ取る事は出来ませんでした。
 分かっていたことです。ですが、今回だけでも、あの子を救う方法を教えていただきたかった。
 沈鬱な気持ちを吐き出すように、深くため息をついて立ち上がります。
 それでも消えなかった沈み込むような心のまま、重い足取りで私を見下ろすステンドグラスの女神を背に、教会の出入り口へと向かいます。
 ――――。
 扉の取っ手に手をかけたとき、なにやら声が聞こえたような気がして堂内に振り返ります。

 そこにあった光景に、私の背筋は凍りました。

 女神が描かれていたはずのステンドグラスが、その姿を変えていました。
 そこには、青白い肌に黒い翼を持った天使たちに囲まれるように、黒い修道服に身を包み、手を組み祈りを捧げる女性が映っていました。
 それは、まるで先ほどの私のようでした。だからこそ、私は自分が疲れているのではないかと思ってしまったのです。
 確認する為に、そのステンドグラスに近づいていると、目の前に黒い羽根が落ちてきました。
 恐る恐る上を見上げると――ステンドグラスから飛び出したような、青白い肌の天使たちが、私を見下ろしていたのです。
 声も出せずに驚く私を見て、彼女らはくすくすと笑います。
 そして、彼女たちはゆっくりと私の元に降りてきて――





 その翌日の、夜の事である。
 エル――エリクは昨日よりも傷が増えた身体で、セレネのいる教会へと足を運んだ。
 新たに引き取ってくれた家の人間からは、使用人以下の扱いを受け、鞭や椅子で殴打される日々は不幸以外の何物でも無かった。
 しかし、衣食住が出来ているだけでも幸せな事なのだと、自分に言い聞かせていた。

 ――どんな不幸の中にも、幸福は存在する。

 灰と化した家の前で泣きじゃくる彼を抱きしめながら、セレネが言った言葉だった。
 その言葉が、当時の彼にとって救いの言葉ではあったが、今となっては無理をしてしまう一つの理由として確立してしまっているのだ。
 それでも、毎日のように彼女のいる場所に足を運んでしまうのは、やはりどこかで癒しを求めているからなのかもしれない。
 セレネと会うために来ていると言っても過言ではなかった。
 心配をかけてしまうことは重々承知だった。それでも、笑顔を見せていれば彼女も納得してくれてくれるはずなのだ。
 そうして彼はいつもとは違い、太陽ではなく月の出ている時間に、教会の扉を開けた。

「今日はずいぶんと遅いんですね」

 中には先客がいた。
 長く下ろした銀色の髪に、黒いベールと修道服に身を包んだシスターがいる。
 セレネ以外にはあり得ない。
 祭壇の前でまるでエリクを待っていたかのように佇んでいた。そして、慈愛に満ちた笑みを湛えて、エリクを見ている。
 彼は頭を下ろしながら彼女に近付こうとして――足を止めた。
 彼女の後ろにある、ステンドグラスに映る絵が違うことに気付いたのもある。
 しかし、それ以上に彼女の雰囲気がいつもと違っていたのだ。

「どうしたんですか。こっちにいらっしゃい?」

 彼女のその口調はまるで昨日と同じである。しかし、勘違いでは済ませないほどの違和感が、彼の脳内で警鐘を鳴らしていた。
 セレネさんに、何かあったのか。
 エリクは彼女に背中を見せないように後ずさり、扉の取っ手に手をかける。
 だが、力を込めて押しても扉はびくりともしなかった。
 入るときはあんなに軽かったはずなのに、と思わず顔を向ける。

「あら……今日のお祈りはまだでしょう? どうして外に出ようとしているんですか?」
「いや、あの……おくれちゃったから……セレネさんの顔を、見にきただけ、ですよ」

 あなたの様子が変だから、とは言えなかった。
 もっともらしい言い訳をでっちあげ、それを口にする。しかし、それは彼の本心から出たものでもあり、嘘ではなかった。
 だからこそ逆効果だったと、すぐに気付く事になる。

