読切小説
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祭りの後で

「ぬしよ、起きるのじゃ。朝じゃぞ」
「うーん、もうちょっとだけ寝させて……」

ベッドとは何と凄まじい魔力を持ったものだろうか。この至福の時間をもっと味わっていたくなる。
今起きてそれを手放すのは何と勿体ない事であろうか。そう考え再び眠りに就こうとする。

「えぇい、いい加減起きんか。それともぬしが目覚めるまで搾り尽くしてやろうかのぉ……!」
凄みのある声で恐ろしい事を言ってきやがった.

「いやっ、むしろそれは二度と起きれなくなるから!!」
よからぬ言葉を聞き俺の頭は一気に覚醒した。俺はベッドから飛び上がるように起き、既に俺の服を脱がそうとしていた声の主の手から逃れる。

「なんじゃ起きたか、つまらん。」


「おはよう。バフォ。」

俺は目の前にいる不満気な顔をしたバフォに声をかける。
幼い少女の顔立ちに、山羊の角、毛皮に覆われた手足。彼女は人間ではない。
魔物の中でも最高峰の力を持っているバフォメットである。


「うむ。おはよう。今日も元気そうでなによりじゃ。今日の祭りが楽しみじゃのう。早く支度するのじゃぞ。」


今日は一年に一度の村の祭の日だ。村の至る所に露天が開かれ豊作を祈るという名目で、大騒ぎしたり酒を飲んだりするというものである。あいにく、祭りが始まるのは昼からなので、朝は祭りに行く準備が終わった後、バフォとゆっくり雑談をしていた。






祭りがついに始まった。バフォがこの村に来たのは去年なので、彼女にとっては初めての祭りだ。彼女は今まで見た事のない光景に興奮していた。

「ふむふむ。しかし、いろいろなものが並んでおるのぉ。あの雲のような物はなんじゃ、おぬしよ。」

「あれは、綿飴だな。俺も子供の頃は良く食べたもんだ。」

「ふぅむ……美味そうじゃのぅ……」

羨望の目を綿飴を食べている子供達に送っているのを隣からじっと見つめる。その視線に気付いたようでバフォは顔を赤らめた。
「べ、別に儂が子供だから食べたいのではないぞ。儂はただ単に今まで見た事がないから食べたいだけじゃ……」
「分かってる。食べたいなら買ってやるよ。」

2つの綿飴を買って片方を手渡すと、目を輝かせながらそれを受け取る。一口食べるとバフォは口元をこれ以上にないくらい緩ませた。

「美味いのぉ。今までこんなに美味な物を知らなかった事を後悔するぐらいじゃ……」

バフォは綿飴を大切そうに持ち、舌を使って丹念に舐めとっていく。その様子は、子供っぽく有りながらも、どこか扇情的なものを感じさせた。自然と俺の顔が赤くなる。少し変な想像をしてしまったのだ。その事に悟られないように俺は顔をそらす。



「なんじゃ、顔を背けおって。ふむ、顔が赤いわい……なるほど、儂の綿飴を食べる姿に良からぬ事を思い浮かべおったな?」

図星である。

「かわいいのう…。だが、祭りはまだまだ長いのであろう?夜、家に帰ったら、たっぷりと時間があるからそのとき、の。」




それからもバフォは次から次へと食べ物を要求し、既に俺の所持金は底をつきかけていた。それでも、彼女の笑顔に比べればそんな額は端金である。この笑顔が見れるなら何でも買ってあげたい程だ。





祭りも終盤に差し掛かる。村の広場では火が焚かれていた。その周りに人が集まり雑談をしているようだ。

「さて、そろそろかな」
「何がじゃ?」
「この祭りは日が暮れると、酒が配られて皆で乾杯するんだよ。ほら、向こうの辺りで配っている人がいる」
俺は沢山の人で賑わう広場の方を指差した。

「ふむ……」
そう言ったきりバフォは黙り込んでしまった。
「どうした?酒が飲めなかったか」
一瞬の間を置いて彼女は大声で慌てふためく。
「そぅ、そんな事はないわ!早く持ってくるのじゃ!」
そう言って、俺に酒を持ってくるようにをせかした。
「飲めないなら、別に飲まなくても……」
「いいから、持ってくるのじゃ!」

大丈夫だろうか……

もらってきた酒を手渡すと、まるで、今から死地にでも向かうような暗い面持ちで、酒の入ったコップをじっと見つめていた。そして、意を決したようにコップに口をつけると一気に飲んでいく。あぁ、一気飲みは良くないんじゃないのかな……

ごくごくと彼女の喉が鳴り、瞬く間に酒が消えていった。コップを口から離し、一息つき、俺に向けて得意げな顔をする。そう得意げになる事でもあるまい。

と、すぐに俺に寄りかかるように倒れ、意識を失った。

「おい、大丈夫か!?」

返事はない。が、ゆったりとした寝息が聞こえ、俺はほっとする。ここまで酒に弱い奴はこれまで、見た事がない。外見相応であるともいえる。


広場の火もその勢いを弱めていた。祭も終わりが近いのだろう。俺は、眠った彼女をおぶって帰る事にした。その体は軽く、容易に持ち上がる。

喧噪から離れるようにとぼとぼと、歩いていく。この祭りの後のしんみりとした静かな帰り道も良い物だなぁ。祭りで疲れ果てて眠っている妹をおぶって一緒に家族の居る家へと向かうような錯覚に囚われる。


