読切小説
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僕と秘書の出会い
その日も、何も変わらない日常が続くはずだった。
日が暮れたころに家に帰り、夕飯を食べ、風呂に入り、パソコンを立ち上げる。それだけのはずだった。

それだれの、はずだった。












「見つけた・・・・私の、お兄ちゃん♪」












「いや〜やっぱ魔物娘いいわー。萌えるわー」

「ひたすらエロいSSもいいけど、バトル物もいいなー」

その夜も、僕は魔物娘図鑑とSSをみてハアハアしていた。
相変わらずの独身童貞、彼女なし。
それが変わるとは思わなかったし、積極的に変えようとも思わなかった。
でも、変化はいきなりやってきたんだ。


ヒュンッ!


「っ!?」

ドォン!

「か、火炎魔法!?どこから・・・」
「まて〜♪私のお兄ちゃん♪」
「げぇっ!?ヤバイヤバい・・・っ」

カタカタ・・・・タンッ

「こ、これでよし!逃げるぜ!」
「まて〜♪」

 











「ふう・・・なんとか・・・・・まいたか・・・」

あの魔女っ子め、空中から火炎弾ばら撒きながら追ってきやがって。
殺す気は無いとはいえ、怖いものは怖い。
もう夜晩いし、寒いし、家に帰りたいが・・・待ち伏せしている可能性もあるな・・・

「・・・・今夜は、どこかに泊まるか」












「あぁ〜イライラするぅ〜」

今日の僕は、すさまじく機嫌が悪い。
あのあと、結局僕はマンガ喫茶で一夜を明かすことになったからだ。あのロリ魔女のせいで。
ちくしょう、なんで僕がこんな目に。

この恨み、はらさでおくべきか・・・・!











いつものようにパソコンを立ち上げる。

「ハアハア・・・アリスたんハアハa・・・いやいやいや、違うぞ。僕はロリコンじゃないぞ。ただ可愛いものは可愛いと思うだけなんだ。そうだ、自分を保て。僕はロリコンじゃない僕はロリコンじゃない・・・・」

「!」

(来たか・・・・)

臆病なゆえに、無駄に敏感な感覚が「敵」の魔力を感じ取る。

「見ぃつけたぁ〜!」

準備は万端。
悪いが、今夜は一矢報いさせてもらうぜ・・・!










あらかじめ決めておいた逃走ルートを駆ける。
ヤツの杖から放たれる火球が足もとで弾けるが、気にしない。
まともに当てる気が無いのならば、避けるのは簡単だ。

「むぅ〜、ちょこまかとぉ〜」

まずは一発・・・・

「喰らえッ!」

腰に下げていた物を、背中越しに投げつける。
と言っても、特別なものではない。
ただの水風船だ。
正面から火球にぶつかり、熱と衝撃で表面のゴムが破け、水が飛び散る。
これで火が消えてくれれば・・・・

ドォン!

「ぬぉおぅ!」

駄目かよ!
単純に火力のせいか、そういう魔法だからなのか分からないが、とにかく無意味らしい。まぁ予想はしていたが。
そもそも火が消えたとしても持っている水風船の量には限りがあるし、あまり意味はなかったのだが。
それに、まだ手はある。

(そろそろだな・・・)

目指していたポイントに近ずく。

もう少し・・・・・・今だ!
僕は後ろを向き、手に持つものを構える。
それは一眼レフカメラ。少ない金をかき集めて買った、僕の愛機。
ただし、写真を撮るのが目的ではない。ならば、この状況で使えるカメラの機能といえば・・・

「落ちろ!カトンボぉ!」

フラッシュしかない。

「きゃっ!?」

計画通り、僕を必死で追いかけていた彼女はその閃光をもろに受ける。とはいえ、あくまでカメラのフラッシュなのでフラッシュバンやスタングレネードのような威力はない。せいぜい、ほんの一瞬、視界を奪う程度。
しかし、それで充分だった。

ガン!