「まぁ♪」

 彼女の表情が蕩けた。今までに見た事が無いほどに淫靡で、見ている彼ですらドキリとしてしまうものだった。

「エルがそんな事を言ってくれるなんて……嬉しすぎてどうにかなってしまいそうです」

 ゆっくりと、セレネがこちらに近づいてくる。
 彼女に近づかれてはいけない気がした。
 扉が開かない以上、他の場所から出る方法を探すしかない。
 なのに、身体が動かない。
 何かの作用によるものなのか、それともただ自分の足がすくんでしまっているのか。
 その原因が分からぬまま、セレネはすぐ目の前に来てしまった。
 そこまで来て、彼女に対する違和感にようやく気付いた。
 ドアのガラス窓から月の光に照らされる彼女の姿は、変わり果てていた。
 黒い修道服に身を包んでいることには変わりない。しかし、所々布地が切り取られていて、豊満な胸の谷間や、白く伸びた足が見え隠れしている。
 そして、彼女の後ろの腰からは黒い羽毛の羽が見えていて、さらにハート形の先端を持つ紺色の尻尾も生えていた。その尻尾には、鎖が巻かれている。
 それが何を意味するのか、幼くも賢い彼は理解してしまった。
 セレネは魔物化していたのだ。

「セレネ……さん……」

 悲痛な表情で呟いてはいるが、その目は隠されていた彼女の魅力に既に囚われていた。
 それを悟っているのか、セレネは慈愛に満ちた笑みで返す。
 その笑みは昨日までと何ら変わらなく、魔物であってもセレネはセレネであると、エリクは安堵感にも似た思いを抱いてしまった。
 さらに一歩だけ近付いてきた時、セレネが何かに気付いたらしく、途端に沈んだ表情になる。

「また傷が増えたんですね……かわいそうに……」

 そう良いながら、伸びてきた彼女の手が、彼の耳をなぞった。
 ちょうど昨日、不作法の罰として家主に刃で斬られた場所だった。それをセレネは目ざとく見つけたのだ。
 傷は深くなかったので既に治りかけているが、彼女の触れる指先から疼く痛みに、エリクの身体がわずかに跳ねる。

「……また?」

 エリクもまた耳ざとく、彼女の言葉から一部分を復唱する。
 しかし、セレネはそれには答えずに小さく笑った。
 その笑みの意図を理解できずにいると、いきなり胸の中へと顔を埋めさせられた。

「わ……」
「ふふ……」

 彼女にこうやって抱きしめられる事は初めてではない。しかし、それは昔と言えるくらい、エリクが小さな時だった。
 素肌から感じるセレネの匂いと柔らかさは記憶の中よりも強烈で、彼の思考と理性を甘く蕩けさせ、先ほどの言葉などすぐにどうでも良くなってしまう。
 甘える事を抑えていたせいで、その気持ちが一気に溢れだしてしまったのだ。
 さらに深く浸るために、エリクは自分から身体を寄せてセレネの腰に腕を回していた。
 そんな様子に、セレネは嬉しそうな表情で、彼の頭を優しく撫でる。

「あぅ……セレネさん……」
「んぅ、ダメです。昔みたいに甘えてくれるなら、昔みたいに呼んでくれないと」

 彼の甘える声に、セレネは少しだけ不機嫌に言う。
 しかし、どこにも拒絶の色は無く、エリクに甘えられたまま頭を撫でたままだった。
 彼が、それに対して拒否できないことを分かっていたからだろう。
 エリクは少しだけ沈黙したあと、顔をわずかに揺らした。

「セレネ……おねえ、ちゃん……」
「はい、よくできました♪」

 彼女の声色に甘さが強くなる。どこか、甘えられることに甘えているような声だった。
 エリク――エルはむしゃぶりつくように両胸の隙間に顔を深く埋めて、その香りを、その柔らかさを堪能する。
 気付けば荒くなっている息に、セレネが気付かぬはずもなく。
 服の上から、小さいながらも自己主張を開始していた股間を優しく撫でられて、ひくりと身体が動いた。