彼女の寝息が首に掛かる。
それは何とも言えない甘い香りを漂わせ、俺をどきどきとさせた。




自宅に入り、寝室のベッドの上に彼女を寝かせる。彼女のあどけない幼さに溢れる顔を俺は知らず知らずのうちに、じっと見つめていた。無音の中のこの至福の時間は何にも代え難い。いつまでも見つめていたいものである。




いつの間にか、バフォは目を覚ましていた。

「ん……なんじゃ、そんなにじっと見つめおって。そういえば、祭りの間にした約束をすっかり忘れる所じゃったのう。お主も中々に目ざといものじゃ。」

「いや、別にそんな事は考えてないぞ」

「恥ずかしがらんでも良い。今日はおぬしの望むままに付き合ってやるからのう」
バフォが俺の言葉を遮るように言い、段々と顔を近づけてくる。

「そういっても結局バフォのしたいようにするだけじゃ……」

喋っている途中で腕を首の後ろにまわされ、唇を防がれた。

「おぬしもそれを望んでおるのじゃろう?」

正論である。何か言う間もなく、再び唇を防がれる。俺の口腔に侵入する彼女の舌と唾液のせいだろうか。まるで、何かの魔法を掛けられたように思考が定まらない。ただぼんやりとした幸福だけが頭の中を渦巻く。

俺はバフォに導かれるかのようにベッドに横になった。その上に乗ってバフォが抱きついてくる。

「こうして、抱きついているだけでも、幸せじゃ……いつまでも、こうしておりたいのぉ」

そういいながらバフォは俺の服を脱がせ、自分の服も脱ぐ

そして、再びキス。今度は舌と舌を絡ませるキスだった。俺も負けじと対抗する。この攻防はしばらく続く事となった。

俺はキスだけで息が荒くなり、顔は情欲にとろけきっていた。

「ぷはっ……じゃあ、次はこっちもいただく事にするかの……」

バフォは徐々に手を、俺の腹から下腹部の方に滑らしていく。

そして俺のズボンと下着をずりおろすと、俺の屹立を小さな口で啣えこんだ。啣えきれない部分は彼女の柔らかい手で揉みしだかれる。


先端を丹念に舌で舐められ弄られる。俺は立ち上ってくる快感にあらがう事が出来なかった。頭が真っ白になる。

「だ、駄目だ。もう出るっ!」

その言葉を聞いたバフォはラストスパートをかけるように舌の動きを速くし、最後に舌を強く先端に押し付けた。

その容赦のない快感に俺は完全に屈服してしまい、彼女の口の中に精が吐き出された。

「ん……んぐっ……」

それを苦にする事もなくごくごくと喉を鳴らしながら嚥下していく。

少女のような姿の彼女のその行動は酷く情欲を招くものであり、俺の股間はたった今出したばかりだというのに再び元の大きさを取り戻していた。

「うむ……まだ元気なようじゃのう」

「では、今度はこっちで……の」

バフォは起き上がったと思うとすぐに俺の上に馬乗りになり屹立を自分の膣の中に押し込んでいった。

抵抗が有りつつもゆっくりと一番奥まで入っていく。少女に犯されているという背徳感と、強い締め付けにより、俺は瞬く間に射精へと導かれ、バフォの中に精が注ぎ込まれていく。彼女は快感にうっとりとしながらも、どこか不満げな様子であった。

「相変わらず早いのぉ……満足出来るまで付き合ってもらうから覚悟するのじゃぞ?」

俺はうなずき、体勢を変える。そして、今度は俺が腰を振り始める。それに従って、ぐちゅぐちゅという音が大きくなっていく。

「あぁぁぁぁ!!もっと、もっと奥まで、突くのじゃ、手加減はいらん!」

部屋の中には俺とバフォの喘ぐ声、そして水濁音だけが淫様に響く。

互いに絶頂が近い。俺は追い込むように腰の動きを速くし、打ち付ける。それに対して俺を離すまいと体に足を絡ませ、腕を絡ませてくる。

「あぁぁぁぁ!!んぅ……!!……」

二度目が終わった。まだまだ解放してもらうには回数が足りていないようだった。だが、俺は既に疲れ始めていた。まぁ、何と言おうが終わる事は無いのだが。



明日はまともに動く事が出来る気がしない。仕事をせずに家でゆっくり休もうか……それは情事の最中に考えることとしては何とも相手に失礼なものであった。





その後も何度も何度も俺はバフォと交わり続けた。何回目かを数える気力すら無くなってきた頃に行為は終わったようだ。

「も……、もう……動けん……」
「…うむ……激しくて良いものじゃったぞ……おやすみじゃ……」

終わるや否や、即座に眠りにバフォは即座に眠りに就く……。せめて、服だけでもと思ったがそれすら叶わない。まぁ、明日でいいか……今はバフォと触れ合って……


二人は繋がったまま眠りに落ちた。











翌朝、体に妙な快感が走るのを感じ目を覚ますと目の前でバフォが俺に馬乗りになって、腰を振っていた。

「待て、朝から何を……」
「何って、昨日の続きであろう?おぬしのここも元気そうじゃからのう……」
「ちょ、それは生理現象……」

朝から始まる長くなるであろう戦いに俺は悲鳴を上げる。それは喜びの声だったのかもしれない。
11/02/28 21:29更新 / asei

■作者メッセージ
セイレーンの小説をデビュー作として書いていたら行き詰まり、その気分転換で書いていたバフォ様の小説が先に完成してしまったでござる

こんな文章を最後まで読んでいただけてありがとうございます。

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