読切小説
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伝えられなかったこの想い
僕は入学当初、彼女に一目惚れしてしまった。
なんでだろう…この気持ちは何なんだろう?
彼女を見ているとなんだか胸がドキドキする。
これが…恋なのかな?
いや、ちがう。
きっと僕の気違いだ。
そうに違いないと心に押し留めた。

僕はクラスの中でも特に地味で、居るのかさえも分からない位に地味だった。
故に、僕には友達が少なかった。
それとは逆に彼女は、クラスでも明るくて、友達もたくさん居た。
そして周りからも教師からも信頼されていた。

僕みたいな奴が困っていた時でも、彼女は笑顔で、嫌な顔を全くせずに接してくれた。
その時に僕はあの最初に感じた…彼女を初めてみた時のあの胸の高鳴りを感じた。
そして僕は改めて思った。
僕は…彼女のことが好きなんだって。

でも、その時には既に遅かったんだ。
彼女には既に心に決めていた人が居ると噂があった。
僕は信じたくなかった。
でも、見てしまった。
彼女が他の男と横で並んで歩いていた。
その時の顔は僕に見せてくれたあの笑顔よりも輝いていた。
いや、とても幸せそうな顔をしていたと言えば良いのかな。

その時に僕はあの時にもっと早くこの気持ちに気付いていればと。
もしダメだったとしても、それなら諦めが付いてたかもしれない。
でも、僕は云わなかった。
云えなかった。
もう二度と届かないこの想い。
そう思うと胸が締め付けられるように苦しくなった。

この想いはきっと届かないと分かっていた筈なのに…。
何故か涙が溢れて出てきた。
泣いちゃ駄目だと言い聞かせても、止まらない涙。
僕に涙を流す権利など無い筈なのに、溢れてでてくる。

そんな自分が惨めで嫌になった。
もう見てなどいられなかった。
僕はその場から逃げるように走った。
ただひたすらに走った。

彼女は悪くない。
そう、僕が勝手に恋をして、勝手に失恋しただけ。
悪いのは全部僕なんだ。

それでも彼女は僕に対して、また笑顔で接してくれた。
嬉しい半面、とても切ない気持ちになった。
もうやめてよ…。
もう辛いよ…苦しいよ…。
僕はそんな現実から目を逸らし続けた。


それから何事も無かったかのように月日はあっという間に流れ、いつの間にか卒業式に、なっていた。
彼女は今でも彼氏と上手くやってるらしい。
でも、最後にやり残してる事がある。
まだ、この想いを伝えていない!
どう言われてもいいんだ。
このままモヤモヤしたままじゃ終われない!

僕は式が終わった後に、彼女と偶然を装い二人きりになった。
我ながらみっともないかもしれない。
でも、ちゃんと伝えるんだ。
きっと大丈夫。
僕は目を逸らさずに、彼女に伝える。
馬鹿にして笑ってもいい。
それでも聞いて欲しいんだ。
僕のこの想いを…!

『貴女のことが…ずっと好きでした。』



14/12/04 02:11更新 / ムララギさん

■作者メッセージ
はじめまして!ムララギと申します。
皆さんの素晴らしい作品に触発され、書きたくなって書きました。
魔物娘は夫と認めた相手以外の男に対しては♂としても獲物としても認識しなくなるとの表記があったため、では男がその好きな魔物に想いを伝えられずに男として認識されなくなったらこうなるのかなぁと思い、書いてみました。
もしそれで不愉快になりましたら、本当にすみません。
そうなった場合はすぐに消しますので。はい。

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