「あら……ただ胸に甘えているだけなのに、こんなにして――エルったら、悪い子♪」
「あぅ!」

 弾むような声で、撫でられていた股間をギュッと強く掴まれ、思わず声を出してしまう。

「悪い子は懺悔しなくちゃ、ダメですよね?」
「え……?」

 懺悔という言葉に、エルは不安そうな表情で顔を上げる。
 そんな彼を安心させるように、セレネはくすりと笑った。


 エルは教会の壁際に置いてある、一人用の椅子に座らされた。
 下半身だけ脱がされ、脈打つ皮かむりのペニスが晒される。
 セレネはそんな彼の開かれた足の間で膝立ち状態になり、天を衝く勢いの小さな棹を見下ろしていた。

「まぁ、可愛い……ふふふ、ここは幼いままですね」

 セレネが悪戯っぽい笑みを浮かべながら、言った。
 そして、有り余る皮の先端を人差し指で亀頭に押し付け、円を描くように弄くり回し始める。

「そ、そんなこと……」
「いいんですよ? むしろ私としては昔のままでいてくれた方が嬉しいんですから」

 顔を赤くして反論するが、セレネの人差し指の動きは変わらず、空いた片手でゆっくりと皮を剥きながら亀頭を扱く。
 優しくももどかしい甘美で、しかし性経験がわずかしかない彼にはちょうどいい刺激に、自然と息が荒くなる。そんなエルの様子をセレネは嬉しそうに眺めていた。
 先端の皮が少なくなり、亀頭が顕わになると人差し指の手を止め、股間に顔を近づけると舌を出して亀頭に唾液を垂らしていく。
 その間も皮を剥くことは止めず、外気慣れしていないピンク色の亀頭が完全に露わになる頃には、セレネの唾液塗れになっていた。
 唾液でぬらぬらと光を反射する自分の肉幹をボーっと眺めていると、セレネも息がかかるくらい、顔を股間に寄せてきた。
 セレネの熱い息すらも充分な刺激となって、肉棒がびくんと震える。

「さて、エル。そろそろ懺悔の時間ですよ」
「……へ、ざ、ざんげって?」

 息を吐いては震えるペニスの様子を楽しんでいたかと思えば、突然セレネが不穏な言葉を発した。
 その言葉に、一瞬で我に返る。
 何となくではあるが、エルには懺悔という言葉には怖いイメージしか沸かなかった。
 そんな彼を表情で察したのか、セレネは柔らかく微笑む。

「大丈夫ですよ、気持ちいいだけ、ですから」
「きもち、いい……?」
「そうです。懺悔とは快楽で罪を洗い流す事――だから、私も一緒に懺悔してあげますね……?」

 そう言いながら、セレネは自らの胸の谷間に、唾液を何度も落とし、染み込ませるように二つの乳房を掴んで擦り合わせる。
 その光景と、乳房から漏れる粘っこい音、そして彼女の口から漏れる微かな吐息に、エルの鼓動も早くなりペニスも震えた。
 目の前で揺れる陰茎を見て、くすっ、と艶やかにセレネが笑った。

「エルの罪は、身の丈を超える無理をした事です。そして、私の罪は――そんなエルを止められなかった事」
「せ、セレネさんは……わるく、ありません」

 自分の罪はともかく、セレネ自身の罪に対して、エルはそう口を挟まざるを得なかった。
 その言葉に、セレネは一瞬だけ不満そうな表情を浮かべ――しかし、すぐに思い付いたように笑顔になる。

「あぁ、そうそう……あなたの罪はもう一つありましたね。私のことを『おねえちゃん』と呼んでくれなくなった事です♪」

 そう言い放ち、弾むような声でエルの罪状を増やし、膝立ちのまま身体を寄せてくる。
 そして、肉幹を片手で掴んだかと思えば、修道服から覗かせる豊満な谷間の入り口へと向けられた。
 意図的なのか無意識なのかは分からないが、裏筋からセレネの乳房へとわずかに埋まり、柔らかい感触が快感となって、エルの身体を走り抜ける。