彼女は僕の頭上の街灯に正面からぶつかり、

「きゅぅ〜・・・」

落ちた。














余った水風船に針を刺し、割る。
尊敬すべき我らがニュートン先生の万有引力の法則により水は直下に落ち、
忌々しい幼女の顔面にぶち当たる。

「わブッ!?ハアっハアっ・・・・こ、ここは・・・!?」
「僕の部屋だよ」
「へ・・・?あ、え・・・」

パニクってるな。

「混乱してるとこ悪いけど、まずは僕を追い回した理由をきかせてくれるかな?」
「え・・・は、はい・・・・。」
 
「・・・・わ、私、あなたのことが好きなんです!!」



・・・は?

「いやいやいや、ちょ、ま、え?で、でも、あれじゃん!あんなに炎ぶつけてきたじゃん!」
「大丈夫ですよ〜ちゃんと火加減しましたから〜。私、火炎魔法得意なんですよ?あ、申し遅れました。私、P(リン)と申します」
「あ、ご丁寧にどうも・・・・じゃなくて!なに?ぼ、僕のどこに、どこがいいの?」
「・・・・私、ずっと見てました。嫌なことがあっても、文句ひとつ言わず黙々と働いているあなたを。そしたら、なんかカッコイイな・・・って思って」

・・・まさか、そんな風に思われていたとは。
僕がただ一つ他人に誇れるところ、「我慢強い」こと。
まぁ、悪く言えば、鈍感で消極的ってことなんだけど。

文句を言わなかったのは、言っても無駄だと諦めていたから。
黙って働いていたのは、話す必要は無いと思っていたから。

それが、カッコイイなんて、思われていたなんて。

「こんな私ですが、お付き合いしていただけませんか?」

断るべきだ。
この子のことは嫌いではないが(攻撃はしてきたけど)、好きでもない。
出会ったばかりの相手に、そんな感情持つはずがない。
そんな中途半端な気持ちで付き合うわけにはいかない。
でも・・・・

「・・・・じゃあ、一緒に住まないか?」
「え?」

僕のことを、こんな僕のことを慕ってくれる彼女の気持ちを、突き放したくない。

「僕は、付き合うとか、そういうのよく分からないけど、まずは君のことをよく知りたい。だから、一緒に暮らして、家事とかてつだってくれないかな・・・?」

我ながらひどい口説き文句だ。

「・・・・♪♪♪!!」

ぎゅっ

「わわっ!?」
「ありがとう・・・ありがとうございますぅ♪♪」
「えぇ?い、今のでいいの!?」
「はいっ私、うれしいです!あなたが・・・お兄ちゃんが私を受け入れてくれて・・・とってもうれしい♪」

まぁ、これで一人きりの夜もなくなるか・・・・
それに、よく見れば結構可愛い・・・・いや、違う違う。ぼくは絶対ロr

「でも、私に優しくしてくれるなんて、やっぱりお兄ちゃんはロリコンなんだね♪」






プツン




・・・・言ってはならないことを言った。この女、言ってはならないことを言ったぞ。



「お、お兄ちゃん?なんだか目がこわいよ?」

偶然近くにあったロープを手に、にじり寄る。彼女の声も、耳に入らない。

とにかく、僕のことを少し分かってもらう必要があるなぁ・・・





「さあ、『説得』の時間だ・・・・!」




















「ただいまー」
「あ、おかえりなさい、お兄ちゃん!」
「こら、僕はお兄ちゃんじゃないって言ったろ?」
「はぁい・・・・ご主人様ぁ♪」


色々あったけど、僕たちは幸せです。


Fin
12/01/29 00:44更新 / W(タングステン)

■作者メッセージ
どうも〜Wと申します。初めまして〜

P「秘書のリンでーす♪」

見ての通りド素人ですが、これからよろしくお願いします。
ご指摘、感想等ありましたら、お気軽にどうぞ〜

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