「うぁっ……ご、ごめんなさい……セレネ、おねえちゃん」
「今さら謝っても遅すぎます。エルに『おねえちゃん』と呼ばれなくなって、さらに敬語まで使われるようになって。手の届く距離まで寄っても、逃げるように離されて抱きしめることもできない、頭を撫でてあげることだってほんの数秒で――あら……? これでは……エルの罪は二つどころではありませんね、ふふっ♪」 

 セレネは妖艶に悪戯な笑みを浮かべて、今度は意図的に自らの谷間に亀頭を、ぐにゅっ、と強く埋め込んだ。
 修道服に身を包んでいるせいか、セレネが手を使わずとも、小さな剛直は乳肉によって柔らかく締め付けられる。
 エルは男根を通して全身へと流れてくる幸福の快感に、喘ぐ事しかできなかった。

「ふあっ、あぁ……っ」
「でも、それを抑えていた私もまた、悪いのです。あの時、あなたを無理やりにでも……私の元に引き取っていたら、罪が増えることは無かったんです。ですから、ぁ♪」

 エルの反応には構わずに自分の罪を告白したあと、乳房を両手で持ちながら身体を動かし始めた。
 胸の媚肉に埋まる肉棒が抜き差しされる度に、ぬちゅっずちゅっ、と卑猥な粘着音が教会内に響く。
 先ほどセレネが垂らした唾液に塗れているせいで、乳内は滑りも良くて痛みもほとんどなく、ただ気持ちよかった。

「エルの精を、ください……っ♪ あなたの懺悔は、精を吐き出すことっ、私の懺悔は、ふぅっ……その白い精、をっ、身体に……んはぁ……受ける、ことです……からぁ♪」

 セレネの声にもはっきりとした喘ぎが混じり始めていた。それでも、乳房を動かす事は止めず、さらに動きは激しくなる。
 触れてもいないのに、固くなった彼女の乳首が修道服を押し上げているのを、視界に捉えた。
 そのいやらしさを本能的に理解し、興奮剤となってエルの初の懺悔を早めていく。

「セレネおねえ、ちゃ、ん……もぅ……っ」
「ふふっ……出ちゃい、そうですか? いいですよ……はぁっ……いつでも……」

 言いながらも、セレネは動きを止めない。
 それどころか双乳を両手で捏ねるように揉みしだき、まだ敏感すぎるペニスを更に刺激してきた。
 容赦なく送られる快感に、とうとう身体が跳ね始める。

「まって、おねえちゃん、やめ、出ちゃ……っ!」

 快感に涙を流しながらエルは首を振った。
 しかし、そんな彼の様子を、セレネは目を細めて満足そうに笑うと、彼の小さな剛直を全て胸の中に埋め、乳房を互い違いに上下し始めた。

「いいんですよ……出してください。私の、胸の内に……あはぁ♪」

 セレネがうっとりとしながら甘く熱い息を吐き、激しく小刻みに双乳を上下に動かす。
 ぬちゅぬちゅぬちゅっ、と更に大きく卑猥な音を立てながら、絶え間なく送られる刺激にペニスがびくびくと震え、セレネに限界を示す。

「あぁっ、エルっ、出してっ、出してくださいっ♪」

 エルの言葉に反応するように、セレネは両手で乳房を押し潰すようにして、中にある男根を締め上げた。
 それがとどめとなり、彼の腰が大きく跳ねた。

「うあぁ、出るっ、でるぅぅぅ!」

 エルは目を閉じ身体を強張らせて、セレネの胸の中に懺悔の証を勢いよく吐き出していく。

「あぁん……あふぅ♪」

 セレネは恍惚の表情を浮かべて、胸をギュッと押し付けたまま細かく身体を震わせた。
 それが、さらなる刺激となって、彼の内に残る精を搾り取っていく。

「ふふっ……ちゃんと懺悔、出来ましたね。凄い量でしたよ……この奥に、まだまだ残ってるんですから……んっ……♪」

 精を吐き出し終えて震えの止まったエルの懺悔棒を胸から抜くと、谷間から漏れ出す白濁の液を見せ付け、自らの肌に馴染ませるように乳房をむにむにと動かした。
 先ほどの時よりも粘っこくいやらしい音が谷間から漏れ聞こえてくる。
 柔らかな乳肉を動かす扇情的な姿と相まって、収まるはずだったエルの性棒は変わる事無く屹立を維持していた。

「はぁ、はぁ……おねえちゃん……」
「あら……もしかして、今のを見て興奮したんですか? 全く……エルったら本当に悪い子ですね♪」

 射精前と変わらず、快感による断罪を待ち望むかのように震える小さな剛直を見て、セレネがくすり、と色っぽく笑う。

「でも――ダメです。まずは汚れたエルのこれをお掃除してあげなきゃいけませんから……」

 セレネはエルの股間に顔を寄せて、一度だけ見上げてくる。
 そして、目を細めて笑うと。

 ――ねろん。

「あうぅ!」

 舌を出して精まみれの肉幹を舐め上げられた。
 射精したばかりで敏感になっているペニスへの刺激に、エルは嬌声をあげる。
 その様子に、セレネは満足げな笑みを浮かべた。

「うふふ、良い声……それでは、綺麗にしますね?」
「お、おねえちゃん、ちょっとま――」

 エルの制止に耳を貸さず、セレネは躊躇無く股間に顔を埋めた。

「あむっ、くちゅ、ちゅっじゅ、れろっ……」
「ふぁっ、あぅぅ……」

 先ほどとは違い、優しくもねっとりと絡みつくような舌の動きだった。
 心地よい快感が全身を弛緩させ、エルの心を容易く蕩けさせた。

「おねえちゃん……それ、気持ち、いい……」
「んふふっ……れろれるっ、ちゅるるっ……」

 エルの言葉に嬉しそうに目を細めると、変わらない舌の動きで亀頭に付いた精液を丹念に舐め取っていく。

「ねろ……はむっ、んむぅ、じゅるっ……ちゅ、ちゅるっ」

 亀頭の精液が舐め取られ、セレネの舌がくるくると亀頭の周りを回転するように、幹側へと移動していく。
 そしてカリまで到達すると、傘の根元部分に舌が差し込まれる。

「れろっ、ちろっ、れるれるっ、じゅちゅっ、あむむっ……」

 カリ首の溝の中を舌で入念に擦られる。
 そこに溜まっていた精液のみならず、恥垢も舐め取っているのだ。

「ねろねろっ、れるぅ、はむっ、じゅぷぷ……ちろちろっ」
「あぅぅ……また出ちゃうぅ……」

 元々あった汚れも全て舐め取られる頃には、敏感な部分を執拗に刺激されたせいで、二度目の懺悔が間近であった。
 それを聞いて、セレネは射精に備えるように目を閉じた。
 しかし、ねっとりとした舌使いは変わらず、好きなときに出していい、と言われているようだった。

「あむぅ、ちゅ、ちゅっちゅぅ……ぺちゃ、くちゅちゅ、じゅるるるるっ」
「あ、あぁ、あぁぁぁぁ……!」

 軽く吸われながら鈴口をちろちろと舐め上げられた瞬間、エルは腰をがくがくと痙攣させ、我慢する事無く精を放出した。

「んぐっ、ふぶぅ……んっ、んくっこくっ、くふぅ……」

 最初は先ほどよりも勢いのある射精に驚いていたが、すぐに舌で受け止めてから、ゆっくりと嚥下し始めた。
 喉を鳴らす度に、セレネのとろんと瞼が下がり、頬も紅くなって恍惚の表情が強くなっていく。
 射精が終わったあとに、また舌を這わされてエルは快感に腰を震わせたが、今回はすぐに解放された。

「もう……綺麗にするためのお掃除だって言ったじゃないですか……♪」

 うっとりと顔を蕩けさせながら言うセレネはとてつもなく妖艶だった。
 精液を口内で受けたせいか、彼女は既に発情しきっていた。
 エルはその淫気に当てられ、言葉を発する事すら出来なくなってしまう。
 セレネはすっと立ち上がり、前掛けのような布をめくり上げる。

「わ、ぁ……」

 そこにあったのは、既に男性を――否、エルを求めて涎のように愛液を垂らしながら、ひくひくと震える秘所だった。
 足元に視線を落とせば、そこには既に水溜りのようになっていた。
 セレネは頬を上気させたまま、悪戯がばれてしまったような表情でちろりと舌を出した。

「もう我慢できません……いえ、本当は我慢してはいけないんです。私もまた、新しい罪を作ってしまいました……♪」

 セレネの言葉が、この先に行うことへの口実に過ぎないことは、エルでも理解できた。
 しかし、それを拒む選択肢など、どこにも存在しなかった。

「この罪を浄化するには、直接、私の膣内に注ぎ込んで貰うしかありません……よね♪」

 セレネがエルの上に向かい合うように座り、その顔を胸に埋めさせた。
 自らの精液の臭いが鼻腔に伝わるが、それ以上に乳房の柔らかさと彼女自身の甘い匂いに恍惚としてしまう。
 そんな彼の頭を撫でながら、二度も精を吐き出したと言うのに相変わらずの肉棒を、セレネは自らの秘部へと招き入れるように腰を落とした。

「ふぁ、あぁっ、あぁぁぁぁっ♪」
「はぁ、あっ、ぅぅぅぅ!」

 二人の嬌声が堂内に響き渡る。
 一人は待ちに待った快楽に喜ぶように。一人は、今までの前戯が比べ物にならないほどの快楽に耐えるように。
 セレネは今まで守り通してきた自らの純潔を貫かれたが、既に魔物となった彼女にとっては破瓜の痛みすらも、喜びと快感に変換されてしまっている。

「あぁっ♪ すごいですっ、これが、これがっ……♪」

 むしろ、初めての快楽に溺れてしまっているのは、セレネの方だった。
 快感を貪るように腰を上下に動かし、容赦なくペニスを膣壁で擦り立ててくる。
 それだけではなく、セレネの本能的な動きに合わせるように、腰が離れる時逃がすまいと膣肉が収縮して肉棒を締め上げ、腰が密着した時には膣肉が招かれたエルの分身を包み込んで奥へ奥へと引っ張り上げる。

「だら、くぅ♪」

 セレネに頭を覆うようにぎゅぅっと強く抱き締められる。
 エルもそれに返すように、顔を乳房に埋め、両手を腰に回して力を込める。
 ピストン運動が繰り返される度に、膣内で感じるペニスが鋭敏になってくる。
 膣肉にねっとり絡みつかれ、膣壁にきつく締め付けられ、何度目かのピストンによって辿り着いていた最奥では、待ち受けていた子宮口が亀頭を舐め回すように刺激する。

「はぁ、うぁっ、セレネ、おねえちゃんっ!」
「あはぁ♪ いいですっ、気持ちいいですよ、エルのおちんぽぉ♪ びくびく震えて、また射精しそうになってっ♪」

 愛欲にまみれた顔で、エルの頭を頬擦りするセレネ。しかし、対するエルはそれどころではない。
 この暴力的なまでに送られてくる快感に抗う術が無く、享受して荒い息を吐くしかなかった。。
 何度も膣内で刺激を受けて赤く染まる小さき怒張は、内にある精を吐き出したくてびくんびくんと打ち震えていた。

「いいですっ、いいんですよ♪ くださいっ、私にくださいっ、エルの懺悔の証を、膣内にっ、ナカのっ、奥にぃぃぃ♪」

 ぐにゅぐにゅと媚肉が蠢き、膣内の剛直を滅茶苦茶に揉み回す。
 そして彼女の言葉通り、腰が一番奥深くまで突き刺さる。
 そこで待ち構えていた子宮口と亀頭が押し潰されるように密着し、亀頭にぴったりと吸い付いた。

「はぁっ、あっ、あぁぁぁぁぁ〜〜〜っ♪♪♪」
「あっ、あぅぁ、うあああぁぁ!!!」

 瞬間に、彼は精液を噴出した。
 膣中で受けた今までの仕返しとばかりに、容赦なく子宮の内部へと精を叩き込んでいく。

「あぁん、膣内に出てます♪ たくさんっ、でももっとぉ♪」

 しかし、それを嬉々として子宮口は精を貪り、亀頭に吸い付き、膣肉も搾り取ろうと蠕動運動を繰り返す。

「ふっ、くっ、ぐぅぅぅぅ!」

 絶え間ない刺激に、エルは全身を痙攣させて精を吐き出していく。

「ふはぁ……♪ はぁ……はふぅ……♪」

 やがて、終わった射精に、セレネが深く甘い息を吐く。
 その悦楽と恍惚に染まりきったその表情には、禁欲を良しとするシスターの面影などまるでなかった。
 そこにいたのは、堕落を良しとするダークプリーストだった。
 そんな彼女が、たった一度の絶頂と、膣内への射精で満足するはずもなく。

「さぁ……まだまだ続けましょう、エル? こんなに気持ちのいい懺悔をここで終わらせるなんて勿体無さ過ぎます♪」

 腰をゆるゆると動かし、中で萎えかけている物を刺激して強制的に屹立させてしまう。

「うあっ……」

 エルは小さく呻き声を漏らすが、それ以上は何も言わない。セレネの胸に顔を埋めて、荒い息を吐くばかりだった。
 それは、エル自身も彼女の放つ魔力に充てられている事を示していた。
 セレネが本格的に腰を動かし始める。じゅぷっじゅっぷ、と精液も混ざって結合部から大きな粘液音が響く。

 淫欲に塗れた懺悔は、まだ始まったばかりだった。


 堂内で、抱き合っている二人がいた。
 椅子に座る少年の上に、紺色の尻尾と黒い羽を持つ修道女が跨っている。
 動くことも無く、お互いに荒く息を吐いて呼吸を整えていた。
 二人の股間は外気に晒され、その部分で二人は繋がっている。誰が見ても淫猥で恥ずべき行為である、と理解できるだろう。
 しかし、二人とも気にした風も無かった。
 それどころか堕ちた修道女は、自らの身体に抱きついてきている愛すべき少年の頭を、慈愛に満ちた表情で見下ろしながら撫でている。

「エル……もうあの家には行かなくていいんです。自分から、不幸になる必要は無いんです」

 少年は答えない。それでも意識はあるようで、肩を上下させながら口を大きく開けて、息を整えている。

「今までの傷は全て私が癒してあげます。この傷も、この傷も、この傷も――」

 言いながら、服の上から少年の身体を指でなぞっていく。
 その服の下には、恐らく彼女の言っている傷があるのだろう。

「だから……ね? エル……?」

 とても優しく柔らかな声色で囁かれ、少年がわずかに――しかしはっきりと頷いた。
 堕道のシスターは頬を綻ばせて、少年を強く抱きしめた後、顔を上げさせて唇を重ね合わせた。

「んむぅ……ちゅっ、ちゅぅ……」

 瞬間、二人の周囲が光り輝き、純白の眩しさの中に消えていく。
 その輝きが消える頃には、堂内に存在する者は、誰一人としていなくなっていた。





 恐らく、もう誰も訪れる事のない街外れの小さな教会。
 その中にある奥のステンドグラスには、横たわっている少年と、その少年に跨りながら髪を振り乱す修道女が描かれていた。
12/09/21 14:58更新 / edisni

■作者メッセージ
ダクプリさんは、スリットから覗く生足よりも谷間ホールにまず目が行きました。
我ながら性癖がブレません。

ステンドグラスについては、堕落神さまの粋な計らいということで。

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